合成生物学とオープンソース
オープンソースという概念はLinuxなどの成功によって一躍有名に
なりました。従来は企業が一社でシステムを作り客は使うだけと
いうのが常識でしたが、このビジネスモデルのみでは昨今の開発競争を
乗り切れなくなってきています。それぞれの企業が独自の仕様にこだわる
よりもみんなで標準技術を決め、それを使ってそれぞれの企業が個性を
発揮したほうが企業の負担も減り、製品サイクルの短い現在において、
多品種少量生産が可能になります。
合成生物学の分野でも、オープンソースの考え方を導入しようという
動きが活発です。参考WIREDVISION
みんなで情報も、材料も共有しよう。そのために標準フォーマットや
パーツの標準仕様を決めましょうというものです。
あるいはみんな共同で研究プロジェクトを進めましょうというものです。
例えばOpemWetWareなどがあります。生命情報科学の分野では
すでに多くの成功例があります。オープンバイオなどを参照して下さい。
思考の共有という手段もあります。例えばアテディアのようなサイトを
利用すると良いでしょう。http://www.attedea.jp/
オープンソースの参考文献として、最近出たMYCOM新書の
「オープンソースがなぜビジネスになるのか」が入門用に最適です。
「WIKINOMICS マスコラボレーションによる開発・生産の世紀へ」
は、不特定多数に開かれたもの造りを考える上で最良と思われます。
しかし、この考え方には問題点もあります。主に2点について議論されています。
コンピュータープログラムのオープンソース運動においても、
特許権や著作権、ライセンスの問題などについて試行錯誤があり、
現在のライセンス形式が出来上がりました。コンピュータープログラム
ではGPL、Wikipediaなど文章の著作権ではGFDLが有名です。芸術的な
コンテンツに関しては、クリエイティブコモンズのライセンスがかなり
しっかりとしています。例えばアレンジできる楽曲や、みんなで書き足して
いくネット掲示板小説などはこのライセンスがよいでしょう。生命情報
科学の分野ではオープンソースが普及していますが、合成生物学へ応用
するにはまだまだ課題が山積みなようです。莫大な研究費を回収するビジネス
モデルが出来上がらない限り、完全にオープンとはならないでしょう。
大きい分、負の部分も大きいのです。すでに科学者はウイルスや生物マシンを
日常的に組み立てています。最近はスペイン風邪(高病原性インフルエンザ)
が作製されたというニュースをお聞きになった方もいると思います。
一部のウイルスは完全にゼロから組み立てられるため、テロリストに作製法と
材料がわたることは避けねばなりません。テロばかりではなく、軍事利用
されるかもしれません。不慮の事故で漏れ出すということもありえます。
実際は研究者はかなり厳しい規制のもとで実験しているのですが、実情を
知らない市民はこういったニュースを聞くと安心して眠れないでしょう。
特に日本では、どんなに厳しい規制がかかり十分な対処がなされていても
危険な病原体の研究は市民の反対により不可能な状態にあります。
つまり遺伝子組み換え技術よりもパワーがあるぶん、責任も重大になるわけです。
例えばカナダのグループが世界社会フォーラムで報告した
「過度の遺伝子操作:合成生物学序論」などが参考になると思います。
最近どのように規制すべきか、著名な合成生物学者達が報告書を発表しました。
http://wiredvision.jp/news/200712/2007121922.html
関係です。研究者はオープンソースの利便性に預かりたい反面、自分の研究
のオリジナリティーも主張しないといけません。
この問題については、日経サイエンス2008年8月号・広がるサイエンス2.0で特集されています。
本当はアイデアをインターネット上で世界中から募集したほうがより多様なもの
が集まるでしょう。またアイデアの安全性や倫理面に対して一般社会の目が入る
ことで科学者の暴走が抑えられるかもしれません。しかし研究の内情をさらして
アイデアをインターネット上で募集しようものならライバル研究室に負けてしま
いますし、研究の独自性がないと言われてしまうかもしれません。そうして研究
者が自分のラボに閉じこもってしまってはオープンソース運動は拡大していきません。
オリジナリティーが独占できなくなってもオープンソースを積極的に活用した
方が得であるという成功例が増えれば、堰を崩したようにオープンソース化する
のではないでしょうか。
いくつか関連しそうな記事を探しました。「オープンな活動で富を得る方法」(リンク)
というものです。あるいは、keizai report.comで
「Web2.0がもたらすオープンイノベーション:視点」
なんかを読んでみると面白いと思います。アイデアをオープンに外注する企業が
でてきているそうです。参考にしてみてください。
他にも、コンピュータープログラムの世界では、ローカル、日本語化の問題があります。
一般的に日本人は英語のコミュニケーションが苦手です。一般ユーザーは読めません。
http://japan.cnet.com/blog/geeklog/today/2007/12/0...
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なりました。従来は企業が一社でシステムを作り客は使うだけと
いうのが常識でしたが、このビジネスモデルのみでは昨今の開発競争を
乗り切れなくなってきています。それぞれの企業が独自の仕様にこだわる
よりもみんなで標準技術を決め、それを使ってそれぞれの企業が個性を
発揮したほうが企業の負担も減り、製品サイクルの短い現在において、
多品種少量生産が可能になります。
合成生物学の分野でも、オープンソースの考え方を導入しようという
動きが活発です。参考WIREDVISION
みんなで情報も、材料も共有しよう。そのために標準フォーマットや
パーツの標準仕様を決めましょうというものです。
あるいはみんな共同で研究プロジェクトを進めましょうというものです。
例えばOpemWetWareなどがあります。生命情報科学の分野では
すでに多くの成功例があります。オープンバイオなどを参照して下さい。
思考の共有という手段もあります。例えばアテディアのようなサイトを
利用すると良いでしょう。http://www.attedea.jp/
オープンソースの参考文献として、最近出たMYCOM新書の
「オープンソースがなぜビジネスになるのか」が入門用に最適です。
「WIKINOMICS マスコラボレーションによる開発・生産の世紀へ」
は、不特定多数に開かれたもの造りを考える上で最良と思われます。
しかし、この考え方には問題点もあります。主に2点について議論されています。
- 法律的な問題、特に特許の問題
- 安全性や倫理面の問題
法律的な問題、特に特許の問題
Open Tech Pressの記事が参考になります。コンピュータープログラムのオープンソース運動においても、
特許権や著作権、ライセンスの問題などについて試行錯誤があり、
現在のライセンス形式が出来上がりました。コンピュータープログラム
ではGPL、Wikipediaなど文章の著作権ではGFDLが有名です。芸術的な
コンテンツに関しては、クリエイティブコモンズのライセンスがかなり
しっかりとしています。例えばアレンジできる楽曲や、みんなで書き足して
いくネット掲示板小説などはこのライセンスがよいでしょう。生命情報
科学の分野ではオープンソースが普及していますが、合成生物学へ応用
するにはまだまだ課題が山積みなようです。莫大な研究費を回収するビジネス
モデルが出来上がらない限り、完全にオープンとはならないでしょう。
安全性や倫理面の問題
合成生物学は新たな生命システムを組み立てるため、社会が得る恩恵も大きい分、負の部分も大きいのです。すでに科学者はウイルスや生物マシンを
日常的に組み立てています。最近はスペイン風邪(高病原性インフルエンザ)
が作製されたというニュースをお聞きになった方もいると思います。
一部のウイルスは完全にゼロから組み立てられるため、テロリストに作製法と
材料がわたることは避けねばなりません。テロばかりではなく、軍事利用
されるかもしれません。不慮の事故で漏れ出すということもありえます。
実際は研究者はかなり厳しい規制のもとで実験しているのですが、実情を
知らない市民はこういったニュースを聞くと安心して眠れないでしょう。
特に日本では、どんなに厳しい規制がかかり十分な対処がなされていても
危険な病原体の研究は市民の反対により不可能な状態にあります。
つまり遺伝子組み換え技術よりもパワーがあるぶん、責任も重大になるわけです。
例えばカナダのグループが世界社会フォーラムで報告した
「過度の遺伝子操作:合成生物学序論」などが参考になると思います。
最近どのように規制すべきか、著名な合成生物学者達が報告書を発表しました。
http://wiredvision.jp/news/200712/2007121922.html
その他の問題
オープンソースのもう一つの問題は、オリジナリティーとオープンソースの関係です。研究者はオープンソースの利便性に預かりたい反面、自分の研究
のオリジナリティーも主張しないといけません。
この問題については、日経サイエンス2008年8月号・広がるサイエンス2.0で特集されています。
本当はアイデアをインターネット上で世界中から募集したほうがより多様なもの
が集まるでしょう。またアイデアの安全性や倫理面に対して一般社会の目が入る
ことで科学者の暴走が抑えられるかもしれません。しかし研究の内情をさらして
アイデアをインターネット上で募集しようものならライバル研究室に負けてしま
いますし、研究の独自性がないと言われてしまうかもしれません。そうして研究
者が自分のラボに閉じこもってしまってはオープンソース運動は拡大していきません。
オリジナリティーが独占できなくなってもオープンソースを積極的に活用した
方が得であるという成功例が増えれば、堰を崩したようにオープンソース化する
のではないでしょうか。
いくつか関連しそうな記事を探しました。「オープンな活動で富を得る方法」(リンク)
というものです。あるいは、keizai report.comで
「Web2.0がもたらすオープンイノベーション:視点」
なんかを読んでみると面白いと思います。アイデアをオープンに外注する企業が
でてきているそうです。参考にしてみてください。
他にも、コンピュータープログラムの世界では、ローカル、日本語化の問題があります。
一般的に日本人は英語のコミュニケーションが苦手です。一般ユーザーは読めません。
http://japan.cnet.com/blog/geeklog/today/2007/12/0...
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2008年07月09日(水) 17:25:08 Modified by nonnatural