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第八十三景 鍔迫り << 物語

最終景 真紅(しんく)

ついに最終回です。無明逆流れ編の、、、

あらすじ

陪観者らが押し黙る中、片方が崩れ落ち、もう片方が生きている。真剣試合の決着である。隻腕の剣士は刀の重量を支えきれず中空に投げ出し、盲目の剣士はやはりあらぬ間合いで刀を振った。壮絶なる秘剣の応酬は、「大納言秘記」にはそのように記録されている。その姿を、涙して見つめる三重。目の前の清玄を見つめたまま、静かに脇差の血を拭き取る源之助。
眩しすぎた。あまりにも眩しすぎたゆえ斬らねばならなかった。清玄と出会った誰もが、その輝きに心を奪われ、そのような羨望が悪意となって、美剣士の双眸を切り裂いたのではあるまいか。清玄を追って、菩薩もまた命を断った。
ここで、ついに口を開く忠長。側近の三枝はすぐさま近寄り言葉を授かる。しかし、その言葉は驚愕すべき内容だった。清玄は当道者の分際で、神聖なる武芸の庭に足を踏み入れたる無礼によって、近々との自ら手討ちにする所存だったと。さらに獄門に処するゆえ、直ちに清玄の首を切り落とせとまるで信じられない命令だった。源之助は我が耳を疑った。伊良子清玄がそのような恥辱を受ける謂れはないはずだと。伊良子清玄は源之助の誇りそのものだった。すぐに動かない源之助の姿に、忠永の様子を伺い焦る三枝。続けて、合戦の場で敵の首級を奪いたるは武士の習いで、遠慮は一切いらず、士ならば、士の本分を全うすべしと言い放った。虎眼に拾われ、士に生まれ変わった頃の自分を思い出す。三枝がさらに何事か叫んでいたが、源之助の耳には聞こえなかった。ただ"士"という言葉だけが体内で反芻していた。血をふき取った脇差に再び手をかける源之助。その姿を見て三枝は安堵の表情を浮かべた。源之助はゆっくりと清玄の首に刀を当て力を入れた。脛骨と頭蓋骨の継ぎ目を狙えば、斬首はさほど困難ではないが、この時源之助は赤子の如く、僅かな力しか発揮できなかった。神経は蒼白となって震え、鋸引きの如く刀をこすりつけるしかなかった。自己の細胞が次々に死滅してゆくかのような嘔吐感。しかしこれは、あの岩本道場で三重を抑えつけた時と同じではないか、、、
鈍い音がした。ようやく清玄の首を切り離した源之助は、それを忠長の前に高く上げて披露した。忠長は計らえと一言漏らすのみ。三枝はその一言から、源之助を駿府家中に召抱えて遣わすと理解し、それを告げた。この大恩を夢忘れることなく、本日只今より御殿に命を奉れとの言葉に、頭を下げる源之助。平伏しつつ源之助は嘔吐した。
試合場を後にする源之助の姿は、入場した時とは別人である。すべて奪われた。残ったものは乙女との約束だけだ。西方の入り口に戻る源之助は、陣幕の隙間に乙女の姿を確認する。しかしそれは、すでに事切れた三重の、変わり果てた姿だった。

城下の桜並木を二人で歩いたあの日。桜吹雪の中、お互いの存在を確認するかのごとく名前を呼び合ったあの日。手を繋ぎ、結ばれるために戦うと誓ったあの日。
今は遠い昔

シグルイ 〜無明逆流れ編〜 完
舞台
駿府城南広場、岩本道場(回想)、城下桜並木(回想)
道具
脇差、一、虎殺七丁念仏、扇子
主要単語
大納言秘記、双眸、菩薩、当道者、獄門、首級、士
詳細

掲載ページコマ文字
チャンピオンRED 2010年9月号
単行本15巻
30ページ106コマ文字

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最終15巻

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