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第八十景 竜門(りゅうもん)

あらすじ

九月二十四日早朝、笹原邸にて。
すでに布団が片付けられている部屋に、一人鎮座する三重の姿。三百石の生家に比ぶれば、物置にも満たぬ笹原邸の庵であったが、どんなに身分の高い人間でも買うことのできない、尊いものに満たされていると、乙女は感じていた。一方源之助は玄関にて、晋吾が草履の紐を縛る中、伊良子清玄の恐るべき魔剣が、怖くないのかと尋ねられていた。それに対し源之助はただ一言、斬りたいから斬りにいく、それだけだと力強く答えた。
正門を出ると、駿府城からの迎が来ていた。藩士が駕籠を勧めると、源之助は丁重にこれを辞退した。城までは自分の足で、風や木の匂いを感じながら、歩みたいと告げる。乙女が胸の内で思ったことを、ほぼそのまま源之助が口にした。向かう先は真剣試合で、帰り道はないかもしれない。迎の者らは離れて追従した。その姿を見た手島新兵衛は、なんと美しい男女であろうと、嘆息を漏らした。生きることを決意した者の美しさは、ただ生きる者たちを圧倒する。
昨晩のこと、乙女と剣士は笹原に邸内のとある一室に案内された。そこにはいかなる塗料を用いたのか、光る鯉の掛け軸があった。この真鯉と緋鯉は夫婦で、はるか黄河の竜門と呼ばれる急流を遡っていたところで、骨をも軋ませるうねりの中を、夫婦鯉は心をひとつにして泳いでいく。そして竜門を乗り越えたとき二匹の鯉は、一頭の竜に姿を変え天空へ昇っていくのだといった。まるでお主達のようだとの一言に、乙女と剣士は頬を紅潮させた。若い二人は、真剣試合に勝利したその夜、重なり合うという神聖な約束を交わしていた。

出場剣士、十一組二十二名。旗指物が立ち並ぶ出場剣士控えの庭は合戦の場さながら。白木綿に囲まれた剣士個別の仕切りは切腹場と見紛うばかりの仕様。剣士たちは西方東方に選別され東西の庭に分離。対戦者同士が対面することに無いよう配慮されている。午前の部、第一試合の開始は巳の刻。
駿府城東御門前の橋を渡る源之助ら。晋吾は着替えの支度を持ち、笹原邸の用人が水桶を持参した。

若き男女、竜門に挑む鯉の如く。
戦うために生まれてきたのではない。戦って結ばれるために生まれてきたのだ。
登場人物
岩本三重藤木源之助猪又晋吾伊良子清玄(名前のみ)、手島新兵衛笹原修三郎
ほか笹原邸用人、岡倉門下生(名前のみ)
舞台
笹原邸(庵)、黄河の竜門(名前のみ)、城までの道、駿府城東御門、出場剣士控えの庭
道具
貝殻、虎殺七丁念仏、駕籠、蝋燭、掛け軸、着替え、水桶
主要単語
竜門、旗指物、巳の刻
詳細

掲載ページコマ文字
チャンピオンRED 2010年5月号
単行本15巻
26ページ66コマ文字

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最終15巻

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