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第六十四景 消失 (しょうしつ)

あらすじ

研屋町裏長屋に顔を腫らした子供が駆けつける。そこに住むいくは、虎眼に呼ばれたことを知ると柄杓に水と注ぎ、子供にゆすぎなさいといった。そのまま長屋に上がらせ、体の隅々を観察する。その子供は虎眼流に入門して間もない源之助だった。虎眼流農地でしには容赦ない稽古が加えられる。研屋町に馳せ参じる道中で吐血して果てたある内弟子は、折れた肋骨が肺に刺さっていた。いくは源之助に骨折がないのを確認すると、ずり向けた左の掌を焼酎で消毒した。さらに食事を用意し、食べなさいといった。いくの命令口調は遠慮をさせないためだった。源之助が食事をしている間、稽古儀の綻びをつくろういく。あまりにも無口な源之助は、感受性に欠落があるのではと噂されていた。無惨唄の妾いくと、顔の腫れた源之助が歩くと、町のものは眉をひそめて道をあけた。先を行く源之助に、虎眼流の跡目はきっとあなたといったいくは、首筋から耳にかけて赤く染まった源之助を確認し、無口であるが壊れてなどはいないと、いくはそう確信した。
さらに月日が流れ、源之助の左掌の皮が、ぶ厚く生まれ変わった頃。この日も虎眼から呼ばれるいく。虎眼の正妻が死去して、三回忌を終えて間もない頃だった。身を清めるといくは震えながら源之助に伝えた。この頃の虎眼は時に曖昧であり、その相手をする者は覚悟を要した。小さな衝立の陰で着物を脱ぎ、水を溜めた桶で体を清めるいく。その濡れた背中を見た源之助は、目蓋に甘く馨しき温もりを感じていた。目を閉じてなお太陽の日差しを感じるがごとくに。

提灯の明りを持ち、先頭をいく星川生之助。彼は藤木に、ここは駿府城下、大納言忠長公のお膝元ゆえ、なにが起ころうとも決して抜いてはならないと忠告した。
長谷寺町の戸田流道場では、裁縫を中断し玄関に待ち受けるいく。明りが暗闇を照らし、生之助の後ろ二名が徐々に明らかになる。源之助といくは、互いに姿を確認した。思いもよらぬ再開、しかしかつていくが手当てした左手は根元から消失し、源之助の目を眩ませた白き背中もまた然り。混乱するいくに、これには理由があると生之助。呆然とする行くが指を指して、生之助は異様な雰囲気を感じ後ろを振り返る。そこにはあの血塗られた白装束に身を包む三重がいた。その三重が懐刀を抜くように大刀を抜く源之助。源之助が抜いたのか、乙女が抜かせたのか。必死ににその場を収めようとする生之助だが、源之助の刀を担ぐ構えを見るとついに生之助も満月の下、刀を抜いた。

登場人物
藤木源之助いく岩本虎眼牛股権左衛門星川生之助(月岡雪之介)、岩本三重
徳川忠長(名前のみ)、内弟子、虎眼正妻(名前のみ)
舞台
掛川宿?(研屋町?裏長屋)、岩本虎眼屋敷?駿府城?長谷寺町?(戸田流道場?)
道具
焼酎?お櫃?柄杓?稽古着??衝立?提灯?日本刀?
主要単語
虎眼流?内弟子?感受性?無残歌?大納言?
詳細

掲載ページコマ文字
チャンピオンRED 2009年1月号
単行本12巻
32ページ127コマ文字

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最終15巻

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