最終更新:ID:NAPdumLWNA 2010年12月27日(月) 04:25:29履歴
――朱里が十坂の精液に触れた。
ふって沸いたアクシデントに対する一同の反応は、様々だった。
「朱里――大丈夫か? 体調に変化はないか?」
冷静に朱里の心配をする者。
「えええええ、えっと……手についただけなら水で洗えば何とかなるかも……!
水水水ーっ!」
半ばパニック状態で対処を試みる者。
「うぇぇぇぇぇ……ライバルが増えたぁ……しかも相手が朱里やなんてぇ……
うわーん! うちのせいやー!」
状況に打ちのめされ、めそめそと泣く者。
「こ、この東洋の牝猿がぁっ! 畜生の○○の分際で飼い主の手を噛むとは……!」
放送禁止用語を交えてなじる者。
……本当に様々であった。というか、ルッカは自重しろ。
先ほどまで和那とルッカの怒号で満ちていた室内が、今度は四人分の声で大層賑やかになる中、朱里は冷静に己の状況を分析した。
(……っ!)
熱い。
精液に触れた指先が、熱い。
だがそれは決して外側の暑さではなく、内側から沸き起こる熱……興奮した時に性器に感じる性的衝動のそれに似ていた。まるで、指先と性器が置き換わったと錯覚するような強力な熱。
しかもその熱は、徐々に徐々に広がっていき、彼女の神経を侵蝕するのだ。
(こ、これは……!)
「どうなんだ? 朱里……」
「朱里ぃ! 大丈夫なん!?」
紫杏は真剣なまなざしで、和那は涙目で。
表情や感情は違えど、自分を心配してくれる二人の言葉に、朱里は正直な言葉を返した。
「……正直……ちょっと辛いわね」
つぶやくその頬は赤く染まり、唇をかみ締めていた。
「♂♀★〒↑@&▽%%#°@>◇◆〓□¢>」【+±§☆¶∽♭‰≪】!!!!!」
バックミュージックは、ルッカが奏でる聞くに堪えない放送禁止スラングである。
どうやらこちらを無視するなと言っているらしい。
『過去の悲惨な体験』……その中で、媚薬を打たれた経験は何度もあるが、こんな極め付けに強力な効果を及ぼされた事は一度もない。
逆の方の手でハンカチを取り出し、精液をぬぐおうとして……
「ああ! あかん! 下手に拭いたらかえって悪化してまう!」
和那の涙声に止められた。
そこへ丁度いいタイミングで十坂がコップを手に戻ってきて、中身の水を朱里の指先にかける。するとどうだろう、水に荒いがなされるかのように、指先に篭っていた熱が引いていく……完全に引ききったわけではないが、熱が広がる速度は間違いなく遅くなっていた。
幾分か正気を取り戻した朱里は、目の前の元凶をじろりと睨みつけて毒を吐く。
「擦って引き伸ばしたら悪化するって、何処の毒よ……」
「毒の方がマシだと思うよ」
それに返ってきたのは、間違えようのない自嘲の言葉。
「♂♀★〒↑@&▽%%#°@>◇◆〓□¢>」【+±§☆¶∽♭‰≪】!!!!!」
しつこいようだが、BGMはルッカの放s(ry
どうやら十坂に失礼な口を聞くなといっているらしい。
「間違えて口に入ったら、発狂寸前になるからなあ……」
「ある程度耐性ついとったら……ぐすっ……肌につくくらいはなんでもないんやけどね……」
十坂の怖いお言葉に、和那が鼻をすすり上げながら追従する。
確かに、指についただけでこんな反応が起こる媚薬だ……口に入ったら、まかり違って性器に触れたら一体どうなってしまうのか……想像するだけで背筋が凍る。
ルッカが壊れてしまったのも当然だろう……これは、あまりに強力すぎる媚薬だ。
そうこうしているうちに、手先を潤していた水の流れが途切れてしまった。コップの中の水が切れてしまったのだ。
「あ……やべ……
急いで次の水を注いでくる!」
「♂♀★〒↑@&▽%%#°@>◇◆〓□¢>」【+±§☆¶∽♭‰≪】!!!!!」
慌てて立ち上がろうとする十坂のBGMはルッカn(ry
どうやら、ご主人様の手を煩わせるなという意味の事を、紫杏達に言っているらしい。
あまりにやかましいBGMに、十坂は青筋を立てて、
「ルッカ」
「何でございましょう御主人様!」
(御主人様っ!?)
(もう完全に道を踏み外してる!)
一瞬でクールダウンしてしおらしくなるルッカに、紫杏と朱里はビックリである。
両目を潤ませ頬を染め、初心な少女のような表情をするルッカに、十坂は冷たく命じた。
「お前うるさいから少し黙ってろ」
「ええ!? そんな! そんなご無体な!」
外国人なのに、やったら流暢な日本語を使い、ルッカは両目に涙を溜めて講義する!
「ただ黙ってろだなんて!
やるなら、『両穴バイブで拘束放置』! ……いえ! せめてボールギャグで拘束を!
この哀れな牝豚に御慈悲をぉぉぉぉ!」
――叫ぶ彼女の表情は、明らかに興奮していた。
早 /::l::l::、::、::ヽ::、:::\::::ヽヽ:::::ヽ 駄
.く /:::!::i:!:ヽ:ヽ::ヽ::ヽ、::\:::ヽ:::ヽヽ::::', 目
な. /:l::::!::ヽ!::ヽ:::ヽ:::\::ヽ、:ヽ::ヽ::!::i:::! だ
ん ハ:::l::、::ヽ::\:::\:::\:`ヽ、::ヽ::ヽ:::!:!:l
と /:::l:::!ヽ:ヽ::::::ヽ:::、:\::\:::\::!:ヽ:!::i::l:l こ
か !:/!::!::ヽ:ヽ{:::\:::ヽ::\::\::ヽ::ヽ!:::}!::l::li| い
し j/:::l:!:、:!::ト、:、:ヽ::`ヽ {、::\::: \:: i ::!::l:l ! つ
な l:ii:i:、:l::lテ=-、:ヽ、_、::\_,≧ェュ、_、\::::i::li::!::リ :
い !ハト:{:!i:トN{、ヒ_ラヘ、{ >、{ 'イ ヒ_ラ 》\::l::!:ト!!:l::l! :
と ヽ i、ヽ:ト{、ヾ ̄"´ l!\ `" ̄"´|::!:l::! j:ll:!
: !::i l u |:::/lj/l:!リ
: ヾト、:!u j!/ j|:::リ
ヾ! ヽ ‐ u /イ´lハ/
}ト.、 -、ー-- 、__ /' !:://
リl::l゛、 `二¨´ / |/:/
rー''"´ト!::i{\ / / !:/
/ ^ヽ ヾ! ヽ _,,、'´ / j/
注・朱里
妙に手馴れた十坂にボンテージファッションで拘束され(バイブは刺さなかった)、ボールギャグまでかまされて、恍惚とした表情で涅槃に旅立ったルッカの姿に、朱里は危機感を感じずに入られない。
主に任務中の危機管理とか。こんなヤツから指示受けて大丈夫なのかと小一時間。
「……妙に手早いな」
ルッカの拘束を終え、水を汲んで帰ってきた十坂に、紫杏が声をかけた。
十坂は朱里の指先に水をかけながら、疲れきった笑みで、
「――慣れてるからさ」
「……大変だな」
その表情から苦労の程を察してねぎらうも、十坂は首を左右に振った。
「いや、元はといえば、俺のせいだし……最初にやった時に口の中に出したら、箍が外れちゃったみたいでさ」
「……まぁ、何だ。
事情があるなら、君がカズの部屋に夜這いするくらいは、見逃してもいいぞ」
「……根本的解決になってない。カズが壊れるってば」
ねぎらいのつもりだったのだろうが、全く的を外れた紫杏の言葉に、十坂はジト目で突っ込んだ。
「誰がカズを抱けといったか! 二人きりで話すだけでも――」
「俺はカズと密室で二人きりになって、自分の欲望を抑えきる自信はないぞ」
「はぁ?」
「俺にとっては、最高に可愛い彼女だからな。多分押し倒さずにはいられないだろうし」
それは全くの不意打ちだった。
つまるところ彼の言葉は、『二人きりになったら襲ってしまうほどベタ惚れ』という意思表示で。
十坂に片恋中の紫杏にとっては嫉妬を掻き立てられる言葉であり、和那の羞恥心を直撃する、最大級の惚気だった。
「よかったじゃない……彼、貴方にベタ惚れみたいよ」
「あ、あうぅぅぅぅぅ……」
朱里の言葉に、和那は耳まで真っ赤になって縮こまる……180を超える長身の彼女がこうなるとやけに小さく、かわいらしく見えるから不思議である。
「そのぐらい耐えられないのか……?」
「耐えられるわけがないだろう。二人きりになったときのカズは、そりゃあもう愛らしいんだから♪
俺は元々猫派だったが、今なら断言できるぞ。
今の俺は猫より犬よりカズ派だ。あいつは猫より何倍も可愛い♪」
続いて吐き出された言葉は、紫杏なりの嫌味だったのだろうが……力の限り逆効果だった。
紫杏の米神がピクピク痙攣しているのにも気付かず、十坂は惚気爆発である。
「……あんなこと言ってるわよ。あんたの彼氏」
「お、おさむのあほぉぅ」
かなり余裕が出てきたらしい朱里にからかわれ、和那は真っ赤になって膝に顔を埋めた。
「耐えられないなら、一体いつスキンシップをとってるんだ、二人とも」
「え、そりゃあ…… 事 後 」
半ばやけくそ気味に質問する紫杏に対し、十坂は恥らうことなく躊躇うことなく言い切った。
紫杏と朱里が和那の親友という事で、安心しきっているのだろうが、ある意味尊敬に値する馬鹿である。
「事後って言っても、挿れっぱなしなんだけどな。その状態で首筋とかにキスマーク付けると、反応が可愛いんだよ〜♪」
「キスマーク?」
「ああ! カズは俺のモンだから、めい一杯マーキングしておかないとな! うなじとか鎖骨とか……まぁ、大概付けてる最中にお互い寝ちゃうんだけど」
「い、いれっぱなしでか」
「ああ……というか、一つのベッドに入ったら、いつも抜くのはいつも朝なんだよな」
「……」
紫杏の頭から、ぷちっと何かが切れる音がした事に、その場にいた誰も気付けなかった。
「『一杯チュッチュしてもらったもーん』、ね。成る程」
「…………!!!!」
「とりあえず、首筋にキスマークがついてたら、前日はお楽しみだったって事でいいのね?」
「うえええええ……朱里がいじめっ子やぁ……」
完全に熱が引き、いつも通りの顔色になった朱里は、ここぞとばかりに和那をからかい倒していた。羞恥心を抉る朱里の口撃に、和那は子供のようにマジ泣きするしか出来ない。
――これなんて羞恥プレイ?
「とりあえず、妊娠には気をつけなさいね」
「うう……コンドームつけとるから大丈夫やもん……」
「……ふと思ったんだけど、あれに合うサイズのコンドームなんてあるの?」
「ジャッジメント特注品……あそこの変態に頼んで……」
「……まあ、市販のコンドームが使えるはずないか……」
その頃の変態=ルッカ。
(放置プレイだなんて……!
くやしい……でも……感じちゃう! ビクビクッ)
何もしてないにもかかわらず絶頂したりして、中々の痴女っぷりを見せ付けてくれていた。
「ちなみに……これって、飲んだりしたらどうなってたわけ?」
一通り和那をからかい倒した朱里は、ふと脳裏に浮かんだ疑問を、そのまま十坂にぶつけてきた。とされた十坂は朱里に向かって振り返り、紫杏に背を向けるか形で顎に手を当てた。
「……カズの時はそりゃあもうビックリの乱れようだったなぁ」
「い、いちいちうちを引き合いにださんといてぇぇぇぇぇぇ」
これ以上の羞恥プレイには耐えられないとばかりに悲鳴を上げる和那であった。
「……俺の精液浴びた女ってルッカと和那だけだから、正直どうなるか想像がつかない」
「ルッカのときは……って、愚問ね」
「ああ……暴走して記憶がない。
気がついたら彼女が精液の海にアヘ顔で気を失ってたよ……」
「ああ、そのショックで……」
朱里が痛ましそうに視線を投げた先では、
(らめぇぇぇぇぇっ! 放置しゃれるのぉがよしゅぎてルッカとんに゛ゃう!!)
脳裏でみさくら語を展開しつつ、潮を吹いたりしていた。
素敵なまでに駄目人間である。
「まぁ、量にもよるけど……精液浴びた時の二人の反応から察するに、浴びる位置が体に近いほど、早く発情状態になっちゃうんじゃないかな」
ぴ く り っ
その一言を口にしたとき、紫杏の片が震えた事に、誰も気が付かなかった。
気が付けなかった。
「もしその状況になったら……?」
「んー……その時点で、もう俺の精液の中毒になってるだろうから……まぁ、俺が抱く人間が一人増えるんだろうなぁ……
増やしたくないけど」
ぐ っ !
その言葉を聴いたとき、紫杏が何かを決意したかのように拳を握り締めた事に、誰も気が付かなかった。
気が付けなかった。
「増やしたくないの?」
「今でさえカズがいやな顔するんだから、これ以上泣かせるのはゴメンだよ。
ああ、浜野は大丈
べ ち ゃ ッ !
夫――!?」
――会話の最中に地下室に響き渡った、不吉な不吉な濡れた音。
今さっき聞いたのと同じ、しかし明らかに先の音より大きな音に、その場にいた全員が硬直した。
うつむいていた和那も顔を上げ、皆でさびた機械が動くように、ぎぎぎぎぎぃっ、と音源に向かって首を動かし……そして見た。
床に広がる精液の海。
その真っ只中に、何故か顔面からダイブしてしまっている紫杏の姿を。
『し、しあーーーーーーーーーーーーーーーーーーーんっ!?』
声をはもらせた和那と十坂が、わたわたと倒れた紫杏に駆け寄る中、朱里は動かなかった。動けなかった。
そう、彼女は見てしまったのだ。
精液の海に向かって倒れこむ瞬間……紫杏が某嵐を呼ぶ幼稚園児の如き笑みを浮かべる姿を!
「し、紫杏! 大丈夫か紫杏!」
「ば、バランスを……崩してしまった……」
嘘だ。アレは絶対わざとだ。
彼女は、わざと精液の海の中に自分から突っ込んだのだ。
あの冷静沈着な紫杏をここまでトチ狂わせるとは……恋とは、実に恐ろしい不治の病である。
「か、カズ! ルッカの拘束解いて! バケツリレーで精液を洗い流せー!!!!」
「わ、わか――」
そうか。
そういうことか。
かちゃかちゃ……
「って、ちょっと紫杏さーーーーーーんっ!?
何でズボンのベルトを――」
「うふ、うふ、うふふふふふふふふふ」
「だ、駄目だー! もう完全に逝っちゃってるー!!!!」
(紫杏、あなたは……人の道を踏み外してでも、十坂と結ばれたかったのね)
あかりん、遠い遠い目で逝ってしまった己が主を眺め、ゆっくりと絶望した……紫杏が倒れこんだ時に飛び散った精液が、口の中に入ってしまった音に対する、拭いようのない絶望感が、胸を満たしていく。
「うわーん! 紫杏が、紫杏がどこぞの変態みたいになってしもうたー!」
「……誰が変態よ。誰が」
「アンタにきまっとるやろー!」
「……人が御主人様からの放置プレイを楽しんでいたところを邪魔しておいて、いう事がそれかー!」
和那と拘束から解き放たれたルッカが、闘志むき出しで火花を散らし。
「あむ……ぷちゅ……あぁ……大きい♪」
「ちょ! 紫杏……いきなりそれは……って、浜野まで何を……!」
「ふふふふふふふ」
「え、獲物を狙うハイエナの目だっ!!!!」
紫杏と十坂に朱里が混じって、ピンク色でサックスが聞こえそうな雰囲気を撒き散らし、
まぁなんてカオスな空間でしょう!
リフォームの匠もびっくりの劇的ビフォーアフターであった。
その日……彼女達はカレンダーの日付が変わるまで、地下室を出る事はなかった。
ふって沸いたアクシデントに対する一同の反応は、様々だった。
「朱里――大丈夫か? 体調に変化はないか?」
冷静に朱里の心配をする者。
「えええええ、えっと……手についただけなら水で洗えば何とかなるかも……!
水水水ーっ!」
半ばパニック状態で対処を試みる者。
「うぇぇぇぇぇ……ライバルが増えたぁ……しかも相手が朱里やなんてぇ……
うわーん! うちのせいやー!」
状況に打ちのめされ、めそめそと泣く者。
「こ、この東洋の牝猿がぁっ! 畜生の○○の分際で飼い主の手を噛むとは……!」
放送禁止用語を交えてなじる者。
……本当に様々であった。というか、ルッカは自重しろ。
先ほどまで和那とルッカの怒号で満ちていた室内が、今度は四人分の声で大層賑やかになる中、朱里は冷静に己の状況を分析した。
(……っ!)
熱い。
精液に触れた指先が、熱い。
だがそれは決して外側の暑さではなく、内側から沸き起こる熱……興奮した時に性器に感じる性的衝動のそれに似ていた。まるで、指先と性器が置き換わったと錯覚するような強力な熱。
しかもその熱は、徐々に徐々に広がっていき、彼女の神経を侵蝕するのだ。
(こ、これは……!)
「どうなんだ? 朱里……」
「朱里ぃ! 大丈夫なん!?」
紫杏は真剣なまなざしで、和那は涙目で。
表情や感情は違えど、自分を心配してくれる二人の言葉に、朱里は正直な言葉を返した。
「……正直……ちょっと辛いわね」
つぶやくその頬は赤く染まり、唇をかみ締めていた。
「♂♀★〒↑@&▽%%#°@>◇◆〓□¢>」【+±§☆¶∽♭‰≪】!!!!!」
バックミュージックは、ルッカが奏でる聞くに堪えない放送禁止スラングである。
どうやらこちらを無視するなと言っているらしい。
『過去の悲惨な体験』……その中で、媚薬を打たれた経験は何度もあるが、こんな極め付けに強力な効果を及ぼされた事は一度もない。
逆の方の手でハンカチを取り出し、精液をぬぐおうとして……
「ああ! あかん! 下手に拭いたらかえって悪化してまう!」
和那の涙声に止められた。
そこへ丁度いいタイミングで十坂がコップを手に戻ってきて、中身の水を朱里の指先にかける。するとどうだろう、水に荒いがなされるかのように、指先に篭っていた熱が引いていく……完全に引ききったわけではないが、熱が広がる速度は間違いなく遅くなっていた。
幾分か正気を取り戻した朱里は、目の前の元凶をじろりと睨みつけて毒を吐く。
「擦って引き伸ばしたら悪化するって、何処の毒よ……」
「毒の方がマシだと思うよ」
それに返ってきたのは、間違えようのない自嘲の言葉。
「♂♀★〒↑@&▽%%#°@>◇◆〓□¢>」【+±§☆¶∽♭‰≪】!!!!!」
しつこいようだが、BGMはルッカの放s(ry
どうやら十坂に失礼な口を聞くなといっているらしい。
「間違えて口に入ったら、発狂寸前になるからなあ……」
「ある程度耐性ついとったら……ぐすっ……肌につくくらいはなんでもないんやけどね……」
十坂の怖いお言葉に、和那が鼻をすすり上げながら追従する。
確かに、指についただけでこんな反応が起こる媚薬だ……口に入ったら、まかり違って性器に触れたら一体どうなってしまうのか……想像するだけで背筋が凍る。
ルッカが壊れてしまったのも当然だろう……これは、あまりに強力すぎる媚薬だ。
そうこうしているうちに、手先を潤していた水の流れが途切れてしまった。コップの中の水が切れてしまったのだ。
「あ……やべ……
急いで次の水を注いでくる!」
「♂♀★〒↑@&▽%%#°@>◇◆〓□¢>」【+±§☆¶∽♭‰≪】!!!!!」
慌てて立ち上がろうとする十坂のBGMはルッカn(ry
どうやら、ご主人様の手を煩わせるなという意味の事を、紫杏達に言っているらしい。
あまりにやかましいBGMに、十坂は青筋を立てて、
「ルッカ」
「何でございましょう御主人様!」
(御主人様っ!?)
(もう完全に道を踏み外してる!)
一瞬でクールダウンしてしおらしくなるルッカに、紫杏と朱里はビックリである。
両目を潤ませ頬を染め、初心な少女のような表情をするルッカに、十坂は冷たく命じた。
「お前うるさいから少し黙ってろ」
「ええ!? そんな! そんなご無体な!」
外国人なのに、やったら流暢な日本語を使い、ルッカは両目に涙を溜めて講義する!
「ただ黙ってろだなんて!
やるなら、『両穴バイブで拘束放置』! ……いえ! せめてボールギャグで拘束を!
この哀れな牝豚に御慈悲をぉぉぉぉ!」
――叫ぶ彼女の表情は、明らかに興奮していた。
早 /::l::l::、::、::ヽ::、:::\::::ヽヽ:::::ヽ 駄
.く /:::!::i:!:ヽ:ヽ::ヽ::ヽ、::\:::ヽ:::ヽヽ::::', 目
な. /:l::::!::ヽ!::ヽ:::ヽ:::\::ヽ、:ヽ::ヽ::!::i:::! だ
ん ハ:::l::、::ヽ::\:::\:::\:`ヽ、::ヽ::ヽ:::!:!:l
と /:::l:::!ヽ:ヽ::::::ヽ:::、:\::\:::\::!:ヽ:!::i::l:l こ
か !:/!::!::ヽ:ヽ{:::\:::ヽ::\::\::ヽ::ヽ!:::}!::l::li| い
し j/:::l:!:、:!::ト、:、:ヽ::`ヽ {、::\::: \:: i ::!::l:l ! つ
な l:ii:i:、:l::lテ=-、:ヽ、_、::\_,≧ェュ、_、\::::i::li::!::リ :
い !ハト:{:!i:トN{、ヒ_ラヘ、{ >、{ 'イ ヒ_ラ 》\::l::!:ト!!:l::l! :
と ヽ i、ヽ:ト{、ヾ ̄"´ l!\ `" ̄"´|::!:l::! j:ll:!
: !::i l u |:::/lj/l:!リ
: ヾト、:!u j!/ j|:::リ
ヾ! ヽ ‐ u /イ´lハ/
}ト.、 -、ー-- 、__ /' !:://
リl::l゛、 `二¨´ / |/:/
rー''"´ト!::i{\ / / !:/
/ ^ヽ ヾ! ヽ _,,、'´ / j/
注・朱里
妙に手馴れた十坂にボンテージファッションで拘束され(バイブは刺さなかった)、ボールギャグまでかまされて、恍惚とした表情で涅槃に旅立ったルッカの姿に、朱里は危機感を感じずに入られない。
主に任務中の危機管理とか。こんなヤツから指示受けて大丈夫なのかと小一時間。
「……妙に手早いな」
ルッカの拘束を終え、水を汲んで帰ってきた十坂に、紫杏が声をかけた。
十坂は朱里の指先に水をかけながら、疲れきった笑みで、
「――慣れてるからさ」
「……大変だな」
その表情から苦労の程を察してねぎらうも、十坂は首を左右に振った。
「いや、元はといえば、俺のせいだし……最初にやった時に口の中に出したら、箍が外れちゃったみたいでさ」
「……まぁ、何だ。
事情があるなら、君がカズの部屋に夜這いするくらいは、見逃してもいいぞ」
「……根本的解決になってない。カズが壊れるってば」
ねぎらいのつもりだったのだろうが、全く的を外れた紫杏の言葉に、十坂はジト目で突っ込んだ。
「誰がカズを抱けといったか! 二人きりで話すだけでも――」
「俺はカズと密室で二人きりになって、自分の欲望を抑えきる自信はないぞ」
「はぁ?」
「俺にとっては、最高に可愛い彼女だからな。多分押し倒さずにはいられないだろうし」
それは全くの不意打ちだった。
つまるところ彼の言葉は、『二人きりになったら襲ってしまうほどベタ惚れ』という意思表示で。
十坂に片恋中の紫杏にとっては嫉妬を掻き立てられる言葉であり、和那の羞恥心を直撃する、最大級の惚気だった。
「よかったじゃない……彼、貴方にベタ惚れみたいよ」
「あ、あうぅぅぅぅぅ……」
朱里の言葉に、和那は耳まで真っ赤になって縮こまる……180を超える長身の彼女がこうなるとやけに小さく、かわいらしく見えるから不思議である。
「そのぐらい耐えられないのか……?」
「耐えられるわけがないだろう。二人きりになったときのカズは、そりゃあもう愛らしいんだから♪
俺は元々猫派だったが、今なら断言できるぞ。
今の俺は猫より犬よりカズ派だ。あいつは猫より何倍も可愛い♪」
続いて吐き出された言葉は、紫杏なりの嫌味だったのだろうが……力の限り逆効果だった。
紫杏の米神がピクピク痙攣しているのにも気付かず、十坂は惚気爆発である。
「……あんなこと言ってるわよ。あんたの彼氏」
「お、おさむのあほぉぅ」
かなり余裕が出てきたらしい朱里にからかわれ、和那は真っ赤になって膝に顔を埋めた。
「耐えられないなら、一体いつスキンシップをとってるんだ、二人とも」
「え、そりゃあ…… 事 後 」
半ばやけくそ気味に質問する紫杏に対し、十坂は恥らうことなく躊躇うことなく言い切った。
紫杏と朱里が和那の親友という事で、安心しきっているのだろうが、ある意味尊敬に値する馬鹿である。
「事後って言っても、挿れっぱなしなんだけどな。その状態で首筋とかにキスマーク付けると、反応が可愛いんだよ〜♪」
「キスマーク?」
「ああ! カズは俺のモンだから、めい一杯マーキングしておかないとな! うなじとか鎖骨とか……まぁ、大概付けてる最中にお互い寝ちゃうんだけど」
「い、いれっぱなしでか」
「ああ……というか、一つのベッドに入ったら、いつも抜くのはいつも朝なんだよな」
「……」
紫杏の頭から、ぷちっと何かが切れる音がした事に、その場にいた誰も気付けなかった。
「『一杯チュッチュしてもらったもーん』、ね。成る程」
「…………!!!!」
「とりあえず、首筋にキスマークがついてたら、前日はお楽しみだったって事でいいのね?」
「うえええええ……朱里がいじめっ子やぁ……」
完全に熱が引き、いつも通りの顔色になった朱里は、ここぞとばかりに和那をからかい倒していた。羞恥心を抉る朱里の口撃に、和那は子供のようにマジ泣きするしか出来ない。
――これなんて羞恥プレイ?
「とりあえず、妊娠には気をつけなさいね」
「うう……コンドームつけとるから大丈夫やもん……」
「……ふと思ったんだけど、あれに合うサイズのコンドームなんてあるの?」
「ジャッジメント特注品……あそこの変態に頼んで……」
「……まあ、市販のコンドームが使えるはずないか……」
その頃の変態=ルッカ。
(放置プレイだなんて……!
くやしい……でも……感じちゃう! ビクビクッ)
何もしてないにもかかわらず絶頂したりして、中々の痴女っぷりを見せ付けてくれていた。
「ちなみに……これって、飲んだりしたらどうなってたわけ?」
一通り和那をからかい倒した朱里は、ふと脳裏に浮かんだ疑問を、そのまま十坂にぶつけてきた。とされた十坂は朱里に向かって振り返り、紫杏に背を向けるか形で顎に手を当てた。
「……カズの時はそりゃあもうビックリの乱れようだったなぁ」
「い、いちいちうちを引き合いにださんといてぇぇぇぇぇぇ」
これ以上の羞恥プレイには耐えられないとばかりに悲鳴を上げる和那であった。
「……俺の精液浴びた女ってルッカと和那だけだから、正直どうなるか想像がつかない」
「ルッカのときは……って、愚問ね」
「ああ……暴走して記憶がない。
気がついたら彼女が精液の海にアヘ顔で気を失ってたよ……」
「ああ、そのショックで……」
朱里が痛ましそうに視線を投げた先では、
(らめぇぇぇぇぇっ! 放置しゃれるのぉがよしゅぎてルッカとんに゛ゃう!!)
脳裏でみさくら語を展開しつつ、潮を吹いたりしていた。
素敵なまでに駄目人間である。
「まぁ、量にもよるけど……精液浴びた時の二人の反応から察するに、浴びる位置が体に近いほど、早く発情状態になっちゃうんじゃないかな」
ぴ く り っ
その一言を口にしたとき、紫杏の片が震えた事に、誰も気が付かなかった。
気が付けなかった。
「もしその状況になったら……?」
「んー……その時点で、もう俺の精液の中毒になってるだろうから……まぁ、俺が抱く人間が一人増えるんだろうなぁ……
増やしたくないけど」
ぐ っ !
その言葉を聴いたとき、紫杏が何かを決意したかのように拳を握り締めた事に、誰も気が付かなかった。
気が付けなかった。
「増やしたくないの?」
「今でさえカズがいやな顔するんだから、これ以上泣かせるのはゴメンだよ。
ああ、浜野は大丈
べ ち ゃ ッ !
夫――!?」
――会話の最中に地下室に響き渡った、不吉な不吉な濡れた音。
今さっき聞いたのと同じ、しかし明らかに先の音より大きな音に、その場にいた全員が硬直した。
うつむいていた和那も顔を上げ、皆でさびた機械が動くように、ぎぎぎぎぎぃっ、と音源に向かって首を動かし……そして見た。
床に広がる精液の海。
その真っ只中に、何故か顔面からダイブしてしまっている紫杏の姿を。
『し、しあーーーーーーーーーーーーーーーーーーーんっ!?』
声をはもらせた和那と十坂が、わたわたと倒れた紫杏に駆け寄る中、朱里は動かなかった。動けなかった。
そう、彼女は見てしまったのだ。
精液の海に向かって倒れこむ瞬間……紫杏が某嵐を呼ぶ幼稚園児の如き笑みを浮かべる姿を!
「し、紫杏! 大丈夫か紫杏!」
「ば、バランスを……崩してしまった……」
嘘だ。アレは絶対わざとだ。
彼女は、わざと精液の海の中に自分から突っ込んだのだ。
あの冷静沈着な紫杏をここまでトチ狂わせるとは……恋とは、実に恐ろしい不治の病である。
「か、カズ! ルッカの拘束解いて! バケツリレーで精液を洗い流せー!!!!」
「わ、わか――」
そうか。
そういうことか。
かちゃかちゃ……
「って、ちょっと紫杏さーーーーーーんっ!?
何でズボンのベルトを――」
「うふ、うふ、うふふふふふふふふふ」
「だ、駄目だー! もう完全に逝っちゃってるー!!!!」
(紫杏、あなたは……人の道を踏み外してでも、十坂と結ばれたかったのね)
あかりん、遠い遠い目で逝ってしまった己が主を眺め、ゆっくりと絶望した……紫杏が倒れこんだ時に飛び散った精液が、口の中に入ってしまった音に対する、拭いようのない絶望感が、胸を満たしていく。
「うわーん! 紫杏が、紫杏がどこぞの変態みたいになってしもうたー!」
「……誰が変態よ。誰が」
「アンタにきまっとるやろー!」
「……人が御主人様からの放置プレイを楽しんでいたところを邪魔しておいて、いう事がそれかー!」
和那と拘束から解き放たれたルッカが、闘志むき出しで火花を散らし。
「あむ……ぷちゅ……あぁ……大きい♪」
「ちょ! 紫杏……いきなりそれは……って、浜野まで何を……!」
「ふふふふふふふ」
「え、獲物を狙うハイエナの目だっ!!!!」
紫杏と十坂に朱里が混じって、ピンク色でサックスが聞こえそうな雰囲気を撒き散らし、
まぁなんてカオスな空間でしょう!
リフォームの匠もびっくりの劇的ビフォーアフターであった。
その日……彼女達はカレンダーの日付が変わるまで、地下室を出る事はなかった。