ずいぶん懐かしく感じる玄関、その扉を勢い良く開けた。
「ただいまー」
靴を脱いでいると、ドタドタと足音が聞こえて、玄関に影が現れる。
「おや、遅かったね」
母さんの姿、相変わらず元気そうで安心する。
「うん、電車を乗り過ごしちゃって」
大晦日、俺は球団寮から実家へと帰ってきた。
年の暮れぐらいは家族でゆっくりと過ごしたいからだ。
本当はもっと早く帰る予定だったが、ちょっと風邪で寝込んでしまったため
予定よりだいぶ遅れてしまった。
それはそれでいいこともあったんだけど。
「アンタがあんまり遅いから、真央ちゃん待ちくたびれちゃってるよ」
「へえ……………………え?! 真央ちゃんがいるの?!」
急いで靴を脱ぎ終えて、居間に入る。母さんの声が聞こえたが、無視。
そこには黒が似合う女の子が、炬燵でのんびりしていた。
パチリと目を開いて、一言。
「………………こんにちわ」
「あ、こんにちわ、真央ちゃん」
幸せそうに溶けてる真央ちゃん、礼儀正しくあいさつを交わす。
じっとこっちを見ている眼は、いつもどおりなようで少し違う。
微妙だけど不機嫌オーラが見えるような。
「ってそうじゃなくて!」
「?」
「いつのまにここに来たの? ついこの間向こうであったのに」
真央ちゃんは今でもヒーロー稼業を続けている。
俺の出場する球場付近で黒いヒーローを見かけることも多いのだとか。
おかげで野球場付近での犯罪率がガクッと減ったという噂だ。
今でもこまめに連絡を取っている。でも、基本的に神出鬼没な真央ちゃん。
この間いきなり寮の部屋に窓から侵入してきた時はびっくりした。
「…………2時間前」
「あ、ついさっきなんだ」
まあ、両親に紹介はすんでいるから、家にいてもおかしくはない。

「………………電車」
「あ、俺と一緒だね」
「の上に張り付いてきた」
「危ないって!」
「…………今のは、冗談」
(ありえそうだから怖い…………)
まあ、正義のヒーローだからそんなことしないだろうけど。
……しないよね?
「……………………乗り過ごしたの?」
「へ、俺? うん。ちょっとバタバタしてさ」
「…………………………残念」
「うん? ……………あ、もしかして、一緒の電車で来ようと思ってた?」
ピクリと体を震わせる、こういうところは相変わらずわかりやすい。
きっと電車で偶然出会うってのをやりたかったんだろう、不機嫌なのもそれが理由か。
………………でもどうやって俺の乗る予定の電車を知ったのかは謎だけど。
「…………違う」
「ハハハ…………」
ぷいっとすねてしまった真央ちゃんを、どう機嫌を取るか考えていたら、炬燵から何かが飛び出してきた。
白い子猫だ。子猫は何も言わずに俺の足の匂いを嗅いでいる。臭くないのだろうか。
「? スキヤキじゃないね? この猫」
真央ちゃんがいつも連れている猫ではない、真央ちゃんにも家があるはずだから
普段はそこにいるはずだし、色も大きさも違う。
「………シラタキ」
「ええ?!」
間違いなく真央ちゃんが名付けた子猫は、すりすりと俺の足にまとわりつく、と。
「おお、帰ってきたのか、息子よ」
父さんが顔を出した、っていうか息子ぐらい名前で呼べよといつも思う。
「真央ちゃんも久し振り、3か月ぶりくらいかな」
「へ?」
真央ちゃんを両親に紹介したのは、寮に入る直前、9か月ぐらい前だったはずだけど。
「………この前、子猫の親捜し、手伝ってもらった」
俺の不思議そうな顔を見て、真央ちゃんが答える。あれ?
「なんで俺に相談しなかったの?」
「………………忙しそうだったから」
そういえば、3か月前はシリーズ終了間際だ、確かにいろいろと忙しかった時期かもしれない。
「そうなんだ、まあ、いいことだよね」
意外と社交性があることにびっくり、できれば友人を作ることも考えてほしいけど。
ということはこの子猫はそのとき飼い主が見つからなかったのだろう。
そしてこのままうちで育てているというわけか。まあ俺がいなくなって両親も寂しいのかも。
「ニャオン」
エサでも欲しいのだろうか、シラタキは俺の足元から離れようとしない。
ふと、スキヤキの子供だからシラタキなのだろうか。と思った。
「はじめは無愛想な子だと思ったけど、なかなかわかりやすい子じゃないか
あれだけ必死に猫のために頑張るのもポイントが高い」
「…………あの時は、ありがとうございました」
礼儀正しくお礼を言う真央ちゃん、考えてみれば俺以外の人と喋るのを見るのって久しぶりだな。
「いやいや、いいって」
仲がよさそうに話す、すごくいいことだけど。なんだかちょっと寂しいような。わがままだな俺。
「コホン、それで、二人はいつ結婚するんだ?」
「は? 結婚?!」
何この急展開。さらに突然、後ろから母さんの声が追い打ちをかけてきた。
「そうよ、あたしも早く孫が見たいわぁ
真央ちゃん可愛いから、きっといい子が生まれると思うのよ」
「うむ、やはり、できるだけ早い方がいいだろうな
安心しろ、女性は16歳から男は18歳から結婚できる」
夫婦二人のナイスコンビネーション。
まだ実年齢5歳にも満たないのは言わない方がいいのだろうか。
って、ちっがーう! そうじゃなくて! 
「話が急すぎるって!」
「なんなの? あんたまさか、さんざんもてあそんだあげく
ぽいっと捨てちゃうきなの? 母さん、あんたをそんな子に育てた気はないよ!」
「そんなことするわけないだろ! 俺は真央ちゃんのこと真剣に愛してるんだから!」
自爆したと気づいたのは、大声で叫んだ後だった。
「……………ほう」
「……………へえ」
「……………ぽっ」
6つの眼が俺を見据える、っていうか真央ちゃん今口で「ぽっ」って言ったよね。
なにかの本の影響を受けたんだろうか。
「うむ、それじゃあデートに行ってくるといい」
「そうよ、楽しんできなさい」
「へ?」
あれ? 久しぶりに家に帰った息子をいたわろうという気持ちはないの?
「なんだ? 不満なのか?」
「ダメよ、もっと真央ちゃんにサービスしてあげないと」
「え、えっと?」
なんでこんなに真央ちゃんの味方なんだ? この両親は。
「聞けばクリスマス前日から寝込んで聖夜にデートできなかったそうじゃないか」
「そ、そうだけど……」
結局真央ちゃんが看病してくれたけど、なかなか熱が下がらなかったんだよな。
真央ちゃんはじっとこっちを見ている、今は何を考えているかわかりづらい。
「うむ、これから二人でアッハンウッフンな時間を楽しみなさい」
「大丈夫、二人の分のおせちは取っておくから、朝帰りでかまわないよ」
「若いってのはいいことだな、息子よ」
一応未成年にそう言うことを勧める親ってどうよ?
「………………行こう」
「なんでノリノリなの? 真央ちゃん」
炬燵からすくっと立ち上がると、近づいてくる。なんだか機嫌も治ったみたいだ。
「うむ、行ってくるといい」
「ちゃんとエスコートしてあげなさいよ」
「わ、わああああああああああああ」
ずるずると引きずられて、俺たちは街へと飛び出した。



「はあ……………」
「?」
そのまま町へと繰り出して、今は寒い風に身をさらしている。
大晦日でも、いや、だからこそか? 結構人は多い。
「……………」
「あ」
真央ちゃんがじっとこっちを見つめてくる、まずい、久しぶりのデートなんだから
ちゃんとエスコートしないと。いや、母さんに言われたからじゃないよ?
「と、とりあえず真央ちゃん行きたいところある?」
(コク)
即答して、バッグから何かの紙切れを取り出す。
じっと見つめて何かを確認した後。
「……こっち」
「あ、待ってよ」
スタスタと歩き始めた、慌てて追う。
基本的に真央ちゃんが選ぶデート先ってろくなことが起きないけど。
今日は大みそかだし大丈夫だろうと、根拠もなしに思った。


間違いだった、人間は学習しない生き物だと実感する。
「ま、まさかここに入るの?」
(コク)
首を縦に振られる、間違いであってほしかったのに。
繁華街の裏、薄汚れている空間。
子供はお断り! な雰囲気がただよう場所。
「……………うーん」
顔をあげて、看板を見る。そこには大きく。
『大人のおもちゃ専門店 田中屋』
と書かれていた、眼を閉じて深呼吸。
若者らしいデート場所を脳裏に思い浮かべて確認した後
もう一度だけ見上げてみる。
『大人のおもちゃ専門店 田中屋 年中無休』
年中無休なんだ。

「…………えっと、なんでこんなところ、ってちょっと?!」
手を掴んで、ずるずると真央ちゃんは俺を店の隣の通路に連れて行く。
いかにも路地裏って雰囲気の、一昔前ならカツアゲがあっていそうな場所だ。
「……これ」
紙切れを手渡してくる、小さな丸い文字がかわいらしい。
「…………口に出して、読んで」
「?」
さっぱりわからないが、とりあえず言う通りにすることにした。
「くくく、どうしたんだ? そんなに物欲しそうな顔をして」
なんだ? この文章は。
「…………そ、そんなことありません」
真央ちゃんがあらかじめ決まっていたようなセリフを吐く、無感情でそんなセリフ吐かれても。
「これが何かわかるか? 今からお前の物欲しそうなあそこに、これをぶち込む」
「…………そんな、ひどい」
だから感情をこめてくれると、こっちものってくるんだけど。っていうかこの内容はなんだんだ?
こっちのことを気にせず、バッグをごそごそしたかと思うと何かを取り出す真央ちゃん。
「そしてそのまま買い物に行ってもらおうか、そうだな、お前をさらに調教するための道具を…………
………………って、真央ちゃん! それ何?!」
「?」
真央ちゃんがバッグから取り出したのは、今まで本ぐらいでしか見たことがないような
大人のおもちゃだった。それもかなり太い、アメリカンな香りがする。
こっちに向けて差し出しているのは、持てということなのだろうか?
「まさか、それを使うつもり?」
(コク)
「コク、じゃないって! そんなの真央ちゃんが壊れちゃう、っていうかそもそも何でこんなことを?」
駄目だ、突っ込みどころが多すぎる。
「…………本に書いてたから」
「本? いったいどんな本?」
「…………タイトルは『幸せな二人』」
「いやいや! 絶対にそれ何かが捻じ曲がってるから、ノーマルな幸せじゃないから」
タイトルに惹かれたんだろうな、まあ気持ちはわからなくもない。選んだ本はヤバい匂いがするけど。
「………………調教、しない?」
「うっ…………しないって!」
若干心惹かれたものの、健全なお付き合いをしたい俺は強く否定する。
ちょ、ちょっとだけ未練があるような気もするけど、いやいや。でも。
「………………」
じっとこちらを見つめる真央ちゃん、よこしまなことを考えていたのを見透かされているようで
いたたまれなくなる。
「と、とりあえず、真央ちゃんもこういうお店に興味あるってことだよね
どうせなら、ちょっと覗いて行こうよ」
「……………使う?」
「使わないって」
差し出された大人のおもちゃを押し戻す。
真央ちゃんはなんだか未練がありそうに、それをバッグにしまった。


入り口で躊躇した俺と違い、さっさと真央ちゃんは店内に入っていく。
真央ちゃんを一人にするのはものすごく危険な感じがして俺も慌てて店へと入る。
「いらっしゃいませ〜」
カウンターから声が聞こえる、若い女性が店番していることに少しびっくり。
「へぇ……意外と奇麗な感じの店だな」
きょろきょろと見回しながらこっそりとつぶやく。
外見から想像していたよりも、店は広かった。明るい照明がさわやかに店内を照らす。
棚に並んでいる商品こそあれだが、イメージとはずいぶん違う印象を受けた。
もっと雑多な印象があったんだけど。
「ん?」
ってあれ? 真央ちゃんはどこだ? 辺りを見回してもその姿はない。いつの間に消えたのだろうか。
とりあえず店の奥へといってみる、と、しゃがんでいる小さな姿を発見
棚の影に隠れて見えなかったのか。
「真央ちゃん、店の中で座り込んだら………ってあれ?」
真央ちゃんは、棚の下のほうにある商品をじっと眺めていた。
心なしか眼がきらきらしている、ような気がする。
「?」
俺も後ろから商品を除く、そこには。
「ねこねこ変身セット?」
やたらと可愛い名前の商品だな、黒いビニール袋なので中身はよくわからないが。
結構大きい袋からみて、中にいろいろ入っているのだろう。
しかし、なんだか手作りっぽい雰囲気の商品だな。値段が妙に高い。相場は知らないけど。
「……………」
何も言わないけど、もしかしてほしいのだろうか。
……考えてみたら、クリスマスプレゼントも渡せてないんだよな。
「それ、買おうか?」
(ピク)
小さく身じろぎをして、こっちを見る真央ちゃん。
まあ、クリスマスプレゼントは別に買ってあるんだけど、埋め合わせもしないといけないし。
…………埋め合わせがアダルトグッズっていうのは非常にまずいような気もするが。 
「………………いいの?」
「うん、これくらいなら」
良くわからない商品名だけど、悪いものが入っているわけではないだろう。
商品を手に取り、レジへと向かう。真央ちゃんは後ろをてくてくとついてきた。


「ありがとうございました〜」
買い物を済ませて、店を出る、真央ちゃんはかなり上機嫌なようだ。
笑顔を浮かべているわけではないが、笑っているような雰囲気だ。
「さて、これからどうしようか」
時刻はまだ、三時を回ったところというところか、食事をとるといった時間ではない
「…………」
ふと、真央ちゃんがギュッと手を握ってきた。無表情は変わらないが、照れているな。
その手を引いて、進む。暖かな手が気持ちいい。
「とりあえず、町をぶらぶらしてみようか、久しぶりのデートだし」
(コク)
当てもなくぶらつくというのも、真央ちゃんと一緒なら楽しいだろう。
まあ、今夜は帰りが遅くなってもいいみたいだし。
…………ところでこの商品、今夜早速使うことになるのだろうか。
(ちょっと楽しみかも…………)
期待に胸ふくらませながら、デートを楽しむことにした。



さて時は流れ、夜の十時。
「……………」
今はホテルの一室、食事を食べてしばらくたったあと。まあ、デートの定番というわけだ。
真央ちゃんは少しもじもじとしているように見える。何回経験してもなれないものなのかもしれない。
「さて………じゃあ、一緒にシャワー浴びようか?」
自分の顔がにやけているのがわかる。まあ、誰でもこうなるよな。
「!………………」
(コク)
少し反応が遅れて、うなずく真央ちゃん。
いつものこととはいえ、少しだけ、本当に少しだけだけど恥ずかしそうなのがいい感じ。
ぱぱっと脱いで、先にシャワールームに踏み込んだ、脱がせる楽しみはまた今度にしよう。
………………………………
「………………………」
シャワールーム、先に浴びていた俺に遅れて入ってくる真央ちゃん。
一糸纏わぬ身体、どこか野生の動物を思わせるしまった肉体。
でも、俺はこの身体がとても柔らかくて、女の子らしいのをよく知っている。
シャワールームは狭い、自然と俺にぴったりとくっつく形になる。
ざあざあと暖かい水が俺たちに降り注いでいる。
少しだけ体をずらして、真央ちゃんにもあたるようにした。
「…………?」
真央ちゃんがすっと手を伸ばした。
「!!!!! ちょ、ちょっと?!」
すでに少しだけ大きくなりかけていたそこに、小さくて柔らかい手が。
「……………いつもの、仕返し」
「ええ?!」
確かに、いつも一緒にシャワーを浴びるときは真央ちゃんにいろいろいたずらをするけど。
小さな手、適度な強さで、優しくもみしだいてくる。
「………………固くなってきた」
かすかにうれしそうな声で、大きくなったそれを、上下に擦り始めた。
「うっ!」
思わず声が出てしまう、単調な動きだけどかなり気持ちいい。
………しかし、真央ちゃんは忘れている。俺がただ責められているままじゃないってことを。
「んっ!」
こっちが手を伸ばしてお尻を撫でまわすと、可愛らしく反応する。
肉付きは薄いが、柔らかな感触が幸せを感じさせてくれた。
「…………ずるい」
「え? なにが?」
不満げな顔でこっちを見る、気にせずうなじをなめると、びくんと体を震わせた。
「…………」
ぷいっ、っと顔をそむける。いつもシャワールームでは俺ばかりいたずらするから
真央ちゃんも一方的に攻めてみたいのかもしれない。
「! んむっ!」
唇を奪う、身体にかかる温かいお湯が口の端から少し入った、それを気にせずに優しく抱きしめる。
舌をからめあい、唾液を交換し、歯の辺りをつんつんとつつく。
くちゅくちゅという音は、シャワーの水音で消えていった。
………しばらくして、口を離して語りかける。
「とりあえず、身体を洗おうよ、続きはベッドで」
「……………」
(コク)
うなずいた真央ちゃんの顔が赤いのは、お湯に当たったからなのか、それと……


「……………」
ゆっくり体を洗ったあと、二人でベッドに座る。結局シャワー中にさんざんいじったのは秘密だ。
真央ちゃんは後ろから俺を抱きしめていた、自己主張の少ないふくらみが背中に当たっている。
……昔に比べたら少しだけ大きくなったような気もする。気がするだけかもしれない。
「……………あ」
ぺたぺたと俺の身体を触っていたが、突然暖かくて柔らかい身体が逃げていく。
「ん?」
ベッドのそばにある荷物をごそごそ、小さなお尻がフリフリと揺れているのが見える。
襲いかかりたくなるが我慢。……そういえば昼に買い物をしたっけ。
「…………これ」
「へ?」
だが、真央ちゃんが取り出したのはアメリカンな香りのするアレだった。
………これは後で聞いた話だけど、どっかの野球大会の景品だとか、嘘っぽいけど。
「……もしかして、真央ちゃん俺のに満足してないの?」
明らかに俺のよりサイズが上なそれをみると、自信がなくなる。
「……………何が?」
上下にぶんぶんと動かしながら、こっちを見る。……ん?
「あのさ、真央ちゃん、もしかしてそれをどう使うか知らない?」
(コク)
「あ、そうなんだ? あの本には書いてなかったの?」
「…………途中までしか、読んでない」
真央ちゃんが目をそらす、読んでないというか、恥ずかしくて読めなかったのかもしれない。
「と、とりあえずそれは使わないでおこうよ、今日買ったのがあるし」
使ってはまっちゃったりしたらこっちの立つ瀬がない。
「…………残念」
本当に残念そうな顔で、後ろを向いてまた荷物をごそごそとする、揺れる小さな白桃。
ああ、ダメだ、早く襲いかかりたい。
俺の葛藤を知らずに、振り返ると昼間買った袋を持って四つん這いで近寄ってきた。
強引にびりびりと袋を破いて中身を取り出す真央ちゃん、最初に出てきたのは
……………猫耳?
「……………???」
不思議そうな顔でそれを見る真央ちゃん、もう俺には中身がどんなものか想像付いたけど。
「それは頭につけるんだよ、ちょっと貸して」
素直に渡してくるそれを、真央ちゃんの頭につける。
計ったようにジャストフィット。
「こ、これは……………」
「?」
不思議そうにこっちを見る顔、その可愛らしさが普段の三倍を越えた。
いや普段の顔も臨海点突破だけど、こっちはその、なんていうか宇宙の果てまで飛んで行ったみたいな。
普段から猫っぽい猫っぽいとは思ってたが、すらっとした細い身体が耳をつけるだけでさらに猫っぽい。
「うん、とても可愛いよ」
「…………………ぽっ」
また口で「ぽっ」と言ってる、何に影響されたのかが気になるな。
「ん? まだ何か入ってるみたいだね」
ビニール袋からぽろぽろとベッドにいろいろとこぼれおちた。
何かの小瓶、尻尾、肉球グローブ、肉球シューズ、首輪なんてのも入っている。
「どうせなら全部つけてみようか?」
(コク)
迷いなくうなずく真央ちゃん。俺の眼が怪しく光るのがわかった。


…………装着完了。
「おおおおおおおおおおおお!!!!!!」
「…………どうしたの?」
いまや真央ちゃんはどこからどう見ても猫、猫、猫、猫猫猫猫猫猫。
猫耳の愛らしさと、肉球グローブ&シューズのふかふかさ。
何気に猫耳はぴくぴくと動いている、電動式らしい。
首輪からは背徳的な匂いがする、自分だけのものにしてしまったような。
もう我慢デキナイ! 今すぐ押し倒して…………
「…………眼が怖い」
少し引いている真央ちゃん、ベッドの端に逃げていく。
「ソ、ソンナコトナイデスヨ」
荒い息でじりじりと近づいて行く、と、ベッドの上に何かが残っているのに気づいた。
白い尻尾と、小瓶。
「あ、あれ? 尻尾つけてなかったんだ」
「……………つけ方がわからなかった」
「そう…………これって!」
白い尻尾には、細めのピンクの棒がくっついていた。これってつまりお尻に…………
「じゃあ、俺が付けてあげるよ、四つん這いになってこっち向いて」
「………………」
(コク)
少し躊躇したようだったが、うなずいてお尻を上げる。
四つん這いになった真央ちゃんのお尻をさわさわと撫でる、ちょっとつねってみた。
「!」
横に転がって逃げられた、痛かったらしい。
「ごめん、ごめん、今度はちゃんとするから」
「……………」
再び四つん這いになってお尻を上げる、興奮してきたのか、真央ちゃんの上気した顔が見えた。
「あ、そうだ」
ベッドにあった瓶を手にとって、蓋をあける。中には予想通りぬめっとした液体が入っていた。
「……………」
恥ずかしそうに視線を逸らしている真央ちゃん、これから何をされるか理解したのかもしれない。
「まずは慣らしておかないとね」
とりあえず指にローションをつけて、ゆっくりと菊門に差し込んだ。
「っ!」
真央ちゃんの身体が小さく震える、これまでも何度か試したことがあってかあまり抵抗はなかった。
それでも中はかなりきつい、指を上下に動かすと可愛らしい反応が返ってくる。
腕の力が抜けたのか、真央ちゃんは前のめりになって肉球グローブをベッドに押し付けていた。
「…………あっ……………」
しばらく弄っていると、締められていた指が少し楽になってきた。
「そろそろいいかな?」
「……………んっ!」
引き抜くと同時に、ひときわ大きい声をあげる真央ちゃん、
ひくひく可愛らしく動くそこに、今度はぬるぬるの棒を突っ込んでいく。
「……………うぁ…………あぁ…………」
逃げようとする身体を押さえて、ゆっくりと押しこむ。
半分くらい入ったところで、声。
「………………もう、駄目………」
こっちを向いて、真央ちゃんが眼に涙をにじませてうめく。だけど。
「ふーん、まだ余裕ありそうだけどなぁ。それに」
「ひっ!」
足の付け根を撫でる、そこには秘所から溢れだした暖かな液体が垂れ落ちていた。
太ももまで伝う一筋の線が、光を反射している。それを舌で舐めとり、太ももにキスマークを付けていく。
膨れ上がった陰核、その周りを手で刺激してみる、と、ベッドに顔を押し付けて左右に頭を振る真央ちゃん。
「気持ちいいんでしょ? なら大丈夫だよ」
「………違………うぁっ!」
最後にずずっと押し込んで、真央ちゃんのお尻に尻尾が生えた。
「おぉー、もう完全に猫だね」
尻尾を左右に動かしてみる、それにあわせてお尻も動く。
「あぁぁぁ………………」
身体がぴくぴくと痙攣していた、こっちに向けられた半泣き顔をみるとさらにいじめたくなる。
「ん? スイッチがある」
「!」
ひきつる顔、容赦なくスイッチオン。ゆっくりと動き始めた。
「うあぁぁぁぁぁぁぁぁ…………」
「あ、本物のしっぽみたいに動いてるな」
くねくねとうごくしっぽ、高かっただけにいい仕事をする商品だ。
手を放して真央ちゃんを見る。カメラに取っておきたいくらい可愛らしい。
「ぁ………ぁぅ………ぁぁぁ……」
小さく小さくあえぐ声、揺れるお尻を見ていると早くこっちも気持ち良くなりたくなる。
「……と………………て」
力ない哀願の声。
「ん?」
「………ぅっ……取って……んっ」
どうやらもう抜いてほしいらしい、というか少しずつ押し戻されている。
「だ〜め!」
「!」
意地悪くそう告げると、根元まで再び押し込む。
「!!!……んっ!……あっ!……………あぅっ!」
必死に声を押し殺そうとしているみたいだけど、漏れた甲高い声が子猫のよう。
「しっぽとったら猫じゃなくなるからね、今日は最後までこのままでいこう」
「うぁっ………………いじわる…………」
ああ、なんだか「いじわる」なんて涙目で言われると……もう我慢する必要はないよね?
「真央ちゃん!」
「…………ぅあ…………」
真央ちゃんを仰向けに転がす、正面切って見つめあう。
真央ちゃんの目は期待で潤んでいるように見えた、倒れこむように唇をぶつける。
……ちょっと勢いつけすぎて痛かった。身体を重ねたまま、手を動かし始める。
胸を見ると仰向けなせいか、ただでさえ小さな膨らみが悲しいことになっている。
それでも手で触ると柔らかくて、わずかな膨らみを感じさせてくれた。心臓の鼓動が伝わる。
ピンク色の突起は固くなっていた。さっきこっそり自分でいじっていたのかもしれない。
軽く胸をもみながら、脇腹の辺りを手で擦る、もう真央ちゃんのことはだいぶ知っているつもりだ。
胸にむしゃぶりつきたくなって、吸いついて、舌の上で転がし、乳首を軽く噛んだ。
「はぁっ!………………んっ、んんぅ、ひゃっ!」
秘所に手を伸ばすと、泉がわき出すように溢れた愛液の感触。かすかな振動も手に伝わる。
これならもう十分だろう、素早く準備をして熱いカタマリをあてがう。
「ん………………………………」
絡み合う視線、俺は躊躇することなく突き出した。
「はっ!………………………………はぁ、あんっ!」
突き出したモノに、震動が伝わってくる、いつもより圧迫感が強い気がした。
かなり窮屈なそこが押し戻そうとするのを、跳ね返す。
「うぁ!……………ぁんっ……………あぁぁ!」
腰を前後に動かすと、断続的な鳴き声が聞こえてきた。
耳触りのいい声、もっと聞きたくなって腰をさらに動かしていく。
「……………あぁっ、はんっ、うぅんっ、んっ!」
揺れる猫耳、グローブは片方脱げかけている、首輪を見ると支配しているのだと錯覚してしまう。
下半身に感覚が集中して、耳に何も聞こえないような気もしてきた。
「ああっっ! うぁぁあ! あっああ! あぁぅ!」
いや、真央ちゃんの声だけは耳に届いている、小さい鳴き声。
いつもは無口だけど、こういうときに出す素直な声が愛しい。
腰に手を当てて、さらに勢い良く突きだしていく。
「ああぅぅん、あっ!! はぁっん! んんんぁあ!」
視界に猫耳が入る、どうせなら猫らしく蹂躙しよう。そう思った。
「……………はぁ!」
いったん引き抜く、不思議そうな顔の真央ちゃんを尻目に、身体をひっくり返した。
再びうつぶせになった真央ちゃんの腰を掴んで、貫く。
「あああっ!…………はっ、ああっ、んっ、んんんっ!……………」
濡れそぼった秘所が再び出迎えてくれる。達しそうになるのをこらえて
腰をひたすらに動かす、突き出すタイミングを変えながら、徹底的に。
「あうっ! やっ! やぁ! あああぁん!」
ふと、揺れる尻尾に気づいて、強く押しこんでみた。
「やあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
絶叫、痙攣する身体。達したのかもしれないが、俺は動きを止めない。
「………………………はぁ、うぁ………」
他の音が不意に復活する、肉のぶつかり合う音と水音、自分の吐く大きな荒い息。
軋むベッド、尻尾から聞こえる震動音、汗が頬を伝っていくのがわかる。
「………ぁっ、んっ………………あぁぅ」
もう真央ちゃんのあげる鳴き声からは、力が感じられなかった。
時折痙攣する真央ちゃん、もう限界を超えているだろうということはわかる。
でも止まらない、欲望を吐き出すまで止まる気もない。
「………あぁ!………………あぅっ」
今度は下半身の感覚が消えてきた、最後を感じてがむしゃらに突き出す。
「………はぁぁ! ああああぁぁぁっ! んぁぁぁっ!」
突然、真央ちゃんの声に力が戻った。
それを機に、押しつぶすように捩りこんで欲望を解放した。
「あああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
長い、長い、鳴き声の後。静寂。
「うぁ………………………………ぁぁぁ………………」
引き抜いて、二人ベッドに横たわる、真央ちゃんの顔をこっちに向けると、涙と涎と汗で凄いことになっていた。
顔を拭った後、とりあえず尻尾をお尻から引き抜いてあげる。
「!」
身を震わせる真央ちゃん、ついでに猫耳と首輪もはずす。肉球セットはことの最中に脱げていたようだった。
後でちゃんと手入れしておこうとは思う、でも。
「………………………」
「うん、やっぱり何もつけていない真央ちゃんも可愛いね」
「!」
猫耳つけている真央ちゃんも可愛いけど、何もなくても十分だ。
優しく頭を撫でる、嬉しそうに目を細めて俺にくっついてくる。
「………………………」
見つめあう、抱きしめあう、ぬくもりが嬉しい。そして。
「……………………調教、された」
そんなことを口に出した真央ちゃんの口を、再びふさいだ。



「いや、しかしうちの親にも困ったね」
今は家に帰ってきて、炬燵の中でのんびり中、かなり眠い。
二人はどこかに出かけたらしい、まあ気にすることはないか。
「……………いい人達」
「そうだけどね」
まあ、いい両親だとは思う。思うけど、けどなぁ。
「………………」
じっとこっちを見つめる真央ちゃん、照れくさい。
「どうしたの?」
「…………なんでもない」
そっぽを向かれた、真央ちゃんの足を軽くけってみる。
(ピクン!)
「………………………………」
見つめあう二人。
(ドタ、バタ、ドタ、バタ)
ふざけあって、もつれ合う。そこへ。
「おおい、帰ったぞ」
ドアの開く音、父さんの声。居間の扉が開かれる。沈黙。
「すまん、もう少し出かけてくる」
パタン、と閉まる音。
「ええっ! ちょっと、誤解だって!」
慌てて制止しようとするも、もう父さんの姿はない。
「……………………………」
「あ! 今真央ちゃん笑った!」
「…………………………………………………………気のせい」
炬燵に再び潜りこむ。そのまま目をつぶって、寝息を立て始めた。
………………絶対に、狸寝入りだろうけど。
「相変わらず行動が突飛だな…………」
まだ真央ちゃんのことがよくわからないことがある、だから俺はもっと良く知らないといけない気がする。
……これから一生をかけて、ゆっくり知って行こう、そう思った。

後日、どうやって戸籍を入手したのか、結婚届けをもって真央ちゃんが寮に現れたことは
………………また別の話だ。

管理人/副管理人のみ編集できます