吐息が白く曇るのが見えるほど寒い元日の朝。俺は駅前でゆらりを待っていた。
朝、というよりは曙というべきだろう。まだ日が出ていないので夜に見えるが、時間だけ見れば朝と言って差し支えない。
せっかくだから二人で初日の出を見よう、と俺が提案したのが始まり。
 初日の出が良く見える海に、観に行こうということで駅で待っているのだ。
「おや。先に来ていたんですね」
「うわっ! いきなり後ろからくるな! 恐いじゃないか」
 後ろから幽霊のように現れた。幽霊がこんな現れ方をするとは思わないが、これだけ暗い中、急に人の気配がすると恐怖してしまう。
「人を幽霊扱いしないでください」
「モノローグを勝手に読むんじゃない。お前は読心術でも持っているのか?」
「読心術は持ちあわせておりませんが読唇術なら持ちあわせております」
「文章じゃないとわからないネタをやるなっ!」
「実を言うと、午前二時からフミキリに望遠鏡を担いで待っておりました」
「何をする気だ……それだと俺が大袈裟な荷物をしょって行かなきゃいけないだろ」
「冗談です。真に受けないでください」
「いや、お前なら実際にやりそうだ」
「……それで、今日は何をするつもりですか?」
「お? やっぱり気になる?」
 話は変わるが、こういうことに関してはゆらりは案外積極的だ。一度やったのだが、今回もやることにした。
俺はゆらりにあるモノを渡した。
「これ。今日はこれをつけてくれないかな」
「……これはまた大袈裟なものを持ってきましたね」
 俺が取り出したそいつは、紫に近いピンク色の、端的にいってしまえばバイブだ。
しかもこいつはかなりの優れモノで、前後の穴と、クリトリスの三つ全てを同時に刺激できるという素晴らしい性能である。
当然ながら、それなりの大きさがあるため前とは違って歩くのには不便かもしれない。
「まったく……前のローターといい、どこでこんなモノを買っているんですか?」
「それは秘密だ」

 誰かが来るとまずいので、俺達は物陰に身を隠した。
「ここに連れてきたということは、あなたの目の前で着けろと」
「うん。それとも、俺に着けてほしいか?」
「いえ。これくらい一人で着けます」
 そう言ってゆらりはぱんつを下げだした。暗いせいでぱんつの柄までは確認できない。しまったな、と思った。こういう所はちゃんと考えておくべきだった。
だが、多少暗くとも彼女が何をしているのかはだいたい分かる。ぱんつを膝まで下げ、バイブを装着しようとしている。
 こういうときはなぜ目が冴えるのだろうか。
「ゆらり、それ前後逆だよ」
「えっ!」
「ほら、やっぱり俺が着けてあげるよ」
 俺はゆらりの足元へしゃがみこんだ。目が暗さに慣れてきて、ぱんつの柄もだいたい分かるようになった。
「は、恥ずかしいのでいいです」
「いやいや、いいからいいから」
 俺はゆらりの手を掴み、バイブの向きを正す。そして、ゆっくりと挿していく。
「うっ……ん……」
「ほら、ゆらり。力抜いて」
「こ、これは……ちょっと……」
 なかなか入らない。半分くらい入れたところで、締め付けが強くなってきたらしい。さらに力を込めて押し込んだ。
「―――っ!」
 ゆらりがビクンと反応した。ちょっと強かったか? しかし、どうにか全部入れることができた。
「……ふぅ、やっと着け終わったみたいです」
 下ろしていたぱんつを上げ始める。その仕草に少し見とれていた。彼女はどこか恥ずかしそうでもあったけれど。
「どうかな? ゆらり。そいつの感触は」
「……そうですね。少し、違和感がありますが、大した問題では……」
 ゆらりはいつもの憮然とした表情でそういった。そこで、俺はバイブのスイッチを入れた。
「ひゃあっ!」
 ゆらりは色気のある声を出す。足がわずかに震えだし、彼女は俺にしがみついた。
「もう一度聞くよ。そいつの感触はどう?」
「そ、その……ちょっと、変な気分に……」
「まあ、弱だしこんなもんか。そろそろ始発が来るし、ホームへ行こう」
「え? も、もしかしてこのままにしておくのですか?」
「何を言ってるんだ? 当たり前じゃないか」
「あの、先程から私の足の震えが止まらないのですが」
「じゃあ、俺にしがみつけばいいよ。しっかり支えてやるから」
 途端、ゆらりは俺の腕を掴んだ。そこから、おぼつかない足で俺とホームへ向かった。
「……せめて、人前ではスイッチを切って頂けないでしょうか」
「いいよ。ただ、俺とふたりきりの時は強くさせてもらうから」
 というわけで、スイッチを一段階強くした。
 たぶん、ゆらりはホームに人が一人くらいいると思ったのだろう。
運がいいのか悪いのか、ホームには俺達以外には誰もいなかった。
「いやあ、残念だったねゆらり。誰もいなくて」
 俺はニヤニヤとゆらりを見つめた。ゆらりはムッとして睨み返してくる。だけど、すぐに小動物のような目に戻った。
「あ、ほら。もう電車が来ますよ」
「うん……そうだな」
 ちょっとしょんぼりとした。まあ、流石に初日の出を見に行くために何人かいるだろうから……
……と思っていたら、電車内はガラガラで。

「まさか電車内にさえ誰もいないとは。この川田由良里、一生の不覚です」
「別にいいじゃないか。おかげでこんな可愛いゆらりを見ることができたんだから」
 ゆらりの声の調子はいつものように冷静なものだったが、体の方は正直らしい。
身体をむずむずとさせながら、俺にぎゅっと捕まっている。顔も随分赤くなっている。
「いつもの調子が出ません。小波君が変態なせいですよ」
「ゆらりも相当だけどな。いま、すごくとろんとした目をしたぞ」
「二度とそんなことが言えないようジッパーでも着けてあげましょうか?」
「ジッパーはお断りだ。せめて手で塞いでくれないと」
「ならこちらで」
 突然、俺の唇に生暖かいものが当たった。目の前には、ゆらりの顔。
事態を理解する頃には既にその行為は終わっていた。
「これの長所は、その憎まれ口をいつでも閉じられることですが、私の方も口を塞がれてしまうのが短所です」
「……ぷっ。あは、あははははは」
 どうしてか、思わず噴きだしてしまう。可笑しくて可愛くて、そんなゆらりが愛おしい。
「……笑わないでください。言った矢先から後悔しているんです」
「もう、白々しいなぁ。んじゃ、お返し」
 同じことを返してやった。今度はさっきより長く、長く。ゆらりはなんとなく恥ずかしいという目で俺を見つめた。なので、俺も見つめ返す。
だんだん気恥ずかしくなってきたが、それでも彼女の目を凝視する。すると、彼女は目を逸らした。
「っくはぁ……目を逸らしちゃだめじゃないか、ゆらり」
「だって、小波君が……」
「そうだな、ゆらりには『おしおき』しなきゃあいけないな」
 バイブのスイッチをもう一段階強くすると、さらに高い音を立てて激しく振動し始める。ゆらりは前のめりになり、俺の胸に顔をうずめた。
「ひっ……ぁ……ぁぁぁぁ……」
 僅かに聞こえるくらいの小さな、艶めかしい声を出した。俺の手を彼女の太腿部へとするりと移す。
そこから、さらに内へ内へと手を伸ばすと、ぬるりとした何かが俺の手に付着した。そいつをゆらりに見せつける。
「見てよ。ゆらりのココ、もうこんなに濡れてる。やっぱり、ゆらりはいやらしい子だな」
「ぁ……あの……はぁっ……私―――っっ!」
 ゆらりのぱんつの上から、バイブを抑えつける。その激しい振動が俺の指先にも伝わってきた。
「こ、小波君……私、もう、い、イっていまいそうです……」
 ゆらりの呼吸が激しくなっていく。このまま果てさせてもいいと思えたが、しかし敢えて意地悪をする。
「だーめ。まだイかせないよ」
 俺はバイブのスイッチを切った。それに倣い、バイブの音もピタリと止んだ。
「はぁっ……はぁっ、酷いです。鬼畜です。小波くんは鬼か悪魔ですか」
「鬼でも悪魔でもないが、人間であることは確かだ」
「そうでした。小波くんは筋金入りの変態だということをすっかり忘れていました」
「せめて変態という名の紳士と言ってくれ」
「それはあのクマの専売特許なので駄目です。せめて変態という名の変態にしておきましょう」
「完全な変態じゃないか!」
「小波君から変態さを引いたら残るのは野球だけじゃないですか」
「俺って変態と野球だけで構成されてるの!?」
「ええ。でも、野球をしていなくても小波くんは大好きですよ」
「ゆらり……こんな変態に応えてくれるゆらりも大好きだ」
「……。もうすぐ着きますよ。降りる準備をしましょう」

紆余曲折あったけれど、俺達は無事に目的地へ着いた。季節外れの海は、まだ昇っていない太陽の僅かな光に照らされている。
人の気配は近くに感じられない。
「う〜ん、全く人がいないなあ。やっぱ初日の出って最近は微妙なのか?」
「どちらかというと、人気スポットに人が集まりがちなだけだと思います。こんな寂れた海で初日の出を見ようなんて、
余程の変わり者だけですよ。そんなことを考えるのは」
「この海、結構きれいなんだけどなあ」
「綺麗ということは、人の手で汚されていないということです。裏を返せば、あまり人がいないということになるのですが……」
「まあ、こうしてゆらりとこの景色を独占できるから特に問題はないけどね」
 後ろから小さな体つきをしたゆらりにそっと抱き付いた。
「くすくす。それだと独占になりませんよ。私も見てますから」
「そうだな。『ひとりじめ』じゃなくて『ふたりじめ』だな」
 そんなこんなで談笑をしていると、空がどんどん明るくなっていった。
「そろそろ、初日の出の時間です。まばたきしないようにちゃんと太陽を見てくださいね」
「うん……ゆらりこそ、ね」
 俺たちは固唾を飲んで太陽を見守った。空はじりじりと明るくなっていく。まだ太陽は出てこない。
「太陽は引っ込み思案だな。もっとこう、ガバッっと出てきてもいいのに」
「それじゃあつまらないですよ。焦らされた末に見られるから素晴らしいんだと思いますよ。現に、私はとてもワクワクしています」
「そうだな。じゃあ、黙って待つか」
 再び無言になる。太陽はにじり寄ってくるが、まだ姿は見せない。

 後何秒だろうか。もうすぐ出てくるだろう。
 鼓動が高鳴る。ドクン、ドクンと分かりやすく。
 そして、水平線の向こうから見えない壁を破って、俺達の瞳の中へ一閃の光が差し込―――
「うおっ、眩しっ」
 その眩しさに目が眩んでしまった。すぐに太陽へと目を戻した。
「……くすっ」
「? ゆらり?」
「くすくすくす。だって、可笑しいんです。初日の出を見て『うおっ、眩しっ』なんて……あははは、あ、ははははは!」
 ゆらりが声を大にして笑った。それに釣られて俺もついつい笑ってしまった。
「くくくっ、そんなこと言うな、俺も……ぷっ、ははははは! 俺だって、意識して言ったわけじゃっ、あははははははは!」
 さっきの緊張どこへやら。俺達の笑い声が誰もいない海の海岸線に沿って響いていった。

 笑い疲れた俺達は、その場にへたり込む様に座った。その頃には、太陽は半分近く顔を出していた。
「……まったく、新年いきなり笑わさないでください。こんなことが初笑いなんて情けありません」
「まあ、正確にはもう少し前に初笑いは迎えたけどね」
「日の出からが新年です。なので、それより前の笑いはノーカウントでお願いします」
「はいはい。それにしても……」
 俺はまだ顔を出し切っていない太陽を見た。よく考えたら、中途半端な太陽を見るということは物珍しい。
普段見ている太陽は全身がはっきりと映っているから、こうして隠れた部分がある太陽を見る機会は少ない。
いや、日の出を見る機会は1年のうちに最大365回あるが、こうしてまじまじと見る機会は限られてくる。
「初日の出って綺麗だよな。新年っていうのもあるんだろうけど、なんか神秘的というか」
「わかりますよ。新年限定ですからね、初日の出は。私も綺麗だと思いますよ」
「……」
「……」
 しばし、沈黙がその場を支配した。なにか言わなければ。
「……」
「小波君」
「な、なんだ」
「今は『君のほうが綺麗だよ、ゆらり』と臭い台詞をキメ顔で言う場面ですよ」
「キメ顔は必要なのか?」
「いえ。戯れに言ってみただけです。でも一応やっといてください」
「そ、そうだな。それじゃあ……」
 こほん、と一息置いて。
「ゆらり、君のほうが綺麗だよ」
 俺はキメ顔でそう言った。
「今ので私の好感度がカンストしました。おめでとうございます」
「え?それじゃあ今まではマックスじゃなかったってこと?」
「いいえ。マックスだったのでカンストしました」
「そうか。それで、何かいいことはあるのか」
「今だけ、私を自由にしていい権利をあげます」
「え、それって……」
「はい。煮るなり焼くなり好きにしてください」
「そんなことはしないけど……そうだな、だれもいないしさっきの続きをやろうか」
「……はい」
 姿を全て見せた太陽が、俺たちを照りつけた。

 とりあえず、バイブは「強」から。ヴーンと高い音を立てて振動する。
「ひゃぁあっ! い、いきなりこれですか」
 ゆらりが柄にもない嬌声をあげた。戸惑う彼女を尻目に俺は後ろから服の中に手を突っ込んだ。
臍に指を当てて、なぞるように腕を動かしていく。彼女の身体は温かい。俺の冷えた指先を温めていく。
彼女のブラらしきモノに指先が当たったので、その下に潜り込ませ、俺は二つの膨らみを掴んだ。
その先端にある突起を、グリグリと弄ってやる。
「ん……ゃっ……」
 彼女は小さく声を漏らした。彼女の乳首は既に固くなっている。
「こんなに固くして、ゆらりって結構エッチだよね」
「ぁ……言葉攻め、には、屈しま……んんっ」
 構わず、彼女の胸を揉みしだく。ただ、彼女の右手は俺のズボンの息子を捉えていた。
「……小波君も、ここが限界なんじゃないですか? 私が口でしてあげますよ」
「そんなこと言って、ホントは自分がしたいだけなんじゃないの?」
「……そういうわけじゃありません」
「嘘だな。だったらわざわざ俺のモノを掴む必要はないだろ。ゆらり、正直に言えよ。お前は何がしたい?」
 無論、答えなど九分九厘分かりきっている。しかし、それでもわざと尋ねる。
「そ……その、小波君に、フェ……フェラチオがしたい、です」
「やりなおし。俺の何をどうしたいのか、ちゃんと事細かく言ってくれ」
「え……っと、わ、私は、小波君の、おちんちんを味わいたいので、その……く、咥えさせてください……」
「……ああ、いいよ……」
 俺はベルトを緩め、チャックを下げ、中からガチガチに固くなった俺の息子を外に出した。
「ううっ、何度見ても、これは、得も言われぬ迫力がありますね……」
 俺の息子をまじまじと見つめてから、固くなっているこいつを咥え始めた。
「んむ……じゅる、むじゅ、んちゅ……」
「んっ、ゆらり、すごい、気持ちいい……けど、こっちを忘れちゃ、だめ、だよ」
 挿しっぱなしのバイブに手をかけ、軽く上下に動かしてやった。そのとき、ゆらりが大きく仰け反った。
「あ……はぁっ、卑怯、です……」
「ゆらり、こいつを自分の手で動かして」
「は……ぁ……はい……」
 ゆらりは自らの秘部にあるバイブを、出し入れするように動かした。グチュグチュと卑猥な音を立てながら。
俺の息子へのアプローチも忘れてはいない。竿の根元から先っぽへとなぞるように舐め上げる。
彼女の左手も、添えるだけではない。亀頭やスジを程良く加圧してくれる。
「う、んっ、ゆらり、すごく、気持ちいい。最高、だよ」
「ふぉれは、あんっ、よかっふぁ、えうっ、ふぅっ、んっ」
 下半身から全身へ、俺の身体に快感が走る。しかし、その気持よさに何時までも耐えられはしない。
俺は体の底から、精を吐き出せという命令が俺の身体を支配した。なんとか抵抗してはいるものの、すぐに破られてしまいそうだ。
「ゆ、ゆらりっ! 俺、もう、出そうっ!」
「わら、ひ、も、もう、限、界……れ……」
 限界が来ているのは俺だけではないみたいだ。俺はバイブを最大まで強くした。先程より、さらに激しく強く振動する。
「――――――っ! 小波くんっ、わたひ、ああっ、はぁっ、」
「ゆらり、出すよ、もう、俺、出すよっ!」
「んんーーー! んむっ、んんっ!」
「う、ああああああっ!」
「ひっ、ゃあああああああああああああああああああ!」
 俺はありったけの精液をゆらりにぶちまけた。ゆらりは俺の精液を逃すまいと必死になっているが、予想以上にに多かったみたいで、
口の端から溢れでてきた。俺も、溜まってたとはいえここまで出るとは思わなかった。
「あ、あぁぁぁぁ、あの、これ、取って、ください……」
 ゆらりが指を指したのは、下腹部で蠢いているアレである。俺はそいつをゆっくりと引っ張り、彼女から引き抜いた。
「それにしても、ゆらり、すごく上手かったよ」
「はぁ、はぁ、はぁ、それは、光栄です。ただ、あの味は何時まで経っても慣れません。
苦いというか、しょっぱいというか、とにかくとても変な味です」
「あはは……だったら、ムリに飲まなくても良かったんじゃない?」
「とんでもない。これは私なりの愛情表現です」
「……まぁ、そういうことにしとくよ」

「でもまだまだですよ。本番はこれからです」
「……え?」
「さっきから、ずっと小波君のものを求めてウズウズしてたんですよ? 早く、満足させてください」
「……それなら、言い方というものがあるだろ?」
 俺はいじらしく尋ねた。
「こ、こう言うのは男性から誘うものですよ」
「いや? 俺は別にいいんだけどなあ」
「ううっ、わかりました……そ、その……小波君のおちんちんを、私の、お……に……」
「聞こえないよ、ゆらり」
「こ、小波君のおちんちんを、わた、私のおま……、おまんこに、入れて、ぐちゅぐちゅに、かき回してくださいっ!」
「ああ、いくらでもかき回してやるよ」
 再び俺の息子が元気を取り戻した。まったく、宿主に似てせっかちな奴め。
 俺はゆらりを押し倒し、ゆらりの秘所へと照準を合わせた。そして、そのまま一気に膣内へ入れた。
「まったく、さっきのバイブですごく興奮してたんだな。スムーズに入るくらい愛液が溢れてる」
「はぁっ、私、ずっと、我慢んっ! して、たんですよっ、だって、小波君のがっ、はああぁっ!」
「ごめんなっ! だけど、いまっ、お前を、もっと、気持ちよくさせてやる!」
 俺の腕はいつの間にか、彼女の胸に位置していた。彼女の服をまくりあげ、その乳房に赤子のごとく吸いつく。
俺が吸い付いたという証に、小さな歯型をつけた。
「ちゅぱ……むちゅ……ゆらりのおっぱい、おいしい。優しい味がする」
「そん、なに……がっつかないで、ください……」
 今度は、反対側の乳房に吸いつく。もういちど、小さく歯型をつける。今度は、彼女の乳首を舐めまわした。
「ぃ……はぁん……ん……」
 俺は彼女の反応がたまらなくて、もう何も考えずに一心不乱に腰を振り続けた。
「はぁ、はぁ、ゆらり、どうだ、今の、気分はっ!」
「はぁんっ! すごく、気持ち、いいです、小波君っ! すごっ、激し、ぃっ!」
「そうか、はぁっ、んんんっ!」
 まただ。体の奥から、熱いものが湧きでてくる。さっきあんなに出したばかりだというのに、もう出したがっている。
ゆらりの方も早く限界が来ていたみたいで。
「小波君っ、まだ、私、もうっ、ダメっ」
「ゆ、らり、俺もっそろそろ、出すぞっ! だから、全部、受け止めてくれっ!」
「はいっ、私、全部っ、受け止めっ! はぁっ、だから、早く……っ!」
「ゆらりっ! 大好きだっ! ゆらりっ!」
「小波君、私もっ! はああんっ! んんんっ!!」
「ゆ、ら……あああああああああっ!」
「ぁぁああああああああああああああああああああああああああっ!!!」
 俺はゆらりの最奥で、全てを吐き出した。ぎゅう、ぎゅうとゆらりの膣内は俺から精液を搾り取っていく。
さっきと同じくらい、もしかしたらそれ以上の量を出したと思う。俺はひたすらその気持よさに浸った。
「……全部、出たよ、ゆらり。全部、だしたよ」
「……小波くんのが、中で、すっごく、脈を打っていました。私の中に、すごく、たくさん、出してきてくれました」
「ゆらり……大好き」
「私も……大好きです」
 俺はゆらりをきゅっと抱きしめた。寒さの中、俺達は人肌で温め合った。
その温かさに、しばらく体を預けて。

 あの後、俺達は一旦家に帰った。初詣くらいは振袖で行きたいというゆらりの提案を断ることはできなかった。
というか、断る理由がなかった。むしろ願い上げだ。土下座してでも見たい。
 帰宅して、いつものように簡単な挨拶を済ませて、おせち料理を食べた。年賀状を確認すると、案の定届いていた。
 あさみとゆらりの二人から。
 あさみからの年賀状は、「謹賀新年 あけましておめでとうごぢいます。 今年もよろしくお願いします」と書いてあった。
「謹賀新年」は間違いもなく上手に書けているのに、なぜ「おめでとうご『ぢ』います」という初歩的以前な間違いをするんだ。
まあ、これはあさみらしいといえばあさみらしい。最後に、「密かに小波くんのことまだ狙ってるからね!」と書いてあった。
あさみよ。公言してしまったら密かにではなくなるんじゃないか?
 ゆらりからは、去年と似ていて「『謹賀親年 あけましておめでとうございます。 今年もよろしくお願いします』
以上があさみちゃんからの年賀状だと思われます」と書いてあった。惜しいな。誤字をするところまではあっていたが
さすがに「おめでとうご『ぢ』います」は読めなかったか。また、最後に「今年もあさみちゃんにラブラブっぷりを見せつけてやりましょう」
と書いてあった。ちょっと待て、そんなことをしたらあさみがラブブレイカーと化すぞ!
 年賀状への無粋なツッコミはやめて、ゆらりに電話することにした。
「ただいまおかけになった電話番号は、現在使われておりません」
 あさみだ。あさみの声だ。
「……おい、あさみ。何をやっているんだお前は」
「えへへ。小波くんを不幸のどん底に突き落としたくなって」
「こんなので不幸のどん底に落ちると思ったか? なんでお前が電話に出ているんだ」
「思わないよ。えっとね、今ゆらりが振袖の着付け中だから、代わりに私が出てあげたんだ」
「そうか」
「ところで、ゆらりの年賀状はもう見た?」
「ああ、見たぞ。お前の年賀状の謹賀新年の『新』の字を間違えてるって奴だろ」
「うん。でも、今回は間違えなかったんだ! えっへん」
 自信満々に答えた。確かにお前はそこは間違えてはいない。
「そうかそうか。それは良かったな。だが残念なことにだな、あさみ。お前の年賀状をもう一度よく見てみろ」
「ん? どうしたの?」
「おまえ……小学校レベルの間違いをしてるぞ。下手をすれば幼稚園児でも間違えないくらいの間違いだ」
「え? え?」
「お前の年賀状にな……あけましておめでとうご『ぢ』いますって書いてあるんだよ」
「嘘っ! いやいや、いくらなんでもそんなドジはしないよ」
「あとでゆらりに訊いてみろよ。たぶん同じことを言ってくるから」
「……うん、わかっ……」
「あさみちゃん? 何をしているんです?」
 電話の向こうから、ゆらりの声がした。
「うわっ! ゆらり! も、もう終わったの?」
「ええ。着付けに一時間ほどかかっていたあさみちゃんとは違って、私はすぐに終わりました」
「いや、べつに、なにもして……」
「その手にあるのは私のケータイですよ。もう一度聞きます。何をしていたんですか?」
「え、えーっと……そう! ケータイのゲームをやってたんだよ! ほら、私そう言うのに疎いし……」
「残念ながら、私のケータイにゲームは入っていません。正直に白状してください」
「ごめんなさい。このとおりです」
「……もしもし、小波君ですか? 申し訳ありません、うちのあさみちゃんが迷惑をおかけしたみたいで」
「いや、ああ、まあ……それで、神社には今から行くのか?」
「はい。着付けが終わりましたので、今から行く予定です。しかし、あさみちゃんは遅れてしまうかもしれませんが」
「ひっ」
 あさみは何かを、というより主にゆらりを怖がっているような声をだした。
「な、何をするつもりだ?」
「大丈夫ですよ。法律には触れない程度のことですので問題ありません。先に行っててください」
「ああ、うん。わかった」
「それじゃあ、あさみちゃん。覚悟はよろしいですね」
 そこで電話が切れた。仕方が無いので俺は賽銭の準備をして、少しの荷物を持って出かけることにした。

 朝は随分過ぎたのに、神社には行列ができている。鳥居の前で待つ約束だったが、着いてから五分ほどでゆらりとあさみも到着した 。
あさみはいつもと変わらない髪型だったが、ゆらりは珍しく髪を上げている。これはこれで、目新しくていいかもしれない。うん。
「明けましておめでとう、ゆらり、あさみ」
「明けましておめでとう、小波くん!」
「明けましておめでとうごぢいます、小波君」
「ちょっと、ゆらり! もうその話を蒸し返すのはやめてよ」
「私の予想が外れた腹いせです。もっとも、あんな保育園児でもしないような間違いを犯したあさみちゃんに原因があるのですが」
「確かにそうだけどさあ……ねえ、小波くんからもなにか言ってやってよ」
「弁護のしようがない」
「う〜。ほら、イケメンな小波君なら発想を逆転させて天才的な弁護を思いつくはずだよ」
「おだてても無駄だ。素直に運命を受け入れろ」
「四面楚歌っ!」
「どーでもいいから、さっさと初詣に行くぞ」
 よくわからないボケをするあさみを無視して、俺はゆらりの手を引いた。
「……おまえ、あさみに何をしたんだ?」
「二度と私のケータイに触れなくなるように洗脳してあげました」
「怖っ! 怖いよ! そんな物騒なことするなよ!」
「大丈夫です。元の人格には大して影響はありません」
「いやいや、十分不安要素はたくさんあるんだが……まあいいや。それもゆらりらしいしな」
 俺は自分で自分を無理やり納得させた。

 ようやく賽銭箱の前まで辿り着いた。この氷点下の中、三十分も待たされるのは地獄だ。
三人で賽銭を入れて、柏手を打ち、神様に祈る。
もちろん、俺の願いは……
「……あ、あのさ、私ちょっとトイレ行きたいんだけど」
「え?」
 あさみが急にそう言い出した。いかにもというような仕草をしている。
「今すぐ行ってきてください。間違ってもこんなところで漏らさないでくださいね」
「漏らさないよ! と、とりあえず行ってくるよ!」
 あさみはそのままタッタッタッと駆けていった。……俺達に気を使ってくれたんだろうか?
「ふう。ようやく、ゆっくり二人で話せますね」
「周りに人はいるけどな。……お前あさみに何かしたのか?」
「ええ。大量の水を飲ませてあげました」
「おい!」
「まあいいじゃないですか。少し、二人でお話しましょう」
「あ、ああ……わかった」

「無粋なことを聞きますが、あの、さっき何をお願いしたのですか?」
「えーっと、これからもゆらりと一緒にいられますように、だ。ゆらりは?」
「私も同じですよ。小波君とずっと一緒にいられますように、と」
「だと思った」
「叶えて欲しいものですね、出来ることなら」
「……なあ、ゆらり」
「なんでしょう」
「卒業したらさ、一緒に暮らそうよ」
「えっ、な、何をいきなり言い出すんですか!」
「だって、俺はプロ野球選手で、ゆらりはNOZAKIの社員だ。そうすると、お互いの都合で会えない日の方が多いかもしれない。
だけどさ、帰る場所が一緒なら、より多くの日を一緒に過ごせるだろ?」
「そ、それはそうですが……」
「会える時間が少なくなるとしても、そのなかでどれだけ多く過ごせるか、考えた結果なんだ。
プロポーズと言えるほどのものじゃないけど……どうかな」
「……その答えに、私が嫌だと言うわけがないじゃないですか」
「よかった。……これからさ、俺たち一人一人の時間はいろんなところで取られるかもしれない。
だけど、ふたりきりの時間は誰にも取られない。だから、ふたりの時間は『ふたりじめ』できるんだよ」
「…………くすくすっ」
「……ゆ、ゆらり?」
「あははは。小波くん、やっぱこういうところのセンスはないんですね」
「ほっとけ! 俺もちょっと滑ったかなーとか思ったけど!」
「ほら、あさみちゃんがもうすぐ戻ってきます。迎えに行きますよ」
「あっ、待て! ゆらりー!」

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