「今日の夕食はお鍋だよ」
「鍋か、鍋は好きだな」
「…アンタ何でも好きだよね」
 そうか、もうそんな季節か。
秋が終わりを告げ、次第に人々も冬の準備に入る11月。
もうここに来てから半年以上経つのか…
 この町の川原でテントを張って住んでいた俺は、いつからか武美の家にご厄介になっている。
なんだかんだで色々あったが、現在コイツとは恋人同士の関係だ。
「そりゃ、投入ー」
 武美が具材をいっぺん入れる。
「おいおい、それじゃ上手く肉のだしが出ないじゃないか。
大体エビまで一緒に入れると煮えてしまって小さくなるぞ。
うわ、豆腐まで入れたのか!最後に入れないとボロボロになっちゃうじゃないか!」
「うっさいなあ、いいじゃんもう入れちゃったんだから!」
 武美も最近色々料理を勉強してはいるらしい。
ただ、レパートリーは増えたが中々その大雑把な所は直らないようだ。
味付け自体は上手いんだがなあ…。
「よっと、お肉もーらい!」
「む、それは俺が目をつけてた奴だぞ!」
「いいじゃんいいじゃん、また入れればいいんだし」
 …さっき一辺に全部入れちゃったじゃないか。

「ふぅ…食った食った」
 食事が終わり自室に戻って少しくつろいでいると、扉をノックする音が聞こえた。
誰かは分かっている、この家には二人しかいない。
「開いてるぞー」
 こんばんわ!と武美が入ってきた。
こんばんわも何もいつも一緒にいるじゃないか。
「キミのうちなんだから別にノックとかいいんだがな」
「ま、そこは最低限のエチケットとしてね。今いい?」
 武美とたわいのない話をする。
最近上手くオムライスが作られるようになったこと。
最近のビクトリーズのこと。
初めて会ったときのこと。
タイマーに関してはもう問題ないらしいということ。
そして、恋人同士になって2ヶ月になったこと。

「………」
「ん?どうした?」
 見ると武美が心ここにあらずといった様子で、何か考え込んでいるようだ。
「そっか…もう付き合いだして結構経つんだね…」
「そうだな…」
「ねえ、小波は…」
 武美は少し躊躇していたが、暫くして意を決したようで、とんでもない発言をした。 
「あたしと…えっちしたい?」
「……どうしたんだ、急に」
「お願い、正直に答えて…」
 武美の顔は真剣だった。冗談で言っている訳ではないのだろう。
どういう意図かは分からないが、こちらも正直に自分の気持ちを伝える。
「ああ、したいな…」
 俺だって男だ。
武美を抱きたくないなんて思うわけがない。
「キミはどうなんだ?」
「あたしも…したいよ……だけど…ね」
 武美の表情に悲しみが差す。
「いろいろ、普通じゃないしさ、あたし。あんたにそれで愛想付かされちゃったらって…思っちゃったりさ…」
「……」
「……なんてね」
「武美?」
「冗談冗談!驚いた?あははは」
 沈黙をどう受け取ったのか、急に武美が立ち上がる。
見ればいつもの飄々とした態度に戻っていた。
こちらの顔を全く見ないのを除けば。
「さてと…んじゃちょっと、お風呂の準備してくるね」
 武美がすっと俺の部屋から出て行こうとする。
 …ここで武美を帰してはいけない。
自分でも驚くほどのスピードで、武美を後ろから抱き止めた。
「え、小波?」
「するぞ、武美」
「へ?するって…あ!ま」
 顔を横に向かせ、最後まで言わせずに唇を奪う。
「待たない、これ以上待って思い詰められると嫌だからな」
 片手で武美を抱きしめながら、もう片方の手で強引にしまってある布団を下ろした。
「うん…」
 観念したのか、武美が抵抗をやめ、こちらに体重を預ける。
「えっと…んじゃ、よろしくお願いします…」
 俺たちのセックスが始まった。


「…やっぱこんなの付いてる女の子って、可笑しいよね、ホント」
 上着とスカートを脱いで下着姿になった武美が言う。
笑ってはいるが、声には悲しみが溢れていた。
  胸の上の大きなパネル
  武美の、造られた人間であることの証明
おそらく、いやパネルだけじゃない、あのコードも、それ以外の色々な部分が、彼女を苦しめてきたのだと思う。
しかし、それよりも、もっと大切なことがある。
「……武美って、意外と着やせするタイプなんだな」
「!!」
 Fくらいはあるだろうか、何処かのグラビア誌に載ってるアイドルにも決して引けをとらないだろう。
服の上からでもそこそこあるのは分かっていたが、ここまでとは…
武美の少し幼い顔立ちが、余計にそれを際立たせていた。
「…やっぱりスケベだね、小波は。ヒーロー失格だ」
 少し怒ったような、それでいて恥じらいを帯びた声で武美は言う。
「いや、そんなことを言うが俺だって健全な男なんだから仕方ないと思うぞ。否が応でも興奮する」
 増してや好きな女の肢体なんだから…とは言わないでおく。さすがに俺も少し恥ずかしいし
「そうなの?…なんか少しうれしいかも」
「なんで?」
「やっぱ女として…とはちょっと違うか、あはは、なんか色々バカらしくなっちゃった」

 また武美は笑う。
しかしさっきまでの裏に辛さを隠した笑みでもなければ、いつもの太陽のような明るい笑みでもない。
柔らかく、そして優しい微笑み。おそらくこれが武美の本当の笑顔なのだろう。
 愛しい彼女を、ぎゅっと抱きしめた。
「あ…」
「色々思いつめてるのは知ってるが、心配するな。武美はいつも考えすぎだからな」
「本当?ちゃんと彼女やれてる?」
「ああ、もちろんだ」
 いつしか教えてもらった、人間として大事なものが欠けてると言われたこと。
俺はやはりそうは思わない。
こうやって悩んで、悲しんで、笑って、そんなことができる武美のどこが人と違うというのだろうか。

「いや。信じてやんない」
「へ?」
「ちゃんと面と向かって好きだって言ってくれなきゃ信じてあげない」
 なんだそんなことか、と思うと同時に今まで言ったこと無かった事なかったかと考える。
色々思い返してみるが、一回も好きだと言った記憶がない。
確か告白されたときはオーケーで済ませたはずだ。
さっきもなんとなく言いかけたが言わなかったし。
…もしかして俺って結構ひどい奴なのかも知れない。
 ならちゃんと言ってあげないとな、これ以上ロマンチストなお姫様を悲しませるわけにもいかない。
「武美…好きだ、愛してる」
飾らない言葉で、俺の本心を。
「うん……えへへ、合格!」
「ふ………んっ……」
 仰向けに寝かせ、ブラ越しに武美の胸を揉む。
武美は少し体を強張らせたが、抵抗はしない。
硬くなっている武美の体、心、両方を解きほぐすように優しく触れる。
柔らかく暖かい感触が、布越しでも分かる。
「な…なんかさ……」
「ん?」
「ふわふわ、って…してさ、ふぅ……なんか幸せな感じ」
 小波が触れてるからかな?と付け加える武美。
目を閉じながら、俺の手だけを一杯に感じてくれている。
そういう武美の仕草が可愛くて、もっと武美を見たくなってしまう。
 ブラジャーを上にずらすと、武美の大きな乳房があらわになった。
寝ている体制なのに、形を失わない豊かな胸。
「……あんま見ないでほしいな…恥ずかしい、んだけど」
「大きいな」
しまった…ついさらっと口に出してしまった
「もぅ…すけべなんだから……」
 武美の顔がかすかに紅に染まる。
やはり恥ずかしいのだろうか、少し体を横にして、視線から体を隠そうとする。
それを元の体制に戻して、再びその白い胸に触れた。

「……そういえばさ」
「んぅっ…、なに…?さぁ……ん!」
 武美の胸を揉みながら気になったことを聞いてみたくなった。
片手でははみ出してしまう大きさで、柔らくも程よく張りがあり、揉んでるこっちが心地よい気分になる。
「このパネルの部分って感覚あるのか?」
 胸の上、武美の肌の少し縁取られた部分。
前はここが開閉してるのをみたが、それならやっぱ蓋みたいなもんで、何も感じないのだろうか。
「えっと……んん…そこは生身じゃないんだけど、ん!
神経接続されてて、空けるときは解除され…ちょっ!急になめちゃ!」
「お、なるほど感じるんだな」
「もう!何のために説明してんのさ…ふう…ぁ…」
「ごめんごめん、お詫びに…」
 俺は先ほどまで揉んでいた手を離し、武美の乳房の先端に口をつけた。
「ひゃあ!そこっ!舐めちゃだめぇ!」
 口の粘膜と、舌先で嬲られ、徐々に先端が形になっていく。
吸ったり少し噛んだりを繰り返すと、そのたびに武美が大きく喘いだ。
「ふぁ!…あっ!あん!!ちょっちょっとタンマ!」
 何かいいたそうにしているので、少し口を離す。
ツンと勃ち上がった乳首が唾液にまみれててらてらと光って、少しいやらしい。
「…なんだ?」
 武美の話を聞きながらも、さっきの反対側のおっぱいを揉みしだく。
「あたしの体、変じゃない?」
 まったく、まだ気にしてたのか…
言葉で伝えても分かりそうにないので、武美を抱き起こし、その口を塞ぐことにする。
「あ…!んん……」
 俺たちは、キスはよくするほうだと思う。
寝るときとか試合に出かけるときとか。どちらがどうと決めたわけではないが、いつの間にか習慣になっている。
俺としてはキスを終えたとき、武美のほのかに嬉しそうな顔が堪らなく好きなのだ。
ただこういう深いキスは初めてだ、武美の舌と俺の舌が触れ合う。
武美の口内をすべて味わい尽くすよう顔の角度を変え、武美の唾液を奪おうとするように舌を動かす。
「んふぅ…んん!……ちゅぷ、ちゅぅ……」
 初めは少し戸惑っていた武美も積極的に舌を動かしてくる。
どうも武美もキスが好きらしい。
呼吸もかねて唇を離すと、あっ…と武美が名残惜しそうに呟いた。
「なんか…すごいね」
 一息ついた後、熱に浮かされた表情で話す武美。
「ああ、えーとその、大丈夫そうだね……」
 キスで俺の思いが伝わったのだろうか、というわけでもないらしい。
武美は恥ずかしそうに少し目線を下に落とす。
さっき武美を貪るのに必死だったせいか気がつかなかったが、俺の愚息が武美のお腹に丁度当たる位置に来ていた。
…これか。
何かバツが悪くなって、誤魔化すように再び押し倒す。
いまだ触れていない武美の中心を、下着の上からそっと触れた。

「あっ!あん!小波!」
「…大丈夫だ」
 反射的に足を閉じようとする武美をなだめながら、そこに指を沈めていく。
下着にじわぁとシミが広がった。
「あ、ちょっと!まっ」
 こちらも我慢できなくなり、剥ぎ取るように武美のパンツを足から抜く。
「ぁぅ…」
直に触れた武美のそこは熱く、そして濡れていた。
もう準備はいいだろう。
武美の秘所に自分のモノをあてがう。
「行くぞ」
「うん…来て」
 ゆっくりと、俺の肉棒が武美の秘裂に埋まっていく。
「ひっぐ!うぁああ!!」
 少し時間が経って、完全に埋没する。
暖かく、それでいてきつい武美の膣内が、俺のそれをぴっちりと包んだ。
「はあ…んっ…全部、入った?」
「あ、ああ…」
 正直、そこの気持ちよさに中々上手く受け答えが出来ない。
下手をすればそのまま果ててしまいそうだ。
「それより、大丈夫か?キミの方は」
 なんとか意識を集中しながら尋ねる。
「あ、うん…ふぅ…特に痛くはない…感じ、あっ!」
「…どうした?」
「すごい…形、分かる……えへへ、なんでだろ、なんか、嬉しいな…
 包んであげてるみたい」
 本当に嬉しそうに言うもんだから、見ているこちらまで幸せな気分になってくる。
だが、どうしても男として、それで満足できない部分もあるのが情けない。
「そうか…ところで…すまんが」
「え?ああ、そっか、そうだよね」
 動いていいよ、との武美の言葉に、出来るだけ乱暴にならないように、ピストン運動を開始する。
「あっ!はぁ!ひぅ!んっ!んんー!」
「ぐっ……武美、はっ、気持ちいいか?」
「ふぅ!うん…うん!あん!はあ!…いい!…よぉ!」
「うっ!」
 無意識なのだろうか、武美のそこがまるで俺のそれを求めるように動く。
その動きにつられるように、こちらも自然に腰の動きが早まっていく。
「あ!はげしっ!ふぅ!ふぅっ!んぁう!!ああ!!」
 お互いに最後が近い。
自分の分身を武美の一番奥に叩き付けるように動かす。
武美のほうも、その動きに合わせて少し腰を動かしているようだ。
強引に武美の唇を奪う。
キスともいえない、乱暴で不器用な動き。お互いに鼻息があたる。
舌と舌が触れ合い、武美とつながっている部分が多くなることになぜか喜びを感じた。
「すき!小波ぃっっ!!だいすきぃ!!ああ!ひああ!うあああぁ!」
「武美…!っく………!!」
 最後に武美の最奥に突き入れた瞬間、自分が爆発した。
「はぁ…ああ…あぁぅ…ふう…」
2回、3回と射精の波が訪れ、その度に武美が弱弱しく声を上げる。
こちらもその快感に腰が抜けそうな錯覚を覚えた。
 少しずつこちらの射精も収まり、お互いにどちらからともなく顔が近づく。
先ほどとは違う、やさしく甘いキスだった。




  
 後片付けを済ませ、俺たちは一緒の布団で横になっている。
「えへへ…」
「嬉しそうだな」
「まあね、なんか恋人っぽくてさ」
 一緒に朝を迎えるってなんかロマンチックだよねーと、武美は色々騒いでいる。
 武美から借りている布団は別段大きいわけでもない。
二人で寝るには少し窮屈ではあるが、不思議と気持ちが落ち着いた。
「ああ、そうだ」
「?」
 どうした?という言葉を放つ前に思い出したことがあり、そのまま言葉を飲み込む。
そういえばしてなかったな…
 武美と自然に唇が触れ合う。
「………おやすみなさい…これからもよろしくね」
「ああ、おやすみ…」
 これからは、毎回のキスも一緒の布団でする事になるのだろうか。
誰かが聞いたらなんてくだらない事だと思うであろう、
そんなことを考えながら、俺の意識は序々に深みへと落ちていった。

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