ときに小波、君はいったい何を持っているんだ?」

「げ、神条」

そこにいたのはみんなの自治会長、神条紫杏そのひとである

あーあ、よりによってこいつに見られるなんてついてないなぁ…

「私が見るにそれはどう見ても漫画雑誌に見えるのだが?」

「あー…神条?誤解してもらったら困るんだけどこれは…」

「ほう…自治会長として、これは没収させてもらう…といいたいところだがどうやら小波にも理由があるみたいだな。それ次第では見過ごしてやらんこともない」

「え!?ホント!?」

ラッキー!!!これは漫画を合法的に読むことが出来るようになるまたとないチャンスだぞ…

考えろ、考えるんだ俺、なんといったらこいつを納得させられる…?

「そ、そう、これは―」


また、こいつだ

最近私はこの男、小波十輔によく問題ごとを持ってこられることが多い気がする

学校を自治しなければならないのはもちろんのこと、生徒一人一人に対して注意を呼びかけなければならないのは自治会長としての義務だ

だがそれにしたって最近のこいつは私の頭を悩ませすぎる

わざとやっているのではないだろうな、と思うほどである

今度は校則違反の漫画雑誌だ

「ときに小波、君はいったい何を持っているんだ?」

「げ、神条」

「私が見るにそれはどう見ても漫画雑誌に見えるのだが?」

「あー…神条?誤解してもらったら困るんだけどこれは…」

下手な嘘で良い逃れようとする小波

「ほう…自治会長として、これは没収させてもらう…といいたいところだがどうやら小波にも理由があるみたいだな。それ次第では見過ごしてやらんこともない」

自分でもわかるくらい意地悪に笑顔でそういってやると、何も疑っていないのか

「え!?ホント!?」

と、まるで小さな子供のようにだまされている小波の笑顔がそこにはあった

一瞬その無垢な笑顔にめまいがする

「そ、そう、これは―」

「これは漫画雑誌じゃなくていわば教科書なんだよ!!!」

「…はぁ?」

あ、残念な目で俺を見てる

ぐ…負けるもんか…

「よくみてみろって!!たとえばほらこの『犬と胡椒』って漫画だけど」

「…この犬の耳が生えたかわいらしい女の子の出ている漫画がどうしたんだ?そうか小波はそういうのが好みなんだな」

…安い挑発に乗るな…これは神条の罠だ

「まぁともかくこれさ、商人の様子を描いた漫画なんだよね、だから学校の授業では学べないような社会の仕組みの勉強になると思わないか?」

「…ほう、一理あるな」

「だろ?!ほら!!だからこれは言ってみれば学校で学べないことを学ぶための教科書、つまりこれは校則違反ではない……あれ?思ったよりも論理的じゃないか?」

完璧だ…完璧すぎる…

たとえ紫杏がさらに残念そうな顔で俺を見てたとしてもこの完璧な論理は崩せまい!!

「なるほど、論理的だな」

ふふ…勝った!!!

「ふむ、建前はわかった。で、本音は?」

「商人の話とかどうでも良いね。犬耳最高、ホロ最高」

…はっ!!!し、しまったぁぁあああ!!!!!!

あまりに巧みな誘導尋問にまさか本音を吐かされてしまった…くそっなんて卑怯なやり方だ!!!

「…こうも簡単に真実を吐いてくれるとは私としてもやりがいがないのだが…そうか、君には獣耳の属性があるのだな…」

「ぐっ…い、いやっ…それは」

「もういいか?というわけでこの雑誌は没収だ」

あぁ…せっかく荷田君に仕入れてもらったお気に入りの一冊だったのに…

漫画を没収され呆然としていると神条はこんなことを言い出した


「…はぁ?」

口をついて出てしまった一言にめげず小波はまくし立ててくる

小波が紹介してきた、お気に入りらしい漫画に出てくる女の子のキャラクターが自分で言うのもなんだが妙に私にそっくりなのが気になって聞いてみたがそのキャラクターはどうでも良いらしい

…それはなんだか気に入らない

「………つまりこれは校則違反ではない……あれ?思ったよりも論理的じゃないか?」

と思っていたら、小波が言いたいことは言い終わったようだ

聞いてみたくなったので私はカマをかけてみることにした

「なるほど、論理的だな。ふむ、建前はわかった。で、本音は?」

「商人の話とかどうでも良いね。犬耳最高、ホロ最高」

……あっさりと口を割った…やはりこいつはバカだ…

「…こうも簡単に真実を吐いてくれるとは私としてもやりがいがないのだが…そうか、君には獣耳の属性があるのだな…」

「ぐっ…い、いやっ…それはっ…!!」

言い訳はしないらしい、なるほどそれは男らしいことだ

だが、それはそれ、これはこれ、だ

「もういいか?というわけでこの雑誌は没収だ」

小波はまるで好きなご飯のおかずを持っていかれた顔とこの世の終わりがきたみたいな顔を足して二で割ったような顔をして私にすがるような目で見ている

困った…こんな顔をされたら場が持たないではないか

「その、小波は本当に獣の耳が好き、なのか?」


どきん、と心臓が跳ねた

「…っ!!す、すまない、忘れてくれ」

「えっ!?い、いや、俺は好きだよ!?」

「…っ…っ!!!!」

なんだろう、俺は獣の耳が、好きだといったはずなのになんかこれって神条に告白してるように見えないか?

なんか神条も顔真っ赤にして固まってるし…う、やばい…こんなところ高科に見られたら…

「あやや〜、呼ばれたと思ってきてみたらすっごい場面に遭遇してしまいましたねぇ〜」

 い た

しかもものっすごい良い顔してる…

「えー…と…タカシナ…サン?」

「はーい、小波君、紫杏ちゃん、今日も真実のみを追い求める正義のブン屋、みんなのナオっちですよ〜」

「いつから?」

「えーと…俺は好きだよ!?って聞こえてきたので」

「…ナオ…」

「あれー紫杏ちゃん?小波君からこんな強烈な告白を受けた後でそんなんじゃダメですよ〜?ちゃんと誠意を持って告白を受けたのですから誠意を持って返さないとー。ふふふ、それにしても俺は好きだよ!?ですかーなかなか情熱的な告白でしたねー」

「………ナオ」

「いやー草食系男子が跋扈している今の時代を感じさせない男らしい告白でお姉さんびっくりですよ?小波君。いつもクールな自治会長の紫杏ちゃんもたじたじでかわいいです!!これは良い記事が出来上がりそうですねっ!!」

「「ナオォオォォォォォォ!!!!!!!」」

「おおっと、これはいけない!!それではっ!!!!」


その後面白おかしく記事にされた俺と神条のスキャンダルは神条が新聞を一人で回収するまで噂になったと言う…

それにしても俺が獣耳をすきだと言っていたら神条はどうしていたのだろう?

とまぁ、それはまた別の話にということで

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