「小波君、暇です」
「暇だな」
「だめですよ、小波君、そこはキミの方が綺麗だよ、ってボケるところです」
「話の文脈がまるで繋がってないからな?さすがに俺はそこまでバカじゃないぞ?」
「むー・・・やっぱり暇だからですかねぇ・・・小波君のツッコミにいつものキレがありません」
「そんなの作者に原作の雰囲気を醸し出す力量が足りてないからだろ、俺のせいじゃない」
「メタなことを言ってもダメですよ、これは小波君が暇で暇で今の私と過ごす時間をどうでも良いと思っている良い証拠ですよ」
「・・・今日は珍しく絡んでくるな、どうしたんだナオ、いつものムダに元気なお前はどこに行ったんだ?」
「『に元気』は余計ですよ、小波君」
「ムダで良いのか!?お前の存在意義!?さすがにそれは自分を卑下しすぎだろ!?」
「あと『お前』って小波君のことですよね?」
「俺への攻撃だった!!お前の耳は何かありとあらゆる奇跡でできてるものなのか?!何と等価交換したんだよ?!」
「小波君の青春の1ページ」
「今まさに記憶が失われていくっ!?」
「いやぁ、やっとこななみ君らしいツッコミがかえってきましたねぇ」
「俺はお前のツッコミ役でもないし、ついでにつっこませて頂くならナオ、お前はリュックサックの似合うかわいらしいツインテールの小学五年生でもない。そしてさらにつっこませてもらうなら、俺の名前は小波だ」
「失礼噛みました」
「違う、わざとだ・・・」
「噛みまみた」
「わざとじゃないっ!?」
「かしましだ」
「さらとお前の関係っ!?」
「いつきを含まないんですか?と言うツッコミは無粋ですかね」
「もう、あの子の扱い方もわかってきたよ・・・」
「むー、いつきのことを悪く言うのはユルサナイデスヨ?」
「棒読みで言われても全く説得力がないな」
「クスクスクス・・・っていうかさっき流してしまいましたけど、小波君、さっき私の妹に対してもひどいこと言いませんでしたか?」
「え?さらに関して俺なんか悪口言ったか?」
「ええ、はっきりと、全く・・・無意識でさらに悪口をいうなんて良い度胸ですね、小波君」
「まて、それって俺に都合悪く読まれてるだけじゃないのか?」
「とんでもない!!さっき小波君言いましたよね!『さらにつっこませてもらうなら』って・・・」
「耳年増!?」
「失礼な!!まだぴちぴちの十代です!!」
「耳はもうご隠居なさった方が良いと思いますがね!!」
「ご心配なく、耳の方ならすでに実家に帰らせました」
「ご隠居させていただきます、ってセリフと実家に帰らせていただきます、ってセリフはまるでかみ合ってないからな!?」
「今のはボケじゃなく本気で言ったんですから、ツッコンでくれなくても良いんですよ!?」
「本気で言ってたのかよ!!頭もご隠居させておけ!!」
「暇です、小波君」
「倒置法にしただけでさっきまでの会話のとっかかりと何ら変わってないからな?」
「新聞記者の私がこんなに暇をしてて良いのでしょうか・・・女子寮のみんなは潤いと刺激と運命の出会いを求めているというのに・・・」
「おいおい、またなんかやっかい事を記事にするつもりなのか」
「いえ、その記事にするだけの情報がないから困ってるんです・・・たいていのおもしろおかしいことは記事にしちゃいましたし・・・」
「空飛ぶパンの件についてはわりかし発行部数が伸びたらしいじゃないか」
「あれ以来大きなスクープに巡り会わなくって・・・はぁどうしましょうかねぇ・・・」
「ふーん」
「むー・・・興味なさげですね・・・」
「そりゃ他人事だからな」
「・・・ふぅ〜ん・・・そんな意地悪いこと言うんだったら私にも考えがありますよ?」
「へぇ、なにさ?」
「こないだの紫杏ちゃんの件を記事にして再び発行しても?」
「・・・オイ、まさか・・・」
「いやぁ〜、アレはすごかったですよねぇ〜」
「・・・」
「天下の自治会長さんを相手にして、二人っきりになったことを良いことに紫杏ちゃんを壁に押しつけて情熱的な『俺は・・・好きだよ?』
なんてセリフ聞いちゃった日にはもうブン屋としてこれ以上のスクープはないですよね〜、きゃーきゃー!!」
「・・・ナオ」
「いやぁナオちゃん、さすがに顔が熱くなっちゃいましたよ〜、しかし!!私は正義のブン屋!!あんなまざまざと学校内でいちゃつか
れちゃった日にはこれは皆さんにも教えてあげないと!!と言う使命感に変わりましたからね!!」
「ナオ、お前はそれで良いと思ってるのか?」
「いいんですよ?私がこれを記事にすることできっと紫杏ちゃんはみんなから嫌われてるだけの自治会長じゃない、こんなかわいらしい
一面があるんだって全生徒から親しみを持ってもらえると思いますよ?」
「・・・!」
「紫杏ちゃんの苦労を知っている人って・・・しかもそれを正しく理解してくれてる人って、意外と少ないと思うんですよね」
「ナオ・・・」
「どうしてあんなみんなに嫌われるようなことをしてまで自治会長という仕事に身を殉じているのか・・・楽しいことが好きでバカな私に
はわかりかねますけどね」
「・・・」
「でも私は知っているんですよ?紫杏ちゃんが『この学校の生徒全員が居心地の良いパブリックスクールを作る、その環境を整えて次の
世代の自治会長に引き継げたら良い、それで私の仕事は全うできるんだ』そういつも言って憎まれ事も面倒事も全部自分一人で請け負っ
ているってことを」
「・・・」
「でも、政治家がまるで汚いことしかやっていない、と言う風にマスコミが世論を動かしている今の日本の政治家の扱いと同じで、紫杏
ちゃんも悪いことを、嫌われるようなことをしているという部分しか生徒達に伝わっていないと思うんです」
「・・・」
「そんなの・・・不公平じゃないですか・・・紫杏ちゃんだって人間なんです、もっともっと自分が楽しむために人生を生きても良いじゃないですか」
「そう・・・だな・・・そして何よりあいつは他の人よりも・・・」
「そう、不器用なんですよ、だから感情のぶつけ方がわからない、だから今のままじゃ人生は楽しめません!!」
「なるほど、だから紫杏からの差し止めに対してもあんなに抵抗したんだな?」
「クスクスクス、まさか、私はただこんなにおもしr・・・楽しいことを記事にできなかったことが悔しかっただけですよ?」
「・・・今おもしろいことって言おうとしただろ・・・」
「クスクスクス、なんのことです?私はバカなので3秒から前のことは覚えていませんね」
「それは笑えない冗談だぞ?!」
「冗談はともかく、私には二つ夢があるんです」
「3秒前のことは覚えてないのに昨日見た夢のことは覚えているのか?」
「ここでボケ倒すんなら小波君はナオちゃんの彼氏失格検定2級を進呈しますよ?」
「ちゃんと聞いてるよ」
「一つは、真実を追い求める新聞記者」
「立派な夢だな」
「もう一つは、小波君の追っかけ記者」
「とたんにレベルが下がったな」
「そんなことありません、きっと小波君は将来プロの野球選手になったらメジャーリーグとかに行くに違いありません、その時に一緒に追いか
けていける記者なんてすごくレベルが高いはずです」
「・・・」
「メジャーリーグに行く時はちゃんと教えて下さいね、私はちゃんとついて行きますからねっ!」
「記者として、なんだ」
「え?」
「そうかそうか、俺がホッパーズに入団して、数年してからメジャーに挑戦しに行くその時までナオにとっての俺との関係はずっっっっと一介
の新聞記者と一介のプロ野球選手なんだ、へぇそうなんだ」
「え?えぇ!?」
「じゃあ俺がその間に美人な女子アナと結婚しても何ら文句はないわk「それ以上言ったらその口をホチキスで閉じますよ?」すいません!!
調子に乗りました!!だから本気でホチキスを構えるのをやめて!!!」
「全く、小波君は・・・ズルいです」
「だってそんなこと言われたら、寂しいじゃん」
「・・・やっぱり、ズルいです・・・」
「ナオ・・・」
「私、本当は聞いてたんです、紫杏ちゃんと小波君が二人でいた時、何の話をしていたかも、小波君が何に対して好きだ、って言ったのかも」
「なんだ、やっぱりそうだったのか」
「・・・そして、紫杏ちゃんが本当に小波君を好きなことも・・・」
「うん?なんて言ったんだ?」
「私、ひどい女ですよね」
「あぁそうだな」
「本気で言っているのならその鼻の穴を裁ちばさみで一つにしても良いんですよ?」「やだなぁ、心からそんなこと言うわけないじゃないか、は、ははは・・・」
「・・・ひどい、女なんです」
「ナオ・・・」
「小波君、こんなひどい女でも私はあなたの彼女で良いんですか?」
「当たり前だろ、お前は俺の自慢の彼女だよ」
「・・・」
「だからずっと付いてきてくれ、俺がプロ野球選手になっても、メジャーリーガーになっても、引退して解説者になっても」
「私は嫉妬深いんです」
「知ってるよ」
「だから今度から紫杏ちゃんと抱き合ったりしたらダメですからね?」
「抱き合ってないって」
「みんなの前でナオって呼んでくれないと拗ねちゃうんですからね?」
「・・・善処するよ・・・」
「バカで料理もあんまりできなくて役に立つことは何一つとしてできないかもしれないんですよ?」
「でもナオはいてくれるんだろ?」
「もちろんです!!私みたいな女に付けられて後悔しないで下さいね」
「当然だろ・・・っていうかお前みたいな女に付いていける男なんて俺しかいないだろ・・・」
「・・・嬉しいです・・・小波君・・・」
「ナオ・・・」

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