小波の引っ越しから約1年半――――
 蝉の鳴き声が少し騒がしく感じる、夏休みのある日。
南雲家の台所では、今日も朝早くから瑠璃花と母親が朝食を作っていた。
 瑠璃花は味噌汁担当。母親はその他諸々。お互いにずいぶんと手慣れた様子で、
あっという間に料理が出来上がっていく。
「瑠璃花、お皿をだしてくれる?」
「わかりました」
 母親の言葉に、はいと頷き、食器棚から人数分の食器を取り出す瑠璃花。
 取り出された食器は三人分。一人分多いと思うかもしれないが、
今日の彼女達にはこれで正解なのだ。
 いつもより一人多いその張本人。それは――――

「瑠璃花。あとはお母さんがやるから、あなたは彼氏を呼んできたら?」
「なっ! こ、小波は彼氏なんかじゃありません!」
「あらあら、お母さんは小波君だなんて一言も言ってないわよ?」
「いや! だから、それは……」
「ほら、ご飯が冷えちゃうから早く早く」
「〜〜〜!! い、言っておきますけど、絶対に違うんですからね!」
 母親にからかわれ顔を真っ赤に染めながら、
瑠璃花は最後の一人、隣の家で眠る小波の元へと歩きだした。


 『夏休み中学生日記:南雲瑠璃花』


「「「いただきます」」」
 食卓に座り、三人揃って手を合わせ、一礼。
そのあとは談笑しつつ、それぞれが各々の朝食を食べはじめる。
 しかし、何故こんな状況になったのか。それを説明するなら、
『水木の父母が旅行に行った』
 この一言で十分だ。
 そして水木の実家に一人となってしまった小波は、
必然的に南雲家に朝も夜もお世話になる訳で。
「あ、今日の目玉焼きは瑠璃花が作ったんだ」
「あら、小波君よく分かるわね」
「うん。だって形が………」
 小波の視線の先、目玉焼きは黄身が完全に潰れてまっ平らだっいた。
「も、文句があるなら食べなかったらいいじゃないですか!」
 恥ずかしそうに瑠璃花。
「いやそんな事言ってないって、美味しいよ」
「そうそう。瑠璃花ったら張り切って作ってたんだから」
「お母さん!」
 再び恥ずかしそうに瑠璃花。
「はいはい、ごめんなさい…………そうだ。小波君は今日も部活なの?」
「うん。練習試合だから早めに終わると思うけど」
「暑いのに大変ねぇ……」
「ううん。楽しいから別に大変じゃないよ。……確かに暑いけどさ」
「……頑張ってくださいね。あとケガだけはしないでください」
「瑠璃花ったら、やっぱり小波君が心配なんだ」
「ち、違います! 小波がケガしたら私に迷惑がかかるからです!」
 再び再び恥ずかしそうに瑠璃花。
「うん、頑張るよ。まぁケガの方は約束出来ないけどね」
「小波! ちゃんと気をつけてくれないと困るんです!」
 こんな感じで、三人の食事の時間は楽しく賑やかに過ぎていく。


「あ、小波。一つ言いたい事があるんですが」
「ん? 何?」
 食事も終わり、今は後片付けの最中。
 食器類を流し台へと運んでいる小波に、瑠璃花は後ろから声をかけた。
「……あなたの部屋、またかなり散らかってたんですけど」
「うっ!」
 じと目で睨む瑠璃花。言葉に詰まる小波。
 小波の後頭部を、一筋のでっかいマンガ汗が流れ落ちる。
「あれほどちゃんと掃除するように言っているのに……」
「いや、まぁ……そうなんだけど……」
 瑠璃花が言っている事は正しい、確かに正しいのだが……
 水木の年老いた両親、そして中学生の小波の三人暮らし。
 小波の部屋は二階であり、ご老体の祖父母が部屋に入る事はめったにない。
 それどころか二階にすらほとんど上がってこない。
 そして小波はほとんど毎日休みなく部活であり、掃除をする暇など限られている。
 そうなると、多少散らかってしまうのは当然の事。
 ………しかし、瑠璃花にはそんな言い訳は通用しない。
「……この頃部活が忙しくてさ」
「……忙しくなくても散らかっているような気がするんですが」
「う………」
 おっしゃる通りで。
「…………………はぁ……」
 何も言い返さない小波に、瑠璃花は一つため息をついた後、苦笑しながら言葉を出した。
「………しょうがないですね。掃除は私がやっておきますから、小波は試合に集中してください」
「あ、ありがとう瑠璃花。ホントにゴメンね」
「そう思うなら、これからはいつも綺麗にしておいてくださいね?」
「え………うん、出来るだけ頑張るよ。じゃあ行ってきまーす!」
 そう早口で言い切り、小波は凄い速さでその場から離れ、
あっという間に南雲家からさよならしてしまった。
 取り残された南雲親子。 少しの間を空けて、ぽつりと呟く。
「………逃げましたね……」
 ……多分、これからも部屋は散らかったままなんでしょうね……
 そう心の中で呟きながら、瑠璃花は外を走る小波の後ろ姿を見送った。


 ガァーーーーーーーーガシャ、ウィイイーーーーー

 部屋中に掃除機のエンジン音が響き渡る。
夕方近くになり、日が少し傾きかけた頃、瑠璃花は小波の部屋の掃除を開始した。
 出来る事なら午前中にやっておきたかったのだが、
色々とやる事があったのでこんな時間になってしまった。
「はぁ………また布団も出しっぱなしで……」
 一旦掃除機を止め、布団を三つ折りに畳んで端に寄せる。
 布団から―――いや、部屋中から漂ってくる小波の匂い。
 ……布団に倒れ込んでみましょうか。
 そんな事を考えたりしながら。

 散らかっている、と瑠璃花は言うが、決して部屋が汚いわけではない。
 ゴミはちゃんとごみ箱に入っているし、余計な物もほとんどない。
 ただ、収納されていない洗濯物と散乱したマンガ類が
そう見せているだけなのだ。

「えーと……この本はここ……これは、ここ………」
 机の上やら床にやら、そこら中に散らばっている本。
それらを本棚に戻しながら、ふと考える。
 ―――小波の外出中に彼の部屋を掃除する私。
何となく気分は夫婦みたいな―――
「な、何を考えてるんですか私は!!」
 自分の妄想に自分で突っ込む瑠璃花。
 変な考えを振り払おうと、急いで立ち上がって動き回る。その結果。
 ゴッ!
「いだっ!!」
 タンスの角に小指をぶつける事になってしまった。
「っ〜〜〜〜〜〜!!」
 痛さのあまり、小指を握ってその場にしゃがみ込む。
 なんでこんな所にタンスがあるんですかなどと、間違った怒りを感じていると。
「………………ん?」
 ぼやけた視線の先、タンスと本棚のその隙間。
そこに挟まっている数冊の雑誌を発見した。
「……何でしょうか」
 野球か何かの本だろうか。
なんじゃらほいと、興味に任せてそこから数冊取り出してみた。
 一冊目。
「なっ……」
 二冊目。
「ななな!」
 それ以上。
「ななななななななな!!」
 表紙を見て、その全てを理解する。
それらは全てR18指定の雑誌、いわゆるエロ本だった。
「何ですかこれは!!」
 手にしたソレを放り投げ、瑠璃花は尻餅をつき座り込む。
顔を真っ赤に染めて、それらを睨みつけながら一人で叫ぶ。
「小波! これは犯罪です!」
 確かにその通りなのだが、女の体に興味のない男子なんてほとんどいない。
瑠璃花もそのくらいは分かっているのだけど。
「……そりゃ小波も男性だから当然なんでしょうけど!」
 頭では理解し、口ではそう言うが、内心は非常に穏やかでなかった。
やりきれない感情が心の中で渦巻いている。
忌ま忌ましい、ああ忌ま忌ましい忌ま忌ましい。
「こんな胸の大きい人ばっかり……!!」
 改めて一番上の一冊を取り、パラパラとめくる。
映っている女性はいわゆる巨乳と呼ばれる人ばかり。
対する自分は……………………今後に期待と言うことで。


「………小波もやっぱり………」
 大きい方がいいんでしょうか―――と、
ここまで思って、その後とを考えるのを止めた。
 まだムカムカとした感情は残っているけれど、今は我慢して置いておく。
 やるべき事があるだろう。これらの本を元の場所に返す事とか色々。
「…………掃除の続きをしますか」
 本を閉じ、重ね、見つけた所に一冊づつ戻していく。
このまま全て返却して、何も見なかったことにすればいい。
そうすれば、今まで通りの二人でいることができる。
 そう思い、一冊、また一冊と返していく瑠璃花。
 だが、それは問屋が下ろさない。
 最後の一冊―――と、瑠璃花が手に持った。その瞬間、
 バタン!
「ただいまーーー」
 ドアが開かれ、小波が部屋に入ってきた。
「あ…………………」
 固まる瑠璃花。
「げ…………………」
 硬直する小波。荷物が肩から滑り落ち、音をたてて床に落ちた。
「あの、その、これは……」
 音に反応したのか、瑠璃花がようやく動き出す。
だが口から出るのは意味を持たない単語ばかり。
 まぁ小波もほとんど同じような感じで。
「いやそのそれは先輩に押し付けられた物で俺が買ったやつじゃなくて
まぁそりゃ見たことはあるけど何と言うか俺はそんなのより瑠璃花の裸の方がみたいっていうか………」
「な、何変な事を言ってるんですか!」
 とんでもない事を口走っていた。

「…………コホン、まぁ小波も男の子ですし……別に可笑しくはないと思いますけど……」
 周りに自分以上に慌てている人物がいると、結構落ち着いてくるもので。
 一つ咳ばらいをして息を整えた後、瑠璃花は小波に話しかけた。
「瑠璃花………怒ってないの?」
「……何で私が怒らないといけないんですか?」
「まぁそうなんだけど………」
 納得の言葉に反して、小波の表情が複雑なものに変わる。
――むしろ怒ってほしかった――そんな表情。
 嫉妬とか独占欲とか、そういった意味で。


「………瑠璃花は…俺がこんな本読んでても何も思わないのか?」
 どこか不安げに小波が尋ねる。
心臓が高鳴り、身体を緊張感が包む。
居心地の悪い時間が流れた。
少しの間が開いて、瑠璃花がボソリと呟く。
「…………そりゃ正直言うと……少し腹立たしいですけど………」
 今にも消えそうなくらいに小さな声。
その途端、小波の表情が表情が嬉しそうに崩れた。
「……でも…私には………ですし……」
 この辺りなどほとんど何も聞こえなかったが、
「瑠璃花!」
そんなのお構いなしに、小波は思いっ切り瑠璃花を抱きしめた。
「えっ? え、ええ!?」
 身体が軽々と胸に飛び込んでくる。
髪から首筋から漂う、女の子特有の甘い匂い。
心が、身体が、癒されていくようだった。
「一つ言っておくけどさ……」
 このままずっとこうしていてもいいのだが、今は伝えたい事がある。
顔を耳元に、手を頭に当て抱き寄せて、言うべき言葉を繋いだ。
「さっき言った事、本当だからな」
「………………へ?」
「だから、俺はあんな本とかよりも、瑠璃花の体が見たい」
「へ?……え、……ええ!?」
 顔を真っ赤にして、驚いて、強引に小波の顔を凝視する。
真剣な表情。ふざけている様子など全くなかった。
「え………あ……えっと……」
 瑠璃花も小波も、中学生になって色んな事を勉強した。
古典も英語も、そして保健体育も。
 瑠璃花だって理解している。
小波の言葉の意味を、そして小波が何をしょうとしているかを。
「…………一つ、聞いてもいいですか?」
 ―――だけど、別にいいじゃないか。
「何?」
「………避妊具は……あるんですか?」
「一応、あるけど?」
「………なら、優しく……してくださいね?」
「ああ、もちろん」
 自然とお互いに目を閉じる。
そして二人は口づけを開始した。

「ん……………」
「ふ……ん………」
 ゆっくりと近づき、ゆっくりと離れる。
これがお互いのファーストキスになるはずなのだが、確かではない。
「ファーストキスは苺の味って言いますけど……ちょっと違いますね」
「そう? 俺は甘いって感じたけど……」
「いえ、何となく土の味が……」
「う………」
 試合中、頭から滑り込んだ時だろうか。
 やっぱりうがい手洗いをしなかったのはまずかったかな。
 そう小波がそう考えていると。
「まぁ、それも小波らしくていいですけど」
 瑠璃花が苦笑して呟き、顔に手を添えて再び顔を近づけていく。
「ん………ふ、ん……」
 触れるだけの優しいキス。
ただしひたすら長く、何度も何度も。
「小波………もっと……」 甘い声で囁く。小波はそれに行動で答えた。
 人生って分からないものだ、瑠璃花はそう思う。
よくよく考えと、小波は自分達が夜逃げしてきた先の、
ただのお隣りさんで赤の他人。
 色々な事があったけど、まさかその赤の他人が全てを解決してくれるだなんて誰も思わないだろう。
「………ほんとにお人よしなんですね」
「ん? 何か言った?」
「いいえ、何にも」
 言葉はいらないと、唇で口を塞ぐ。
 彼を支えたいという気持ちはあれからも、そして多分これからも変わりはしない。
「………小波」
「何?」
 視線を下げて、恥ずかしそうに言う。
「……後ろを向いていてくれませんか」
「え?……あ、う、うん!」
 瑠璃花がしようとしている事を読み取り、慌てて小波が後ろを向く。
自分は何も恥ずかしくないはずなのだが、顔は真っ赤になっていた。
 シュルシュルと布が擦れる音、ホックが外れる音、服が落ちる音、
その全てが、後ろで起きている事を連想させる。
「………電気、消してください」
「あ、………うん」
 そそくさと移動し、スイッチを切る。
まだ外は明るいのであまり変化はないが、それでも少し視界が悪くなった。
「瑠璃花………振り向いてもいい?」
「あ! ちょっ、ちょっと待って下さい!」
 慌てた声のあとに、何かが滑る音がした。
おそらくカーテンを閉めたのだろう。部屋が更に暗くなる。
「………………もう、いいですよ」
 承認の言葉。
 喉を鳴らしながら唾を飲み込み、ゆっくりと瑠璃花の方へ振り返った。
「お………ああ……」
 その姿に見とれ、立ち尽くす。
全て脱ぐのはやっぱり恥ずかしかったのか、上下ともに下着を装着していて、
右手で左腕を掴み、内股で足をモジモジさせながら、恥ずかしそうに瑠璃花は立っていた。


「………そんなに……見ないでください」
「あ、ご、ごめん!」
 口ではそう言っても、ついつい視線は瑠璃花を捕らえてしまう。
と言うより、見るなと言うのが無理な話だろう。
今までずっと見たかった身体がそこにあるのだから。
「瑠璃花…………」
「はい…………」
 瑠璃花が畳んだ布団を再び広げ、その上に瑠璃花を押し倒す。
服の上から伝わる体温。
熱い、そう感じた。
「ん………ふ…ぁ…ん…」
 再び口づけ、ただし舌も使った大人のキス。
もちろん今までやった事なんてない。本やAVで見ただけの見様見真似の技術である。
「ん……ぁ……はぁ……んん…」
 それでもお互いに必死で舌を動かし続ける。
不器用ながら舌と舌が絡み合い、口を離すと糸が二人の間に繋がった。
「……脱がすよ?」
「…………はい」
 瑠璃花を守る最後の鎧が外されていく。
まずは上、その次は下。
ほんの少し膨らんだ乳房と、なけなし程度に毛の生えた股間。
どちらもまだまだ子供である事を教えてくれる。
「…………やっぱりこんな子供の体……つまらないですよね」
「……そんな事ないさ。すごく綺麗だし、正直俺今凄く興奮してる」
 小波の言葉の通り。
小波の股間は完全に膨れ上がっていて、ユニホーム姿では少々つらいものがあった。
「ちょっと待って、俺も脱ぐから」
 そう言ってボタンを外し、ベルトを外し、次々に服を脱いでいく。
中学生にしては引き締まった筋肉、無駄のない身体。
股間のテントが雄々しさを強調させている。
 小波が再び瑠璃花に近づき、一言。
「触るよ?」
「…………はい」
 言葉が終わると、宣言通り触りだす。
まずは軽く触れるだけ。
柔らかい、それが第一印象だった。
「こんなに小さいのに………凄い」
「んっ!……小さい……とか、言わ……ない、でっ!」
「あ、ごめんごめん」
 触るだけから揉むように動きを切り替える。
少ないながらも、胸が形を変え瑠璃花の息が荒くなっていく。
「ん………は……あぁ……」
 だが何しろ初めての経験だ。知識はそれなりにあっても、程度が全く分からない。
どれだけ揉めばいいか、なんて分かるはずもない。
 ならば
(楽しむだけ楽しんでやる)
 そう判断し、徹底的に胸の感触を楽しんだ。
強くもんだり、乳首をこねったり摘んだり、引っ張ったり。
「はぅ……ぁ、ふぁ! あぁ!」
 それに伴って、瑠璃花の喘ぐ声も大きくなっていく。
「こ、小波………!」
「ん?」
 一旦胸を触る手を止め、瑠璃花の方に視線を向ける。
顔を真っ赤に染めて、体が少し震えていた。
「もう……そこはいいですから………次は、こっちを……」
 そう呟き、自分の股間を指差す。
そこは既に液体で濡れていて、ヌメヌメと粘っていた。
「…………(ゴクッ)」
 再び小波が喉を鳴らす。
子供ながら、女の臭いをさせるその場所に、恐る恐る指を一本差し込んだ。

「んんっ!」
 瑠璃花の体が一段と震える。
肉厚が指を締め付け、中の温もり、湿り気が指に伝わる。
「うわ………熱い」
「んっ! ぁ……ああ、あっ!」
 確かめようと指を前後させる。
よく濡れているせいか、指がどんどん中に入っていく。
そして最終的には、指の根本まで入りこんでしまった。
「こう……だっけな…」
「やぁっ! だ、め………ぁあ゙あ゙!!」
 この状態で行う、本で読んだ技術、フィンガーテクニック。
指を開いたり閉じたりして、瑠璃花の中を掻き乱していく。
指を曲げ、中を掻き出すように刺激し、抜く。
「あっ! ぁ、ぁぁああああ゙あ゙!!」
 普段勉強嫌いな小波だが、善がる瑠璃花を見て、この時だけは
勉強って大事だなぁと心から思った。
「はぁ………ぁ……こな、み……?」
 突然止んだ刺激に疑問を浮かべる瑠璃花。
寝た状態の自分からでは小波の姿が見えないので、少し体を起こしてみる。
 小波は瑠璃花の股間を凝視していた。
「ちょっ! 小波!?」
 恥ずかしさのあまり足を閉じようとするが、小波に防がれ閉じれない。
 小波の顔はほとんど0距離まで近づいていた。
「何か、瑠璃花の臭いがする……」
「小波……止めて、くださ…い……!」
「何で?」
 そう言って、瑠璃花の縦筋を舌で舐める。
「んっ! ふ………んんっ!」
 自然と開かれる脚。股間から何かが噴き出し、顔にかかった。
「きた、ない……っ! です……か、らぁ……ぅあ!」
「大丈夫。汚くなんかないよ」
 瑠璃花の制止を無視して、何度も舐め上げ、指で掻き出す。
瑠璃花も手で小波の顔を押して抵抗しているのだが、
完全に力負けしていてほとんど意味がない。
「や………あっ、あっ、ぁああ!!」
 瑠璃花が今日一番の大きな声を出した。
背筋を反って、しばらくそのまま制止する。
「………これくらいなら……もう大丈夫……かな?」
 どのくらい濡れていればいいかなど全く分からないが、
この状態なら大丈夫だと思えるくらいに瑠璃花の秘部は濡れていた。
事実、瑠璃花のそこはヒクヒクしていて、
小波の生殖器を迎える準備万全である。
「えっと……確か……」
 財布を開き、中からコンドーム―――先輩から貰った物―――を取り出した。
授業の内容を脳の奥から引っ張り出す。
 袋を破り、取り出し、先を捻った後、装着。
これで妊娠を防げるはずだ……………破れない限り。
「瑠璃花………いくよ?」
「ちょっと………待って下さい」
 心の準備をしているのだろう。1、2回深呼吸して息を整え、目を開く。
「………いいですよ?」
「初めは一気にいった方がいいらしいけど………どうする?」
「……お任せします」
「あぁ、分かったよ」
 返事の後に、軽く触れるだけのキスをする。
腰を掴んで、先端を入り口に差し込んで、小波は一気に瑠璃花を貫いた。

「!!!!!………………あ……は……」
 痛み―――と言うより、それは衝撃に強かった。
刃物で刺されたような、硬い物で殴られたような、そんな感じ。
異物が自分の中に入りこんで、中から自分を壊していく。
 痛みのあまり声もでない。
 …………でも
「瑠璃花……大丈夫?」
「いた………………でも………だいじょう、ぶ…」
 嬉しいから。
痛みで言葉には出来ないが、本当にそう思っていた。
「大丈夫って………泣いてるのに、そんな訳ないって!」
「ほん、とうに………だい……じょうぶ、です」
 あの日、小波が試合に負けていたらこの痛みを味わう事もなかっただろう。
いや、味わったかもしれないが、相手はきっと小波ではないはずだ。
 そう思うとこの苦しみさえも幸せに思えてくる。
「もう、本当に、大丈夫………ですから」
 そう言い続ける瑠璃花に、小波は静かに頷いた。
「………分かった。出来るだけ優しくするよ」
「………お願い、します……」
 瑠璃花が呟くのを確認してから、小波はゆっくりと動き出した。
「んっ! あ゙っ! 〜〜〜〜〜〜!!」
 正直、まだズキズキとしてかなり痛いが、我慢出来ないほどではない。
歯を食いしばって、腕や足で小波を力の限り抱きしめる。
 そうすれば耐えられる、そんな気がした。
「うぁ、これ………凄い……」
 小波は小波で苦しんでいた。
幼さを見せる瑠璃花の生殖器は締め付けがものすごい。
 自分で慰めているのとは全く違う快感。頂点に立っするのも時間の問題だった。
「あ゙っ! うぁあ…………んんっ!!」
 次第に瑠璃花に変化が訪れる。
確かに痛い、痛いのだが…………最初ほどではない。
 だんだんと快楽の方が強くなってきて、痛みを和らげていた。
「あっ! こな………みっ!!」
「ん! 何!?」
「キス………し、て……あぁっ! くだ、さい………っ!!」
 まだ苦しそうな途切れ途切れな声。だが中に少しだけ色気が篭っている。
「んっ! うあ゙っ! ぁあ……んん!!」
 お願いを聞きいれ、瑠璃花の声の出口を唇で塞ぐ。
瑠璃花が首に抱き着いて、唇を押し付けるようなキスになる。
 だが二人はひたすらに続ける。小波の終わりがくるまで、何度も何度も。
「んんん! んーーんん!!」
 小波の限界が近づく。瑠璃花に言おうとしても、口を塞がれているので声はでないが。
どんどん高まっていく射精感と絶頂感。
 そして
「んん、ん、ん゙ん゙ん゙〜〜〜〜〜〜!!!」
 絶頂、昇天、快感。
全てが感覚が小波を満たしていく。
 0距離で感じる瑠璃花の温もり。力尽きたように、瑠璃花の手足が離れた。
「………大丈夫?」
「……………はい」
 息が上がっているが、それは別に大丈夫だろう。
確認の意味で瑠璃花の身体を隅々まで見渡していく。
 股間周辺に付いた血が少し生々しいが、あとは問題なさそうだ。
「瑠璃花……お疲れ様」
「………小波も、お疲れ様です」
 二人はどちらとなく近づいて、優しくキスをした。

 数十分後―――
「暑…………やっぱりクーラーつけるべきだったね」
「確かに……そうですね」
 真夏日に、窓もカーテンも閉めきった部屋でこんな事をすれば当然の結果だろう。
部屋の中は、暑いやら湿気やら匂いやらで大変な事になっていた。
 部屋の状態をザッと見て瑠璃花が言う。
「それよりも、私は掃除が出来なかったのが残念です」
「う………」
 確かにその通り。
 部屋は初めよりはましになったが、掃除機も完全にはかかっていないし、
まだ出しっぱなしな本や洗濯物もある。
 また瑠璃花に迷惑かけちゃうな………と小波が思っていると、
「………じゃあ小波、後は頑張ってくださいね?」
「……………………え? な、なんで!?」
 言葉の意味を理解し、瑠璃花に詰め寄っていく。
 すると瑠璃花が呆れた顔になった。
「何でって…………ここは小波の部屋でしょう」
 違いますか?と瑠璃花は続ける。
おっしゃる通りで。粉う方なき小波の部屋である。
「まぁ……そうなんだけど………せめて手伝って………」
「……小波は、痛みを訴える女の子に手伝わせる気ですか?」
「…………はーい……」
 渋々といった感じで、小波は掃除を開始した。
 先ずは床に広がった本やら服やらを片付けていく。
 その後は掃除機だ。
「…………はぁ」
 いつもなら適当にやって掃除機をかけるのだが、今日はそうはいかない。瑠璃花の監視がある。
 その瑠璃花はというと、布団の上に座ってずっと小波の方を見つめていた。
「あぁ…………」
 小波が大量の本を持って移動していた時、当然瑠璃花が口を開いた。
「私の処女……小波に奪われちゃったんですね」
「奪った………って、おいっ!」
 そんな言い方はないだろう、と瑠璃花の方を振り返る小波。
 しかし瑠璃花はまだ続ける。
「お母さん………私、傷物にされちゃいました」
「ちょっ………瑠璃花!?」
 何言ってるだよ、と叫ぶ小波。
同意の上での出来事をそんな風に言われたらたまったものじゃない。
 この後、汚されたとか言われたら卒倒物である。
「瑠璃………」
「だから……」
 何とか反論しようと小波が口を開いたが、瑠璃花がそれを遮った。
 改めて小波に向き合い、飛びっ切りの笑顔で言う。
「一生………責任取ってくださいね?」
 小波は、そこら中に本をぶちまけた。

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