あれからどの位時が経ったのだろうか
12才の時大怪我をおい、1年間リハビリに使い同年代より1つ遅れて高校に入り、
紫杏や朱里、そして何年後かに自分の夫になる人物の小波と出会った。
二年の体育祭の時、観客席に顔から突っ込んで保健室で小波と初めて繋がった。
それからは人がいず、二人の時は必ずと言って良いほど交わっていた。
三年の夏に一度、黒猫こと芹沢真央と浜野朱里と共に戦う為に小波の元を離れた。

――何十年も経って――
リーダーと浜野朱里とは連絡付かず。
神条紫杏は寿命で亡くなり、最愛の夫で日本の野球界に名を轟かせた小波も去年亡くなった。
残ったのは自分と長女の紫杏と次女の朱里だけ。
しかし、その二人の愛娘の子供――自分の孫にあたる――
紫杏の子の智美・珠子・玲奈。朱里の子は夏菜・春香・茜・武美が
今日は家に来ている。ウチは小波の遺影の前に座り一言
「今日は皆来たで」
と、遺影に向かい伝える。すると、紫杏が来て
「お母さん、今日は私と朱里の二人で晩御飯作るからゆっくりしてていいよ」
と、紫杏が思いやりを見せてくれた。紫杏達が台所に行ったのを見て一言
――誰にも聞こえない――小さな声で。
「紫杏...アンタに似てウチの紫杏も思いやりのあるいい子に育ったで」
「朱里...ウチの子の朱里も厳しい性格の子やで」
ぼやいてみる。そして、目をつぶる。何かが見えるあれは...紫杏と朱里そして...小波だ
皆、仲良く――よく聞こえないけど――お喋りをしている。実に楽しそうだ。
自分もあの中に混じってお喋りをしたい。そんな願望が口に出ていた。
「ウチも...ウチも混ぜてえなぁ」
「え?お祖母ちゃんどうしたんです?何に混ぜてほしいのですか?」
茜の声がする。でも目を開けたら小波達に会えなくなるような気がするのであけない。
「大変です!お母さん、お祖母ちゃんが目を開けません!」
やっぱり茜の声する。目を開けない事に驚いて朱里に伝えに行った様だ。
「大丈夫。考え事をしているだけよ」
「そうなんですか...」


「ん?ここは何処や。あれ、なんか声が昔の声になっているような?」
「あれ?和那じゃないか!」
「そうだな、あれは和那だな」
「そうね。」
皆の懐かしい面子の声がする。期待を込めて振り返ると予想どうりの人達がいた。
「小波!それに紫杏、朱里」
彼らが居る方へ行こうとする。しかし、紫杏から警告を受けた。
「まて、此処はあの世だ。いま、お前が居る場所は境目だから一歩でもくぐれば
お前はこの世の人間ではなくあの世の人間となる。だから、今決めろ」
「...」
正直、和那は迷った。まだ愛娘の紫杏達が心配だ。しかし、自分も一緒に話をしたい。
少しの時間の沈黙それを破ったのは小波だった。
「...まあ、良いんじゃないか?もう、あいつ等の心配は父親としては
恥ずかしい事なのかも知れないけど、十分大人だ。第一、明日にはあいつ等は
帰ってしまうのだろう?なら、今皆に看取られながら死ぬのもいいんじゃないか?」
「そうやな...そうやね今そっち行くわ。待っててな」
そして、小波と手が触れる。小波は優しく一言
「お帰り、和那。そしてお疲れ様」
「ただいま。もう、ずっと一緒やで小波」
「ああ...」

「あれ?何かお祖母ちゃんの様子がおかしい。まさか!」
皆と遊んでいた武美が異変に気づき恐る恐る脈を測ろうとする
「...ない。お母さん!おばさん!お祖母ちゃんが息していないよ!」
「まったく、冗談も程々にしなさい武美ちゃん」
「本当だよ嘘じゃないよ」
いつになく真面目な武美。そして、紫杏が和那の脈を測ろうとする。
「...武美ちゃん。お祖母ちゃんはお祖父ちゃんの所へ遊びに逝ったの」
「そうなの?」
「そうよ。だけどいつか皆会えるわ。だから、あっちに行ってて」
「うん...」
武美がまた遊びに行くのを確認して紫杏は泣きながら
「お疲れ様でした...お母さん...」
と、言った。
このことはすぐに世間に広まり「名選手の妻、後を追う様に亡くなる」と報道された。

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