八月三十日、二日前に野球ゲームの大会の決勝を勝ち抜き、
ついに明日あのデウエスとの試合が始まる。
私はその時に彼女のデータを探ろうと彼に提案した。
彼は私を心配しながらも受け入れてくれ、協力してもくれた。
この数日でそのオカルトテクロノジーのデータを入手する手段の目途はたった。
しかし今日になって始めて深く考える。
寺岡かおるは私のあこがれだった人。
この事件が終わったらあの人が勤めていた和桐を選ぼうと思っているけど、
相手はその寺岡かおるの深層のデウエス。
私達は本当に彼女と戦って勝てるのか?
もし勝てたとして彼女のデータを取るときに襲われたら私はどうなるのか…。
それを改めて考えると怖くなってきた。

思えば後輩の友達の口調でツナミネットで動き回っていた時に彼と出会い、
その後現実でも出会って彼との運命の出会いを信じ、付き合っていて、
本当に好きになってしまった。
もう会えなくなってしまったらどうしよう、その不安でいっぱいだった。

そんな中、とある人に電話をかけてみると考えたのは何故か。
おそらくその人には私と同じ彼氏がいたからだからかもしれなかった。



「はい、南雲です。
あっ、先輩ですか?
どうしたんです?もう夜になりますけど?」
相手は大学の後輩に向けてだ。
「瑠璃ちゃん…あのね…」
「あっ、言わなくてもなんとなくわかりますよ。
なんか不安なこと感じているんでしょう?」
「どうしてわかるの…?」
「だって酔っていない時の先輩は少し夢見がちなことばっかり考えているから、
その少し暗い口調ならなにかあったんだと思いますよ」
夢見がちとか言われて、少し苛立ったがそれは言葉には出さずに
呪いのゲームのこととかをある程度ぼかして彼女に相談する。
「そんなことがあったんですね…、でも私から言えることとしたら、
そのことは先輩が一番大切と思っている人にすべて打ち明けたらいいと思いますよ」
大切な人と言われて真っ先にあの人が思い浮かぶ。
「私もですね、時々不安になることがあるんですよ。あの人のこととかで。
それで鈴ちゃんに相談したらやっぱりあの人と直接話したほうがいいと言われたんですね。
それであの人とかに打ち明けるとその問題は解決はしてないのに不思議と落ち着くんです。
不思議ですよね、男の人の側にいることがどうして落ち着けるか。
鈴ちゃんを見てると私もあの人にもっと積極的にならなきゃなって思うんですよ」
後輩の友人は既に結婚して一人の子を育てている、
しかも本人によるともしかして二人目ができたかもしれないって。
「ありがとう、何か心の中がすっきりしたような感じよ」
「先輩もがんばってくださいね」
一瞬がんばるって何を?って思ったけど、口にはださずに電話を切った。

もう夜中になるのに私は外へ出る、あの人の元へ…。



そっと扉のドアを二度、三度と叩く。
「はい、どなたですか?」
ドアが開いて彼が姿を現す。
そして私の姿を見て驚きの表情を見せる。
「小波さん…私です」
「れ、レン…」
彼はまじまじと私の顔を除く。
私自身でも不安そうな表情で目に光がないと気づいたのだろう。
「ま、まあ、とりあえず入ってよ」
そういいながら彼は私を入れてくれた。


彼の部屋のロビーにある椅子にそっと座らされる。
私と付き合い始めた頃から掃除をきっちりとし始めて、
いつみてもちゃんと整い綺麗にものが並べられている。
彼の友人らしき人のおもちゃのグッズが窓に沢山並んでいるのは
変わっていないけど…。
すぐ前には、彼がいつも使っているパソコンがある。
少し前は寺岡さんとの話のために私もじっと見ていたこともある。
それをじっとしていていたら、彼の口が開く。
「それで、どうしたんだい、こんな夜中に」
私は胸の高まりが治まらなかった。
明日のことに対する恐怖と共にそれをいう自信が。
それでも後輩の言葉を思い出し勇気を出していった。
頬を赤らめてしまいながら…。



「……小波さん。
今日は泊まってもいいですか?」
しばらく時が止まったかのようだった。
彼は私の言ったことに対しておどろきを感じるどころじゃなく、
唖然としている。
「レン…酔っていないよね?」
「はい、今日は酔ってはいません」
お酒を飲む気は今日はなかった。
普通ならここでお酒を飲んでて我を忘れていたかったけど、
どうしてもそのつもりにはなれなかった。
それを聞くと、彼が真面目な顔に戻って言う。
「じゃあ、どうして…」
「……怖いんです」
「…え?」
彼がきょとんとした表情を見せる。
私は自分を落ち着かせ息を大きく吸う。

「明日はあのデウエスと戦うんです。
私達が戦って本当に勝てるかどうか、
勝てたとしてもその後で私が無事になるかどうか…」
後輩から言われた夢見がちなことを考えて、
事の大きさを理解しづらいのが私の欠点かもしれない。
それで深く考えるとこれから私のすることに対して、
恐怖を覚える。
「明日、もしかしたら消えてしまうかもって思ったら、
一人ではいられなくて…。
それで小波さんの所に…」
「レン…」
私の話に対し彼は黙々と聞いている。




「私に言ってくれましたよね?
悔いの残らないようにやりたいことをやるべきだって」
私がデウエスのデータを取ろうと提案したときに言ってくれた言葉だ。
それを覚えていたからこそ言える言葉だった。
私達の人生は一度しかない、
だからやりたいことをやる、そしてその終わりは明日かもしれないから…。
「だから今日はここに来ました。
どういう結果になっても悔いを残さないために…」
私はあなたという素敵な男の人に出会えた。
まだ会って数ヶ月しか経っていないし、
世間からみれば、彼は落ちぶれた人間かもしれない。
それでも街中で財布を落としたり、道に迷っていた私を、
二度も助けてくれたのはあなただった。
自分のチームのリーダーがあなただと知って運命だと思った。
夢見がちな人だと言われてもいい、あなたが好きだから、
あなたとの悔いを残したくない…。
「わかった…。
今夜は一緒にすごそう」
彼は微笑みながら言ってくれた。
その返事とその微笑に惹きつかれ私はうっとりしていた。
「小波さん……」
私は自分からあなたの所へ向かい、抱きつく。
あなたは優しくそっと抱きしめてくれた。
「小波さん…大好きです…」
「ああ…レン…」



「ここじゃなんだし、寝室へいこうか」
「はい…きゃっ?」
急に悲鳴を上げてしまう。
いきなり彼が私を抱きかかえてきたからだ。
「ごめんレン、驚いた?」
「いえ、でも小波さん、力持ちですね」
「伊達に大学まで野球やってたからさ…」
「野球、大好きですね」
「あたりまえさ」
自身でいうのもどうかだけど、私は少しふっくらしているほうだ。
それを軽々と抱きかかえるあなたにまたうっとりする。
その逞しい腕は彼の大学から衰えてはいないみたいだった。
話で聞いただけだけど、ツナミの工作員に襲われた時に彼はウズキさんから
銃を借りて撃退したみたいだ。
そんなことを考えている中、そっと寝台に寝そべられる。
「レン、今夜、一緒に過ごすのはどういうことか…わかるよね?」
「はい…」
「俺、今まで女運がなくてさ…、まったく何も知らないよ?」
「私だって同じです」
言いながら頬を赤らめる。今までの中、本やネットの中でしかそういう
知識はない、胸がどくどくと鳴り響いている。彼も同じなのだろう。
「できるだけやさしくするように努力するよ」
「はい…お願いします」
頷いた後にいきなり首を触れられ顔を近づけられる。
「ん……」
もう何度かしたキス、しかし今日のは今までと違って、
強く激しい口付けだった。彼が頭の中で確かめるような仕草をしながら、
口の中から舌を出してくる。私もできるだけ頭の中でぼやけるように
探しながらそれに応える。


それを何度か繰り返した後、息も苦しくなり呼吸が荒くなる。
そして頭の中にはもう目の前のあなたにしか興味がなかった。
目の前の彼は私と比べてあくまで冷静なそぶりを見せる。
「それじゃ、少しずつ触れていくよ…」
彼はそういいながら私の体に触れていく。
最初は腕から、鎖骨へとつづき足や太腿に撫でるようにしていく。
そして手のひらが胸に触れると、
「あっ…」
体中に甘い痺れが走り、声を上げる、一際変な声を。
「大丈夫?」
彼が心配そうに聞く。
それに対して私は頷いて微笑んで安心させた。
「でも、可愛かったよ、さっきの声」
そう言われると恥ずかしくなり真っ赤になっていった。
その後も服越しで体を触れられ続けた、これからのために
慣れておく必要があるのはわかるけど触れられる度にまた声をあげてしまう。
彼にとってはそれが気持ちいい声に聞こえるらしく執拗に触れていった。
体中が熱くなっていき、夢中になっていく。
そっと彼が私の上着に手をかける。
「いいね、レン」
「はい…」
正直にこの行為をするのさえ怖い、それでも頷いた。
大丈夫、大丈夫よと自分に念じながら。
上着が寝台の側に放られ残った下着も彼はどきどきしながら、
手に掛けていった。
うまれたままの姿の私が寝台に横たわる。
恥じらいで頬を赤らめながら彼を振り向く。
「小波さん、私…」
「ああ、素敵だよ…レン」



彼は私の膨らみにそっと手のひらを当てる。
服越しで触れられた以上に痺れるような感覚を味わいながらそれが不快なものじゃなく、
気持ちのいいものだと私は思った。
彼の手が胸から下にすべるように動き、やがてその場所に達した途端、
「はあああんっ!!」
いきなり今まで以上にずっと激しい痺れる感覚を味わい、大きく喘ぎ声を上げてしまう。
その声に驚きながらも彼はその場所に執拗にふれる。
「ひゃあっ!そこは…だめ…」
「気持ちいいの?」
「ち、違います…そこは…ああっ!!」
またそこを触れられる、ぐちゃっというような水の音が聞こえはじめる。
触れられる度にその音が強くなっていく。
「ああっ、やめて、小波さん、はあっ、あんっ!ああぁっ!!」
口ではやめてといいながらも、気持ちよくなっていって、もっとしてほしいという、
気持ちが強くなる、口でいうにはあまりにも恥ずかしすぎてそんな言葉なんかいえなかった。
「あんっ、小波さん、私…もう……」
「俺も…限界だよ」
そう言った彼は、服を脱ぎ始めた。
逞しい姿を見せながら私に覆いかさぶり、私は足を開かされる。
その場所にとても熱いものが押し当てられる。
「痛かったら言ってね…いいかい?」
「はい…きて…」
最初に彼はゆっくり進んでいく、まだ進んでいくごとに下腹から痛みが走り、
耐えながら進む。と、彼の進行を妨げるものがある。
「このまま一気に進むよ」
私は覚悟を決めた。
これから自分の初めてを彼に捧げること、
そしてその痛みに対する覚悟を。



そのまま勢いよく彼が突き、私は彼に貫かれた。
「っ!あああああああああああっ!!!」
いきなり下半身から熱くて強いものが入り込み、体を引き裂かれるような感覚に陥る。
覚悟はしていたはずだけど、想像していたよりずっと激しいもの。
視界が涙でぼやけ、体中が麻痺し、残るのは激しい痛み。
「レンっ!ごめんっ!大丈夫!?」
「うああぁ、痛い…くうう」
彼が呼びかけているけどあまり聞こえずに必死で歯を食いしばり痛みを堪えるしかなかった。頭の中がぼやけて意識が消えそうになるのを耐える。
話すこともできずに体中に響く痛みが消えるのを待つしかなかった。
そんな中、彼は私の必死に食いしばっている唇にキスをした。
これで少しでも痛みを紛らわせてくれるようにしてくれたのだろう。
やがて彼が再び強く抱きしめ始め、言った。
「大丈夫だよ、レン。俺達は一緒なんだ」
そう呼びかけられるのを繰り返されながら時間が経つと、
自然に痛みが少しずつひきはじめる。
逆に私の中にある彼のそれがとても暖かくなっていく。
彼が私の中にいる、いま私はあなたと一つになっているんだ。
そう思うと嬉しくて微笑んでいた。それを見た彼が、
「もう大丈夫だね?」
「はい…だから続けてください…あなたと一緒に…」



ゆっくり彼が腰を動かしていく。
すっかり痛みはなくなっていて、ぐちゃぐちゃという水の音と共に、
気持ちいい快感が体中に覆う。
「はぁっ!あああっ!小波さんっ!小波さんっ!気持ちいいのっ!ひゃああぁ!」
恥ずかしい嬌声を何度も何度も彼の前であげながら首をふって悶えながら、
彼から与えられる快楽に身をまかせる。
気がつくと自分から腰を動かしながら彼と一緒になっていく。
「あんっ!!ひゃあああんっ!小波さんっ!大好きですっ!あんっ!ああんっ!!」
もしかしたら声がこのアパートの人々に聞こえるかもしれない。
でもそれはもうどうでもよかった。
ここであなたに与えられる快楽に溺れてしまいたい、あなたとなら一緒にどこまでも…。
「レンっ!好きだっ!大好きだっ!」
「小波さんっ私も、大好きですっ!あんっ!あんっ!あんっ!あああぁんっ!!」
お互いに限界に近づいていく。
そして彼から大きく突き入れられたときにそれはきた。

「レンっ!!」
「こなみさああっぁんっ!んんんあああああああああああぁっ!!!」

私は限界に達し一際彼の名前を呼びながら大きな嬌声をあげた。
それと同時に彼のそれからねっとりとした熱いものを私の中に注ぎ込まれる。
とても熱くて気持ちのいいもの…。
その熱にうっとりしているなか彼が私を見る、
私は彼に微笑み返した後、ゆっくりと瞳を閉じた……。



「うううん…」
目を開けたのは夜が明けたばかりのこと、
ふとみると眠っていた寝台には私と彼がお互い寄り添いあっていた。
それを見て、昨日の夜、彼と何があったのかを思い出す。
(そうだ…私…小波さんと……)
その答えに辿り着いた途端、昨日の自分の取り乱しぶりに頬を赤らめる。
とても今、私は幸せな気分だった。
まず私自身の服を取り繕った後、彼が風邪をひかないように彼の服を
簡単に取り繕った。
そして台所に向かって歩み始める。
今日が私と彼との運命を決める日、でももう恐怖などはなかった。
後輩からの教えと一緒にあなたと二人で作った自信がある。
だからもう怖くはない。

「おはよう、レン」
やがて彼が起きてこちらにやってくる。
「おはようございますっ!」
私は満面の笑顔で彼に返した……。



「よしっあと少しでデウエスのデータを全部っ!」
「人間め、ちょこまかとっ!!」
「えっ!?」
暴走を始めたデウエスの魔の手が私を襲う。
「きゃああああああっ!」
(もうだめっ!)
「レン!」
そんな中、デウエスから私を助けたのは彼だった。
「大丈夫かレン!?」
「はいっ!データも充分です」
「よしこのままみんなのところまで逃げるぞっ!」
彼に抱きかかえられながらその逞しさを感じながら応える。
「はいっ!」
私達はこれからのために走っていった。
これから一緒になるために。

管理人/副管理人のみ編集できます