「…で、これは一体どういうことなの?」
「すいません…本当に…すいませんでした!」
 勢いよく頭を下げ、謝罪の言葉をかける。こんな土下座で許してもらえるはずも無いのだろうが。
「はぁ…あたしっていう女がいるのに、こんなことが出来るなんて…小波さんの浮気者!」
「え?浮気?」
 思わずぽかんとして頭を上げる。視線の先にいたのは、半眼でこちらをにらむ武美の顔。
その表情からは怒りよりもむしろ呆れの気持ちが感じられる。
「当然でしょ!こんなの浮気も同然だよ!…あたしとの関係に、何か不満でもあるの?」
「いいえ…ありません…これはほんの出来心で…というか、これには深い訳が…」
「言い訳なんか聞きたくないよ!」
 恐ろしい勢いで言葉を遮られる。いや、これには訳があるのに…。
 だが、そう嘆願する俺の表情は無視された。
「…とりあえず、1週間ごはん抜きだから。河川敷で魚でも釣って、自給自足しなさい!」
「わ…分かりました!申し訳ございませんでした!」
再び勢いよく頭を下げる。勢い余って床に頭をぶつけたが、気にする余裕もなかった。
(はぁ…何やってんだよ俺…)

「兄貴!いいDVDがあるんですけど、どうっすか?」
野球の練習を終え、帰宅の準備をしていたときのことだった。寺門に勧められたのは、何の変哲もないアニメ映画のDVD。
「風邪の谷のナウい鹿…?ああ、数年前話題になってたな」
「えっ!よく知ってますね。てっきり知らないかと思ってましたけど」
「あぁ。よく電器屋のテレビのCMで見たんだ」
「あ、そうですか…」
冷たい視線を向けられる。仕方もない。放浪時代の情報取得手段といえば、道端に落ちてる新聞を拾い読みするか、テレビは公共の場に置いてあるのを見るしかなかったものだ。
まぁしかし何にせよ、映画は時々武美と見に行く程度。家で見ようというような気も起こらなかった。
「ははっ、まぁあいにく俺はそんなのには興味ないんでな。じゃあ」
 断りの言葉を言い捨て、立ち去ろうとする。…が
「ちょちょ、待ってくださいよ!」
 突然腕をつかまれ、後ろに引き戻された。危うく倒れこみそうになったが、何とか踏ん張って立ち上がる。
「…っとっと、危ないな!何するんだよ」
「いやいや、これバイト先の先輩に借りたんですけど、ホントに泣けるんですよ!血も涙もない兄貴でも、絶対に感動しますから!」
「なに人のこと悪魔みたいに言ってるんだ!」
「おねがいしますよぉ、みてくださいよぉ」
 変な声で懇願してくる寺門。どう考えても怪しかったが、これ以上練習で汗をかいた体でベタつかれるのも嫌だった。
「…わかったよ。借りてみるよ」
「やったぁ!ありがとうございます!じゃあ、返すのは4日後でお願いします!」
 了承した途端ニヤニヤ喜びながらDVDを手渡し、早々に立ち去っていく寺門。ますます怪しい。
「………ま、いいか」
 DVDをバッグの中に詰め込む。まぁ見ずに返してもバチは当たらないだろう、感想聞かれても適当に答えればどうにかなるだろうし。
 そんなことを考えながら帰路に立つ。このDVDが事件を起こすとは、その時思いもしなかった。


事件が起きたのは、その3日後。
日曜日というわけで、練習は休み。武美もカシミールの手伝いに行っている日である。
何もすることがなく、とりあえず野球道具の整理でもしようとバッグをあさっていた時だった。
「…?…なんだこりゃ」
バッグの奥底に入り込んでいた物体を取り出す。出てきたのは寺門から借りていたDVD。
「あ、そういやこれ借りてたな…確か明日返す約束だったっけ」
 妙に懇願してきた寺門の顔が頭によぎる。さすがにあれだけ頼んできたんだから、見ずに返すのは悪いだろうか。
それに、あんなに勧めてきた理由も気になる。こういう娯楽が好きそうには見えない寺門が勧めてきたんだから、よほど素晴らしい映画なのか。それとも、何か裏があるのか。
そんなことを考えながら、DVDのパッケージを開く。
「あれ?なんだこのディスク」
 取り出したDVDのディスクはなぜか表面が油性マジックで塗りつぶしてあった。違和感を感じながら、レコーダーにDVDを入れる。その予感は的中した。
「…何だ…こりゃ」
 テレビに映ったのはアニメではなく、何処ぞとも知れぬ病院の一室。病室にいるのは男性ばかりで、そこに若くスタイルの良い女性が入ってくる。ミニスカートに胸元の大きく開いたナース服。
このDVDが何であるかはその場面で悟ったが、そのときの俺は停止ボタンを押すことが出来なかった。その女優のスタイルが良かったのも要因の一つだが、これが男の性というやつなのだろうか。


しばらく進むと、予想通りおもむろに看護婦が服を脱ぎだし、患者の上にまたがり腰を振り出した。 
「あっ…あん…はぁ、はぁ、…んっ」
 男なら誰でも一度は抱きたいと思うであろう体つきだ。形の整った胸部に加え、細くてすらりとした体。 
こんなナースが誘ってきたとしたら、俺はどうするだろうか。…いや、俺には武美という大切な存在が……武美?
(ブツン!)
頭の中に武美の顔が浮かぶやいなや、反射的にリモコンへと手を伸ばし、レコーダーを停止した。黒くなった画面を見つめながら、大きなため息をつく。
「はぁ……何やってんだ俺。武美っていう大切な彼女がいるってのに、他の女性に情欲を持ってしまうなんて…」
 そのままレコーダーからDVDを取り出し、パッケージへと戻す。すると今度は武美に変わって寺門の顔が頭に浮かんできた。
「…しかし寺門は結局何がやりたかったんだ?アニメDVDとか言いながらこんなアダルトDVD渡してきやがって…訳分からん。ホントに分からん、何やってんだあいつ」
「それは、こっちの台詞だねぇ」

「………………!!!?」
一瞬で体が凍りつく。後ろから聞こえてきたのは…誰の声だろうか。
いや、よく聞き取れなかったなぁ…女性の声だった気がするけど、まさか武美じゃあるまい、まだ帰ってくるには早すぎるし…あ、そうだ。
きっと回覧板か何かを届けに来てくれたご近所の人だ!いや〜こまったなぁ変なところを見られてしまって。まぁ、なんとかごまかせばだいじょうぶだろう。
そんな儚い期待を抱きながら、口元に軽い笑みを作り後ろを振り向く。…やっぱり聞き違いではなかった。
振り返った先にいたのは、両手に買い物袋をぶら下げた武美の姿。顔は…なぜか満面の笑みだ。
「お…お早いお帰りですねぇ」
なんとか声をしぼり出す。しかし、何言ってんだ俺
「あはは、今日はなっちゃんがお昼過ぎに帰ってきて『今日はもういいわよ武美、私がやるから。お買い物でもしてきて早く家に帰ってあげなさい、小波さんが家で寂しがってるんじゃない?』って言ってきてくれたから、お言葉に甘えさせてもらったの。
でも、小波さんは別に寂しがってなかったみたいだね♪」
 ザクリ。鋭いナイフが俺の左胸に突き刺さる。未だに武美の表情には笑みが浮かんでいる。
「い…いつから……」
 息絶え絶えになりながら、もう一度言葉をしぼり出す。最早何を言うべきかもわからなかった。
「さぁ?確かあのナースさんが服を脱ぎだした頃だったかなぁ〜?」
「……………(バタッ)」


その翌日、グラウンドに着くと俺はまっしぐらに突撃した。
「じもぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!」
「あ、兄貴。どうしたんすか?」
 ストレッチをしながら、何食わぬ表情。そこに問題のDVDをつきつける。
「…どういうことだ、こりゃ」
「あ、見てくれたんすね!なかなかいい体してますよね、あの娘」
「あのな…そうじゃなくて、なんでこんなことやったんだ」
「へ?」
 ぽかんとした表情をする寺門。その顔面をバッドにぶん殴ろうという衝動が起きたが、なんとか抑えきった。しかし寺門の口から出てきたのは、衝撃の告白だった
「あはは、ドッキリですよドッキリ!実際はバイトの先輩から借りたんじゃなくて、中古で売ってあったのを買ったんですけどね。アニメの映画のパッケージは拾ったものなんすけど…」
「ドッキリ…だと…」
 怒りをこめながら言葉を放つ。しかし、寺門はその怒りに気付かず言葉を続けた。
「ええ。喜んでくれるかなぁ〜って思いまして。俺もうあの娘にはまっちゃいましてねぇ。あの娘の作品集めてるんすよ。兄貴も気に入ったんならまた2本くらい貸しま…」
「バカヤロー!」
 思わず、右頬を殴りつける(さすがにバットではなく拳でであるが)
 寺門は勢いよく後ろに倒れこんだが、すぐさま体勢を立ちなおし起き上がった。
「痛いなぁ…何すんだよ兄貴!」
 頬を押さえながら、驚いた表情でこちらを見つめる寺門。
「あのなぁ…お前のせいで…俺は……ぐっ」
 不意に目頭が熱くなる…が、こんなことで泣くまいと歯を強く食いしばった。近くでキャッチボールをしていたチームメイトの視線を感じる。…何やってんだよ、俺
そんな俺を見てからか、寺門が申し訳なさそうにこちらに近づいてきた。
「すいません…あれっすかね、ナースものは苦手だったとか…」
 で、何を言ってんだお前は
「申し訳ありません!今日は練習後ラーメンでもおごりますから、元気出していきましょう!」
「…替え玉頼んでもいいか?」
「いいっすよ、勿論!…じゃ練習に」
「チャーシュー大盛りにしてもいいか?」
「え、あ、はい、いいっすよ」
「餃子も頼んでいいか?」
「…チャーハンもつけましょうか?」
「ああ、すまないな」
「…じゃあ、練習始めましょうか」

…というわけで、その日はなんとか青草とキノコのソテー、一尾魚つきという夕食を避けられた。残りの6日間は粗末な食事で生活することになるのだが。

武美との関係はというと、事件当日こそ会話が少なくなっていたが、その翌日からは普通に話しかけてくれるようになった。
食事の時間こそ「そろそろご飯の支度してきたら?」という感じでそれとなく追い出されるのだが、食事を終えて帰ってくると「おかえり〜」と笑顔で迎えてくれた。
なんとなくそのときが辛かったりもしたのだが。
 
事件から1週間後の朝、「おはよ〜、ご飯出来てるよ」という声で目を覚ました。
約束どおり自給自足期間は1週間で終了。料理の内容も焦げた卵焼きやらパン1枚だけやら悪意の込んだものでもなく、今までどおりのもの。
見た目も今までどおりいびつだったが。
と、そんなこんなでその日からはいつも通りの武美との生活が帰ってきた…という訳ではなかった。
別に態度が冷たいわけではない、以前と比べて会話が減ったわけでもない。
ただ、武美の秘密を知った日からほとんど欠かすことのなかった情事は、完全に日々の生活パターンから抜け落ちていた。


そしてあの事件から2週間後、日曜日。
俺は風呂に入りながら考えにふけっていた。
(ダメだよな…このままじゃ)
ほとんど今までの生活と同じだ。しかし、拭いきれない違和感がある。
このまま煮え切らない関係を続けるわけにもいかない。
(これからの生活の為にも、きっちりこの件にはケリをつけとかないと)
武美と話をしよう。そう決意して、俺は浴槽から出た。

「あ、小波さん、はい!」
「?…なんだ、これ」
「見てわかんないの?牛乳だよ、牛乳!」
 武美が差し出してきたのは、コップいっぱいに注がれた真っ白な牛乳。
見て分からなかった訳ではないが、差し出してきた意図がよく分からなかった。
「風呂上りに冷たい飲み物をグイッっていくのって、やっぱロマンだよねぇ。ビールもいいんだろうけど、やっぱ風呂上りは牛乳でしょ!牛乳なら9歳のあたしでも飲めるしね」
 妙にニコニコ笑顔で話しかけてくる武美。断る理由も無いので、とりあえず受け取り一気に口に流し込んだ。
「おおっ、いい飲みっぷりだねぇ」
「んぐっ、んぐっ…ぷはぁ。牛乳を飲むってのは久しぶりだな」
 俺からコップを受け取った武美はそのままコップを流し台へと持っていった。
ルンルン調子で戻ってきた武美に、とりあえず声をかけてみる。


「あのな、武美…」
「あ、そういえば今日見逃せないドラマがあるんだった!」
 武美は俺の呼びかけを無視して、テレビの電源をつける。聞こえなかったのだろうか、それともわざと無視したのか。何にせよ一度決めた以上、今日中に決着をつけねばならない。意を決して再び武美に話しかける。
「なあ、武美」
「このドラマ、脚本家が良いんだよね。前回のこの人のドラマだってありふれたハッピーエンドじゃなかったし。一緒に見る?」
 間違いない。女の勘というやつなのだろうか、何か仕掛けてくるであろうことに勘づいている。何か話したくない理由でもあるのだろうか。
だが参ってもいられない。先ほどの誘いを無視して今度は強い口調で話しかけてみる。
「ちょっと武美。話が……うっ!?」
 その瞬間、目の前の世界がうねり始めた。頭に鈍い痛みを感じる。
「なんだ…こりゃ……」
「小波さん!大丈夫!?」
 思わず倒れこむ。額を押さえながら見上げる先には、武美の姿。
だが心配している様子はない。むしろしてやったりというような顔をしている。
「これは…一体どういうことだよ…」
「えへへ、さっきの牛乳にちょいと睡眠薬を入れといたんだ♪大丈夫、別に副作用はないから」
「なん…で……」
「何が起こるかは、目覚めてからのお楽しみで〜す♪」
にこにこしながら手を振る武美。小悪魔のような表情だ。若干の不安と恐怖に襲われながら、俺の意識はフェードアウトしていった。


「んん…」
 目の辺りに光を感じ、眠りから覚める。そのままゆっくりと目を開く。
「…どこだ、ここは」
 仰向けの状態で、天井を見やる。背中には布団の感触。しかし、いつも寝ている敷き布団の感触ではない。
部屋の電灯は消されていて、ついているのはベッドのそばにあるステンドライトの光だけだったが、それでも部屋の半分くらいは照らし出されている。
ステンドライトのそばに置かれてある目覚まし時計に目をやると、針は午前3時を差していた。
不意に、眠る前の記憶が頭の中をめぐる。風呂上り、牛乳、ドラマ、睡眠薬、笑顔で手を振る武美の姿……そうだ、こうしちゃいられない。とりあえずここから出て武美を問答しないと。そう思い、起き上がろうとした途端
「………!!?」
 手が動かない。何かに縛られているような感じがした。
「ぐっ、なんだ、こりゃ」
 なんとか体を反転させて両手の先を見やる。縛っていたのは一本の細長い縄だった。手首の先をがんじがらめにされ、並大抵でほどけそうな感じではない。
縛られた先は木製の短い柱のようなもの。そこで俺が寝かされていたのはベッドの上だったということに気付いた。
「これは…いったい…」


「こ、な、み、さ〜ん♪やっと起きましたかぁ」
「……?」
 聞こえたのは武美の声。声のほうを見やると、ライトで照らされされていなかった暗闇から一つの人影が現れてきた。
もちろんそれは武美であった…のだが、どうも様子がおかしい
「あれぇ、どうしたんですか?」
「どうしたんですか…じゃないだろ。なんだ、その格好」
 ボタンのついた薄手の白衣に、純白のナース帽。俺の目に飛び込んできたのは、ナースコスプレをした武美の姿だった。
(ナース……ん…?………!!)
 突然額に冷や汗が走る。確か武美にバレたあのDVDもナースの……まずい、何か企んでる……そう感づくやいなや、一人で焦る俺を尻目に武美は俺の額に手を当ててきた。
「だいじょうぶですか?顔色が悪いみたいですけど」
 そのまま屈みこんで、顔を近づけてくる武美。思わず目をそらしたが、その先に飛び込んだのは
「な…!」
 武美の胸だった。ナース服のサイズが合わないせいか、2つの大きな胸はいつも以上に自己主張をしている。
「う〜ん、顔が赤くなってきましたねぇ。少し熱っぽいみたいですよ?」
 笑顔でこちらを見つめてくる。いたずらっ子のような幼い笑みに、それに似つかない大きく実った2つの胸。
下半身が徐々に熱くなってくる。あの大きな胸にむしゃぶりつきたい、揉みしだきたい、自分の欲望を満たしたい。2週間近くご無沙汰の俺にとって、そんな気持ちを起こすのにはこの程度の誘惑で十分だった。
勢いよく起き上がり、間髪入れず武美をベッドに押し倒す……そんなつもりだった。が
「うぐっ!?」
 あまりに間抜けだった。飛び起きようと手をベッドにつけようとするが、つくはずもない。縄で縛られているのだから。
情けなくもがく俺に対して再び武美は笑顔を向ける。
「だめですよぉ、勝手に動いちゃあ…ん?」
そう言うと突然武美はベッドに飛び乗り、勢いよく俺の下着をずり下ろした
「なっ……?」
「あらあら、こんなに大きくしちゃって」
 下着の抑圧から解放された俺の男根は、天井を向いて大きく膨らんでいた。
自分の準備は出来ているのに、目の前に愛する女性がいるというのに、欲望を満たせない空虚感。 
「正直に言ったら、いいことしてあげますよぉ?」
おもむろに自分の胸を揉みながら誘惑する武美。我慢の限界に達した俺は、遂にプライドを捨てた。


「は…早くしてくれ…」
「え、何をですか?」
 おのれトボけるかぁ!わざとらしくキョトンとする武美に、そう言いそうになった。じわじわと体が震えだす。怒りからではなく、抑えきれない欲望からだ。
「はっきり言ってくれないと、分かんないですよぉ。それにちゃんと『〜してください』って言ってもらわないと」
「パイズリ……してください…」
「え?なんていいましたか?」
「武美さんのおっぱいで、パイズリをしてください!」
「はいはい、よくできました〜♪」
 笑顔を見せながら頭を撫でてくる武美。完全にペースに飲まれてしまったが、そんなことは気にしていられなかった。
そのまま武美はボタンに手をかけ、一つずつゆっくりと下ろしていく。一つ一つ外されていくたびに露わになる武美の谷間。胸近くのボタンをいくつか外した辺りで、武美はベッドに跳び乗ってきた。
バストトップは見えないにしろ、2つの胸が作り出す美しい谷間を見るだけで、俺の男根の大きさは限界に達した。
「…は、早く」
「はいはい、いまやりますよぉ」
親指をあてがい、谷間を押し広げてゆく。そしてその谷間にゆっくりと俺のモノを包み込んでいく。深く入り込んでいくにつれて男根を刺激する柔らかな感触。深く包み込まれていくたびに、俺の体は快感で震えた。
「ぐっ……はぁ…はぁ…」
「は〜い、それじゃいっきますよぉ!いっぱい出して、元気になってくださいネ♪」
「は…はい…」
 なすがままにされている俺を見るのが楽しいのだろう、武美はくすくすと笑いながら両手で胸を挟みながら、ゆっくりと男根を刺激していく。
なんとも言えない柔らかい感触に挟み込まれるたびに、思わず息が乱れていく。
「くぁ……はぁ…」
「どうですか?気持ち良いですかぁ?」
「は…はい…気持ち良いです」
 笑顔で問いかけてくる声。男としてのプライドうんぬん以上に、こらえきれない欲望を満足させることの方が俺にとって重要だった。
「もっと激しくしてくださいって言ったら、もっと強く挟んであげますよぉ?」
「……なんだって…?」
「あっ、従わない気ですか?いいもん、それじゃしてあげないから」
「な…も、もっと激しく…してください」
「は〜いわかりましたぁ」
 そう言うと武美は胸を鷲摑みするように持ち換え、円を描くように胸を動かしだした。最初は遅く、徐々に刺激のスピードを速めていく。片方では小さく、もう一方では大きく。右胸は左回りに、左胸は右回りに円を描く。
不規則に刺激していく柔らかな感触で、俺のモノは限界を迎えだしていた。
「あん…どんどん小波さんのが熱くなってきてますよぉ。そろそろ限界みたいだし、じゃあトドメを差しますか♪」
 そう言うやいなや、武美は今までにないスピードで、激しく胸で挟み込んでいく。
「うっ…うぐっ……うああああ!!」
 ほんの一瞬現れた理性の健闘もむなしく、俺は大きな叫び声を上げた。一度、二度、三度……大きな脈を打ちながら快感が武美の胸の中へと流れ込んでいく。何度も荒く息を吐く俺に、武美はしてやったりの笑顔を向けた。


「くすっ、なかなか可愛かったですよ、小波さんの声」
「…ぐっ……」
 屈辱的な一声。だが俺はなんと言うこともできなかった。快感の余韻に浸った後、再び考え込む。
結構な量を出したとはいえ、俺の本能は未だに満足しきっていない。しかしこの状況とあっては武美に服従せざるを得ない。ここで俺は、武美の狙いに気付いた。
(プライドか、俺のプライドが狙いかぁ!)
「うわぁ〜、すごいいっぱい出ましたねぇ。胸の中がとっても温かいですよぉ♪」
 そう言いながら、胸を引き抜いていく。そしてこちらの目を見て、ニヤリと微笑む。これじゃ終わらせないよ、まだ小波さんのプライドをぶっつぶしてあげるんだから!…と言わんばかりの表情だ。  
(せめて…この縄がほどけたなら…)
 両手をあくせくと動かしてみる。無駄か…そう思った途端
「……………………………!!!?」

「え〜っと、んじゃあ、次はそろそろおっぱいを見たいんじゃないですかぁ?ねっ?」
「……………」
「あれぇ?返事がありませんねぇ」
「…そうだな」
「…むぅ?」
 眉をひそめ、怪訝そうな表情でこちらを見つめる武美。
「いやいや、『…そうだな』じゃなくて『はぁはぁ…お願いします…この愚かな風来坊に武美さんの神々しいおっぱいを拝ませてください…』って言ってもらわないと。はいリピートアフターミー!」
「その必要は……ない!」
 にやりと口をゆがませ、瞬時に起き上がると俺は武美をベッドに押し倒した。そのまま仰向けになった武美の方を押さえつける。
…形勢逆転。
「…………ホワイ?」
 先ほどまでニコニコとしていた武美の目は点のようになりこちらに問いかけてくる。その額からは汗が流れ出しており、焦っているのが見え見えだった。
「残念だったな武美…お前が油断しているスキに、縄はほどかせてもらったぜ!」
 ガーン!と言わんばかりに武美の口がぽかんと開く。とはいえ、こちらも狙って出来たわけではない。
快楽に狂っているうちに暴れていた両腕で勝手にほどけたか、それとも本能を押さえる役目を失っていた理性が俺が気付かぬうちに縄をほどかせていたのか。
どちらにせよ、無意識のうちに腕が自由になっていたのは確かだ。
「なんで…そんな…どうして…強く縛ったはずなのに…ひぅ!」
 現実から逃れようとする武美の頬を掌で掴む。反撃開始だ
「第2ラウンドといきましょうか、可愛いナースさん」
「ふぁ……ふぁい……」

凍りついた表情から一転、武美の目は許しを懇願するかのようにこちらを見つめてくる。だがそんな願いをよそに、俺は白衣のボタンをそそくさと外していく。
ボタンの締め付けから解放された2つの胸がぷるんと震える。両胸の間は先ほど流し込んだ白濁の液体でいっぱいになっている。
俺はそれを指ですくうと、ローションのようにそれを胸へと塗り広げた。薄ピンクの乳頭が見る見るうちに硬くなっていくのが分かる。
「ははっ、ほんとにエッチなナースさんだなぁ」
「やぁん…小波さんのスケベ」
「それはお互い様だろ」
 ライトの光に照らされつやつやと輝く2つの胸を、下側からわしづかみにする。プリンのように柔らかな乳は揉むたびにプニュプニュと変形していく。耐え切れなくなった俺は間髪いれず右側の乳頭にしゃぶりついた。
「ひっ…あぁん!もうちょっと優しくしてよぉ…」
「しょうがないだろ…あむ。武美がかわいいからついイジめたくなるんだ…じゅる」
強く吸うたびに武美の口から甘い吐息が漏れる。今度は左の胸へとしゃぶりつく。口中に広がる柔らかな感触。いつの間にか武美の胸は精液やら俺の唾液やらでベトベトになっていた。
口を離し、武美の顔を見やる。赤く染まった顔は既に興奮しきっているように見えた。俺はそれを確認すると、武美のスカートへと手を伸ばした。真っ白なスカートを外した先には、これまた純白の下着が隠れていた。
しかし下着の表面には愛液で出来たのであろうシミが出来ている。
「あらら、せっかくの綺麗な下着にシミができちゃってますねぇ。ほんとにスケベだなぁ、このナースさんは」
 人差し指でコツンと額を叩く。一方の武美は不満げな様子だ。
「はぁ…ちゃんと縄が縛っててくれたなら、小波さんと純白下着ストリップが楽しめたんだけどなぁ…残念だねぇ」
「そりゃ楽しそうだが、こっちとしてもアレ以上むちゃくちゃなセリフ要求されちゃたまらないからな」
 笑いながら返答し、愛液で満ちた場所を下着の上からゆっくりと撫で始める。


「あ…ふぁ…あん…気持ちいいよぉ…」
 快感にもだえる武美の頬をなめると、ぴくぴくと体が震えているのが分かった。イタズラのつもりで、秘部を強く刺激してみる。
「ひゃあ!あっ……ちょ、ちょっとぉ!だからもうちょっと優しく…」
「そんなこと言いながら、体は震えてるじゃないか。感じてるんじゃないのか?嘘を言っちゃいけませんよ、ナースさん」
「ふぁ…こなみさんのいじわ…」
 言葉を言い終えないうちにもう一度ぐっと刺激を与える。その瞬間
「ひゃあ!んあっ…あああああん!」
 武美のびくびくと震えだした。下着のシミが濃くなっていくのが手の先から感じられる。
「…あれぇ?まさかこんなのでイッちゃったんですか?本当に淫乱なナースさんですねぇ」
 再び挑発してみる。反論が返ってくるのかと思ってたが、返ってきたのは意外な言葉だった。
「はぁ…も、もうダメだよぉ…」
「?…なにがダメだって?」
そう問いかけると武美はとろんとした眼をこちらに向けてきた。どうやら限界が来ているらしい。
「あぁん…もう限界だって…早く……」
「え?何を?」
 とぼけた顔で応答する。そしてニヤリと口をゆがませる。ここで借りを返さねば。
「うっ……だ、だから…分かるでしょ…早く…」
「いやぁ、分かりませんよナースさん。はっきり言葉にしてもらわないと」
 うぅぅと下唇を噛みしめる武美。何とか言うまいと耐えていたが、遂に口を切った。
「あん…もう!早くあたしの中に小波さんのを挿れてよぉ!もう我慢できないよぉ…」
「はい、よく言えました♪」
 わざとらしく微笑を浮かべ、武美の額を撫でる。またも悔しげな表情を浮かべる武美。これでおあいこだ。…とはいえ、こちらの欲望も限界に近づいてきていた。

「それじゃ、挿れるぞ」
「うん…お願い」
 ゆっくりと下着を脱がせていく。びしょびしょに濡れきった武美の秘部を挨拶代わりにぺろりとなめると、武美の体が大きく揺れた。
「あぁん!も…もう前戯は入らないから、早くして…」
「はは、分かった分かった」
 こちらが2週間ぶりなら、あちらも2週間ぶりというわけだ。思っていた以上に武美も溜まっていたらしい。言われたとおりにゆっくりと武美の中へと男根を挿入していく。愛液で満たされた武美の膣内は、なんともいえないほど心地よく、暖かかった。
「あん…小波さんのが入ってくる…やっぱり、あったかいなぁ」
「武美こそ。やっぱり武美の中は最高だよ」
 甘い言葉を交し合ったところで、素早く腰を動かしだした。びちゃびちゃといやらしい音が部屋中に響いていく。
「んん…あぁ…あん!はぁ…いいよぉ、小波さんの…とっても…あったかくて……あっ…気持ちいい…」
「俺もだ…武美」
 おもむろに武美が俺の腕をつかんできた。
指先から伝わってくる熱、腰を動かすたびにだんだんと激しくなっていく喘ぎ声、小さなへそ、激しく揺れる2つの胸、そしてとろんとした表情でこちらを見つめる瞳、吐息を漏らす口元、美しくたなびく茶色い髪の毛、首元……
すべてが愛おしく感じられ、俺の欲望は限界に達した。
「くっ…出すぞ、武美。大丈夫か?」
「うん…いっぱい出して……あん…小波さんのがほしいから…んっ…あっ…」
 武美の言葉を聞き、限界の力で強く突き上げていった。快楽の時はすぐさまやってきた。
「くっ…た、武美…うっ」
「小波さん、うぁ、気持ちいい…きもちいいよぉ…ふぁっ、ああああああぁ!」
 武美の中へと欲望が流れ出していく。今日二度目ながらも、俺の男根は何度も脈を打っていった。
そのままゆっくりと倒れこむ。倒れた顔のそばには快楽の余韻にひたる武美の姿。そっと口づけをする。口づけをするがいなや武美は激しく舌を絡ませてきた。それに負けじとこちらも絡ませていく。おそらく10分以上は求め合っていただろうか。

「……ごめんな」
 唇を離し、最初に俺の口から飛び出したのは謝罪の言葉だった。武美はなぜ謝罪されたのか理解できていないようだった。
「…何言ってるの?別にあたしは気持ちよかったけど」
「いや…まだあの件許してもらってもいないのに…こんなことしてしまって」
「……ぷっ、あはははははははは!」
「?」
突然武美は笑い出した。どういう意図か分からずおもわずたじろいでしまう。
「…あの…」
「ははは…やっぱまだ気にしてたんだねぇ、あのこと。あたしは当日で許してあげてたんだけど」
「え?」
「あのDVD、野球のチームメイトから借りたんでしょ?しかも最初はアニメのDVDって伝えられてたとか」
「…知ってたのか」
「あはは、自分で言ってたじゃん」
 思わずぐぅと唸る。なんとか伝えようとした言い訳、それがもとから耳に届いていたとは。
「はは…それに、ちゃんと一言目も聞えてたからね」
「一言目…?」
 必死で頭の中の記憶をたどる…が、思い出せない。疑問の眼差しを向けると、武美は笑顔で答えてきた。
「わかんない?ほらあれだよあれ、え〜と確か『何やってんだ俺。武美っていう大切な彼女がいるってのに、他の女性に情欲を持ってしまうなんて』だったっけ。なかなか嬉しかったよ、あの言葉」
 武美の出した言葉が、俺の記憶の闇で隠された部分とリンクする。それと同時に思わず顔が紅潮していくのを感じた。
「あっ照れてるね小波さん!…あれ?泣いてる?」
「ぐっ…な、泣いてないぞ!」
 強がりを見せるが、俺の目が意図に反して潤んでいるのは確かだった。チクショウ、なんだこの気持ちは
「ずるいなぁ、こちとら涙を流せないってのに!」
「あ、あくびだあくび!もう俺は眠たいから寝る!」
「ははっ、照れてる照れてる。かわいいなぁ」


満面の笑みを見せる武美。最後の最後でペースに飲まれてしまったか…まぁいいか。許してもらえたし武美の笑顔をたくさん見れたし、今日はいい一日になった。
と、ここで気にかかることが出てきたので、武美に聞いてみることにした。
「ところで…なんでナース服のコスプレなんかしたんだ?」
 頭に?を浮かべて不思議そうな顔をする武美。
「あと腕を縛られていたのも…やっぱりアダルトDVDを見た懲罰かなにかだよな」
「ん…まぁそうだねぇ。見ることは見たんだから、なんかやり返しときたいなぁっていうのはあったし。失敗に終わっちゃったけどね。…でもコスプレした彼女とエッチするっていうのも、男の人のロマンなんじゃない?」
「う〜ん…そういうもんか?」
 すると突然武美はベッドから飛び降り、こちらを向きながら体を一回転させた。…改めてみると、このコスプレ姿はたまらない。ひらりと舞う白衣に豊満な体…さしづめ白衣の天使といったところか。…月並みな表現だが、やはり天使というのがピッタリ来る。
「えへへ、かわいいでしょ〜。ネットオークションで安く落としたんだけど、なかなか気に入ってるんだ、これ。あ、そうだ、どうせだったら他のコスプレもしてあげようか?猫耳とか制服とか…あ、小悪魔ってのもなかなかグッと来るね。
あとは警察官とかシスターとか…裸エプロンってのもいいんじゃない?」
 続々と出てくるコスプレの数。武美が変装しているのを考えるとどれもよだれが出そうではあるが…いや、ここはリクエストではなくカッコいい言葉で返してやろう。
「いや…いいよ。俺はそのままの武美が一番好きだから」
「……なにそれ」
 半眼であきれた表情を向けられる。その瞳の奥にちょっと喜びの気持ちが見えたような…気がした。

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