「う〜ん・・・むにゃ・・・」
夜の小さな部屋で唸り声のようなうなされ声が漏れる。
この部屋の住人で、ナマーズ1軍選手の小波がベットの上で不規則に転がっていた。

「ふむ・・・随分疲労が溜まってるようじゃのう・・・」
心配そうに小波の顔を覗き込む、長い髪に着物姿の女性、彼女がもう一人の住人シズヤ。
更にもう一人魔人という招かざる住人も居るが今はランプの中で眠ってるらしく、月明かりの静かな部屋では小波とシズヤの二人だけだった。

「こんなになるまで無理をして・・・」
此処最近の小波は非常に忙しい。1軍になるために毎日厳しい練習に練習を重ね、やっとの事で1軍昇格を果たしたと思えば、今度は年俸5000万という次なる大きな目標に挑戦している。更に魔人が暇つぶしという邪魔をしてくるし、たまの休みでは私を連れて外出までしてくれる。
身も心も休まる暇がない程だ。


「今私の術で楽にしてあげるからのう」
そんな慰労と感謝を込めて術を使う、私の術も大分進歩したものだ。
始めのうちは失敗ばかり、途中で契約破棄したほうが小波の為になるとさえ思っていた。
しかし小波はそんな私を励まし、術の練習相手にもなってくれた。今ではかなり難しい術でも使える程成長した。

ぽわーん・・・

「ふぅ・・・これで大分楽になったはずだが・・・」
小波を起こさないようにそっと顔を覗き込む、先程とは違い緩やかな表情に、安心感のある寝息へと変わっていた。
(うむ!成功のようじゃ!)
失敗の緊張と不安から解放され何故か自分も安心してしまう。多分これ以上失敗して小波に負担を掛けたくないからだろう。


「すぅ・・・くー・・・」
(・・・・・・可愛い寝顔じゃのう)
自分の役目も終ったにも関わらず小波の顔を覗き続けていた。小波も普段とはまたちがう安心しきった顔になっている。

「・・・くぅ・・・シズヤ・・・」
「!!」
「・・・すぅ・・・すぅ・・・」

(寝言か・・・寝言の中でも・・・私の事を呼んでくれるのか)
最近の私はどことなく変だ。主の願を叶えるまでの存在、叶えた後私は小波の前から消えてしまう。しかし最近は小波とずっと一緒に居たいという気持ちが大きくなっている。先程の寝言でも何とも言えない幸福感が心を満たしていた。

(・・・小波に・・・キスしたいのう)

この間TVドラマというものを見た時、男と女が口を合わせていた。どうやら好きなもの同士がお互いの愛を確かめる行為らしくキスというらしい。小波に質問した時恥ずかしげに答えてくれた事を思い出す。

(私は何を・・・・でも・・・もう、我慢できない)
考えるほど胸が苦しくなってるのが分かる、心臓の鼓動が大きくなっていくのも分かる。
(すまぬ・・・小波)


そっ・・・と、小波を起こさないように静かに口を合わせる。
「んっ・・・はぁ、んんっ・・・」
静かに恐る恐る初体験の感覚を味わう、お互いの柔らかい唇が合わさる度にシズヤの鼓動の興奮が増してくる
「はぁ・・・んっ、ちゅ・・・んむっ」
(凄い・・・これがキス)

「んん〜・・・すぅ・・・」

(まだ起きてない・・・大丈夫)
小波の寝息はまだ続いている、余程疲れていたのか目を覚ます気配がない。
(でも・・・確かテレビの二人はもっと・・・)

もうシズヤには自制などより、その先の興味とどんな感覚を味わえるのかしか考えられなかった。好きになってしまった人間との一時の幸福に酔いしれていた。

(こ・・・こうすれば良いのかのう・・・)
小波の僅かに開いている唇にゆっくりと舌を忍び込ませる。
・・・ヌルリ、という感覚がシズヤの舌先を襲う

(ふぁ・・・凄くヌルヌルしてて・・・でも全然気持ち悪くない)

「ちゅる・・・んはぁ・・・んっ・・・ふぁ」
自分の舌だけ動かしているのに小波の咥内から水音が部屋中に鳴り響いてる気がする。
(もっと・・・もっと絡ませたい)


「んふっ・・・小波、好きじゃ・・・ちゅ・・・んっ、小波」
抑えていた心の声が言葉になって伝えられる、この今という時間をひたすら感じたい気持ちを。
「はぁ・・ん・・・はぁ・・・こなm・・!!」
小波、と発しようとした瞬間自分の舌が押し込まれ小波の舌が突如シズヤの咥内に侵入してきた。

「ふぁ!んん〜!・・・あ、小n・・・んむぅ・・・」
突然の攻守逆転にも驚きより興奮が勝っていた。自分だけがするより小波の舌が私に絡み付くほうが、何倍も気持ちいいものだと感じていた。
そして数十秒の間、シズヤを無抵抗で攻めていた舌が戻っていくと
「はぁ・・・んっ・・・・・・あっ」
自分でも心の中でも名残惜しさが残る。だが次の瞬間そんな気持ちも吹き飛んだ。

「ふぅ・・・何してたのかな?シズヤ」
「・・・え!な!こ、小波おきてむぐっ!」

唇で塞がれる、しかし今度は小波から塞がれる形。更に驚いたが、それもすぐに解放された。


「しっ!魔人が起きちゃうよ」
「うぅ、すまぬ・・・・・・・お、起きてたのか?」
「あんなに激しくされたら誰だって起きちゃうと思うけど?」
「うっ・・・」
暗くてよく見えないが小波は笑ってるようにも見える。だが先程まで自分が無我夢中でしていた事を思うと恥ずかしくて小波の顔を直視できなかった。

「それで、シズヤは何をしてたのかなぁ?」
きっと分かってて言わせたいのだろう・・・小波は鬼畜じゃ・・・
「それは・・・その・・・・・・・小波の寝顔を見ていたら・・・キ、キスをしたくなって・・・我慢できなくて・・・すまぬ」
「ん?何で謝るの?」
「だって・・・い、嫌であったろう?・・・好きでもない女にされるなんて」
「いや、シズヤの事は大好きだけど」
「・・・・・・・・・・・え?」
自分でも素っ頓狂な声をだした事は分かったが、それよりも小波の言葉に心奪われていた。

「いやぁ本当はもう少しされるがままになろうと思ったんだけどさ、ちらっとシズヤを見たら緊張した顔してしてキスしてくるから可愛くて可愛くて・・・途中から抑えられなくなっちゃった」
「なっ!」
小波がそんなことを言うものだから恥ずかしくて仕方ない。きっと今の顔も最中の顔も真っ赤だったのだろう・・・そう思うと益々恥ずかしい。
「もっとしてあげたいけど明日も早いからね・・・続きは、そうだな・・・来週からの春期キャンプの時に二人っきりでね」
「え・・・・う、うむ・・・分かった」
「・・・その先もね」
「っ!!ば、馬鹿者・・・」
そう言って彼に頭を撫でられる、反論したいが今何を言っても彼には勝てないだろう
・・・取り敢えず心の中で来週を楽しみにしておこう

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