「うぅ……頭が痛い……」
「……37.8℃。こりゃ、完全に風邪だな」
「グワングワンする……」
「はぁ……、今日はもうゆっくり寝てろ。俺も休み取ってやるから、ちょっと待ってな。准」
「うん……」

 そう告げて、俺は部屋を後にした。

「あいつ、最近疲れてたのか?」

 一階の店に降りて、受話器を手に取る。

「……あっ、もしもし、維織さん?」
『どうしたの?』
「ああ、ちょっと准が熱出しちゃってさ、今日は仕事に行けそうも無いんだ。だから、休み貰える?」
『……ええ、良いわよ』
「悪いね、明日は必ず出勤するよ」
『……准ちゃんに宜しくね』
「ああ」

 ガチャ。

「何か維織さんも元気なかった?」

 ……

「まあ、気のせいか」

 とりあえず、これで大丈夫なはずだ。

「准、休み取れたから、安心して寝てていいぞ」
「ありがとう……」
「今、タオル持ってきてやるからな」

 俺は今、准の店にやっかいになっている。一階が准の洋服屋、二階が生活スペースだ。
 俺自身は維織さんが社長の会社、NOZAKIグローバルシステムの警備員として雇われている。警備員として雇われたはずなのに、偶に維織さんの補助もさせられている。
 維織さんに連れられて海外に出向いたりもした。行く時は、准の顔が鬼神のように怖くなるんだけどな……。
 まあ……あれは、准なりの愛だと受け止めるとしよう。怖いから。

「おーい、准。持ってきたぞ」
「ふわぁあい」
「……ほれ」

 ちゃんと絞ったタオルを准の額に乗せる。

「ひゃっ!」
「へ、変な声を上げるな」
「だ、だって」
「気持ち良いか?」
「……うん」
「今日は傍にいてやるから」
「……ありがとう、小波さん」
「……ああ」

 准の頭を撫でてやる。すべすべした髪が、どことなく気持ち良い。

「……」
「眠くなるか?」
「うん……気持ち良くて」
「そうか」
「……あの、その……もっとやって」
「今日は妙に甘えん坊だな、准」
「……偶には……いいじゃない」
「ああ、偶にはな」

 そのまま撫で続けてやる。准の顔を見ると、何処となく瞼が重くなっていく様子が分かった。まあ、こんな准だから

「……」

 俺は、惹かれたのかもしれない。


「……」
「お、起きたか? とりあえず、水飲んどけ」
「あ、うん」
「具合はどうだ?」
「……ごくん。朝よりか楽かなぁ」
「どれ」

 ぴとっ

「!!」

 准の頭に自分の頭を押しつける。熱さは……まだまだか。

「ん〜、まだありそうだな」
「……」
「今、お粥作ってやるからな」
「……」
「ほら、タオル」

 冷たい水で絞ったタオルを頭に乗せる。今日は、これの繰り返しだな。

「……幸せ…………」
「ん? 何か言ったか?」
「う、ううん、何でもない」
「そうか?」

 早く治して元気になってくれないとな。維織さんも俺も、心配だし。

「……」



「ほれ、お粥」
「ありがとう」
「熱いから、冷ましながら食べろよ」
「……ねえねえ」
「ん?」
「食べさせて」
「はっ!?」

 食べさせるって言うのは、何と言うか、あの、あれか。

「な、何でだ? い、いつもの、お、おお、お前なら」
「小波さん、動揺し過ぎ」
「あ、いや、わ、悪い」
「いいじゃん、私、病人なんだし」
「……」

 いや、まあ確かに病人なのは分かるけど。あー……

「まあ、いいか」

 器を手にとって、適量をよそる。

「ふー、ふー」
「……」
「ほれ、あーん」
「あ、あーん」
「何照れてんだ、自分で言ったくせに」
「むぐむぐ……。いいじゃない、別に」
「ゆっくり自分のペースで食べていいからな。付き合ってやるから」
「……うん。もう一口食べたいな」
「ああ、いいぞ。ふー、ふー……。ほら、あーん」
「あーん」

 ……何か

(本当に、いつもと違うな)



「ごちそうさまでした」
「おう。しかし、見事に完食したな」
「薄味で美味しかったよ。小波さん、さすがだね」
「ふふん、まあな。風邪薬飲んで、もうひと眠りしておけ」
「はーい」
「洗い物は、やっといてやるから」
「……うん」



「……すー、すー」
「良く寝てるな」

 頭のタオルを取って、桶の中の水に浸す。タオルを取りかえるついでに、准の頭に手を置いた。

「……少しは良くなってる感じだな」
「んんっ……」
「あ、悪い悪い」

 准の身体が色っぽく動く。その動きに、ちょっとどきっとした。

「……薬が効いてるんだろうな」

 この調子なら明日には回復出来るはずだ。でも、准が風邪を引いたのって始めてな気がする。
 知らず知らずの内に疲れって溜まるだろうからな。

「まあ、そう言う時にはこんな感じに支え合えば良いんだよな。なあ、准」

 良く絞ったタオルを額に戻す。
 タオルケットの上から身体に優しく手を置いて、そのまま優しく叩く。

「小波さん……」
「?」
「……」
「……寝言か?」

 夢の中にまで、出てきてくれてる……ってことか?

「……」

 准……。

「好きだぞ」

 その時の俺は……キスしたくなった衝動を抑えるのに必死だった。



「……んっ」
「目、覚めたか?」
「……」
「大分、良くなっただろ?」
「……うん」
「ほら、水。慌てないで、ゆっくり飲めよ」
「……うん」
「後、体温計。ちゃんと測っとけよ」
「……うん」
「今、新しいタオルを取ってきてやるからな」

 准の様子を伺いながらタオルを取りに行く。汗掻いてるだろうし、身体拭きたいだろう。

「ほら、タオル」
「ありがとう」
「……何と言うか、今日のお前は妙に素直だな」
「な、何よ、悪い?」
「……いいや、全然悪く無い。むしろ、いつもそうであってほしいと思うよ」
「馬鹿」
「馬鹿って言うな、馬鹿って。ほら、顔拭いてやるから顔上げろ」
「うん」

 いつもと違って大人しい准が、妙に新鮮だった。いつも強気なのに、こういう時に弱いって言うのは……反側だよな。

「ぷはっ」
「よし、綺麗になったぞ」
「あ、小波さん。熱測ったら36.8℃だった」
「そうか。明日には復帰出来るな」
「うん、そうだね。……ありがとう」
「そう思うなら早く治して、いつもの可愛い准に戻ってくれ。な?」
「うん……」



 今……准の顔を見れなかった。自分の言ったセリフが恥ずかしくてしょうがない。まあ、今の准の方が俺的には可愛いんだけど。

「あー……その、ほ、ほら、身体は自分で拭いてくれよ。俺、部屋離れてるからさ」
「……」

 いかん、凄くドキドキしてる。何か、何処となく悔しい。

「ねえ……小波さん」
「ん?」
「身体……拭いて?」
「!?」

 准はスルスルっと躊躇なく、着ていたパジャマを脱ぎ始めた。

「お、おい、お前っ」
「……」

 准は今まで寝ていた。准は、寝る時にはブラは外している……と前に言っていた気がする。

(本当だったのか)

 上半身裸になって背中しか見えない准の身体は、想像以上に魅力的だった。

「……は、早くしてよ……。恥ずかしいんだから……」
「……あ、ああ」

 生唾が出てきそうだった。
 ……って、それはただの変態だ。
 抑えろ、抑えるんだ、俺!!



 ……なるべく見ないように、背中から拭いていく。

「んっ……」
「ほ、ほら、右手上げるからな」
「んんっ」

 理性を押さえつける。それでも、准の淫靡な声は、俺の身体を刺激している。その証拠に

(……)

 反応していた。

「あっ、んっ!」
「……」

 行為に及んでいる時よりも、今の状態は興奮させられる。
 悪い事をしている気分にさせられているからだ。

「准……!!」
「えっ、ふわっ!!」

 後ろから俺の元に抱き寄せる。准は突然のことに、抵抗すること無く俺の身体に収まった。

「俺……我慢できないんだが……」
「……もう、えっちなんだから」
「……悪かったな」

 キスをする。准は、抵抗せずに受け入れてくれている。身体の熱と反して、妙に口の中が冷たい。

「ぴちゃ、あむ、むむ、こな、んんっ、み、さん」
「准……。んっ」

 熱を出しているから、余り無理はさせられない。
 長時間、愛してやりたいけどな。

「准。今日は、俺に身体を預けろ」
「……」
「無理はさせたくない、辛いなら……直ぐに言ってくれ」
「……うん」

 腰を持ち上げて、パジャマのズボンを脱がす。下着の上からでも分かる位に、秘部は湿っていた。


 くちゅ

「んっっ!!」
「感じてたんだな、こんなに濡れてる」
「……ひぅ!」

 くちゅくちゅ

「あっ、んぁあ、んん……」

 指を一本入れ、二本入れ……丁寧に解していく。准の身体を気遣う半面、俺は自分の目の前で快楽に溺れる准の姿を見たくなっていた。
 ……介護人失格だな。

「はぁあっ、あん、んんっ、あふ、ああっ」
「……」

 准の動きが大きくなる。イきそうなのか?
 そこで、いったん指を止める。此処で絶頂を迎えては、体力を無駄に消耗させてしまうだけだ。

「小波……さん、あの」
「イきたいか?」
「っ…………」
「……」
「……うん」

 顔を真っ赤にして俯く。全く、可愛いやつめ。

「力抜いて」
「……抜き方……分かんない」
「まあ、そんなに今は力入らないだろうから、そのままの状態でいてくれ」

 ズボンのジッパーを下ろして、パンツを下にずらす。ギンギンに主張している俺のモノは、上へ大きく反り返っていた。

「っ……い、いつもより、大きいんじゃない……?」
「そうかもしれないな。准が可愛すぎてな、つい反応しちゃうんだよ」
「は、恥ずかしい事言わないでよ」
「本当のことだ」

 先端を宛がう。それだけで放出しそうな自分の身体が、なんとも恨めしい。

「んっ、あ、ああっ」
「ゆっくり、挿入れてくからな」

 処女膜を破るようにゆっくりと、准の腔内に俺のモノを埋めていく。准の身体が反応する姿は、いつ見ても興奮する。

「んっ、ああああっ!!」
「あい、変わらず、キッツいな」
「っ……!!あああっ!」

 いやらしく反応する姿は、俺からすれば狙ってやっているようにしか見えない。喫茶店の時に准の事を狙っていた野郎がたくさんいたのも頷ける。

「……」
「ど、どうしたのよ、んっ!」
「あっ、いや、なんでもない」

 根元まで行った所で動きが止まっていた。さすがに今の准に「嫉妬してた」なんて、口が裂けても言えん。
 「何で?」と聞かれたとしても、その理由は絶対に言いたくない。

「動くからな」

 ずぶっ

「あぁ……はぁ、んんぅ……っ」

 生温かい腔内の感覚は、俺の理性を崩壊させようとしていた。


 無茶苦茶にしたい。
 准をたっぷり喘がせたい。
 もっと、もっと気持ち良くさせたい。

 そんな気持ちが渦を巻く。俺は

「んっ、んっ、んっ、はぁあっ」

 雑念を振り払うのに必死だった。

「はあぁ……んはぁ、ああっ」
「……」
「んっ、あ!! はぅ……んくぅ、ああっ!!」

 ちょっと動いただけでこの感度。准も大分溜まっていたのだろうか……。
 興奮しっぱなしの俺に、追撃を与えるようなこの甘美な声。
 抑えられる訳が無かった。

 ぢゅぷっ、ぬぷっ、ぢゅぷう、ぬぷぅっ!!

「やっ、小波さん、はげしっ、いい、ああっ、よぉっ、んああぁ」
「これは、どう、だっ」

 子宮に先端が当たっている状態で、先端をクリクリっと刺激させる。

「あふ!! それ、はぁ……はん、そく、だよぉぉ」
「更にこれは?」

 パン、パンッ!!
 M字開脚にして、もっと奥深くまで届くようにモノを突き刺す。今日、一番の声が部屋の中に響く。

「ああああああああっ!! それ、らめ、らめらよぉ!!」
「そうか、もっとやって欲しいか? そら」

 パンッ、パンッ!!
 部屋の中が汗の匂いや何かでむせかえるような感じになってくる。でも、そんなことをお構いなしに、動きを加えて行く。
 けして、准に負担を掛けてはいけない。短時間でイカせなければ……いけない。

「ひぃぃぃぃんっ!! 駄目っ、何か、キちゃうっ!!」
「そうか、じゃあ、ラストスパートだっ!!」

 パン、パンパンパンっっ!!!
 一番の早さで、准の腔内を攻めていく。もう、俺も耐えられそうにない。

「あ、ふああぁあ!! あっ、ああっ、んくっ、いくぅ、ああうああああああっ!!!」
「ふっ、んっくぅうう」
「うっく、っくぅ、イッッちゃうぅ……」
「ああっ、一緒になっ」

 ぐぽ、ずぶ、ぐっぽ、ずぶうぅ。

「らめ、ああっ、らめっ、ああっ、あああああっっ!!!」
「っっ、出すぞ」

 !!!

「ふわぁあああああああっ」

 ビク!!

「んあああああああああっ!!!!」
「くぅ! っっっ!!」

 ビクン、ビクン!!!!

「ああ、あふ、熱い……」
「あっ、はぁ……はぁ…………」



 首筋にキスを落とす。何だかんだ、俺が欲望任せに動いちゃったのが問題だったもんなあ。……反省。

「……お風呂」
「え?」
「お風呂、ちゃんと入れてよね……一緒に入ろ……」
「……ああ、もちろんだ」



 翌日

「風邪引いた……」
「あーあ、私の移っちゃったんじゃない?」
「……かもしれない」
「くすっ、しょうがないなぁ」
「……維織さんになんて言おう」
「私が言っておくから、小波さんは休んでて。昨日のお礼に、私が看病してあげるから」
「……悪いな…………」

 風邪を引いてしまったけど……。看病される側っていうのも

(悪くない……よな)

 ……多分。

          Fin

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