その日は12月24日。
本州の大都会でありながら珍しく新雪が積もったその日。
この地の街外れにある廃ビルにおいて
妙に上機嫌な少女1人と、妙に不機嫌な少女3人達が集っていた。
その理由(ワケ)が今、語られる・・・。

ブラック(以下、ブ)「第1回・・・彼氏自慢大会・・・」

カズ(以下、カ)「・・・へ?」
朱里(以下、ア)「はぁ?・・・ちょっと・・・どういうことよ!
         ジャジメントの5本指に入る強力な超能力者がこの街を襲おうとしてるって
         聞いたからわざわざ来たのよ!?」
ピンク(以下、ピ)「そうよ!私、今日は忙しいんだから・・・!
          ふざけるつもりなら帰るからね!」

口元に笑みを浮かべながらブラックが続ける。
ブ「・・・ルールは簡単。一人一つのテーマ。4人でそれを答える。
  答えた人が・・・」
カアピ「(無視かよ・・・)」

この4人は皆、いまや世界を支配する大企業、という言葉で括ることすら困難になった
強大な力、ツナミ改め新生ジャジメントに立ち向かう正義の味方達である。
好きなものも嫌いなものも、主義も主張も、戦う方法も能力もバラバラな彼女達。
だが、たった一つだけ共通していることがあった。

全員、彼氏持ちなのである。

ブ「・・・分かった?」
カ「いや、分かったも何も・・・誰もやるとは言ってへんぞ!」
ア「あなた、そうやって騙して人を集めるのやめてよね、本当に・・・」
ピ「そうそう、私、今日は忙しいんだから、困るんだけど!」
カ「・・・ピンク、忙しい忙しいって・・・、あんた今日バイトないやろ?」
ピ「!・・・とにかく忙しいの!早く帰らせてよ〜!」
ア「そうよ。ピンクは一秒でも早く帰って、一二己(カズミ)君と合体したいのよね〜」
バババッッ! ビュンビュン!!
ピ「うおー!避けるな!」
ア「ふん!今のわたしは最新型なのよ?合体もしてないヘボパンチが当たるものですか!」



ドタバタドタバタ!
 ・・・喧嘩を始めた朱里とピンクを見ながらカズは考えた。
カ「(ああ・・・アカン、また始まってしもうたで・・・。
  ・・・そしてこれは間違いなくリーダーの読み通り・・・)」
カズが横目でチラっとブラックのほうを見ると
そこにはしてやったりな表情のブラックが!
ブ「(・・・このタイミングなら言える・・・)
  まず、私のテーマ・・・【彼氏に言われて嬉しかったこと】・・・」

 ・・・

ア「(・・・しまった!)」
ピ「(ちょっと待って・・・待ってよ〜)」
カ「(まずいぞ。先に言われたら・・・)」
カアピ「(ゲームを降りることが難しくなる!
    いや、降りてもいいんだけど、でも一度始まった勝負?を降りるなんて
    それは正義の味方の沽券が許さなくて【なんか嫌だ】!)」

カ「いや、あのな、リーダー・・・。うち実は今腰を痛めていて・・・もう歳だからな〜!」
ア「わ、わ、私も、最近また身体の調子が悪いのよ。修理してもらわないといけないかも!
 (黒野博士行方不明だけど・・・)」
ピ「わたしも!合体し過ぎで反射神経が鈍ってるかな〜なんて・・・(それは元々だけど・・・)」

 ・・・少女達の願いは・・・届かなかった!
ブラックの顔がとても赤い!
きっと甘い甘い、青春の思い出に浸っているのだろう・・・。

カアピ「(ダ、ダメだ!こいつ!言うつもりだ!強硬策を取る・・・間違いない!)」



ブラック「【大好きな真央ちゃんのことを知るまでは忘れるわけにはいかないよ】」
(筆者注・・・7EDの台詞ですが、いかんせん5年以上前にやったきりなのでうろ覚えです。
       一字一句覚えている人は脳内変換よろしくお願いします)
カア「!!?」
ピ「・・・あ・・・」

ブラックの顔が赤い。
ブラックは考えていた。きっとこの後、この3人が取るであろうリアクションを。
「私なんてこんなこと言われたんだから!」と張り合うのか、
「こんなこと言われてみたいな〜」とうらやましがられるのか・・・。
頭の中でそんなことを考えていると、この台詞を言われた時の嬉しさとあいまって
ブラックの表情はとてもニンマリだった!
しかし・・・彼女は重大なミスに気付いていなかった・・・!

カ「り、りーだー・・・」
ア「そ・・・そうだったんだ・・・!」
ブ「どう?・・・良かった?・・・聞かせて・・・みんなの甘い台詞・・・!」
ピ「・・・うーん・・・、あのね〜?ブラック・・・?」
ブ「?」
ピ「いや、台詞はさ・・・良かったと思うんだけど・・・、うん・・・。
  その・・・・・・んー!あーもう!!まだ分からないの!?」
ブ「・・・え?・・・えっえ?」

恐る恐るカズと朱里の顔を見てみると・・・なんと二人は今にも噴出しそうな顔をしているではないか!
混乱した表情のブラックに追い討ちをかけるように朱里が口火を切った!
ア「・・・【真央】ちゃん♪」
カ「真央ちゃん♪・・・かー・・・。えー名前やないか〜リ〜ダ〜♪」
ブ「△×○▽※−´#!¨khrwm¨#!!!!」
気が付けば・・・本名バレ。調子に乗っての・・・本名バレ。やってしまった・・・。
さすがのブラックも、この状況での本名バレには、猛省・・・!



ア「真央ちゃん♪」
カ「真央ちゃん♪」
ピ「(私は知ってるんだけど・・・一応)真央ちゃん♪」
ブ「△×○▽※−´#!¨khrwm¨#」
ジタバタジタバタ
カ「わはは!リーダーが地団駄踏みよるで!」
ア「お、おかしくて・・・は・・・腹がよじれる・・・!」
ブ「・・・ううう・・・」
ア「カズ・・・!聞いた・・・?【聞かせて・・・みんなの甘い台詞】だってぇ!
  何その勝ち誇った台詞・・・プププ・・・♪」
カ「あかーーーん!朱里、そろそろうちの腹筋がーー!!限界やーー!!!」
ピ「なんかブラックって・・・面白いよね、案外」
ブ「・・・・・・グスン」

 ・・・

ブ「・・・コホン・・・、気を取り直して・・・」
カ「つぎ行きましょっかー!真央ちゃん!」
ア「真央ちゃ〜ん!」
ブ「・・・あまり調子に乗らない・・・」
グギ!
ア「ぐお・・・ちょ・・・ブラック・・・」
カ「極まっとる・・・これ極まっとる・・・」
ブ「・・・つぎいってみよー・・・ピンク・・・!」
ピ「え?わ、わ、わ、わたし?こ、こころのじゅんびが〜!」
カ「お〜、ピンクのは聞いてみたいなぁ!その乱れた性生活の片鱗が・・・」
ピ「て、適当なこと言わないでよ〜!・・・ほ、本当に言わなきゃダメ・・・?」
ブカア「ダメ」
ピ「ううう・・・、うお〜〜〜〜〜!【君の隙間を埋めている】だーーー!!」
うおおおおおおおおおおおおおおおおお(3人の声)



ア「ちょっと・・・やばいって・・・卑猥すぎ・・・」
カ「ああ、想像以上やったな・・・R−15、いやR−18や・・・」
ピ「ちょ、ちょっと!べべ、別に、その時は、そんなやらしいことしてないんだからね!!」
ブ「・・・今はしてるということ・・・」
ピ「うわあああああああ、しまったああああああああああ!!」
ピンクの叫びが夜空に響く!
カ「あはははは!これ面白すぎや・・・!次はうちでええか!?」
ブ「・・・どうぞ」
カ「よっしゃ!・・・おっほん!【もう離さないぞ!カズ!】」
 ・・・・・・・・・・・・
カ「(あれ?)」
ア「・・・それ、いつ言われたの・・・?」
カ「いや、文脈で分かるやろ。今年の夏・・・
  ついに十蔵(ジュウゾウ)と再会したときやで!感無量やったわ〜♪」
ア「・・・ふーん・・・」
ピ「なんかありきたりでつまんないんだけど・・・」
ブ「・・・20点」
カ「お、お、おまえら〜!人の想い出にケチを付けるな〜!!!!
  朱里!お前はどうなんや!?言うてみい!」
ア「もちろん、はっきり言ってみせるわ。そうね・・・あれは2年前のクリスマス・・・」
カピ「(え?そこから説明入るの?)」
ブ「  A すべて聞く
  ニア B 省略する」
ア「ちょっと!省略しないでよ!」
カピ「(え?ていうか何、このコマンドみたいなもの・・・)」
※大人の都合です!
ア「そして私は言われたの・・・。【来年はクリスマスを楽しむ側に回れるさ】って・・・。
  ・・・・・・・・・・・・キャー!」
ピ「(自分語りがいちいち長いのよね、朱里って・・・)」
ブ「(・・・のろけてる・・・)」
ア「・・・で!どうなのよ!わたしの話はどうだった?彼の台詞はどうだった!?」
カ「うーん、かなりかんど〜」
ピ「そうね〜、東ヨーロッパあたりでは大ブームになるんじゃないかな〜」
ア「そのジョニィ・ジョースターみたいなリアクションは何!?
  ううう・・・今更恥ずかしくなってきた・・・。・・・もう!次いくわよ!次!
  テーマは今決めた!【彼のここが凄い】」
カ「な・・・まだやるつもりなんか!?」
ピ「もう帰してよ〜!」
ア「うるさい!私が先に言うから今のうちに考えておきなさいよね!」
ブ「(よし・・・盛り上がってきた・・・!)」


一方その頃・・・
とある空港のロビーにて報道陣に囲まれた野球選手がいた。
七輝(ナナキ)「(突然帰ってきたから・・・真央のやつ、驚くかもな・・・)」

他方・・・
雪の降りしきる街中でプロ野球、東武パイロンズ所属の野球選手がいた。
十蔵「カズのやつ、もうすぐ0時になっちまうのに、どこほっつき歩いてんだ・・・。
   ん?・・・あの人は・・・確か・・・」

他方・・・
同じく雪の降りしきる街中でプロ野球、ジャジメントナマーズ所属の野球選手がいた。
真十一(マトイ)「突然ブラックに呼ばれて出てってから随分時間が経つ・・・。
         朱里・・・早く帰ってこないと料理が冷めちまうぞ。
         今のアジトは・・・確かこの辺だったか」

他方・・・
同じく雪の降りしきる街中で、一人のスーツを着た若者がいた。
一二己「今日は2人でイルミネーションを見に行こうって約束してたのに・・・。
    あいつどこに行ってるんだ?とりあえずアジトに行ってみるか・・・」

そして廃ビルに場面は戻る・・・。
ピ「ううう・・・グスン・・・うーーーー!!」
カ「いやー、すまん。ピンク。そういうつもりやなかったんやけど・・・」
ア「カズ・・・【彼氏の年収を語る】はちょっとないわよ」
(朱里の彼氏、真十一選手の推定年俸→1億2千万)
カ「やや!ピンク!普通の正社員だって悪くはないで!?十蔵はいつも言うてるんや。
  「プロスポーツ選手は活動期間が短いから、稼げるうちに・・・」ってな。
  普通の会社員やったら、そんな心配ないんとちゃうん?」
(カズの彼氏、十蔵選手の推定年俸→1億5千万)
ブ「・・・ピンク・・・お金がすべてじゃない・・・安心して・・・」
カア「(そう言うあんたの彼氏がこの中で一番稼いでるだろ!)」
(真央の彼氏、メジャーリーガー七輝の推定年俸→20億)
ピ「いいもんいいもん!どーせあたひの彼はしがないシャラリィマンですよーだ!・・・(ポリポリ」
ア「(なんでラッキョウを食べると酔っ払うのかしら・・・)」
(ピンクの彼氏、一二己の年収→308万)(ただし中途採用のためもっと低い)
カ「リーダーと朱里のテーマは盛り上がったのに・・・、
  なんかうちでしめっぽくしてしまってごめんな、みんな・・・。そろそろお開きかー・・・?」
ブ「・・・仕方ない・・・盛り上がったし・・・暇つぶしに付き合ってくれてありがとう、みんな・・・」
カア「(うわー、暇つぶし、って断言しちゃったよ、この人!)」
ピ「・・・ちょっとぉ!?待ちなさいよ!?まだ私はテーマを言ってなーい!」


ブ「・・・まだやる・・・?」
ピ「とうぜーん!あんたたちは肝心なことをまだ何も言ってなーい!」
ア「肝心なこと・・・?」
ピ「そうよぉ・・・。嬉しかった台詞とかさぁ?ここが凄いとかさぁ?
  年収とかさぁ?年収とかさぁ??年収とかさぁ???」
カ「いや、そんな、3回言われても・・・悪かったって・・・」
ピ「そんなことは二の次でしょうよぉ!一番、一番大事なことはぁ?
  【どうして彼のことが好きなんですか】じゃないんですかっとぉ!!」
ブカア「・・・!」
ピ「わたし言えるよ?言えちゃうもんね![合体してくれるから]・・・ではなぁい!
  私はブルーが好きだった。ブルーは私を好きではなかった。
  私はオレンジが好きではなかった。オレンジは私が好きだった。
  ・・・ずっと一方通行だった。・・・片想いって、みんな辛いんだよ!
  私が彼を好きで、彼が私を好きでいてくれる、それが幸福なことなの。
  【両想いであること】それが理由よ。・・・あれ?理由になってないかな?
  順番が・・・あれれ・・・?まあいいか、私馬鹿だからこれでいいのよぉ・・・」
カ「そうやな・・・。ピンクの言うこと、分かるで!
  ただ好きなだけじゃ・・・、ただ好かれるだけじゃかなわん。
  好いて好かれる。これが一番なんよな、結局。
  いいセンつくやないか〜ピンク〜♪」
ピ「お〜お〜、分かってくれますか〜こころのともよぉ〜・・・」
ブア「(酒(?)癖が悪い・・・)」
ピ「うぇ・・・うぇーん・・・」
カ「お、おいおい!何泣いてんねや!」
ピ「オロオロオロ・・・」
ア「ちょ!ちょっと!ラッキョウ吐かないでよ!!
  ていうかラッキョウを液体のように吐く人はじめて見たんだけど!」
ピ「うう、早く帰りたい・・・合体したいよぉ・・・」
ブ「・・・性的な意味で・・・?」
カ「リーダー、突っ込みが間に合わなくなるからちょっと静かにしとってくれ・・・」
ピ「・・・彼と自由に合体できることが分かった時・・・嬉しかった。
  こんな取るに足らない私でも、人間ですらない気味の悪い私でも、生きてていいんだ、って思えたの・・・」
ア「ピンク・・・、・・・それは私だってそうよ。
  私たちは、どうがんばったって普通の女の子にはなれない。
  運命は変えられないし、失った時間は戻らない。
  だから余計、今の幸福を噛みしめなきゃいけない。大切にしなきゃいけないのよ」
カ「そうやな・・・」
ブ「ピンクにとって・・・彼は・・・命・・・?」
ピ「え?・・・うん、そうでもあると思うよぉ・・・」
ブ「そう・・・。・・・アカリ」


ア「私の番か・・・。私はね・・・?
  ・・・わ、笑ったらぶん殴るからね!?」
カ「はよ言えって!みんなウズウズしてんねんで!」
ア「・・・【おんぶしてくれるから】」
ブ「おんぶ?」
ア「うん。なんかね、自分でもうまく表現できないんだけど、すごく守られているというか、
  私、1人じゃないんだ、って気持ちになれるの。おんぶされると」
カ「かー!甘酸っぱいのぉ!・・・うちもおんぶされてみたいな〜」
ブ「・・・されたことない?」
カ「したことはあるんだけどなぁ?されたことはないなぁ。どんな気分なんやろか?
  大体朱里はずるいで!うちは電柱みたいやし、筋肉もごっつついとる。
  でも朱里はちっこいからきっと抱き心地良くて、それで彼もついつい・・・」
ア「う、うるさいわね!!・・・気持ちいいよ?おんぶされるのって。
  ・・・ひょっとしてお姫様抱っこもされたことないとか〜?」
ブ「私はある・・・両方・・・」
ピ「な・・・!」
カ「く、くっそ〜!ずるいぞ!アカリとリーダーは!」
ア「・・・話を続けるとね、おんぶされるとそれだけじゃないの。
  驚くくらい全身から勇気が沸いてくるの。今までの戦いの日々の疲れも
  過去の嫌な思い出も全部消え去って、また明日から頑張って生きていくぞ!って気持ちになる。
  どんなに悪いやつらが強大でも絶対負けるわけないぞって気持ちにさせてくれる。
  まさに大地の恵み・・・だと思う・・・」
ブ「(顔が赤い・・・)」
ア「・・・ここだけの話だけどね。私達、年が明けたら結婚するの」
カピ「・・・え?・・・ええええええええええええええええええ????」
ブ「おめでとう・・・!」
ア「ありがと!」
カ「う、うそや・・・!うちを差し置いてそんな・・・」
ピ「で、でもさ、結婚したって大変よぉ?悪いやつらに・・・あれ?」
ア「よくよく考えてみるとね、私達が平然と命を狙われるのって、
  私達が社会的にはどこにもいない人間だから、ってのもあると思うのよ。
  幸い、彼はプロ野球選手として結構有名だし、ファンクラブもついてるし、
  お抱えの記者だっている。そんな人の嫁になるんだから奴らだってそうそう手は出せなくなるわ」
ピ「そっかぁ、考えてるなぁ・・・」
ア「もっともそんな理由はおまけみたいなものだけどね。
  私達は悪い奴らに一生怯えて生きていくなんてまっぴらごめんよ。
  どうせなら、たとえ短い時間でも2人でとことん幸せに生きていきたい!
  だから結婚するの。子どもだっていっぱい作るし暖かい家族だって築いてみせるわ」


カ「・・・ほんま朱里にはかなわんなぁ。うちのやりたいこと、全部やられてしまう」
ア「カズは・・・私よりずっと強いんだから、私よりきっとうまくやれるわ。自信を持ってよ」
カ「だといいんだやけどな。なかなかそうもいかないんよ、これが。
  うち、やっぱり肝心なところでビビリなもんで、いつもトチってしまう」
ピ「そぉんなのっぽのビビリがいるかぁ〜ぼけぇ〜」
カ「(相当酔っ払っとるな・・・)これ、話したことあったかなぁ?
  うち、中学生の頃すごいいじめられとってな?まあそれはええねんや。
  だってあの頃のうちはすごい調子に乗っ取ったから
  きっと神様が罰を与えたんだと思う。だからそれ自体は別にええ」
ブ「・・・神様はそんなことしない・・・」
カ「いや、まぁ、ほら、どっかの漫画の大統領が『幸福と不幸はプラスマイナス0』って言うとってな?
  あれ、うちの人生には凄いあてはまるんよ。小学生で調子乗って、中学生でガクー!で、
  高校生でまた上向いて、そっからまたガクー!でな」
ア「・・・自分で勝手に納得してしまうのが怖いのね・・・」
カ「そう!まさにそれ。今、十蔵に会えて嬉しい。だからもしこれから不幸があったとしても
  自分で簡単に諦めをつけてしまうかもしれない。ちょっと前まで幸福だったんだからって。
  そうして逆戻りや・・・。そうなると一歩も先に進めなくなってしまう!
  それが凄い怖い。怖いんよ・・・!うちだってみんなみたいにとことん上を向いて生きたい。
  でもうちの中のそういうヘタレな部分が邪魔してしまうんよ。・・・だからな、
  うちはもっと強くなりたい。ツナミの中に入って自分より遥かに格上の能力者を大勢見た。
  そういう奴等と戦ってもな、差し引き0だからここは負けましょうなんて、絶対思わないようになりたいんや」
ピ「・・・それでぇ?どうするのさぁ?そっから先よぉ聞きたいのはぁ!」
カ「十蔵を人質に取らせてもらう。おっと、悪い意味やないで?うちが死んだら
  誰も十蔵を守れなくなってしまう、だから何があってもがんばるんや、という気持ちや。
  もし実力が及ばなくて片手ちょん切られても、残りの手で戦う。
  首をちょん切られたら首から上だけで戦う!
  【うちに覚悟を与えてくれる】それが十蔵なんや。・・・今はそれしかできんし、・・・言えん」
ピ「大丈夫よぉ!あんたなら首から上だけでも動けそうだからだいじょうぶぅ!」
カ「あはは・・・誉め言葉ありがとうな!」
ブ「・・・みんな・・・すごい・・・分かってるんだ」
カアピ「?」
ブ「自分がどうして彼を好きなのか・・・」
ア「ブラックは・・・分からないの?」
ブ「・・・どうだろう。彼は私にとって・・・命みたいなものだから。
  全然分からない、ということはない・・・。大切だし、・・・愛しているし、
  でも、どうして私なのか・・・」
ピ「・・・私とブラックはさぁ、同じ人間から生まれたはずなのよねぇ?
  でもどうしてここまで違うんだろう・・・。うーん、ブラックの気持ち分かるなぁ〜。
  考えると頭痛くなっちゃうよねぇ〜?(ポリポリ」
カ「(お前の場合ラッキョウの食い過ぎで頭痛いだけやろ)」


ブ「命みたいなものって例えは・・・大げさじゃない・・・。
  彼がいなかったら私もいなかった・・・。でも、愛さなくては、という気持ちはない」
ピ「そりゃぁそうよぉ。そんな気持ちがあったら、あの時わたしたちみぃんなぁ、
  七輝のこと好きになってなきゃいけなかった。だけど、どっちかというと私は嫌いだったしねぇ〜」
ブ「うん・・・それで・・・、・・・?」

ふとブラックは、自分を見るカズと朱里の真剣な眼差しに気付いた。
ゲームが始まった時のようなおちゃらけな雰囲気は、もうない。

ブ「・・・何?」
カ「いや、その、なぁ?」
ア「もっとブラックのこと聞かせて?私たち、そういえば、あなたのことほとんど知らないんだから」
カ「真央ちゃんなんて名前ですら今日はじめて知ったぐらいなんやしな〜、アハハ!」
ブ「・・・」
カ「じ、冗談やって!ごめん」
ピ「なんならぁ、私が喋ってもいいのよぉ〜?
  うーんと、私が思うにぃ?ブラックと彼の初体験は多分あの日・・・」
バキ!ドサッ!
ブ「実力行使・・・」
ピ「ぐえええええ・・・」
カア「(無茶しやがって・・・)」
ブ「・・・好きになったばかりの頃は、何も考えてなかったと思う。
  私は彼を守りたい一心。彼は野球一心。・・・あまり進展しない・・・」
カ「それって・・・ひょっとして?」
ア「じ、自分からアタックかけたとか?」
ブ「コクリ」
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお(2人)
カ「なんか、ええで〜!そういうの!うちら大抵恋愛には奥手やからそういう話は新鮮やわぁ!」
ア「そっかー・・・。ブラックってその時からムッツリスケベだったのね〜♪」
ブ「・・・」
ア「ごめん!うそ!今のなし!」
ブ「・・・魔法があった。私のことを覚えるための魔法。・・・それがないと忘れる」
カ「・・・彼は魔法無しでも覚えてたってことか?」
ブ「うん・・・嬉しかった」
ア「・・・どうしてヒーローになろうって思ったの?」
ブ「彼の後輩に・・・教えてもらった・・・。ヒーローは常にみんなの傍にいると。
  だからなろうと思った。私でもなれると思った。正義の心があれば・・・誰でもなれる」
カ「なぁリーダー?正義って、リーダーから見たらどういうことを指すんや?」
ブ「・・・それを常に考えること。彼はいつも考えてた。そして、考えることをやめたら、悪に走る。
  ・・・あの時、私と・・・レッド以外はみんなそうなった」


ア「【私に正義を教えたから】ね」
ブ「・・・何?」
ア「ブラックが彼を好きな理由!」
カ「そうやな・・・つまるところ、それが結論やな!」
ブ「・・・それは私が決める!」
カ「ちょ!それじゃ話が終わらないやないか〜!」
ブ「・・・オールナイト」
ア「そ、それはちょっと・・・」
ピ「うう・・・寒い・・・」

ふと気付くと、外の雪は本格的に降り始め、路面は大量の積雪で覆われていた。
窓から入る風は冷たく、夜も更けてきたことを実感させるに充分だった。

カ「今何時や?」
ア「23時」
ピ「も〜暇つぶしはいいでしょぉ?ブラックぅ?」
ブ「うん・・・」
カ「でも中々楽しかったで!またこんな話しような〜?」

「おーい、ピンクー」

ピ「え?うそ?」
一二己「お前どこをほっつき歩いてんだよ!早くしないと始まっちまうぞ!」
ピ「ご、ごめん!何というか不可抗力で・・・」
一二己「・・・あ!どうも皆さん、いつもうちのピンクがお世話になってます」
カ「いやいやぁ、それほどでも〜」
ブ「・・・お世話してます」
ア「うんうん」
ピ「ちょっと・・・!うちの、ってどういうことよ〜!それに世話になんてなってないぃ〜!」
一二己「と、とにかく行くぞ!急ぐぞ!ライトアップが始まっちまう!」
ピ「・・・どうせ急ぐんなら・・・これでいこ!」
ピカッ!
一二己「やっぱりこれで行くのか・・・」
ピ「いいじゃない!2人で一気に動けて爽快よ」
一二己「このスーツ、防寒機能無いだろう!・・・お前の人肌で暖めてくれるなら別だけど」
ピ「なんか急に脳を開放的にしたい気分になっちゃったなぁ〜?」
一二己「分かった分かった!それでは皆さんメリークリスマス!」
バッ

合体ピンクはこうして夜の闇に消えていった・・・。


カ「なんかドタバタしよったなぁ・・・!」
ア「ほんと、初々しいというか何というか・・・」
ブ「・・・朱里はもう倦怠期?」
ア「けん・・・!付き合ってから10年超えてる人に倦怠期とか言われたくないんだけど〜!」

「朱里!」

ア「あ・・・」
真十一「大丈夫か!?ケガはないか!?」
ア「えーっと・・・どこから説明すればいいのやら・・・」
ブ「大丈夫・・・朱里の愛の力で敵は倒れた」
カ「・・・そう、揺るぎない愛の力、真十一くんを想う力や!」
ア「おかしなこと吹き込むなー!!」
ドタバタドタバタ
真十一「???」
ア「えっと・・・要するに・・・迎えに来てくれてありがとうってこと・・・」
真十一「ともかく・・・無事で良かったよ。もうお前一人の体じゃないんだか・・・」
ア「うわあ!言うな!!」
真十一「ムゴ???」

慌てて真十一の口を塞いだ朱里だったが、時既に遅し。

カ「・・・リーダー?今なんか聞こえなかったか?」
ブ「・・・聞こえた」
カ「お前一人の体じゃないとかなんとか〜♪」
ブ「確かに聞こえた・・・♪」
ア「ああ・・・もう・・・スポーツ誌の一面にでかでかと載っかって
  ほえ面かかせてやろうと思ってたのに・・・」
カ「お前そんなこと考えてたのか〜!」
ブ「・・・だから結婚するの?」
ア「それは・・・!」
真十一「断じて違います!・・・朱里が妊娠してるのが分かったのが先月。
    結婚することを決めたのは3ヶ月前です。・・・タイミングがなかなか合わなくて
    結局ずれちゃいましたけど・・・。でも少なくとも俺達の気持ちの中ではそうなってます」
ブ「・・・そう・・・ごめん・・・」
真十一「いや、こっちも強い口調で言っちゃってすみません」
ア「・・・まったくよ。結局ずれ込んじゃったせいで
  世間様からは『デキ婚』扱いされちゃうじゃない!どうしてくれるの!?」
真十一「う・・・、だって・・・あの時リーグ優勝争いで連日試合後の番組に引っ張りだこで忙しくて・・・」
ア「許さない・・・!お仕置きしてあげる!目瞑って!!」


真十一「・・・!そうか・・・。よし、俺も男だ、分かった!」
そう言うと真十一は目を瞑った。
カ「お、おいおい、朱里、なんぼ何でもそれは強引・・・?」
ブラックは言いかけたカズを制止した。
この先に何が起こるかを知っているのだ。
そう、かつてジンという大地の精霊と共にこの光景を見ていたのだから。

CHUUUU♪

真十一「(う・・・何もこんな場所で・・・)」
カ「うわあ・・・舌入っとるで・・・」
ブ「・・・バカップル」

ポン♪

ア「・・・どう?少しは効いた?」
真十一「ああ、それはもう最高に」
ア「・・・帰るわよ。私の作ったケーキと七面鳥は残してくれたんでしょうね?」
真十一「お前と一緒に食べようと思ってたからまだ手はつけてない」
ア「・・・ありがと。・・・じゃあみんな・・・」
カ「おう!はようスポーツ誌の一面に載れよ?」
ブ「・・・お幸せに・・・!」
ア「うん・・・私、幸せになるから」
真十一「みんな、ありがとうございます!えーっと、カズさん」
カ「?」
真十一「あ、やっぱりいいか。そのうち分かるし」
カ「なんやのぉ!?めっちゃ気になるわぁ!!」
ア「メリークリスマス!」

朱里と真十一は仲良く歩いて帰っていった・・・。

カ「・・・取り残されちまったなぁ」
ブ「・・・もう2年会ってない」
カ「・・・は?」
ブ「会わないと暇・・・」
カ「はあ・・・なるほど。それで暇つぶしに、人の恋路にちょっかいを、と(性格悪いなぁ・・・)」
ブ「今日もきっと来ない・・・」
カ「ま、ま、まあそうかもしれないやろうけども・・・、だからってわざわざクリスマスに・・・」
ブ「クリスマス・・・見せ付けられてるようで・・・嫌・・・」
カ「(うわー、何かいじけとるでこの人!)」


「ほ、本当にいた・・・!カズー!」

カ「じゅ、十蔵!?な、なんでここが・・・」
十蔵「それが・・・街中でお前を探してたら、たまたま真十一選手を見かけて・・・。
   で、俺は何も言ってなかったんだけど、向こうは何故か俺達の事情を知ってるらしくて・・・。
   それでこの場所を教えてくれたんだ。「多分ここにいますよ。でも俺が入ってから30分後くらいに
   来てくださいね」って。なあどういうことなんだ?」
カ「あ、あの野郎・・・。今度会ったら朱里と喧嘩覚悟で一発殴っちゃる!」
ブ「・・・・・・・・・良かったね・・・」
カ「う・・・殺気が・・・」
十蔵「こちらの方は・・・?」
カ「あー・・・紹介するわ。うちの仲間でなぁ」
ブ「こんばんわ・・・メジャリーガーと付き合ったばっかりに
  2年も遠距離恋愛中のブラックです・・・」
カ「(あかん・・・完全に目が死んどる・・・)」
十蔵「はぁ・・・メジャーリーガー・・・。・・・!そうだ。
   もう一つ思い出した。凄い人を見かけたんだよ!」
カブ「?」
十蔵「メジャーリーガーだよ!テアトルガリバーズの!
   スーパースター、ナナキだよ!さっき街で見かけてさ!
   カズを探してるような時じゃなかったら、きっとサイン貰ってただろうなぁ・・・!」
ブ「・・・」
カ「なあリーダー・・・ひょっとして」

「真央」

七輝「よ!」
真央「あ・・・。な・・・な・・・き・・・」
カ「ちょ・・・ほんまかいな・・・!
  なんや、この図ったようなタイミングは〜!!」
十蔵「ほ、本物だ!あのナナキさんだ!」
ダッ!
GYU!!
七輝「おいおい、真央!く、苦しいって・・・!」
真央「会いたかった・・・会いたかった・・・!」
七輝「ははは・・・、ただいま」
真央「おかえり・・・。いつまでいれるの・・・?」
七輝「年明けまで、かな。2月のキャンプINには間に合うように調整しなきゃいけない。
   ・・・2年も帰れなくてごめんよ。今日もお忍びで帰ってきたはずなのに
   報道陣にばれて、あいつらを撒くのに時間がかかっちまってさ!」


カ「そ、そうや。なんであんたこの場所が分かったんや!?」
十蔵「おいカズ!あんた、なんて失礼だぞ!この人は野球人にとっては現人神みたいな人で・・・」
ドタバタドタバタ
七輝「・・・楽しそうな仲間がいてよかったよ」
真央「他にも何人かいる・・・。みんないい子・・・」
七輝「そうか・・・。真央、2年前の続きを聞かせてくれないか?」
真央「・・・」
カ「(おい、十蔵!なんか様子がおかしいぞ)」
十蔵「(ああ、なんかムーディーな雰囲気だな!)」

七輝「俺の気持ちは変わらない。真央、アメリカに来てくれ。俺と一緒に暮らそう」
真央「・・・私の気持ちも変わらない。・・・日本はまだ平和になってない。
   平和を守るのが私の使命・・・。だからまだ、あなたとは行けない・・・」
七輝「そうか・・・。そう言うと思ってた!ハハ!」
真央「ごめんなさい・・・本当に・・・グスン」
七輝「泣くな」
真央「・・・!」
七輝「ヒーローは泣かない・・・そうだろ?」
真央「うん・・・うん・・・」

十蔵「カズ・・・ナナキさんな?テレビのインタビューでいつもぶっきらぼうなこと言ってるだろ?
   あれ、何でだと思う・・・?」
カ「・・・今なら分かるで。ジャジメントやな?」
十蔵「そうだ。バット選びから、テレビでの態度に至るまで、あの人は大きな力に対して
   いつも反抗するような行動を取るんだ。・・・周囲はそんなあの人のことを変人呼ばわりするけど、
   今、はっきり確信した。ナナキさんもナナキさんなりに、正義のために戦ってるんだ!」
カ「正義・・・か・・・。
  そうや!質問に答えてくれーなー!
  なんであんた、この場所が分かったんや?」

七輝「なんで?か・・・、うーん。なかなか説明し辛いなぁ」
真央「愛の力・・・」
カ「・・・はぁ?」
真央「愛の力で、お互いの位置が分かる・・・」
カ「リーダー、あんまふざけてるとまた護衛艦でしばくで?」
七輝「護衛艦・・・。いやー、他に説明のしようがないんだよ。どんなに離れてても、真央がどこにいるか
   どんな状態なのか、なんとなく分かってしまうんだよ」
カ「!!・・・な・・・なんや、その少女マンガみたいな能力は・・・」
十蔵「ナナキさんすげぇ!」


カ「(は!?ということは・・・!)じゅ、十蔵・・・。そろそろ帰ろうか!」
十蔵「なんでだよ。俺、まだナナキさんに色々話をうかがいたいんだぞ?」
七輝「真央が大怪我をした時も・・・当然分かる・・・」
カ「う・・・」
七輝「さっき護衛艦って言ってたよな?・・・君だったのか。
   アメリカでも護衛艦がひっくり返ったのはニュースになってた。
   そしてその時、真央の命が消えかけてたのも感じた・・・」
カ「す、すんません!ほんま許してください!」
真央「七輝・・・!」
七輝「反骨のメジャーリーガーなんてやってると、色んな人間が周りに集まってくる。
   機材もな。・・・つい先日最新式ESPジャマーを手に入れてね。護身用に今も忍ばせてるんだ」
カ「あ・・・あ・・・」
七輝「君は素でも結構強いようだけど・・・。果たして俺の復讐の気持ちより強いんだろうか?
   それに俺はメジャーリーガーだ。体力には自信がある」
真央「七輝!やめて!」

十蔵「待ってください!」
カ「!?」
十蔵「カズは何も悪くないんです・・・復讐するなら俺にしてください!」
カ「な、何言ってるんや・・・」
七輝「・・・その頼みは聞けないな。君に復讐する理由がない」
十蔵「俺はカズの彼氏です。男です。頼んでるんですよ。それでは理由になりませんか?」
カ「これはうちの問題や!十蔵は・・・」
十蔵「引っ込んでろって言うのか?4年前みたいに、また俺を蚊帳の外にして!」
カ「ち・・・ちが・・・!」
十蔵「もう離さないって言ったんだ!黙って言うとおりにしろ!」

七輝「う・そ・よ・ね〜」
カ十「・・・・・・・・・・・・え?」
七輝「いや、だから、嘘。復讐とかどうとか、意味分かんないし
   遠く離れてるのにどうやって相手の状況なんて分かるんだよ。
   護衛艦で云々も、君なんか勘違いしてるんじゃないの?
   そもそも超能力なんて現実にあるわけないじゃん。
   ファンタジーやメルヘンの世界じゃないんだから」
カ「いや、さっきESPジャマーがって・・・」
七輝「え?まさか超能力なんてあると思ってるの?超ぶったまげ!」
カ「(な、何がなんだか分からん・・・どうなっとるんや・・・)」
十蔵「(お、おい・・・なんか俺ら重大な間違いをしてるんじゃないのか?どうなんだ!?)」


真央「だーいせーいこー♪」

 ・・・

カ「ああぁ・・・やっぱりそーなんか・・・?」
十蔵「ドッキリか!?ドッキリなのか!?こんな短時間でドッキリを仕掛けるなんて・・・。
   ナナキさんと真央さん、まじすげぇ!」
カ「もうそんな落ちでええわ・・・ほんま・・・。
  長いこと失礼しましたぁ。お二人さん、素敵なクリスマスを〜・・・」
十蔵「お、おおい!サイン!俺まだサインもらってない・・・おおおい!!」

カズと十蔵はトボトボと帰っていった・・・。

七輝「・・・いい男女だな」
真央「もし・・・」
七輝「うん?」
真央「十蔵くんが・・・身代わりになるって言わなかったら・・・どうしてた?」
七輝「真央は黙って見てるだけだったか?」
真央「・・・分からない・・・」
七輝「おいおい・・・」
真央「何が正しくて、何が正しくないのか、いつも考えてる・・・。
   復讐は良くないのか、七輝の気持ちを尊重すべきなのか・・・分からない」
七輝「俺の感じ方はこうだ。・・・愛する人を傷つけた者を野放しにするのは良いことじゃない。
   だが、男の頼みを無碍にするのも良いことじゃない」
真央「難しい・・・正義って・・・」
七輝「ああ、難しいよ。これからも2人で考え続けなきゃいけない・・・。止めてくれてありがとうな」
真央「え?」
七輝「やめて!なんて初めて聞いたよ♪」
真央「・・・バカ!」
七輝「それも初めてだな!」

4人の女と4人の男が出会い、イヴの夜は更けていく。
正義の味方にも恋人は必要だ。
好きなものも嫌いなものも、主義も主張も、戦う方法も能力もバラバラな彼女達。
だが、たった一つだけ共通していることがあった。

全員、聖夜を共に過ごすかけがえのない想い人がいるのである。

メリークリスマス。

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