そして1月1日、新年。

何度もデートで足を運んだ場所へ、俺は急いだ。
見送りに来なかった時点で、俺には全てわかっていた。
「奇跡などはめったに起きないから奇跡」とは誰の言葉だったか。
・・・少なくとも、そんなことを言った奴を、好きにはなれない。
「あ」
俺を見つけた武美の顔は一瞬驚きに、そして幸福そうな満面の笑みになった。
あたかも、春に日差しで解ける前の淡雪のごとく。

「あれね、初めてだったんだよ」
「・・・・・・・・・そうか。」
「一生分愛してもらったから、笑ってサヨナラできるね。」
「・・・・・・・・・。」
「あ、最後に質問。
 あたしのこと、好き?」
わかっていた。
わかっていたからこそ、最後に悪役を、俺は演じなくてはならない。
心とはうらはらの、その台詞を血を吐く思いで投げつけなくてはならない。
「俺は・・・」

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