「はぁ・・・はぁはぁ・・・」
「野郎!少し目を離した好きに!!」

草木も眠る丑三つ時。とある繁華街に怒声と足音が響き渡っていた。
どうやら追われているのは女の子のようだ。女の子といっても高校生くらい。
きっちりとした髪型やキリリとした目つきから、着ている服は汚くても
品位というものを感じさせる。

彼女はひたすら走っていた。なぜなら捕まったら殺されるから。
彼女はひたすら走っていた。なぜならこちらを行くべきだと第6感が騒ぐから。
彼女はひたすら走っていた。なぜなら自分の愛する人に、早く会いたいから。



チュンチュン・・・
翌日の昼過ぎ。彼女は一軒の家の前に立っていた。
家の表札には太い文字で【小波】と書かれている。
しばらく迷っていた彼女は、何かを決心したかのようにインターホンを押す。

ピンポーン・・・・・・ピンポーン・・・・・・・・・ガチャ。
家の中から一人の中年の男性が出てきた。小波の父親だ。

「はいはい・・・小波ですが・・・!!!あれ・・・もしや、瑠璃花ちゃん!?。」
一目でわかったようだ。それほどまでに彼女。南雲瑠璃花は変わっていなかった。
「お久しぶりです。・・・・ところで小波は?」
瑠璃花はあわただしい様子で訪ねる。それほどまでに小波に会いたいと思っているのか、それとも追っ手が気になるのかはわからない。

「ああ、小波なら今は高校だよ。花丸高校っていうところでね・・・って瑠璃花ちゃん??」
ちょっと目を離したときにもう瑠璃花はいなかった。


場所を聞いたら速攻で花丸高校を目指したのだった。

瑠璃花が花丸高校に着いたのはもう日が暮れてきた夕方。
校門の前で待ち伏せていると、小波と思う男が校門から出てきた。
「!!こなっ・・・・・・・!!!」

声をかけようとした瑠璃花は立ち止まった。
なぜなら小波は女の子と一緒に歩いていたからだ。しかも楽しそうに。
二人で楽しそうに話している。お互いのことも下の名前で呼び合っていた。


「・・・・・・・・・」
しばらくその光景を呆然と見ていた瑠璃花は、しばらくするとその場を足早に
駆け去っていった。

さっきまで瑠璃花が立っていた所には、涙でできた水たまりがあった。


私、馬鹿みたい・・・10年もたてば私の事なんて忘れるに決まっているのに・・・


ガチャッ
「ただいま〜。親父メシメシ!」
小波が家に帰ってきたのは7時過ぎ。
靴を脱ぎ散らして上がると、親父がキッチンから顔をのぞかせた。

「おう、おかえり。飯なら出来てるぞ。ん・・・そういや今日瑠璃花ちゃんが来たぞ。お前会ったか?」

「!!!!!!!な、なんだって!!瑠璃花が!!!!」
小波は驚きと喜びで硬直してしまった。
「ん、その様子じゃ会わなかったみたいだな。いや〜昼過ぎに家に来て、
すぐに花丸高校に向かっていったぞ。それにしてもあれはやっぱり美人だったな・・・」


「・・・ッ!!」
小波はキッチンを飛び出すと、さっき脱ぎ散らかした靴をはき直して家を飛び出た。
「おい!飯はどうするんだ??」
後ろから親父の声が聞こえたが、小波はそんなこと無視して走っていった。



前は壁。後ろは敵。


「ようやく追い詰めたな。おいマコンデ!・・・・此奴を殺せ。」
瑠璃花は追い詰められていた。あの後幸せ島の兵士に見つかってしまったのだ。
表通りを歩いたのが失敗だった。
「わかりました。ヘルガ様。・・・お前ら、準備しろ!・・・・・・・うブヘェ!!!!」

「!!!」「!!!」     「小波!!!!」
それは一瞬の出来事だった。瑠璃花を助けに来た小波が、マコンデをぶっ飛ばしたのだった。

「貴様・・・何やつよ!!」ヘルガが鬼の形相になって叫ぶ。

「貴様に名乗るななど無い!!!!」大口を切った小波だったが、所詮一人の高校生。
あっというまに囲まれてしまった。

「っち。やっぱり無理だったか・・・」
「威勢だけは良かったがな・・・ふん。いいぞお前ら。引き上げるぞ!!(体を張って女を助ける。か。なかなかいい話だな。)」




「「??」」小波達の頭に?が浮かぶ。
「え・・・?は・・・はい」
兵士達も疑問下だったが、ヘルガの「さっさとしろ!」という声を聞いて、渋々
引き上げていった。


「・・・・・・なんだったんだ?」
残された小波と瑠璃花は呆然とする。

「・・・まぁそれより、瑠璃花。よかったな。」
「気安く呼ばないでください!あなたには彼女がいるんでしょ!」

「え?」小波は慌てた。なぜならあれは野球部のマネージャーであって彼女なんかではなかったのだ。
「そうだったんですか・・・」弁解すること30分ようやく瑠璃花は小波の言うことを信じた。



「まぁ、嬉しかったよ。瑠璃花が俺のこと覚えていてくれて。俺に彼女がいなくて嬉しかったろ。」
小波がニコッと笑って言う。


その時。
「う・・・う・・・」
瑠璃花が突然うめきだした。
「どうした?泣いているのか?」小波は顔をのぞき込む。」



      「う、嬉しくなんか無いんですからね!!!」
・・・・・・これから忙しい日々が続きそうだ。

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