中小企業診断士 1次試験攻略wiki - 1次試験は「クイズ大会」にあらず
ビジネスを進めていくにあたって「仮説思考力」が重要だということはあちこちで言われていることですが、もしそうだとするならば、ビジネスの模擬事例である2次試験にも、当然に仮説思考力(=根拠をもって最も近い思われる答えを導き出す力)は求められることになります。

そして、そこまでは多くの方がご納得いただけると思いますが、実は1次試験においてもそのスキルは求められていると思います。

「企業診断」来月号の僕の連載コラムは「仮説思考力」がテーマですが、そこで僕はこんなことを書いています。


1次試験は知識問題なので「答えを知っているか知らないか」で得点がすべて決まるかのような印象がありますが、実際にはそれだけではありません。たとえば私の場合、正解を正確に知っていた問題は4割くらいしかありませんでしたが、それでもトータルで7割を得点しました。

その理由の半分は「運」、そして半分は「仮説思考」でした。知らなければ知らないなりに、他の知識や一般常識を参考にするなどして「論理的にはこれが最も正解に近い」という選択肢を選んでいったわけです。仮説思考力を鍛えておけば、このように知識量以上の得点を積み重ねることが可能になります。



もし1次試験が純粋なクイズ大会であるのならば、僕は4割+1.5割で合計55%しか得点できなかったことになります。しかし、さらに1.5割を積み上げることができたのは、(今にして思えば)仮説思考のおかげだったのです。

まったく知らない問題が出たとしても、(あまりにマニアックな一部の問題は別として)先述のように他の知識や一般常識等をあてはめてみることで「これじゃないかな」とか「これはあり得ないな」と推論できることがあります。そうすることで少しでも正答に躙(にじ)り寄っていき、それを繰り返していくことで総得点を高めることができると思います。


「まったく知らない問題に対して、自分なりの根拠をもって少しでも正解に近づく」と言えば、以前ベストセラーになった書籍「地頭力を鍛える」で紹介された「フェルミ推定」が思い出されます。「日本に電信柱は何本ある?」「琵琶湖の水は何リットル?」といった無茶振りな問題を考えることで思考力を鍛えるトレーニングですが、フェルミ推定と診断士試験はそういった点で共通しています。

1次試験は、がんばれば暗記&暗記で乗り越えることができますし、どうしても分からなければ多少の設問は捨てることができます。しかし、2次試験はそうはいきません。知識量だけでは通じませんし、捨てられる設問もほとんどなく、結局「考えること」からは逃れられないのです。


1次試験を単なる「クイズ大会」として捉えるか。そうではなくて、分からない設問でも(可能な限りの)根拠をもって仮説を立てることで2次試験対応力を磨く機会として捉えるか。どちらの姿勢で臨むかが、結局2次試験の合否や、診断士としての成功すらも左右していくのではないかと、僕は思います。