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拡張ラテン文字辞典 - 拡張ラテンN】カテゴリです。
ここでは、ラテン文字ディセンダー付きN LATIN LETTER N WITH DESCENDER を取り上げます。

LATIN CAPITAL/SMALL LETTER N WITH DESCENDER - ディセンダー付きN大・小文字【Ꞑ ꞑ】

文字名称エング / ENG (現代タタール語正書法)
大文字
小文字
文字部首N部
ユニコード(大)U+A790、(小)U+A791
文字参照(大)Ꞑ、(小)ꞑ
仮名転写ング[ŋ], (ハンティ語の)ニュ[ɲ~nʲ]
代替表記Ñ ñ (現代タタール語正書法), Ŋ ŋ, Ņ ņ

由来

ラテン小文字《n》にディセンダー記号を付加したもの。

解説

ヤナリフ Yanalif (タタール語 Tatar language ではヤ(ン)ガリフ Yañalif)特有の拡張ラテン文字。原則的に英語NGの音を示す。
キリル文字軟音符《Ь》に似たヤナリフ系ラテン文字 YERU と共に、UCSのN3581に追加申請されたが、この字母のみユニコード6.0.0で採用された。
この字母は、1918年に発表され、1922年にチュルク諸語でいち早くラテン文字正書法を採用したアゼルバイジャン語のラテン文字に採用された。
1927年にタタール語正書法がこれまでのアラビア文字に代わりラテン文字、すなわちヤナリフとなったとき、この字母が採用された。
ヤナリフが、ソビエト連邦が1920年代末期〜30年代初頭に制定した、チュルク諸語を始めとする当時ソ連領だった各言語共通のラテン文字正書法である汎チュルク文字 Pan-Turkic Alphabet にも取り入れられたが、アゼルバイジャン語では、1929年1月12日に新ラテン文字正書法が発表されたとき、ディセンダー付きNは廃字となっていた。
エヴェンキ語 Evenki language (アルタイ語族ツングース語派)やハンティ語 Khanty language (ウラル語族)、コリャーク語 Koryak language (古シベリア語族チュクチ語派) ではスペイン語《Ñ》と同じ[ɲ]音或いは近似の音を示し、ユニコード5.2.0まで統合されていたENG?《Ŋ ŋ》と併用されていた。この場合のディセンダー付きNは、セディラ付きN《Ņ ņ》で代用される。
1930年代末期にソ連邦のラテン文字表記の諸言語が一部を除きキリル文字正書法になったとき、廃字となり、ウイグル語ではこの字母がソ連邦におけるラテン文字表記が1947年に廃止されるまで使用されていた (ちなみに中国のウイグル語ラテン文字表記では採用されず、ピンイン準拠の連字〈NG〉が使用された)。

ソ連解体後のタタール語ラテン文字

1999年にタタール語の新ラテン文字正書法 (トルコ語正書法ベース) が発表されたときこの字母が復活したが、正式採用された2001年9月1日の時点でユニコードに採用されていなかった (前述したように、ENGと統合) ため、タタール語フォントでディセンダー付きNの位置がチルド付きN《Ñ ñ》に配置されている関係上、代替表記として、もっぱら多用されていたが、2002年にタタール語のラテン文字使用がロシア連邦政府によって、ロシア連邦内のタタールスタンでは使用停止されてしまった。
現在インターネット上に見られるタタール語ラテン文字表記では、代替表記の《ñ》かユニコード5.2まで統合扱いされてきた《Ŋ》で代用されている。

人工言語

ヴォラピュークの初期正書法では、この字母に類似の字母が英語〈NG〉[ŋ]音を示すために使用されていた。

使用言語・文字

言語

  • †アゼルバイジャン(1922年式)[ŋ]、†アルタイ[ŋ]、†イングーシ[鼻音]、†ウイグル(旧ソ連式)[ŋ]、†ヴォラピューク[ŋ]、†ウズベク(旧ソ連式)[ŋ]、†エヴェンキ[ɲ]、†カザフ[ŋ]、†カラカルパク[ŋ]、†カラチャイ・バルカル[ŋ]、†カルムイク[ŋ]、†キルギス[ŋ]、†クムク[ŋ]、†クリム・タタール[ŋ]、†ケット[ɲ]、†コミ[ɲ]、†コリャーク[ɲ]、†セリクプ[ɲ]、タタール[ŋ]、†チェチェン[鼻音]、†トゥヴァ[ŋ]、†ドゥンガン[ŋ]、†トルクメン[ŋ]、†ナーナイ[ɲ]、†ニヴヒ[ɲ]、†ノガイ[ŋ]、†ハカス[ŋ]、†バシキール[ŋ]、†ハンティ[ɲ]、†マンシ[ɲ]、†ヤクート[ŋ]

特殊文字

  • 汎チュルク[ŋ]

異体字

  • 『言語学大辞典』(三省堂)に見られる、ディセンダー記号の代わりに、《N n》の右下に下カンマ記号が付加されたもの。

備考

  • ユニコード5.2までは表記不可能の字母のため、N3581では私用領域でタイトル表記されている。
  • UCS登録申請前は、ラテン文字ENG《Ŋ ŋ》の異体字として扱われてきたため、ウィキペディア英語版ではENGで代用されている。
    • ドンガン語 Dungan language の日本語版ウィキペディアの項目では、セディラ付きN《Ņ ņ》で代用されている。
    • ハンティ語 Khanty language の旧ラテン文字正書法でディセンダー付きNとENGが別字として扱われていることが、UCS登録のきっかけとなった。

関連項目

親字

近似字

ディセンダー付き字母

参考HP

【N3581 - Proposal to encode four Latin letters for Jañalif】
http://std.dkuug.dk/jtc1/sc2/wg2/docs/n3581.pdf
【Jaŋalif - Wikipedia】
http://en.wikipedia.org/wiki/Ja%C5%8Balif
【Proposal to encode four Latin letters for Janalif - 2008-11-03】
http://www.pentzlin.com/Missingjanalifcharacter.pd...
【Tatar: Required characters - Letter database】
http://www.eki.ee/letter/chardata.cgi?lang=tt+Tata...
【Татарский алфавит на основе латинской графики】
http://www.tatar.ru/append200_a.html
【W4: Worldwide Writing Web】
http://www.writingsystems.info/
【Латинский алфавит Коми языка 1930–тых годов использование описание иллюстрации | Коми Зыряна Лов】
http://foto11.com/komi/docs/latin1930thfont.php

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記号説明

  • [ ]…IPA発音表記及びフリガナ/意味
  • 【 】…特殊文字見出し
  • 《 》…特殊文字
  • 〈 〉…連字
  • 『 』…作品名
  • 〓…ユニコード未登録の字母
  • †…廃字, 携帯電話絵文字の代替テキスト
    • ‡…特殊な字母, 代用表記, 異体字


【略称】
  • IPA…国際音声記号
  • キルシェン…キルシェンバウム音声記号
  • i.t.a.…イニシャル・ティーチング・アルファベット
  • 大…大文字/小…小文字
  • 半…半角形/全…全角形

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