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拡張ラテン文字辞典 - 拡張ラテンS】カテゴリです。
ここでは、ラテン文字長いS LATIN LETTER LONG S を取り上げます。

LATIN SMALL LETTER LONG S - 長いS小文字【ſ】

文字名称ロング・エス / LONG S (英語), セー / SE (スロベニア語旧正書法)
大文字S (中世ヨーロッパ諸言語) ;
Ş / ∫(スロベニア語旧正書法)
小文字ſ
文字部首S部
ユニコード(小)U+017F
文字参照(小)ſ
仮名転写ス[s], (ラトビア語旧正書法の)ズ[z]

由来

ラテン小文字《s》の古代ローマ草書体の変形。

解説

中世ヨーロッパで使用されていたラテン文字《s》の語頭・語中形。
5世紀頃の古代ローマ草書体の《S》の語中形がルーツとされる。
19世紀末までは《s》は語末形として使用され(印刷物は18世紀まで)、丸いS ROUND S と呼ばれていた。中世の台湾のシラヤ語 Siraya language や日本語のキリシタン関連資料などヨーロッパ以外の言語でも使用されていたことも。シラヤ語の例は、中国語版ウィキペディアの西拉雅語の項目では『西拉雅語馬太福音』(1650年)のサンプルが掲載されている。
現在もドイツ文字表記の場合に限り使用されている。
ゲール文字表記ではインシュラーS《ꞅ》に対応する。
左側に短い横線が付いているものがユニコード標準字形であり、フォントによっては、短い横線のないものがある。
ラテン文字小文字《f》と紛らわしい字形であり、《f》の前後は必ず《s》となる。
略語では、ピリオド《.》の前では長いSのままだが、アポストロフィ《'》の前では必ず《s》となる。
イタリック体はESH?《ʃ》と同型で、この字母のイタリック体から 拡張ラテン文字 ESH や数学の積分記号インテグラル《∫》(ラテン語 ſumma [summa]「最高」の略)が派生した。

リガチャ

この字母のリガチャではドイツ語のエスツェット《ß》と、ローマン体におけるリガチャのひとつであるTとのリガチャ《ſt》の2つのみユニコードに登録されている。
長いSを使用したリガチャは、他にも〈sb, sh, si, ssi, sj, sk, sl, ssl, ss〉等がある。

Sとは独立した字母として扱われるケース

長いSは《S》の小文字の語頭・語中形としてきたが、独立した字母として別の発音を持った言語もある。
  • スロベニア語のボホリチ式旧正書法での大文字は、英語版ウィキペディアではセディラ付きS《Ş》(厳密には《S》の前に下付きのターンドカンマが置かれる) だが、18世紀の文法書では音声記号のESH《ʃ》或いは積分記号《∫》に似た大文字になっているものも見られる。長いSは無声の[s]音を表し、《s》は有声の[z]音となる。
    • 連字〈ſh〉で[ʃ]音を示す。
  • ラトビア語の旧表記では大文字《S》に対応するのがこの字母で、有声の[z]音を示す。
    小文字《s》の大文字は下半分に斜線の入ったオブリークストローク付き《S》で、無声音[s]を表す。
  • ヴォラピューク語の初期正書法では、有声子音の後の《S》が有声音[z]になるため、それを区別するために長いSで本来の無声音[s]を表した。ドイツ語正書法でエスツェットに対応する。
  • カフカズ諸語の1930年代ラテン文字での大文字はリバースドグロッタルストップ?《ʕ》に似た字形。
  • トルクメン語の1993年式正書法では、大文字がポンド記号《£》で、基線より下に下がっている字形が正しいが、フォントの都合で長いSが使用される場合が多い。1999年に《ž》に置き換えられた。

人工文字

特殊音声記号の一つ、ドイツ語舞台発音記号では《s》が無声の[s]音を示し、長いSが有声の[z]音を示す。
キャロンが付加されると[ʒ]音となる。

使用言語・文字

中世ヨーロッパ諸言語では、前述したとおり、基本的に《s》の語頭形・語中形として使用される。
ここでは、独立した字母を中心に取り上げる。

言語

  • †アバザ[ɕ]、†アブハズ[ʃ]、†ヴォラピューク[s]、†ウドムルト、†古プロシア、†シラヤ[s]、†スロベニア[s, ʃ]、†チェコ(14世紀)[ʒ]、†トルクメン[ʒ]、‡ナシカ[s]、†日本(キリシタン式)[s]、†ラトビア[z]

特殊文字

  • †ゲール文字[s]、ドイツ語舞台発音記号[z]、‡ドイツ文字[z, s]、汎ヨーロッパ[s]

異体字

  • 左側に右側に横線が付いていない字形。
  • トルクメン語の1993年式正書法では、本来、基線より下に下がっている字形が正しい。

備考

  • ロマンス諸語では、《b》や《h》の前では、必ず《s》となる。
  • スペイン語の場合、連字〈ſſ〉は母音字《i》が前後に付く場合は〈ſs〉と表記される。

ダイアクリティカルマーク付き字母

LONG S WITH DOT ABOVE - 上ドット付き長いS小文字【ẛ】

ユニコード(小)U+1E9B
文字参照(小)ẛ

解説

アイルランド語のゲール文字表記特有の字母。
ローマン体表記では〈SH〉に対応。

使用言語・文字

特殊文字
  • †ゲール文字[h]

関連項目

親字

参考HP

ラテン文字

【LATIN SMALL LETTER LONG S - fileformat.info】
http://www.fileformat.info/info/unicode/char/017f/...
【LATIN SMALL LETTER LONG S - decodeunicode.org】
http://www.decodeunicode.org/en/u+017f/properties
【Long S - Wikipedia】
http://en.wikipedia.org/wiki/Long_s
【BabelStone: The Long and the Short of the Letter S】
http://babelstone.blogspot.com/2006/07/long-and-sh... 【Typefoundry: Long s】
http://typefoundry.blogspot.com/2008/01/long-s.htm...
【Turkmen - Evertype】
http://www.evertype.com/standards/iso10646/pdf/tur...
【Roman Alphabet of Turkmen - UNGEGN Working Group on Romanization Systems】
http://www.eki.ee/wgrs/rom2_tk.htm
【Deutsche bühnenaussprache (1912)】
http://www.archive.org/stream/deutschebhnena00sieb...
【Slovennska grammatika; wendische Sprachlehre in deutsch un wendischen Vortrag - Google ブックス】
http://books.google.com/books?id=dsYGAAAAQAAJ&hl=j...
(長いSの大文字がTURNED COMMAが左下に置かれているSとになっている。)
【Grammatica della lingua illirica - Google ブックス】
http://books.google.com/books?id=EkIPAAAAQAAJ&hl=j...
(長いSの大文字がインテグラルの形状となっている)

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記号説明

  • [ ]…IPA発音表記及びフリガナ/意味
  • 【 】…特殊文字見出し
  • 《 》…特殊文字
  • 〈 〉…連字
  • 『 』…作品名
  • 〓…ユニコード未登録の字母
  • †…廃字, 携帯電話絵文字の代替テキスト
    • ‡…特殊な字母, 代用表記, 異体字


【略称】
  • IPA…国際音声記号
  • キルシェン…キルシェンバウム音声記号
  • i.t.a.…イニシャル・ティーチング・アルファベット
  • 大…大文字/小…小文字
  • 半…半角形/全…全角形

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