■先月からRACDAでは、路面電車の岡山駅前広場への乗り入れを早期実現するよう要望する署名を開始した。2月の土日には岡山駅前電停での署名活動を行ったところ、岡山市以外からのお客が多いことわかってきた。路面電車利用者のだいたい4割は倉敷市など県内からのお客で、県外からのお客が1割といったところだ。
■路面電車は、岡山のように、都心(表町)と中央駅が1〜2km離れている場合にもっとも機能するといわれているが、まさしく岡山駅から8方面に走るJR線のお客を岡山市内に配る役目を果たしていた事がわかる。署名を路面電車沿線だけに限っていてはわからないことだった。意外だったのは、路面電車沿線学区の利用者が1割強にすぎなかったことだ。「路面電車は外来者のため」という要素が大きいことになる。
■つまり路面電車は、岡山の都市機能としての商業集積、文化集積を支えているわけである。岐阜の路面電車廃止は沿線住民が利用していなかったので、存続の流れが作れなかったのが原因だ。岡山の場合も沿線住民の声だけでは、利用者全体をを代表できていないことになる。
■電停で署名活動をしていると、表町や天満屋に行くにはどれに乗るかよく質問された。しかしこれがほとんど現地の表示ではわからない。県外のお客には後楽園への行き方を聞かれたが、城下から後楽園まで観光客ははたして無事にたどり着けるのかと不安になった。国体は終わったが、岡山市としては基本的おもてなしが不足しているのではないか。
■さて岡山駅前広場のバスターミナルの見直しが中国運輸局主導ではじまり、バスを現在の会社別から方面別に組み替え、路面電車の駅前乗り入れをも考慮することになった。平成19年に完成する岡山駅の東西連絡通路と西口広場バスターミナルにあわせ、東口バスターミナルも再検討することになったわけで、私たちが今回、路面電車の駅前広場乗り入れ署名を実施するのも、これにあわせた訳である。
■バス事業については、2002年の交通部門の規制緩和で基本的にバス路線廃止は自由となった。岡山空港線などのドル箱路線はダブルトラックとなって便利になったものの、乗客の少ない路線はどんどん廃止されている。足守地区などでは路線がなくなって行政側が調整に乗り出した。日本各地で規制緩和は地域の足を奪っており、補助財源もないことから、今後も廃止は続く。
■人生80年、しかし最初の20年と最後の10年は1人で車には乗れず、30/80(80分の30)は公共交通に頼らざるをえないのに、規制緩和はこれを台無しにしようとしている。自動車利用者も時には、そして30/80は公共交通の恩恵にあずかるのに、こうした基本的なことが忘れられている。公共交通は交通事業者のものでなく、我々の生活そのものなのだ。欧米では「交通権」という権利が確立されている。
■駅前広場のバスターミナル再編と路面電車乗り入れは、公共交通重視の政策の根幹になるものである。事業者間にも色々対立はあるが、利用者本位の対応で利用者そのものを増加させて、事業者も利用者も利益を得る方策はあるはず。ソウル市ではバスを運行面、情報面などあらゆる分野で高度化させたBRTシステムをわずか2年で導入して大成功を収めた。利用者も事業者もともに得をしたので「WINWIN」というらしい。
■岡山駅前広場に路面電車が乗り入れると、将来JR西日本が表明している吉備線の路面電車化が実現したあかつきには、相互に接続することができる。こうなるとコンベンション機能のある西口の“ままかりフォーラム”から、東口、表町を電車で結ぶことができ、都心の回遊性が高まるだけでなく、吉備線沿線から表町あたりへの大幅な集客増につながるはずだ。
その第一歩としての駅前広場乗り入れは、2年以内に実現したいものだ。