平成20年5月1日
地方都市の温暖化対策、公共交通は３倍必要
路面電車と都市の未来を考える会会長
岡将男
１．地球温暖化だけでない先進国の弊害
洞爺湖サミットの主要議題に、第２フェーズに入る地球温暖化対策の数値化がある。よく２０５０年までに５０％削減という数字が出てくる。多くの日本人は関心がなく、あったとしても、そんなのはできっこないと思っているだろう。
世界の一部には温暖化はうそだとか、温暖化を商売にするために意図的に温暖化を誇張しているだとか、先進国が開発途上国の成長を抑えるための陰謀だとかいう説もあり、事実そういう面もあるだろう。しかしそれでも我々の経済活動が一定の気象変動の影響を与えているということは確実なようだ。
世界で日本のように自動車に乗りたいだけ乗り、クーラーを使いたいだけ使えることのできる経済力を持っているのは、６０億人余のうち先進国１０億人くらいのものである。それで温暖化がおこっているとしたら、今までの方法でたとえば中国１２億人が同じように先進国になろうとすれば、温暖化は２倍の速度で進むことになる。それどころか、成長に必要なエネルギーも足りないし、中国人が欧米人と同じだけ肉食をしたら、食料だって足りっこない。
要は現在の先進国と同じような経済成長は、宇宙人から宇宙エネルギーの利用方法でも教えてもらわないかぎり、全地球人が享受できるわけじゃないということである。ＵＦＯさん、これ聞いてたら何とかしてください。そろそろ助けてくれてもいいだろう。
２．地方都市の自動車分担率は現在どうなのか
ということで、まずは温暖化が確実だとして、たとえば交通部門で５０％削減なんて可能なのだろうか。そのロードマップ、数値目標を作らないと、いつまでたっても温暖化対策としてのＬＲＴ導入なんてできっこないと、私は昨年あたりから考えるようになった。ＥＵではもう１１年前にはそうした目標を作成して実行しているはずだ。全国路面電車ネットワークの内田さんから、「それでは岡山から作ってよ」と言われて、まずは最新の岡山地域のパーソントリップ調査（略称ＰＴ、都市圏別の人の動きの詳細な調査、１０年に一度やることになっている）はどうなってるのか調べようとした。そしたら、な、なんと、１９９４年以来やっていないという。
結局岡山県が中心となってやるべきところ、お金がないからとやろうとしていない。大学の先生たちも、これではちゃんとした交通計画なんかできないと考えているし、国土交通省に聞いたら、「このままではＰＴのやりかたのノウハウさえ失われそうだ、我々も困っている」とのことだった。岡山だけでなく全国的に交通量の基礎調査さえやってない。この事実だけでも日本が温暖化対策を交通部門でやる気がないことがわかる。
３．なぜ交通部門の温暖化対策をやれないのか
戦後の日本は、アメリカに負けたがゆえに、アメリカに追いつき追い越せがスローガンになってきた。これは経済、思想、生活、あらゆる部門においてである。アメリカで路面電車が廃止されたら、日本も廃止。アメリカなみに自動車に乗りたい。アメリカなみに道路が必要だ。アメリカという言葉は、いわば免罪符、水戸黄門の印籠みたいなものだった。しかし私からみれば、アメリカはバイタリティーにとんだ若造という気もするのだが。
とにかく現在でも日本経済を引っ張るのは自動車製造業であり、道路建設業である。いま問題になっている道路特定財源だって、毎年何千億円もあまっていることは、関係者は知っていたし、私なんかもＬＲＴ建設財源として随分と当てにしていたものだ。今回の見直しで年間５００億円程度公共交通に投入すればと企んでいたが、さてどうなるやら。
でも私は知ってるよ、確かに余ってて、国土交通省の地方整備局あたりでは、使い切れずに苦労していた。それで一部は瀬戸大橋なんかの借金返しに流用したりしたわけだが、まあこれは高速道路などは道路財源で作っておくべきなのを、借金で作っていたからであって、いわば道路財源本来の使い方ではないかと思う。むしろ大胆にもっと本四連絡橋にお金をつっこんでいたら、瀬戸大橋は半額にもなっていたかもしれないと、岡山人としては悔やまれる。とにかく大体毎年７０００億円くらいは余っていたのではないかな。
いま、地方は道路が命というが、それは確かにまだ十分に道路がないところもあるが、本当は道路工事がなかったら、仕事がなくなる地域が多いからなのだ。これは東京など大都市住民には理解できない。田舎に行ったら、兼業農家の重要な仕事は建設業土建業で働くことであり、だから道路建設が止まったら困るに決まってる。農家の人はホワイトカラーではないのだから、その地域に他に働くところはない。道路がいるのでなく仕事がいるのに、そうは言えないから、道路がいると言ってるというのが本当の所だ。逆に言えば、農業で食えないということである。昨年来の中国産食品問題や、温暖化の結果来るであろう食糧危機の対策として、もっと農業の近代化企業化で雇用を吸収すれば、道路は作らなくてもいい。一般財源化するなら、こういった地方の産業の構造転換こそ必要だ。
また一方、自動車産業を敵にまわした議論というのも、できにくい状況にある。国内の自動車販売が不調とはいえ、輸出や海外生産でトヨタの景気が良すぎるし、カイゼン等の評価も高いから、トヨタのやることは全部正しいとなっているような気がする。儲かっていればいいというものではない。また与野党ともにその支持勢力に自動車産業を抱えて、自動車交通の削減なんて誰もよう言わないという雰囲気があるのではないか。
４．自動車の削減率の目標を考えて、公共交通を３倍に
さて、いよいよ本論に入ろう。とにかく交通部門の、人を輸送するという部分に限ってのロードマップを考えてみよう。地方都市のパーソントリップ調査が十分でないが、仮に多くの地方都市の数値を以下のように推定してみよう。（本当は厳密にやりたいのだが、大体の所を考えてみようというわけだ。）
岡山県南都市圏のＰＴ（過去３回）を参考に 各数字は％
徒歩 二輪車 バス 鉄道 自動車
1971年PT 39.6 23.2 9.4 3.5 24.3
1982年PT 23.4 30.8 4.1 2.8 39.0
２００７年の排出量は
徒歩自転車 0 公共交通 5 自動車 350 合計 355
２０５０年の排出量は
徒歩自転車 0 公共交通 15 自動車 250 合計 265
なんと自動車交通を２０％削減し、公共交通を３倍、二輪車徒歩を大幅に増やしても、とても半分にはならない。そこで自動車の燃費を減らさないと達成できないわけだ。燃費を減らすには、ハイブリットなどの技術開発、それから小さい燃費のいい車に乗り換えることが必要。上の計算から355を半分にするとは177.5だから、公共交通の燃費がこのままなら、自動車を162.5にしなければならない。ということは162.5/250=0.65
まあ日本も人口が減っていくから、ここまでしなくてもいいかもしれないが、一方でそれでは経済が維持できないから、中国などからの移民を受け入れて、経済規模を維持する必要があるかもしれない。
５．自動車社会の本当の罪
今日からガソリン税が元に戻った。この一月の与野党の攻防を見ていると、どうも知性や感性というものが感じられず、ひたすら自分の利益、つまり世論の獲得のみに焦点が当たっていた。そしてマスコミもひたすら庶民の味方のふりをして、何でも安けりゃいいとの報道である。本質の議論をこれからやっていかねばならない。
よく自動車の社会的費用という場合、自動車利用者は社会的費用を負担していないという。道路建設だって、ガソリン税などでまかなっているのは３分の１くらいのもので、結構一般財源や高速道路のように借入金でまかなわれている。交通事故は保険料でまかなわれ、死亡者の悲しみまで金銭で解決したことにしている。しかし直接的な自動車排気ガスによる喘息などでさえ、因果関係があきらかでないという理由で、ちゃんとまかなわれているわけではない。もちろん地球温暖化だって自動車による部分も大きいにもかかわらず、今まで放置されてきた。だから暫定税率分の一部を環境税化することは一定の合理性があると思う。
しかもなおかつ、私は自動車社会の本当の罪はもっと他のところにあると思う。まず交通事故による人の死を金銭化したこと。次に都市構造を破壊し、コミュニティーを破壊したこと。さらに鉄の箱に人をとじこめ、人を利己的にしてしまったこと。人の心への悪影響こそ車社会の最大の罪である。
たとえば1kmの渋滞では、5mの車が5m間隔でいれば10mに1.2人、つまり100台120人しかいないのだから、車を取り除くと8mに一人ずつ立っている計算になる。それで大渋滞となって「なんでこんなに車がいるの」と人のせいにする。だからいくら道路を作っても空間を閑散に利用促進してるわけだから、渋滞はさらに加速し、都市は閑散になる。
しかも自動車の普及により、公共交通の事業採算性を悪化させてサービスレベルを低下させ、女子供老人の交通弱者の移動の自由を奪ってしまった。アメリカかぶれの規制緩和論者たちは、してはいけない地方の公共交通の規制緩和をやってしまった。規制緩和で派遣業を増やしすぎ、若年層の低所得化が進行し、食えないから自動車も買えない、結婚もしない、子供も作らないということで、景気そのものも悪くしてしまった。
欧米では、賢い規制緩和を行っている。リヨンでは学生や低所得層のためにもＬＲＴを整備しているという。日本の政治家には、総合的に社会を見る力が欠けているのではないか。交通から現代の社会を見ていくと、これだけのことが見えてくる。
６．結論・バス電車のボリュームを３倍にしなければならない
まことに雑駁な計算だが、とにかく自動車分担率を２０％減少させ、自動車燃費を３５％向上させ、自転車や徒歩を１０％もふやして、初めて排出量が半分になる。そのためにどうしたらいいのか。おいおい、バスなんか毎年４％くらい減ってるぜ、できるのかよう。いやいややらなくちゃいけないものはやらないと、あとで困るでしょう。そのためにどうしたらいいか。お金だけじゃ無理だな。
というわけで、バスの情報システム、バス停に屋根とベンチとトイレ、全国にＬＲＴ建設２５００ｋｍ、新幹線の建設と国内線航空機削減など、やることはたくさんあるでしょう。どうかな、私が大好きな飛行機をあまり使わないわけ、わかったでしょう。
地方都市の温暖化対策、公共交通は３倍必要
路面電車と都市の未来を考える会会長
岡将男
１．地球温暖化だけでない先進国の弊害
洞爺湖サミットの主要議題に、第２フェーズに入る地球温暖化対策の数値化がある。よく２０５０年までに５０％削減という数字が出てくる。多くの日本人は関心がなく、あったとしても、そんなのはできっこないと思っているだろう。
世界の一部には温暖化はうそだとか、温暖化を商売にするために意図的に温暖化を誇張しているだとか、先進国が開発途上国の成長を抑えるための陰謀だとかいう説もあり、事実そういう面もあるだろう。しかしそれでも我々の経済活動が一定の気象変動の影響を与えているということは確実なようだ。
世界で日本のように自動車に乗りたいだけ乗り、クーラーを使いたいだけ使えることのできる経済力を持っているのは、６０億人余のうち先進国１０億人くらいのものである。それで温暖化がおこっているとしたら、今までの方法でたとえば中国１２億人が同じように先進国になろうとすれば、温暖化は２倍の速度で進むことになる。それどころか、成長に必要なエネルギーも足りないし、中国人が欧米人と同じだけ肉食をしたら、食料だって足りっこない。
要は現在の先進国と同じような経済成長は、宇宙人から宇宙エネルギーの利用方法でも教えてもらわないかぎり、全地球人が享受できるわけじゃないということである。ＵＦＯさん、これ聞いてたら何とかしてください。そろそろ助けてくれてもいいだろう。
２．地方都市の自動車分担率は現在どうなのか
ということで、まずは温暖化が確実だとして、たとえば交通部門で５０％削減なんて可能なのだろうか。そのロードマップ、数値目標を作らないと、いつまでたっても温暖化対策としてのＬＲＴ導入なんてできっこないと、私は昨年あたりから考えるようになった。ＥＵではもう１１年前にはそうした目標を作成して実行しているはずだ。全国路面電車ネットワークの内田さんから、「それでは岡山から作ってよ」と言われて、まずは最新の岡山地域のパーソントリップ調査（略称ＰＴ、都市圏別の人の動きの詳細な調査、１０年に一度やることになっている）はどうなってるのか調べようとした。そしたら、な、なんと、１９９４年以来やっていないという。
結局岡山県が中心となってやるべきところ、お金がないからとやろうとしていない。大学の先生たちも、これではちゃんとした交通計画なんかできないと考えているし、国土交通省に聞いたら、「このままではＰＴのやりかたのノウハウさえ失われそうだ、我々も困っている」とのことだった。岡山だけでなく全国的に交通量の基礎調査さえやってない。この事実だけでも日本が温暖化対策を交通部門でやる気がないことがわかる。
３．なぜ交通部門の温暖化対策をやれないのか
戦後の日本は、アメリカに負けたがゆえに、アメリカに追いつき追い越せがスローガンになってきた。これは経済、思想、生活、あらゆる部門においてである。アメリカで路面電車が廃止されたら、日本も廃止。アメリカなみに自動車に乗りたい。アメリカなみに道路が必要だ。アメリカという言葉は、いわば免罪符、水戸黄門の印籠みたいなものだった。しかし私からみれば、アメリカはバイタリティーにとんだ若造という気もするのだが。
とにかく現在でも日本経済を引っ張るのは自動車製造業であり、道路建設業である。いま問題になっている道路特定財源だって、毎年何千億円もあまっていることは、関係者は知っていたし、私なんかもＬＲＴ建設財源として随分と当てにしていたものだ。今回の見直しで年間５００億円程度公共交通に投入すればと企んでいたが、さてどうなるやら。
でも私は知ってるよ、確かに余ってて、国土交通省の地方整備局あたりでは、使い切れずに苦労していた。それで一部は瀬戸大橋なんかの借金返しに流用したりしたわけだが、まあこれは高速道路などは道路財源で作っておくべきなのを、借金で作っていたからであって、いわば道路財源本来の使い方ではないかと思う。むしろ大胆にもっと本四連絡橋にお金をつっこんでいたら、瀬戸大橋は半額にもなっていたかもしれないと、岡山人としては悔やまれる。とにかく大体毎年７０００億円くらいは余っていたのではないかな。
いま、地方は道路が命というが、それは確かにまだ十分に道路がないところもあるが、本当は道路工事がなかったら、仕事がなくなる地域が多いからなのだ。これは東京など大都市住民には理解できない。田舎に行ったら、兼業農家の重要な仕事は建設業土建業で働くことであり、だから道路建設が止まったら困るに決まってる。農家の人はホワイトカラーではないのだから、その地域に他に働くところはない。道路がいるのでなく仕事がいるのに、そうは言えないから、道路がいると言ってるというのが本当の所だ。逆に言えば、農業で食えないということである。昨年来の中国産食品問題や、温暖化の結果来るであろう食糧危機の対策として、もっと農業の近代化企業化で雇用を吸収すれば、道路は作らなくてもいい。一般財源化するなら、こういった地方の産業の構造転換こそ必要だ。
また一方、自動車産業を敵にまわした議論というのも、できにくい状況にある。国内の自動車販売が不調とはいえ、輸出や海外生産でトヨタの景気が良すぎるし、カイゼン等の評価も高いから、トヨタのやることは全部正しいとなっているような気がする。儲かっていればいいというものではない。また与野党ともにその支持勢力に自動車産業を抱えて、自動車交通の削減なんて誰もよう言わないという雰囲気があるのではないか。
４．自動車の削減率の目標を考えて、公共交通を３倍に
さて、いよいよ本論に入ろう。とにかく交通部門の、人を輸送するという部分に限ってのロードマップを考えてみよう。地方都市のパーソントリップ調査が十分でないが、仮に多くの地方都市の数値を以下のように推定してみよう。（本当は厳密にやりたいのだが、大体の所を考えてみようというわけだ。）
岡山県南都市圏のＰＴ（過去３回）を参考に 各数字は％
徒歩 二輪車 バス 鉄道 自動車
1971年PT 39.6 23.2 9.4 3.5 24.3
1982年PT 23.4 30.8 4.1 2.8 39.0
1994年PT 17.7 19.9 2.1 3.8 56.4 2007年予測 25.0 5.0 70.0 2050年目標 35.0 15.0 50.0ここで便宜上、計算を簡単にするため、徒歩二輪車の炭酸ガス排出量を0、公共交通を1、自動車を5とする。（鉄道1、バス3、自動車9が一般的）また
２００７年の排出量は
徒歩自転車 0 公共交通 5 自動車 350 合計 355
２０５０年の排出量は
徒歩自転車 0 公共交通 15 自動車 250 合計 265
なんと自動車交通を２０％削減し、公共交通を３倍、二輪車徒歩を大幅に増やしても、とても半分にはならない。そこで自動車の燃費を減らさないと達成できないわけだ。燃費を減らすには、ハイブリットなどの技術開発、それから小さい燃費のいい車に乗り換えることが必要。上の計算から355を半分にするとは177.5だから、公共交通の燃費がこのままなら、自動車を162.5にしなければならない。ということは162.5/250=0.65
つまり自動車の燃費を６５％にすればいいわけである。 私自身、日産シルフィー1800ccから日産マーチ1200ccに乗り換えたところ、市内中心でリッター当り8kmが12km超になった。これだけで６５％にはなる。自動車業界には売上減少という激変になるのだが、コンパクトカー採用はそれだけで大きな削減効果がある。もちろん自動車メーカーは売上減少はしたくないから、燃料電池ですべては解決するかのように言う。しかし確実でない新技術に頼るだけではいけないのではないか。技術者や科学者は時としてとんでもない発想で、とんでもなく世の中を改革することもあるが、一方で戦争でもあればとてつもない殺人兵器も作るものである。いま確実な技術といえば、ハイブリットや電気自動車の方が近道かもしれない。
まあ日本も人口が減っていくから、ここまでしなくてもいいかもしれないが、一方でそれでは経済が維持できないから、中国などからの移民を受け入れて、経済規模を維持する必要があるかもしれない。
５．自動車社会の本当の罪
今日からガソリン税が元に戻った。この一月の与野党の攻防を見ていると、どうも知性や感性というものが感じられず、ひたすら自分の利益、つまり世論の獲得のみに焦点が当たっていた。そしてマスコミもひたすら庶民の味方のふりをして、何でも安けりゃいいとの報道である。本質の議論をこれからやっていかねばならない。
よく自動車の社会的費用という場合、自動車利用者は社会的費用を負担していないという。道路建設だって、ガソリン税などでまかなっているのは３分の１くらいのもので、結構一般財源や高速道路のように借入金でまかなわれている。交通事故は保険料でまかなわれ、死亡者の悲しみまで金銭で解決したことにしている。しかし直接的な自動車排気ガスによる喘息などでさえ、因果関係があきらかでないという理由で、ちゃんとまかなわれているわけではない。もちろん地球温暖化だって自動車による部分も大きいにもかかわらず、今まで放置されてきた。だから暫定税率分の一部を環境税化することは一定の合理性があると思う。
しかもなおかつ、私は自動車社会の本当の罪はもっと他のところにあると思う。まず交通事故による人の死を金銭化したこと。次に都市構造を破壊し、コミュニティーを破壊したこと。さらに鉄の箱に人をとじこめ、人を利己的にしてしまったこと。人の心への悪影響こそ車社会の最大の罪である。
たとえば1kmの渋滞では、5mの車が5m間隔でいれば10mに1.2人、つまり100台120人しかいないのだから、車を取り除くと8mに一人ずつ立っている計算になる。それで大渋滞となって「なんでこんなに車がいるの」と人のせいにする。だからいくら道路を作っても空間を閑散に利用促進してるわけだから、渋滞はさらに加速し、都市は閑散になる。
しかも自動車の普及により、公共交通の事業採算性を悪化させてサービスレベルを低下させ、女子供老人の交通弱者の移動の自由を奪ってしまった。アメリカかぶれの規制緩和論者たちは、してはいけない地方の公共交通の規制緩和をやってしまった。規制緩和で派遣業を増やしすぎ、若年層の低所得化が進行し、食えないから自動車も買えない、結婚もしない、子供も作らないということで、景気そのものも悪くしてしまった。
欧米では、賢い規制緩和を行っている。リヨンでは学生や低所得層のためにもＬＲＴを整備しているという。日本の政治家には、総合的に社会を見る力が欠けているのではないか。交通から現代の社会を見ていくと、これだけのことが見えてくる。
６．結論・バス電車のボリュームを３倍にしなければならない
まことに雑駁な計算だが、とにかく自動車分担率を２０％減少させ、自動車燃費を３５％向上させ、自転車や徒歩を１０％もふやして、初めて排出量が半分になる。そのためにどうしたらいいのか。おいおい、バスなんか毎年４％くらい減ってるぜ、できるのかよう。いやいややらなくちゃいけないものはやらないと、あとで困るでしょう。そのためにどうしたらいいか。お金だけじゃ無理だな。
というわけで、バスの情報システム、バス停に屋根とベンチとトイレ、全国にＬＲＴ建設２５００ｋｍ、新幹線の建設と国内線航空機削減など、やることはたくさんあるでしょう。どうかな、私が大好きな飛行機をあまり使わないわけ、わかったでしょう。
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