[282] 徒花 sage 2008/03/02(日) 17:26:16 ID:+O4vgQ0y
[283] 徒花 sage 2008/03/02(日) 17:27:49 ID:+O4vgQ0y
[284] 徒花 sage 2008/03/02(日) 17:29:18 ID:+O4vgQ0y
[285] 徒花 sage 2008/03/02(日) 17:30:58 ID:+O4vgQ0y
[286] 徒花 sage 2008/03/02(日) 17:32:01 ID:+O4vgQ0y
[287] 徒花 sage 2008/03/02(日) 17:33:50 ID:+O4vgQ0y

 カリムにとって、クロノとの寝物語の機会は滅多に無かった。
 元々会える時間が少ないうえ、浅ましい本能は時間があれば言葉よりも身体を欲しがっていた。
 それでも、シーツにくるまりながら穏やかに語り合うことが皆無というわけではない。
「日本には、桜という花があるそうですね」
 もっとも内容は艶っぽいものではなく、お茶会の時のように他愛の無い世間話程度のものなのだが。
「先日、はやてに映像を見せてもらいました」
 現在設立に向けて進行中の機動六課。その後見人の一人としてカリムは設備、人材等の概要を詳しくは
やてから説明を受けている。そのうち、模擬戦施設の設定地形に「森林」「廃ビル」と並んで「桜並木」
という戦闘訓練とは関係ないと思われる項目があり、何気なく訊ねてみたのだった。
 するとはやてはずいぶんと意気込んで桜について解説してくれた。
『とにかく色と匂いのええ花でな。満開の桜が何十本も並んでるとこなんか、もうなんとも言えん風情が
あるねんで』
 他にも花見の楽しさだのなんだのを語ってくれたが、どうにもカリムにはぴんとこなかった。枝いっぱ
いに薄桃色の花が咲いている映像を見て、綺麗だと思いはしたが。
「やはり現物を見ないと、本当の美しさというものは分からないでしょうね」
「見たいですか」
「ええ…………出来るものなら、提督と二人っきりで」
「……そうですか」
 桜の話はそこで終わった。
 話題にしたカリム自身、数日後には忘れ去っていた。
 だから、クロノに次の逢引の場所とその理由を聞いた時は驚き、それ以上に嬉しかった。



          徒花



「これは……」
 そう言ったきり、カリムは絶句した。
 桜。ただそれしかなかった。
 グラナガンから列車で数時間離れたひなびた田舎町。そこからさらに数キロ離れた山中。
 谷と谷の少し開けた場所で、数十本の桜は満開に咲き誇っていた。
 淡いピンク色もこれだけ集まれば壮観で、天空の蒼を圧倒している。
「どうですか」
 少し離れた樹の下からクロノが訊いてくる。カリムはいつもの法衣だが、クロノは休暇を取って来てい
るので私服である。
「……陳腐な言葉でしか言い表せませんが、美しいです。見せていただきありがとうございました」
 人の入らぬ山中で、はらはらと舞い落ちる桜の木々は、絶景としか例えようがなかった。
 この地方の聖王教会巡察という外出理由を捻くり出し、慣れぬ山歩きに汗をかいてまで来た価値は、確
かにあった。
「昔、地球の日本出身の魔導師が植樹したそうですよ」
「はやて達のご先輩に当たるのですね」
「数十年前の人で、もう鬼籍に入っていますが。いろんな地でも試したらしいのですが、地質が合ったの
はここだけだったとか」
 説明するクロノは見慣れているせいか、あまり感慨深そうな顔をしていない。
「日本では、桜は珍しくないのですか?」
「ええ、公園から並木に学校と、そこら中にあります」
 植えた魔導師は故郷を思い出したかったのかもしれませんね、とクロノは花を見上げて言った。
「ところで、なぜこんな辺鄙な場所をクロノ提督は知っておられたのですか?」
 何気なく問いかけたことだったが、クロノが言葉に詰まり半瞬目が泳いだのをカリムは見逃さなかった。
 カリムも、すぅっと目を細める。
「……是非とも訳を知りたいですね。出来る限り、詳細に」
 笑顔で詰め寄ってやれば、その分クロノも退がった。逃がさず、どんどん間合いを詰めていく。
「……日本では春になれば桜を見ながら宴会をするのが通例なのですが」
 三歩目で、クロノはようやく口を開いた。
「エイミィがこっちでも出来る場所はないかと言い出したので、探したことがあるんですよ」
 不倫相手の前で妻のことを言うのは気が引けるものだろうが、この動揺はもう少しなにかある。
「そうですか。では少し質問を変えます。……どなたと来られたんですか?」
 にっこりと、もう一歩足を進める。クロノの後ろは木で、もう退がれない。
「エイミィと子供二人で……」
「他には?」
「ふ、フェイトとアルフにせがまれたことが」
「それで?」
「……はやてとヴォルケンリッターも連れて行けと」
「…………」
「本当にそれだけです」
 嘘ではないと判断し、カリムは身体を引いてやる。まるで数時間取調べを受けた容疑者のような顔で、
クロノはふぅと息をついた。
 そこに止めを刺してやる。
「つまり、私は一番後回しだったわけですね」
 びくりと、面白いぐらい大きくクロノの肩が跳ねた。
「い、いえ、そういうわけでは……。騎士カリムは聖王教会をあまり出られませんし」
「提督が一緒に来てくれるのなら、どこへでも行きますわ。現にこうして出てきているわけですし」
 愛しむように、嬲るように、クロノの頬を撫でてやる。
 二人きりなのはカリムが初めてのようだから、別に許してやってもよかった。
 しかしどうせだから、他の女性が絶対にしてないであろうことをねだっておきたかった。
「本当にクロノ提督は女心が分からない方ですね。しゃあしゃあと嘘をつけとは言いませんが、そんなこ
とでは私にもエイミィさんにも愛想を尽かされてしまいますよ?」
「……気をつけます」
「反省するとおっしゃるのなら、今私の考えていることを当ててごらんになってください」
「…………今晩ここに泊まっていって欲しい?」
「いえ」
 カリムがぼそりと囁いた言葉でクロノの目が見開かれる。
「……見られたらどうする気ですか」
「こんな山奥、来る人はいないでしょう。それに結界を張れば済むことでは?」
「僕はそろそろ帰らないとまずいのですが」
「一回だけでけっこうです」
「服が汚れますよ」
「転んだとでも言います」
「…………」
「もう理由は思いつきませんか?……でしたら」
 桜の妖しさそのままの笑みで、カリムは悩ましげな吐息を唇に吐きかけた。
「抱いてください」



「ふ……ん、んんぅ……」
 数分後、木々の合間を押し殺したカリムの嬌声が流れていた。
 体勢は先程の逆。カリムが樹にもたれかかっている。そしてクロノは法衣の裾から潜りこんで、秘所を
直接舌で愛撫していた。
 舐められていることもさることながら、法衣に籠った体臭を嗅がれていると思えば、カリムの神経は羞
恥で焼かれる。始める前の精神的余裕はどこにもない。
 いきなり舌が止まった。しかしそれは攻めが止むことではない。
「もうべたべたですね。顔がすっかり汚れましたよ」
「いやぁ……」
 口で嬲られるが、反論の仕様が無い事実である。
 腿を伝い、足首に引っかかっている下着を汚しているのはクロノの唾液などではなく、紛れもなくカリ
ムの愛液だった。濡れるどころか、滴り落ちていると形容した方が的確だ。
 また、顔が陰毛に埋まる。
 今度は滑らかな舌だけでなく、指も加わり秘裂が広げられ奥の奥まで舐められる。
「はあ……くぅ……強すぎ、ます……!」
 言葉と裏腹に、クロノの頭に置かれた手は突き放すのではなく押しつけていた。腰も前に突き出し、鼻
先をめり込ませるようにしている。
 クロノはそんなカリムの心中を読んだのか、皮を持ち上げた敏感な突起も弄りだす。
「あん……あぁ……ふぅっ、ああ!」
 今さらながらに、防音結界を張っていたことを思い出す。途端に顎が緩んで、喘ぎ声が飛び出た。
 とどめを欲している身体は股間からの快楽だけでは物足りず、自分で乳房を揉み始める。法衣と下着の
二重越しなため、爪を立てるぐらい強く。
 網膜と鼻腔から忍び入った桜は女一人惑乱させるには充分で、カリムは身体の芯から桃色に染まってい
た。
 やがてそれは、脳にも到達する。
「んっ、あっ、あああん!」
 背が自然に仰け反り、後頭部が木に激しくぶつかる。それでも、痛みより絶頂が強かった。
 多量の淫水を垂れ流しながら収縮した媚肉は、クロノの舌を強く内側に巻き込むほどだった。
「はふぅ……」
 熱い息を吐いてぼやけた視界が晴れれば、目の前には裾から這い出たクロノ。
「満足しましたか」
 かなり激しい絶頂で、満足したといえばした。しかし、カリムは首を振る。
「クロノ、提督……一回というのは、こういう意味ではありませんよ……」
 手探りで見つけ出した硬いものを、ズボンの上からぎゅっと握った。
「うっ……」
「……そちらも出さないと辛いでしょう」
 やわやわと揉んで、引き返せなくしてやる。ある程度で止めるつもりだったが、山の冷気で冷たくなっ
た手に、肉棒の熱さは格別だった。
 我慢できなくなって、カリムはジッパーを下げて直接触った。
「もちろん、あなたが出すだけでも、ありませんよ」
 何か言い出す前に、素早く強くしごき立てた。
「う……あ……」
 一定のリズムで上下するカリムの手に合わせて、クロノの呻きが漏れる。まるでクロノを意のままに操っ
ているようで、カリムは攻められるのとは別の興奮を覚える。
 ぬらぬらと、手が濡れてきた。クロノの先端は、呻き以上に彼の快楽指数を表す液体を流している。
 愛しい男の声がもう少し近くで聞きたくて、カリムは空いてた手を首に回して引き寄せる。
「ん……んむ…………ん」
 舐めるような口づけを繰り返しながらも、手の動きは止めない。変化をつけて、亀頭や雁首も刺激して
いく。
 あっという間に、肉棒は限界まで膨れ上がり小刻みに振動し出した。だいぶ早い。カリムを攻めながら
クロノもだいぶ感じていたのだろう。
「楽になって、よいのですよ」
 囁いたその口で、カリムは耳たぶをかぷりと噛んだ。
 それがクロノを決壊させることになった。
「あ、あぁ……くっ!」
 どくりと、手の中の肉塊が脈動する。飛び散った白濁液は地面に落ちて、花びらと雑草の中に消えた。
 射精が終わってもカリムは手を緩やかに動かし、最後の一滴まで出させる。それでもなお、クロノの肉
棒は硬いままだ。まあ、萎えられなどしたらカリムも困るのだが。
「クロノ提督……お願い、します」
 主語を抜かした懇願をすれば、すぐに花びらの褥に寝かされた。
 見上げた空は、どこまでも桜色だった。
 改めてこの花の美しさにカリムが呆けている間に、スカートの裾が捲り上げられる。金色の陰毛と、カ
リムの一番大事な部分が、太陽の下に晒された。
「入れますよ」
「はい…………あんっ……!」
 亀頭がほんの少し触れられただけで、危うく果てかけ唇を噛むカリム。
 野外の空気と土の匂いは、予想以上に身体を敏感にしている。
 気を落ち着かせようと深呼吸した瞬間、ずぷりとクロノの太い陰茎が一気に根元まで差し込まれた。
「んぁぁっ!」
 今度は耐えられなかった。嬌声と涙が零れ落ちた。
 なのにクロノは容赦せず腰を突き入れてくる。思考が立て直せないまま、壊れていく。
 あっという間に、カリムの頭の中は快楽一色になった。自分で身体を揺すって、感じる部分が突かれる
よう動き出す。
 腰だけでなく、胸もまさぐられる。動きはそこまで変わらないのに、自分でした時の数倍の快感に襲わ
れた。
「もっと、強く……抱いて、くださいっ……ああぅあっ!!」
 カリムが言うより先に、猛然と子宮口が突かれる。カリムもクロノを締めつける。
 いつもどこかカリムに素っ気ない部分のあるクロノが、本能も欲望も剥き出しにしてカリムを貪ってい
る。
 それが、とても嬉しかった。
「クロ、ノ、提督っ、……このまま、出してっ!」
 本能の叫びに言葉は返ってこず、大きく動いた腰が応えてくれた。
 直後、視界が桃から白へと変化した。
「ああっ、あああぁぁぁー!!」
 肺どころか血液の中の酸素まで、全部嬌声となって出て行ってしまう。
 息を吸おうと口を開くが、入ってきたのは花びらだけ。
 むせ返るような桜の匂いに、カリムは溺れた。



 言ったとおり、クロノは事が終わると帰ってしまった。
 カリムはそのまま泊まり、翌日残った仕事を片付けて帰る前にもう一度桜を見に来てみた。
 二度目に見るせいか、それとも隣に誰もいないせいなのか、今度は心躍るものではなかった。むしろ、
散り行く花の寂しさだけを感じる。
 一晩のうちに花はかなり散って、枝に半分ぐらいしかついていない。
 昨日、クロノと激しく交わった樹の下に立ってみる。花びらが一つ、また一つと降ってきて、数分動か
なかっただけで、服から髪の毛まで花にまみれた。
 一片を手に取ってみて、散り急ぐ花と己の身を比べてみた。
 カリムという女の花は、まさに今が満開である。しかし、桜と同じで散る時は一瞬だ。誰かに知られて
身の破滅を迎えるか。クロノに捨てられて心が潰えるか。
 いや、それでも桜は来年になればまた花を咲かす。だがカリムの花は、一度散ってしまえば二度と咲き
はしないだろう。
 それとも、誰にも知られぬまま日陰で咲き誇り、時が来たら腐り落ちるのか。
 奇跡が起きて、いつか陽の当たる場所に出られるのか。
「……馬鹿馬鹿しい」
 無表情で手の平を返し、カリムは花びらと感傷を捨てた。
 最初から、終着点を考えて始めた関係ではない。
 ただ、彼が好きだった。それだけだ。
 桜も、種を残さなければという高邁な原理ではなく、咲きたいから咲いているのだ。
 散った後の事など、考えてもいないだろう。
「……どうせ狂い咲いた花ですもの」
 誰にともなく呟き、カリムはきびすを返した。もう一度も振り返らず、足早に山道を降りていく。
 後には、見る者のいない桜が、取り残された。


          終わり


著者:サイヒ

このページへのコメント

なんと言って良いのか、ともかく最高でした。
エロパロで様々なSSを読んできましたが、間違いなく私の読んできた中でも最高位のSSだと断言できます。

エロの部分の素晴らしさもさる事ながら、散り行く桜の花に不倫の徒花を咲かせる自分自身の姿を重ねるカリムの切なさに思わず胸打たれてしまいました。
淫蕩さと切なさを併せ持つ至高・至極の作品を読ませていただきありがとうございます。

GJでした!!

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Posted by 煙 2008年10月24日(金) 02:22:26 返信

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