同理事は「インフレは低くあるべきだが、低すぎてもいけない。インフレ期待の抑制には、心地よい範囲というレンジよりも明確な目標を設定する方が効果的だ」と述べた。 同理事は「インフレ目標は、間隔やレンジではなく単一の数値目標を伝達する方が単刀直入だ」と指摘。「2%のインフレ目標を掲げれば、金融政策はゼロ以下のレンジ(の金利)にもほとんど制約されず、マクロ経済安定へのマイナスの影響は最小限にとどまる」と述べた。
日銀の副総裁候補となっている伊藤隆敏・東京大学大学院教授は11日午前の衆院での所信聴取で、中央銀行の最大の責務は物価安定だと述べた上で、インフレ率は低いがマイナスではないということが物価安定だとの認識を示した。 その上で、諸外国にはインフレ目標を採用するところが多いが、先進国の中でインフレ目標の下限がゼロ%の国はない、と指摘した。
──次期総裁の金融政策運営として金利正常化路線を継承すべきか。
「あくまで金利の正常化は処方せんの一つであり手段。目的は経済の持続成長のための物価安定が一義的にある。物価水準は、デフレに入ってしまうリスクやコスト、CPIの統計上のバイアスも考えると、プラス1%程度をターゲットにしてなるべく物価の安定を図るという考え方がいいのではないか」
「日銀が採用している『中長期的な物価安定の理解』で示している0─2%程度という物価水準にはゼロ%も入る。CPIの統計バイアスを考えると、ゼロ%はマイナスと思っており、例えば0.2%、0.3%はデフレに陥るリスクがある。長くデフレで苦しんできたことを考えれば、デフレになるリスクは避けるべきであり、(次期日銀総裁には)デフレはコストが高いというバランス感覚を持ってやってもらいたい」
渡辺喜美金融担当相は22日午後の閣議後の記者会見で、日銀の金融政策について「米欧ともに金融引き締めではなく金融緩和の方向で足並みを揃えている。日銀だけがひとり蚊帳の外では協調体制はうまくいかない」との見解を示した。そのうえで、同日の会合で金融政策の現状維持を決定したことについて「日銀だけがメーンシナリオを維持して利上げの機会を伺うという方向性だと、米欧がそういう方向に行っていないのとかけ離れてしまう」との見方を示した。 「マクロ政策として日本が打てるのは金融政策だけだ」と繰り返し強調した。
0ECD加盟国中、デフレが続いているのは日本のみである。その理由について、民主党はどのような認識をもっているのであろうか。この1 年間の日銀の金融政策をどう総括するのであろうか。昨年の4月から日銀が物価見通しを2度下方修正していることは、金利正常化の路線は正しくなかったと受け止めるべきなのではないか。 いままでの「金利正常化路線」を続けるか、転換するかが日銀総裁人事の最大の選考基準でなければならない。 民主党にも、日本が再び昇る国にするための日銀総裁の国会同意人事に、是非、協力をしていただきたい。
3月19日に任期切れを迎える福井俊彦総裁の後任は目標とする物価上昇率をあらかじめ定めた上で金融政策を運営するインフレターゲット政策を採用すべきだとの考えを改めて示した。
日本の名目成長率が05年度から年度当初の目標を下回っていることに触れ、「05年度の終わりに日銀は量的緩和政策を解除した」と指摘。日銀の金融政策が経済成長の大きな足かせになっているとの認識を示した。
政調会長時代に、経済学者でノーベル賞を受賞したローレンス・クライン教授らに日本の潜在成長率を計算してもらったところ、3%以上あるとのことだった。しかし、まだこの数字は日本の政界や官界、多くの関係者の中では常識となっていない。
もしも日本の潜在成長率が3%台だという前提に立てば、金融の引き締めを先延ばしして景気拡大を謳歌する、という考えで、常識的な経済政策になるはずだ。あまりに経済政策の議論をしなさ過ぎ、議論が深まらないことを大変残念に思う。
常識的な私の意見が、日本ではインフレ期待の悪魔的手法と言われたり、非常識とされたりする場合がある。また、物価上昇率が1%ということで、インフレ期待だという議論がまかり通っている。日本の政策決定の場は、世界の目から見て常識なのか非常識なのか大いに疑問だ。
物価上昇率は「適切なマクロ経済運営の下で、デフレ脱却後、安定的なプラスの物価上昇率が徐々に実現していくと見込まれる」と展望し、対象期間の消費者物価指数(CPI)は「1%台半ば程度に近づいていくものと見込まれる」とした。
日本の株価は日銀が供給する金融の「量」に左右されている。「金融環境は極めて緩和的」と福井俊彦日 銀総裁は言っているが、実はそれは「低金利」のことで、逆におカネの供給を大幅に減らす「量的引き締め」の政策を続けている。日銀は2006年3月からそ れまでの量的緩和から一転して急激な量的縮小に踏み切り、株価はそれに引きずられるように大きく振れ、低迷を続けている。
10年までの中期的なインフレ率の想定を1.6〜1.9%としており、中央値の1.75%程度が実質的なインフレ目標とみられている。
世界中がインフレを懸念する中で、日本だけが依然デフレから脱却できないでいるという事実を、当局は真摯(しんし)に反省する必要がある。金融政策の責任は極めて大きいのだ。 ……こうした状況下でこの1年あまり、日銀は金利を引き上げてきた。日銀は通貨の供給増加を通して、まず、デフレ克服という本来の責務を果たすべきである。 ……一言で言えば、経済をデフレにもインフレにもしないこと。これこそが日銀がコミットすべき目標である。具体的に、多くの国がそうしているように、プラス1%から2%の物価上昇を実現することを日銀総裁候補に求めるべきである。
消費者物価が7カ月連続マイナスで推移していることに関し、「日銀は物価がマイナスに戻らないことを前提に量的緩和政策を解除し、その後も利上げしてきたが、見通しを誤ったことへの説明責任を果たしてない」と強調
ジョンソン調査局長は17日、世界経済見通し(WEO)発表に際して記者会見し、日本の経済成長率の下方修正について、輸出部門の減速が主因だと説明した。さらに「日本でインフレの兆候は全く見られない」と述べ、日銀の利上げは慎重に行うべきだとの認識を改めて示した。
日銀が金利を上げるのは誤りである。現時点でインフレになる気配や証拠はない。もしその政策が実行されれば景気の減速を招き、経済を停滞させる可能性すらある。 by ジョセフ・スティグリッツ