Protein structural analysis room Japan - RNA World (beta)について
(注意!:ここに書かれている内容は該当するプロジェクトサイトを翻訳し分かりやすく書いたものであり、プロジェクト主体の意図するものと若干表現が異なることもありますのでご了承ください)



■プロジェクト名

■プロジェクト運用主体


"Rechenkraft.net e.V" (BOINCクラブチーム) http://www.rechenkraft.net/ (ドイツ語)

協力パートナー
マールブルク・フィリップス大学 マールブルク・アン・デア・ラーン(ドイツ)
インド理科大学院 バンガロール(インド)

■使用プラットフォーム 


 (Last modified Feb 21 2010)

 BOINCバージョン5.0以上

Microsoft Windows (98 or later) running on an Intel x86-compatible CPU
Microsoft Windows running on an AMD x86_64 or Intel EM64T CPU
Linux running on an Intel x86-compatible CPU
Linux running on an AMD x86_64 or Intel EM64T CPU

■推奨環境 (プロジェクト参加者のロースペックマシンを参考としています。プロジェクト側からの指定はありません。)


CPU : Celeron 1GHz以上
メモリ : 512MB以上

■RNA World (beta) について

RNA World (beta) とは?

生物の細胞の中にあるあらゆる蛋白質は、DNAの塩基配列(遺伝情報)に基づき一時的に合成されたmRNA(:メッセンジャーRNA)と呼ばれる伝令高分子から作り出されています。このmRNAなるものについては、そのmRNAの持つ塩基配列自身に対応する蛋白質(アミノ酸の連鎖集合体)に変換させる生体機構として認識されるようになってきました。一般的にリボソームと呼ばれるこの蛋白質合成装置の機能をなんとmRNAが持っている・・・言い換えるならばRNA分子が活性触媒能を持った、リボザイム(リボ酵素)でもあるのです。したがって近年になり、RNAという分子は伝令やtRNA(:トランスファーRNA)のような転移・運搬のみとして作用するだけでなく、蛋白質で構成される酵素のような生化学反応を行う促進剤の働きを持つものと考えられるようになりました。
もちろんリボソームは多くの蛋白質(実際には非常に複雑なリボ核蛋白質)で構成されていますが、それら蛋白質はリボソームそのものの構造を構成する部品でしかないのです。

とても興味深いことに、ヒトゲノム配列解析の初期のころ、私たちヒトのゲノムのうちごく一部分のみが蛋白質をコード化していることが判明しました。科学者は当初考えました。「これらジャンクDNAは何者なのだろうか?」「このジャンクDNAを取り除いたらどうなるのだろうか?」今日では、細胞内での様々な動き働きのほとんどが小さなRNA、いわゆるmiRNA(:マイクロRNA)により支配されているということが明らかになってきたのです。私たちの体の全ての様々な種類の細胞全てに含まれる遺伝物質(DNA)は基本的に同一であるものの、細胞が筋肉や肝臓そして有毛細胞などに細胞分化する際、例えば皮膚細胞となるべき細胞が皮膚細胞になると決定づける役割を果たしているようなのです。そして多くのガンの発生要因として、細胞内部のmiRNAがコントロール機能を失ってしまった結果によるものであると考えられています。また、ウイルスが標的とする細胞の制御を乗っ取る(病気になる)miRNAを持ってくることも発見されています。

それゆえ、私たちがこのRNA Worldというプロジェクトを運用するようにRNA研究に果敢に投資してゆくことは、さらなる重大な発見を得られると共に、将来の私たちの健康にとても重要な影響を与えることにつながるものと、私たちは断言できるのです。



■私たちの研究・科学的目標


プロジェクトCRISPR
 CRISPR:Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats

CRISPRは原核生物が持つ、外部からの攻撃に対する防衛システムとして知られ、非常に単純な免疫システムとしての機能をもたらす反復配列領域(プログラム)です。さまざまな原核生物のこの反復配列について解析を試みます。


プロジェクトGEMM
 GEMM:Genes for the Environment, for Membranes and for Motility

GEMM RNAのモチーフは、サイクリックジグアニル酸リボスイッチの二次メッセンジャーを検出するように設計されています。サイクリックジグアニル酸(Cyclic di-GMP)は特異的なサイクリックジグアニル酸リボスイッチを介して転写と翻訳を制御、細菌内の遺伝子を制御する重要な物質であることが知られています。


プロジェクト6S
 6S:6S RNA

6S RNAは大多数のバクテリアに適用されている、およそ200個程度のヌクレオチドで構成される小さなノンコーディングRNAであり、時折、種の範囲内で複数の遺伝子複写も起こります。それは、栄養制限の状況下にてRNAポリメラーゼを保存するシステムを表わしているように見えます。興味深いことには、その特別な構造のために、このRNAは栄養再供給と同時に小さなmiRNAサイズのRNAを生み出すバクテリアのハウスキーピングRNAポリメラーゼの鋳型として用いられるかもしれません。そしてそのことによりRNAポリメラーゼは、DNA依存性RNAポリメラーゼとRNA依存性RNAポリメラーゼの働きをすることができるのです。
このプロジェクトでは、完全に配列された有機体中でのこの制御システムのチャート化を私たちは試みます。


プロジェクトThermo

全ての有機体は、CSR(低温ショック応答)と称される遺伝子プログラムを誘導することにより、周囲温度の突然の低下に反応します。この細胞ストレス反応は、分子構造、輸送プロセス、化学反応性およびさらに多くの様々な種類の温度依存の調整に変調に対処するようになっています。
このプロジェクトのゴールは、ゲノムが完全配列されたすべての有機体で温度調節に関係する非コーディングRNA(ncRNAs)を系統的に特定することです。


プロジェクトMtb, Myctu, Mycle & Myc

結核菌(マイコバクテリウム・ツベルクロシス)は空気感染によりパンデミックを引き起こす結核(TB)の原因となるものです。恐ろしいことに、全世界の総人口の3分の1に及ぶ人は結核菌に感染しています。さらに悪いことに、多剤耐性の結核(MDR-TB)はファーストライン(第一選択薬)での標準治療に応じない結核の型であり、WHOなどの調査により事実上全ての国々で存在することが分かっています。顕著なことに結核は世界の主要な死因の一つを占めており、2007年においては合計177万人、1日に4800人もの方が結核により命を落としています。特定のノンコーディングRNAがホストを感染させる多くの病原体の能力を制御することは既に知られているため、このプロジェクトでは有機体のなかで現在知られているノンコーディングRNAをマップにするために徹底的な探索を試みます。さらに、ハンセン病を引き起こす癩菌(らい菌 マイコバクテリウム・レプラ)を含むマイコバクテリウム属の全ての菌種にわたり生物情報の解析を行い、さらに病原性と非病原性の比較を行うことで、病原プロセスに関与していると推測されるncRNAに基づく違いが明らかになるでしょう。私たちの計算上の調査と医学・生物学とのつながりを実証するため、インドの研究パートナーと協力し実験を行います。
今後、結核と戦うため有機体の病原性にとって不可欠であるノンコーディングRNAの潜在的に可能である今回の調査が実れば、新たなる優れた薬をもたらしてくれることは明らかです。


プロジェクトsRib
 sRib:screening Ribozymes

リボザイムは、タンパク質である酵素のように化学反応に触媒作用を及ぼすノンコーディングRNA分子です。例を挙げるならば、ハンマーヘッド型リボザイムやHDVリボザイム、ヘアピン型リボザイムなど、多様なものが存在しています。
このプロジェクトでは、私たちは、数あるリボザイムと界(生物学上の分類)とをスクリーニングします。さらに私たちは、自然において類似物が存在するかどうか知るために、人工的に設計されたリボザイムを含めてスクリーニングを行います。


プロジェクトT-box
 T-box:T-box leader

T-ボックスリーダーはmRNAの5'末端の一部であるとともに、ノンチャージtRNAと相互作用することにより蛋白質合成制御の際に調整機能を持つという代表的なRNAエレメントです。
このプロジェクトにおいて、RNA Worldスーパーコンピュータ(みなさまが提供されるコンピュータの集合体)は、界(生物学上の分類)中でT-ボックスエレメントを特定するために利用されます。


プロジェクトtRNA & tRNA-like

tRNAは細胞内蛋白質合成機械の重要な構成要素でありますが、例えばT-ボックスエレメントと連携した遺伝子発現規制など多くの機能を持っていたり、HIVゲノム(ホストゲノムへのウィルス統合にとって不可欠なプロセス)の逆転写用プライマーとしても利用されます。さらに、tRNAはバクテリアの細胞壁を造るために必要でもあり、非常に用途が広い分子族を作っている特定の脂質にも見出されたりします。興味深いことに、いくつかのtRNA様配列は植物ウイルスゲノムで確認されており、ウィルス複製の規制との関連性があるようにみえます。
このプロジェクトでは、この基本分子クラスでより多くの多様性の確認を望まれているtRNAとtRNA様配列の発生について完全なる調査をコンパイルしてゆくことを目指します。


プロジェクトGA
GA:Genome Annotation

常に新しいゲノム配列が発表される際に、文字列(すなわちそのゲノム配列が含むDNA分子の基礎)には計算上の注釈がされてます。このプロセス中に、標準遺伝暗号(コドン)および多くの有名な規則に基づいて、蛋白質のためにコード化する領域はすべて識別されています。rRNAとtRNAといくつかの一般的なノンコーディングRNAのようなリボソーム関連のRNAの他、大多数のノンコーディングRNAは、通常見逃されています。
このプロジェクトでは、系統的にノンコーディングRNAを確認することにより、標準的な方法により生成したものに私たちの得られた結果を加えることによって現在の蛋白質に焦点を置いたゲノム注釈手順に起因する差異を排他的に埋めていくことに集中してゆきます。