２０１１年度理科１類１０組

しかし、これ以前は長きにわたって、ジェロラモ•カルダノ、フランチェスコ•バトリッチ、ジョルダーノ•ブルーノ、トンマーゾ•カンパネッラといった、 最も初期の自然哲学の改革者になろうとした者は、アリストテレス哲学を、自身のより優れた仕組みにとってかえようと試み、宗教裁判によって 生涯の一時期をすっかり牢屋で過ごすことになった。 　この種の改革的な自然宗教の取り締まりは、たいていローマのキリスト教会によって行われる。教会には、そのような事柄を取り扱う統治機関を設けられているが、 仮にプロテスタントにも同様の機関があったなら、プロテスタントも同じように動いたかもしれないのだ。 マイケル•セルベトスは、ジョン•カルヴァンによって火あぶりの刑にかけられた。当初、メディカルライターであったセルベトスは、血液が右心室から左心室に移動する際、 （当時信じられていたように）二つの心室の間にある、心臓の肉を通ってではなく、肺を通ってくるということに気づいた初めての人物であると一般的に考えられていた。 現在我々は、この目的が血液に酸素を供給することであると知っているが、セルベトスにとって、それは、血液に聖霊の吸収を可能にすることであったのだ。 彼は、聖霊は我々の吸っている空気中の我々の周りに存在すると考えていたのである。これは、カルヴァンが許容できないほどの唯物論的な聖霊に対する見方であったので、 セルベトスは、特に三位一体を否定した罪でプロテスタントに処刑されることとなった。 絶対主義（専制政治）国家フランスと同様に、デカルト主義はオランダの連邦を通じて、追放されうらなかった。しかし確実に、有力な神学の教授が市議会をデカルト主義に反対させるように 揺さぶった、ユトレヒト、ライデンでの公式な反対に遭っていた。

神学者としての自然哲学者 宗教的な機関と科学との緊張がいかなるものであっても、科学革命の主要な自然科学者の、すべてではなくとも多くが、熱心な信者であったということは、歴史的な事実であるのだ。 さらに、彼らは自然哲学を研究して利益を追求するように、単に今まで通りの信仰を続けていたわけではなかったのだ。 科学革命の主要な思想家野多くは、我々が素人神学者と呼ぶようなものに自身を転換する必要性や、彼らの新たな自然哲学に沿った自身の神学的な立場を発展させる必要性を明確に認識していた。 アモス•フンケンスタインが指摘してきたように、結果として、短い期間（科学革命期を通して）「科学、哲学、神学が同一のものである（といえる）」のだ。 フンケンスタインが言うように、このことが「神聖な事柄への新しく独特なアプローチ、すなわち、大衆的な神学」を必要としていることに注目することは大切なことである。 なぜなら、13世紀以来、他のいかなるものと切り離して、つまり、俗人の侵害から、神学は守られてきたからである。 しかも、これ以前の自然哲学者は自分が神学的な事柄を侵略してしまっていることに時折気づいていたが、彼らはほとんどそのような領域を避け、いつも神学者に従っていた。 　確かに、自然哲学者は専ら自然現象を自然主義的な観点で説明しようとしていた。例えば、物理的な効果や過程を説明するためにただ神を呼び起こすというのは、自然哲学の規則に反しているとみなされただろう。 神は常に最初の(原始の)原因だとみさなれていて、神なしでは何もそのままではいられないだろう。しかし、自然哲学者は二次的な原因という観点で現象を理解しようとしており、その二次的原因から、神がいつも操作しようとしていることが想定できる。 この想定は神学者に推し進められ、彼らにとってそれは、自然哲学の「存在理由」をもたらすものと考えられていた。 この想定にとって唯一あり得る例外は奇跡であった。しかし、神が直接、奇跡の達成を妨害するという主張は神の側の見通しの欠落を案じしているかのようである一方、神が二次的原因によって奇跡を起こすという主張は、二次的原因がいかに異常であってもそれが奇跡でも何でもないかもしれないということを暗示するのでこれら奇跡は神学者と自然哲学者が慎重に扱わなければならない。 　それゆえ、最近の評論家がいうように、神の「存在と性質は無関係である」とする近代科学とは対称的に、自然哲学が根本的には「神についての活動」であったと考えるのは誤っている。