さて、
フィボナッチ・リトレースメントに代表される、特定の比率で相場が転換しやすい傾向は、一体なぜ生じるのだろうか。
今や、黄金比率を使ったフィボナッチ・リトレースメントは、大変に支持されたテクニカル指標であるから、相場がそもそもそのような性質を持っていなかったとしても、多くの市場参加者がそれを意識してトレードする結果、その行為そのものがそのポイントでの反転を生み出してしまう。
しかし、仮にそのような意識がなくても、相場は、特定の比率で反転を起こす可能性は十分あると思われる。
以前、本シリーズの
第二十四夜(ローソク足)の最後に、
「
ローソク足チャートは、どの時間足のものを見ても、良く似ている」
と述べた、特に、5分足以上〜週足以下のものはだいたい似通っていて、明確な特徴が無ければ、適当な通貨ペアの適当な単位時間のローソク足チャートを見ても、なかなかどの時間足のものか言い当てるのは難しい。
ちょうど、長期のローソク足チャートを拡大していくと、ローソク1本の中の値動きが詳細に拡大され、その部分の値動きも、元のチャートと似通った上下動を繰り返しており、その一部分をさらに拡大すると、その部分も相似的な上下動が見えてきて、という具合に、「どの部分を拡大しても全体の縮図のように
相似的」なのだ。
この性質を「
自己相似」や「
フラクタル」という。
これは、相場がほぼ
ランダムウォーク(次に上下どちらに動くか分からない)で形成される結果ということと関係ありそうだ。ランダムウォークで作られた形は、多かれ少なかれ
自己相似の性質を持つと言われ、一部分を拡大すると全体の縮図のように、元と相似な形が出てくる。
ローソク足チャートがそのような性質を持っていることはすぐに確かめられるから、実際の相場の動きもそうした自己相似的な性質を持っていると言えるだろう。
(この点については
第三十四夜でも数学遊びとして扱ってみたい)
すると何が起こるか、というと、実は、自己相似な形は、至るところに「決まった比率」が現れるのである。
というのも、部分を拡大すると全体の縮図になる、ということは、そこに一定の比率がある、ということだが、どの部分を拡大しても自分と似た形、ということは、そのような比率は「
至るところに」見出すことができる、ということだ。
フィボナッチ数列(0, 1, 1, 2, 3, 5, 8…)も、いわば自己相似な性質を持つ。数が進むと、徐々に、一定の比率(黄金比率1.618…倍)が現れるということは、どこを適当に選んでも、全体の縮図と言える。
・・・・さて、厄介なのは、特定の比率が「
至るところに」現れるという点だ。
例えば、チャート上で、どこでもいいから適当な高値と安値を選び、そこからフィボナッチ・リトレースメントを計算して横線を引くと、必ずといっていいほど、どこかに(どこかは分からない)その点で反転するポイントがある。
その点は、ローソクの中に埋もれているかも知れないが、短い時間足に拡大していけば、その点で反転する場所を見つけることが出来るだろう。
逆の言い方をすれば、「どの高値・安値」を選んでも、どこかにフィボナッチ・リトレースメントの条件を満たす点が来る。
だとしたら、一体どのようにフィボナッチ・リトレースメントを使えば良いのだろう?
どのレートも、過去のどこかの適当な高値・安値のフィボナッチ・リトレースメントの計算値に合致するなら、
あらゆるポイントが「反転か、突き抜けるかするポイントだ」と予測しても、それは
何も予測したことにはならない。
だからこそ、最初に書いたように、「フィボナッチ・リトレースメントを使う際には、
どの高値・安値を準備するか」が大事なのである。
どの高値・安値を使ってフィボナッチ・リトレースメントを計算する人が多いか、というのが分かれば、そのポイントは相場のもみ合いポイントとしての意識が高まるわけであるから、結果、実際にもみ合いポイントとなる確率が高くなる。
最も使いやすい高値、安値を例として挙げるなら、
・前日1日の高値、安値 → 概ね当日1日(〜半日)に使える
・前日NY時間の高値、安値 → 概ね当日1日(〜半日)に使える
・直近6時間くらいの高値、安値 → その後の6時間くらいに使える
といった塩梅だ。
もう少し短期、あるいは長期にとって、
・ここ1〜2時間程度の高値、安値 → その後の1〜2時間くらいに使える
・ここ1〜2ヶ月程度の高値、安値 → その後の1〜2ヶ月くらいに使える
というのも意識されやすいだろう。
ここは、適切な個別のトレードポイントをレクチャーする場ではないので、詳しいポイントについては、是非自分で多くの時間足チャートを見ながら感じ取って欲しいと思う。
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