SMM”バイブル”をチラ見してみたまとめ - 情報発信・継続的なコミュニケーションの動機の明確化
これまで、過去のエントリーで、ソーシャル メディア マーケティングとは会話である、という点だったり、自社の都合や解釈で単なる商品やキャンペーン情報の発信、自慢、過度な主張などは避けた方が良い、という点であったり、“話し上手” だけではなく “聞き上手” であるべきだ、という点であったりと、同じようなコトを繰り返して書いてきたのだけれども、コレにはちゃんと理由があったりする。そして、“5W1H” の最後のパートが “Why” になっていたりするのも、同じ理由なわけで。

実際、多くのソーシャル メディア マーケティング施策において失敗と考えられる事例は、この “Why” を突き詰めて考えきれていないコトから起こると言ってもいいかもしれない。その根本は、前回のエントリーで記した、ソーシャル メディア マーケティングは、純然たる広告とは異なる、という前提に立った上で企画がなされていないからだと考えられる。

少なくともソーシャル メディア マーケティングが登場する以前、マーケターは、そのメッセージを対外的に伝えていくために広告を中心に据えたプランニングを行ってきていた。コレは、前回のエントリーでも記したとおり、(広告枠を購入するということで) 自社の都合で、自社の好きなコトを、(枠さえあれば) 好きな場所で、(よほど問題のあるモノでなければ) 好きな表現で、(コストが負担できるのなら、枠を購入した分) 好きなだけ発信することができるという発想につながっている。

実際、ソーシャル メディア マーケティングの手法として Buzz/Viral 型ばかりがクローズアップされて語られている背景も、ソコにあると考えられる。大半は、コレまでの広告的手法によるメッセージの発信を根本に据え、いかに ROI を高められるか (と言えば聞こえはいいが、実際にはただ単に “いかにカネをかけずにできるか” という単純な思考だったりもするのだけれども) という観点でソーシャル メディア マーケティングが語られていたりするのが現状だ。

こういった背景がゆえに、コミュニケーションを考える上で、消費者の動機 (つまり “Why”) が深掘りされて考えられなくなっていたりするわけで。

しかし、ソーシャル メディア マーケティングは、こういった一方向的な情報発信ではなく、双方向の関係性の中から話題化を促進させたり、相互の信頼関係を強めたりすることを目的とした活動であるというコトを常に意識する必要がある。つまり、ソーシャル メディア マーケティングによって展開されるコミュニケーションの先には、常にペルソナとして作られたモノではなく、リアルに消費者が存在するというコトになる。

今回の “5W1H” の最後のパートである “Why” では、目の前にリアルに存在している消費者が、なぜ自分たちの望む行動を取ってくれるのか、その必然性 (つまり動機) を密に検討するコトの重要性について述べられている。

さて、その “Why” なのだけれども、もちろん、ココでも Buzz/Viral 型と Advocacy 型では、その考え方が異なってくる。まずは Buzz/Viral 型から考えてみよう。

Buzz/Viral 型のアプローチにおいて “Why” を考えるにあたって、もっとも見失われてしまう点、ソレは消費者を情報の受信者としてだけでなく、情報の発信者としても捉えなければならないという前提が欠けているという点だったりする。Buzz/Viral 型のアプローチの成功を決定づける要因は、そのアプローチによって発信された情報を受けた消費者が、いかにして他の消費者に、その情報を伝播させるコトができるか、という点になってくる。ソレを突き詰めて考えていけば、消費者を情報の受信者としてだけではなく情報の発信者としても捉えなければならない、というコトがわかってくるハズだ。

口コミによって、他者に情報を再発信してもらうためには、それなりに強い動機を要するコトを忘れてはいけない。そのため、自分たちが発信しようとしているコンテンツに、その要素が含まれているのかどうかを密に検証していく必要がある。

もちろん、そのためには、ターゲットとなる消費者に対して、どれだけ深く研究がなされているか、という点であったり、その上でコンテンツそのものに、強烈に消費者の感性をひきつけるモノが伴っているか、という点が検証されていなくてはならないのはもちろんなのだけれども、とくにソーシャル メディアを舞台にする場合には、ブログ、Tumblr、Twitter などで口コミがしやすいようなコンテンツ形態にになっているかという点が重要だったりもする。語弊があるコトを恐れず、極端な言い方をするとすれば “引用されやすいか” and/or “共有されやすいか” という要素がポイントになってくるわけだ。

ココが Buzz/Viral 型のキモになってくるのだけれども、前述の通り、コレは消費者を情報の受信者としてだけではなく情報の発信者としても捉えるという前提をしっかりと持つコトで初めて具体化されてくるモノだったりする。そのため、“バイブル” では、この重要性をしっかりと説いている。

続いて Advocacy 型。もちろんソーシャル メディアという舞台でコミュニケーションを展開するコトになる以上、消費者を情報の受信者としてだけではなく情報の発信者としても捉える意識が必要なのだけれども、Advocacy 型のアプローチにおいては、それ以上に重要な要素が問われてくる。

ソレは、消費者が自分たちと継続的にコミュニケーションを取るコトを求める動機を常に明確化しておくコトである。単に情報をポツンとソーシャル メディアの世界に投下したところで、ソコに対して常に積極的に会話を展開させるほど、消費者はヒマではないし、お人好しでもない (自分自身のコトを考えてみると、よくイメージできると思う) 。消費者の一日における可処分時間、そして可処分情報が限られている上に、ある意味考えたくもないくらい、圧倒的な情報があふれかえるソーシャル メディアの世界において、それでも消費者が自分たちと会話をしたいと思わせる動機を、常に深く考え、明確化しておく必要があるのだ。

その動機は、もちろん企業や、その企業が扱う製品やサービスによって、様々だったりする。コレについては、今までに蓄積している (であろうと思われる) 様々なインサイトの中から決定づけ、そして (動機そのものを) 開発・検証するというステップを踏むコトによって具体的になってくるだろう。

そして何よりも重要なのは、“そうやってあれこれ考えたからといって、一朝一夕に、その動機を見出したり開発できたりするものではない” という点だったりする。

おそらく最初のうちは、非常に困難だと思われるし、その困難さがゆえに、“とりあえず始めたけれどもユーザー数が集まらないよね…” であったり “結局盛り上がらなかったよね…” という声が出てきたりもする。その結果、立ち上げから数ヶ月間 (場合によっては数週間) で、最終的には撤退してしまう事例が後を絶たないし、その残骸は、ちょっと検索すれば、いくらでも出てくると思う。

実は、ソーシャル メディア マーケティングの Planning の段階、とくに “5W1H” において、この “Why” というのが、一番見落とされているのかもしれないと思っている。なぜなら、これまで紹介してきた他の要素は、実際のトコロ、ソーシャル メディア マーケティング施策以外のカタチにおいても、何らかの形で、同じような概念の上で考えられていたりする。その概念に対し、ソーシャル メディア マーケティング的なアプローチを考える場合、とくに考慮しなくてはならない点をプラス アルファ的に解説しているに過ぎない。

ただ、今回の “Why” については、これまでほとんどなじみの無かった概念が登場してくる。ソレは、Buzz/Viral 型であろうが、Advocacy 型であろうが、消費者はコミュニケーションの到達点以外の役割を担うというモノだ。いずれの場合においても、消費者はコミュニケーションの到達点としてだけではなく、コミュニケーションの起点としても考えられるし、そう考える必要が出てくる。Buzz/Viral 型の場合、消費者は第三者に向かうコミュニケーションの起点になってくるし、Advovacy 型の場合、ソレは自分たちに向かって返ってくるコミュニケーションの起点になってくる。

そういうわけで、今回でようやく Planning 編の中の “5W1H” が完結、となる。ちなみに、忘れてはいけないのは、コレは、まだ Planning 編の真ん中のステップでしかない、というコト。

Planning にあたっては、

  1. 問題点と課題の抽出
  2. 5W1H の明確化
  3. 基本戦略の策定

という流れになっているので、今度は、ココまで存分に考えた 5W1H を、具体的に戦略に落とし込んでいく、という流れになってくる。

正直、ココまで引っ張るとは思わなかったのだけれども、まだまだ Planning 編は続くわけで…。なぜなら、ソーシャル メディア マーケティング施策を展開していく上で、もっとも重要なのは、この Planning をおいて、他にないからだったりするわけで…。

というわけで、まだまだ気長に続いていくのだけれども、みなさまぜひ引き続きお付き合いのほどを…。