スティッフパーソン症候群(stiff-person syndrome:SPS)[別名:スティッフマン症候群(stiff-man syndrome:SMS)、全身硬直症候群、全身強直症候群]という病気のまとめwikiです。

メモ > IDDMの免疫寛容

1型糖尿病(IDDM)の療法:免疫寛容の誘導

自己免疫疾患は免疫の寛容(免疫反応を起こさないようにすること)がうまくできずに起きると考えられている。そのため、人為的に免疫寛容を誘導する治療法が研究されている。

GAD-Alum
寛容誘導を人為的に起こす方法としては、花粉アレルギー患者に花粉を注射する療法などが知られている。
同様な方法で、IDDM患者に、GAD-Alum(水酸化アルミニウム(Alum)配合のGAD)を注射し、
GADに対する免疫反応を抑える治療法が研究されている。(アルミがアジュバント=補助剤として使われている)
  • 1型糖尿病の発症阻止と寛解誘導[ J-STAGE ]
  • GAD Treatment and Insulin Secretion in Recent-Onset Type 1 Diabetes
    (発症して間もない1型糖尿病のGAD治療とインシュリン分泌)[ The New England Journal of Medicine ]
  • GAD65 vaccination: 5 years of follow-up in a randomised dose-escalating study in adult-onset autoimmune diabetes.
    (GAD65予防接種:大人の発症自己免疫糖尿病のランダム化の投与拡大した研究について5年間の追跡調査)[ PubMed ]
  • GAD-Alum Treatment Seems Effective in Slowing Residual Beta-Cell Function Loss
    (GAD-Alum治療は、残りのβ細胞機能損失を遅らせることに有効と思われる)[ Review of ENDOCRINOLOGY ]

Diamyd(ダイアミド):糖尿病ワクチン、治療薬として治験中のGAD-Alum。rhGAD65(recombinant human(組み換え型ヒト)GAD65)が使われているとのこと。
  • スウェーデンのバイオ企業、糖尿病治療で画期的な発見[ Invest in Sweden Agency ]
  • A Phase III Study to Investigate the Impact of Diamyd in Patients Newly Diagnosed With Type 1 Diabetes (EU)
    (新しく1型糖尿病と診断される患者でDiamydの影響を調査する第3相試験)[ ClinicalTrials.gov ]

その後、EUとアメリカで行われていた第3相試験は、偽群と比べ有意な臨床効果がないため、完了前に中止となったようです(2011年6月)。
  • Diamyd closes European Phase III study
    (ヨーロッパでのDiamydの第3相試験を終了する)[ Diamyd Medical ]
  • Diamyd initiates closure of US Phase III study
    (アメリカでのDiamydの第3相試験を終了しはじめる)[ Diamyd Medical ]

DiaPep277
熱ショックタンパク質の残基437-460を元にしたアミノ酸ペプチド。ペプチド特異的Th2/制御性T細胞を誘導することにより、Th1優位状態を矯正し炎症を抑える。他の免疫系には影響を与えないとのこと。
第3相試験(DIA-AID 1)では、偽群と比べ有意な効果が見られた。
  • Treatment of Recent-Onset Type 1 Diabetic Patients With DiaPep277: Results of a Double-Blind, Placebo-Controlled, Randomized Phase 3 Trial
    (最近発症した1型糖尿病患者でのDiaPep277治療:二重盲検プラシーボ対照、無作為化第3相試験の結果)[ Diabetes Care May 2014 vol. 37 no. 5 1392-1400 ]
目標HbA1c値を維持できた人の割合…DiaPep277投与群と偽群の比較:mITT 56%対44%(P = 0.03)、PP 60%対45%(P = 0.0082)
(mITT: 途中で投薬を中止したり治療法を変更した患者を含めた比較、PP: 計画通り薬(試験薬、偽薬)を用いた患者による比較)
一部寛解が見られた人の割合…投与群と偽群の比較:mITT 38%対29%(P = 0.08)、PP 42%対30%(P = 0.035)

上記の試験とは別に、効果を検証するための第3相試験(DIA-AID 2)が行われている。
  • Andromeda Biotech Initiates DIA-AID 2, a Confirmatory Phase 3 Study using DiaPep277®, for the Treatment of Type 1 Diabetes.
    (Andromeda Biotechは、DiaPep277を使用した1型糖尿病治療の検証的第3相試験、DIA-AID 2を開始する[2010年5月31日])[ Andromeda Biotech ]
DIA-AID 2が成功すれば、EUとアメリカで薬が認可されるだろうとのこと。
(開発会社Andromeda Biotechを買収した会社、Hyperion Therapeuticsの発表によると、試験の完了は2015年の第1四半期を予定)

アメリカではオーファンドラッグ指定されている。
  • Andromeda Announces FDA Orphan Drug Designation for DiaPep277® for the treatment of Type 1 Diabetes with Residual Beta Cell Function.
    (Andromedaは、1型糖尿病でβ細胞機能を保つ治療として、DiaPep277がFDAのオーファンドラッグ指定を受けたことを発表する[2012年5月28日])[ Andromeda Biotech ]
(アメリカのオーファンドラッグ指定は、正式な認可前に特例として販売を認める制度。効果や安全性は必ずしも証明されていない)

抗CD3抗体(teplizumab)
他に免疫寛容を誘導するものとして、抗CD3抗体(teplizumab 薬名:MGA031、hOKT3{gamma}1(Ala-Ala))が使われている。
本来はT細胞に働く免疫抑制剤とのこと。
teplizumabの第3相試験で1型糖尿病に効果がなかったため、他の試験も含め中止されたもよう。
  • MacroGenics社とEli Lilly社 1型糖尿病薬の第3相試験失敗[ BioToday ]
  • MacroGenics Looks to Pipeline After Teplizumab Phase III Miss[ BioWorld Today ]
    (MacroGenicsは、Teplizumab第三相失敗の後、パイプラインに目を向ける (パイプライン=開発中の薬物))
インスリンやHbA1cの値に改善は見られなかったが、他の抗CD3抗体のような毒性がなく、teplizumabの安全性を確認できたのが、会社にとってせめてもの救いだとのこと。

SPSとの関連
IDDM用のGAD-Alum(Diamyd)は、認識する抗原のエピトープが異なることから、SPS患者に対する効果は不明と考えられる。
SPSに対し、こうした免疫寛容を誘導する療法は試されていないようだ。より悪化する可能性があるからかもしれない。
(例えば、GAD-Alumに使われたGADが、自分の体内で産生されるGADと異なるエピトープを持っていた場合、
それを認識する抗GAD抗体が新たに産生されるかもしれないし、アナフィラキシーショックを引き起こすかも)

1型糖尿病(T1D)は液性免疫がTh1優位状態で発症するが、SPSはTh1/Th2両方の作用により発症するとされる。(メモ/免疫関連参照)このため、Th1へ傾いたバランスを元に戻すようなT1Dの免疫寛容治療は、SPSに対して効果がないかもしれない。

IVIg、リツキシマブは免疫寛容作用があるのかもしれない。



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