スティッフパーソン症候群(stiff-person syndrome:SPS)[別名:スティッフマン症候群(stiff-man syndrome:SMS)、全身硬直症候群、全身強直症候群]という病気のまとめwikiです。

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スティッフパーソン症候群(SPS)と似た症状(けいれん、硬直など)があり、診断の際に鑑別(除外)する必要がある病気について。
SPSは非常にまれな病気のため、全身または体の一部で硬直を起こす病気との鑑別が必要となる。

鑑別に共通の検査。

  • EMGでの判断。安静時に主動筋と拮抗筋の共収縮(連続運動単位活動)が見られる場合、SPSの可能性が高い(ただし破傷風などでも似た筋強直が見られる)。このほか、他の病気に特徴的な筋反射を捉えることで鑑別できる。一方、EMGで共収縮が見られないSPS診断例も少なからず存在する。ジアゼパムなどのGABA亢進薬や類似する作用を持つ物質の服用により、共収縮が抑えられた可能性がある。
  • ベンゾジアゼピンの著効。ただし、これ単体では心因性障害と誤診される可能性があるため、フェイトニンや偽薬などの投与が必要となる場合もある。なお、リツキシマブの二重盲検試験のように、偽薬によりSPSの症状が改善することもあるため、偽薬反応のみで鑑別診断はできない。
  • MRI。SPSでは通常、炎症や白血球の浸潤は見られない。ただし、異常が見られたPERM症例、脳MRIに病変があり多発性硬化症と誤診されたSPS例もある。
  • 血液検査。自己抗体の検出により、SPS(抗GAD、抗アンフィフィシン、抗GABARAPなど)やIssacs症候群(VGKC抗体)などの診断が強まる。
  • 筋肉の硬直状態、有痛性の有無。
    • 症状が進行したSPSは、発症部位の筋肉が固くなる。筋萎縮は見られない。
      • 他の錐体外路障害(Wilson病、パーキンソン症候群、筋ジストニア)の筋固縮(筋強剛)は可塑性である。
        しかしSPSの筋硬直では、折りたたみナイフ現象、歯車現象(鉛管現象)は見られない。
    • 痛みを伴う痙攣。SPSの筋硬直には、突発的な有痛性痙攣が重なって現れる。
  • 下記の条件で、筋痙攣の発生、悪化を引き起こす。これは心因性と誤診される原因でもある。
    • 触覚刺激(特に筋硬直やけいれんが起こる部位に触れたとき)
    • 聴覚刺激(クラクションなど、予想外に生じる大きな音)
    • 感情的動揺(不安や心配事など、落ち込んだり追い詰められたりするような気分のとき)
    • 外部環境(手すりなどつかまるものが無く、転倒の恐れがあると患者が感じられるような、ひらけた場所)
    • 突発的な動作(ものを避けたり、バランスをとるなどの自発的動作、筋ストレッチなどの受動的動作)

主な鑑別対象の病気。

  • Isaacs症候群(後天性神経ミオトニー、アイザックス症候群)。VGKC抗体の検出。EMGではミオキミア放電およびニューロミオトニア放電が見られる。自発的な持続性筋収縮は、睡眠中に消失せず持続する。ジアゼパムのような中枢作用薬ではなく神経筋遮断(フェニトインなど)に反応する。
  • 里吉病(全身こむら返り病)。里吉病で必発とされる脱毛や下痢の有無で判断する。筋痙攣は強い随意運動で誘発される。多くは10歳前後で発症する。
  • パーキンソニズム(パーキンソン症候群)。固縮(強剛)は体幹だけでなく四肢でも同じように現れる。振戦、指と足の交互の運動割合の縮小と関連運動の消失 (腕揺れなど)が見られる。
  • 毒性、細菌性。
    • ストリキニーネ中毒、破傷風、嗜眠性脳脊髄炎、急性灰白髄炎、ボレリア症(ライム病、回帰熱)。問診と血液検査により中毒性物質の曝露、細菌感染の有無を判断する。
  • 心因性。
    • 転換性障害、固定ジストニア、ヒステリー。ベンゾジアゼピンが著効し、三環系抗鬱薬投与で悪化する場合、転換性障害を除外できる。その他、ジアゼパム静注試験で偽薬にも反応した場合は心因性の可能性が高まる。
    • 転導性(distractability)は大部分の心因性運動障害で顕著だが、SMSでは見られない。
  • 遺伝性。遺伝子検査で判別する病気。
    • 過剰驚愕症、遺伝性ジストニアなど。
  • 脊髄での、炎症性、腫瘍性、血管性、外傷性の病気。MRI、レントゲン、血液検査により鑑別できる。
    • 脊髄炎、脱髄性疾患(多発性硬化症、多発ニューロパチー(CIDPなど))
      • 多発性硬化症と誤診された症例シリーズの報告がある。この症例では、脳MRIで白質病変、髄腔内抗体陰性、SPSでは非定型とされる症状が見られた。
    • 変形性頚椎症、脊髄腫瘍、脊髄性ミオクローヌス、変形性筋ジストニー
    • 血管性疾患。脊髄動静脈奇形、断続的な静脈性うっ血。MRIで発見可能だが、脊髄血管造影が必要になる場合もある。
    • Wilson病(遺伝性、代謝疾患)
  • 筋原性疾患
    • McArdle病(遺伝性、糖原病V型)、筋線維症、強直性脊椎症候群(rigid spine syndrome。主に遺伝性先天性の、筋ジストロフィーの異型)。MRI、血液検査、筋生検などで鑑別。
  • 生理的痙攣
    • こむら返りなど。一般的に限局性、単一の筋で発生する。怪我の可能性、影響部位のストレッチで回復する可能性がある。
  • 線維筋痛症(fibromyalgia)またはそれに関連する症候群
    • 筋肉の疼痛とともに背下部痛を経験するが、背部の異常姿勢(脊柱前弯症)、痙攣、筋硬直(固縮)は珍しい。
他、誤診となりそうないくつかの症例。
  • 早期の進行性核上性麻痺(PSP)。目の可動障害があるが、筋電図記録調査(EMG)で連続運動単位活動が見られない場合、SPSを除外できる。
  • 単純ヘルペス脳幹脳炎
  • 副腎皮質不全(adrenocortical insufficiency)
  • シュワルツ・ヤンペル症候群(Schwartz-Jampel症候群、SJS)。
    常染色体劣性遺伝の疾患。SJS1型(1A,1B)は筋硬直、筋衰弱、軽微な形態異常が見られる。
    SJS2型の基本的な特徴は、関節拘縮、骨異形成症と低身長である。
  • 慢性テタニー。EMGで鑑別。
  • 甲状腺機能低下性ミオパチー(Hypothyroid myopathy)。
    クレアチンホスフォキナーゼの上昇とEMG上のミオパチー性電位。
    血清TSHの上昇と血清チロキシン値の減少=重症甲状腺機能低下。
    安静時における不随意運動単位発火、作動筋と拮抗筋の連続収縮は見られない。
  • 急性冠動脈症候群(ACS)。
    救急医療で胸痛の患者がACSと疑われたが、SPSだった例がある。SPSに特徴的な筋症状(脊柱前弯症、EMG)で判別できる。

参考
  • Spasmodic reflex myoclonus Stiff‐person症候群 [ J-GLOBAL ]
  • Stiff-person症候群とその他の脊髄症 [ J-GLOBAL ]
  • 一側下肢に限局したStiff-person症候群で発症し,Hodgkinリンパ腫の存在が判明した1例 [ J-GLOBAL ]
  • Isaacs syndrome, Stiff person syndrome と里吉病 : 病態と治療 [ J-GLOBAL ]
  • . 疾患別各論 [筋疾患] 7 筋痙攣(こむら返り).神経疾患 最新の治療2009-2011 南江堂(2009); p312-313
  • Rigidity and spasms from autoimmune encephalomyelopathies: stiff-person syndrome.
    (自己免疫脳脊髄障害による硬直と痙攣:スティッフパーソン症候群) [ PubMed ]
  • Sudden spasms following gradual lordosis -- the stiff-person syndrome.
    (徐々に進行する前湾症に続く突然の痙攣−スティッフパーソン症候群) [ PubMed ]
  • Stiff man syndrome and related conditions.(スティッフマン症候群および関連の病気) [ PubMed ]
  • Stiff-Man Syndrome Updated.(最新スティッフマン症候群) [ PubMed ]
  • Two Stiff Person Cases Misdiagnosed as Conversion Disorder(転換性障害と誤診されたスティッフパーソンの2例) [ PubMed ]
  • 口腔内からの感染が疑われた破傷風の1例 [ J-GLOBAL ]
  • MRIにより三叉神経を介した感染が考えられた単純ヘルペス脳幹脳炎の1例 [ J-GLOBAL ]
  • Flexion contractures of the legs as the initial manifestation of adrenocortical insufficiency.
    (足の屈曲と痙縮が最初の徴候だった副腎皮質不全)[ PubMed ]
  • Uncommon presentation of a common disorder.(一般的な障害のまれな症状)[ PMC ]
  • Stiff Person Syndrome Masquerading as Acute Coronary Syndrome.(急性冠動脈症候群に偽装したスティッフパーソン症候群)[ NMA ]
  • Stiff person syndrome masquerading as multiple sclerosis.(多発性硬化症になりすましたスティッフパーソン症候群)[ Journal of the Neurological Sciences ]

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