スティッフパーソン症候群(stiff-person syndrome:SPS)[別名:スティッフマン症候群(stiff-man syndrome:SMS)、全身硬直症候群、全身強直症候群]という病気のまとめwikiです。

用語集

英語

GABA
γ−アミノ酪酸(ガンマアミノらくさん)。(英語表記:gamma-aminobutyric acid)抑制性の神経伝達物質。
スティッフパーソン症候群ではこの物質が少なくなるため、筋肉に力が入ったままの状態となる。GABAA(ギャバエー)とGABAB(ギャバビー)がある。

GABARAP
(英語表記:GABAA Receptor Associated Protein)GABAA受容体結合タンパク質。
GABAA受容体(レセプター)をつくるのに必要なタンパク質。
別名:GABAA受容体関連タンパク質

GAD
グルタミン酸デカルボキシラーゼ。(英語表記:glutamic acid decarboxylase)グルタミン酸からGABAを合成する酵素。
GADには2種類あり、GAD65(分子量65kD)とGAD67(分子量67kD)と呼ばれる。

GAD抗体
 → 抗GAD抗体

GlyRα1
(英語表記:glycine receptor alpha 1, GLRA1)グリシン受容体α-1(GLRA1という記載は遺伝子分類上の表記)。
抑制性の神経伝達物質グリシンを受けとる細胞の一部分(サブセット)。
グリシン受容体はアルファ4つ(GLRA1、GLRA2、GLRA3、GLRA4)、ベータ1つ(GLRB)のサブユニット5つで構成されている。

PER
(英語表記:progressive encephalomyelitis with rigidity)筋硬直を伴う進行性脳脊髄炎のこと(訳語はなく、英語表記が一般的)。
SPSと同じく、GABAによる神経伝達に障害が起きる症状とされる。ミオクローヌスを併記して
progressive encephalomyelitis with rigidity and myoclonus (PERM)とも表記される。

rigidity
筋硬直のこと。固縮と訳すことが多いが、SPSやPERの場合、他の神経疾患で見られるrigidityとは症状が異なるため、筋硬直と表現される。
rigidityは様々な病気に使われるが、日本語にする場合、使われる病気によって訳語を変えている。パーキンソン病のrigidityは、筋強剛、強剛という表記が多いようである。
なお、可塑性固縮(プラスチック固縮)とは、固縮した筋を他動的に動かすと、動かした位置で固まったままになること。鉛管様固縮、鉛管様強剛といい、SPSでは見られない現象である。

SMS
Stiff Man Syndrome の略称。 → スティッフパーソン症候群

SPS
Stiff Person Syndrome の略称。 → スティッフパーソン症候群


日本語

アンフィフィシン、アンフィフィジン
(英語表記:amphiphysin)分子量128kDのタンパク質。神経伝達物質の放出に関わっていると考えられている。
抗アンフィフィシン抗体によりアンフィフィシンが減少し、SPSが発症する場合がある。

エピトープ
(英語表記:epitope)抗原の一部分(構造単位)。抗体が抗原と結合するとき、抗原全体ではなく、特定の構造単位(抗原の一部分)を認識して結合する。この構造単位をエピトープという。通常、1つの抗原には複数のエピトープが含まれており、この場合、抗原の複数の部分にそれぞれ別の抗体が結合する可能性がある。
(参照:薬学用語解説

筋硬直
(英語表記:mustle stiffness, stiffness)SPSの主症状の1つ。筋肉に力が入ったまま固まり、自分や他人の力では動かなせない状態。
症状の進んだ部位は、「板状」と表現されるほど堅くなる。

グリシン
(英語表記:glycine)GABAとは別の抑制性の神経伝達物質。

けいれん(痙攣)
(英語表記:convulsion, cramp, spasm)筋肉が自分の意思とは関係なく収縮する状態。収縮したまま硬直する(ひきつる)、または収縮と弛緩を繰り返す(ふるえる)という2つの意味を含み、幅広く使われる言葉。

ゲフィリン
(英語表記:gephyrin)タンパク質の一種で、抑制性神経伝達に関わっている。GABARAPと共にGABAA受容体をシナプスへ繋げる。グリシン受容体をシナプスへ繋げる作用もある。

抗GAD抗体
(英語表記:anti-GAD-antibody, GAD autoantibody, Anti-GAD, GAD antibodies, GAD65Ab)
GADを抗原とする自己抗体スティッフパーソン症候群(SPS)を引き起こす抗体の一種で、患者はこの抗体が大量に検知される場合がある。
検査では1.5(U/ml)以上で陽性とされる。1型糖尿病(IDDM)患者でも陽性となりうるが、おおむね低値(数〜数百)。
SPS以外にも高値(2000U/ml以上)を示す病気があるとの研究も。メモ/GAD関連を参照。

抗アンフィフィシン抗体
(英語表記:anti-amphiphysin-antibody)
アンフィフィシンが抗原となる自己抗体スティッフパーソン症候群(SPS)を引き起こす抗体の一種。
悪性腫瘍(乳がんなど)を原因とするSPS(=傍腫瘍神経症候群)の場合に多く検出される。
抗体検査は、日本では筑波大付属病院の脳神経内科で行われている。

抗グリシン受容体抗体
(英語表記:GlyR antibody, glycine recepter alpha 1 antibody, anti-glycine receptor antibody)
グリシン受容体を抗原とする自己抗体(別名:GlyR抗体、グリシン受容体α1抗体)。最初はPER患者で検出され、その後SPS患者でも発見された。
この抗体が陽性のSPS、PER患者は、免疫治療(免疫グロブリン静注療法やステロイド)で改善しやすいという報告がある。

抗ゲフィリン抗体
(英語表記:anti-gephyrin-antibody)
ゲフィリンが抗原となる自己抗体(糖タンバク分子)。スティッフパーソン症候群を引き起こす抗体の一種。抗アンフィフィシン抗体同様、傍腫瘍神経症候群の場合に検出されることがある。
抗体検査は、抗アンフィフィシン抗体と同じく、日本では筑波大でのみ行われているようだ。

ジアゼパム
(英語表記:diazepam)スティッフパーソン症候群の症状を改善する薬の一種。セルシン、バリウム(valium)、ホリゾンとも。ベンゾジアゼピン系。

自己抗体
(英語表記:autoantibody)体内物質を標的とする抗体。自己免疫疾患の原因。
糖タンパク分子で出来ており、分子量は140kD〜170kDで抗体の種類(IgG1〜IgG4)によって異なる。
なぜ自己抗体が体内にできるのか不明だが、ウイルスや細菌感染などの環境的要因と、遺伝的要因の複合的要素が考えられている。
SPSの自己抗体としては抗GAD抗体抗アンフィフィシン抗体などがある。

自己免疫疾患
(英語表記:autoimmune disease)人の体内にある、生命活動に必要な物質が免疫反応で失われることにより発症する病気。SPSでは自己抗体が原因と考えられている。

スティッフパーソン症候群
(英語表記:Stiff Person Syndrome)腰、背中、腹部や近位四肢が徐々に硬くなる病気。
自己免疫疾患の一種と考えられている。症状治療のページも参照。
別名:スティッフマン症候群、スティフ・パーソン症候群、スティフ・マン症候群、全身硬直症候群、全身強直症候群、stiff-person症候群、stiff-man症候群、SPS、SMS

スティッフマン症候群
(英語表記:Stiff Man Syndrome)スティッフパーソン症候群と同じ意味。元々はこちらの名称で呼ばれていたが、女性患者も多く発見されるようになったため man を person と言い換えるようになった。

診断
(英語表記:diagnosis)疾病の性質を決定すること。SPSは希少疾患のため、診察を受けても何の病気か診断がつかない(診断未確定 undiagnosed)、あるいは誤診(misdiagnosis)されることが多い。仮診断(provisional diagnosis)でSPSとされたものの、最終診断がつかない例もある。
SPSでは決定的な診断基準が確立されておらず、このことが診断のゆれを生じる大きな要因となっている。

プロポフォール
(英語表記:propofol)GABAA受容体を活性化させる薬。主に麻酔薬として(麻酔科で)使用されるため、神経内科ではあまり知られていない。
東京医科大学で、重度の急性スティッフパーソン症候群患者に使用報告あり。
(文献:東京医科大学雑誌「痙攣治療に難渋したStiff-person syndrome」)

ベンゾジアゼピン
(英語表記:benzodiazepine)GABA受容体(レセプター)活性薬の一種の総称。
GABA(伝達物質)の感度を良くすることで鎮静、筋弛緩作用をもたらす。

傍腫瘍神経症候群
(英語表記:paraneoplastic neurological syndrome, PNS)腫瘍(がん)の発生に伴う神経性の病気。
乳ガン、胸腺腫などと同時に発症するスティッフパーソン症候群は、傍腫瘍神経症候群と考えられる。
このとき、自己抗体として抗アンフィフィシン抗体抗ゲフィリン抗体が検出される場合がある。(抗GAD抗体の場合も)
別名:腫瘍随伴神経症候群、傍腫瘍神経障害症候群

免疫吸着、免疫吸着療法
(英語表記:immunoadsorption, IA)自己免疫疾患に用いられる免疫療法の一種。自己抗体をフィルターに吸着させ、血液中から除去することにより治療する。治療-血漿吸着療法のページも参照。

免疫グロブリン
(英語表記:Immunoglobulin, Ig)このサイトでは血液製剤の一種である免疫グロブリン製剤として表記。(通常は抗体と同義)
製剤としては IgG が有効成分として使われる。他に4種類ある。(IgM, IgA, IgE, IgD)
(参考:ResourceNurse.com

免疫グロブリン静注療法
(英語表記:Intravenous immunogloblin, IVIg)免疫グロブリンを静脈注射により大量、短期間投与する療法。免疫療法の一種。治療-免疫グロブリン療法のページも参照。
別名:免疫グロブリン静注療法(intravenous Infusion of immunoglobulin)

ミオクローヌス
(英語表記:myoclonus)けいれんの一種。短い間隔で筋肉に力が入って緩むこと(電撃的収縮)を繰り返す症状。
別名:筋間代

リツキシマブ
(英語表記:rituximab)B細胞(の表面分子CD20)に作用するキメラ抗体。アメリカで治験終了後、研究中。日本でも投与例あり。
商品名はリツキサン(Rituxan)。薬についての詳細はこちらのWikipedia等を参照してください。

参考:「リツキシマブと新規抗B細胞抗体」[ がん情報サービス ]
リツキシマブ=キメラ型抗CD20単クローン性抗体(chimeric anti-human CD20 monoclonal antibody)
  • キメラ型…マウスから作った抗体は、人に対して抗原(アレルギーの原因物質)となり、抗体をつくってしまうため、
人に投与しても大丈夫なように改良したもの。
  • CD20…分子の一種(Cluster of Differentiation=分化群)。白血球などの血液細胞の表面に発現している。同様のものは何十も発見され、番号を振って管理している。
    CDは他の細胞にあるCDやHLAなどと結合することで細胞に作用する働きがある。
    リツキシマブは、B細胞表面にあるCD20に対し抗体となる。(CD自体は単なる分子だが、薬の投与時には薬を抗体、CD20を抗原として見る)
    →CD20にふたをしてしまい、B細胞を不活性化することで、抗GAD抗体の産生を抑える。
    →B細胞だけでなく、T細胞にも効果があるとの研究もある。
  • 単クローン性抗体…他の抗原に影響しない抗体。リツキシマブの場合、他のCDに対して抗体作用を起こさないので
    選択的に効果を発揮し、副作用を減らすことにつながる。モノクローナル。
  • CD20に対して効果を発揮する薬のため、CD20抗原が陽性である患者に対して投与される。

このページへのコメント

何度も前から読んでいますが、更新されないのは何故なのですか?四年前からスティフパーソン症候群と、診断され今も闘病中です。

宜しければ、最近の動きを教えていただけると幸いです。

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Posted by たけ 2013年03月09日(土) 02:36:20 返信

何度も前から読んでいますが、更新されないのは何故なのですか?四年前からスティフパーソン症候群と、診断され今も闘病中です。

宜しければ、最近の動きを教えていただけると幸いです。

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Posted by たけ 2013年03月09日(土) 02:36:19 返信

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