スティッフパーソン症候群のwiki - メモ/自律神経の影響
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SPSではGABAが不足するために、交感神経の亢進または副交感神経の低下(=交感神経優位状態)が起きていると思われる。
(このことについて記載された論文は見つけられていない)
さらに、ベンゾジアゼピン系薬物(ジアゼパム、クロナゼパムなど)には抗コリン作用がある。
抗コリン作用は、副交感神経系の伝達物質であるアセチルコリンの結合を阻害するために、
結果として副交感神経の低下につながる。
ここでは、自律神経への影響と思われる症状について記す。


散瞳(瞳孔の拡大)について
散瞳は副交感神経の低下(抗コリン作用)によって生じる。
瞳孔は2種類の筋肉によって拡大・縮小する。この筋肉を動かすのは自律神経系である。
  • 瞳孔を拡大…瞳孔散大筋(交感神経)
  • 瞳孔を縮小…瞳孔括約筋(副交感神経)
抗コリン作用は、副交感神経伝達を阻害し、瞳孔括約筋の働きを弱める。そのため、瞳孔を縮小できず散瞳の状態になる。

眼圧上昇について
緑内障の患者は、ベンゾジアゼピン系薬物の服用は禁忌とされる。
抗コリン作用により、副交感神経が低下することで眼圧が上昇するためである。
緑内障でない場合は、ベンゾジアゼピンによる眼圧上昇を気にする必要はないのかもしれないが、
糖尿病患者など、血管に影響のある病気がある人は注意したほうがよいと思われる。
(ベンゾジアゼピンによる糖尿病患者の眼圧への影響については、まだ論文を調べていないので単なる想像)

発汗抑制作用と体温調節について
抗コリン作用により、汗がでにくくなる。これに交感神経優位の状態が加わることで、
体温調節機能が悪化し、体温の上昇を引き起こす。

聴覚性驚愕反射
SPSでは、聴覚性驚愕反射が異常になる。健常者は通常、音に対する反射はすぐに収まるが、SPS患者では硬直部分で長期痙攣を引き起こす。
似た症状を持つ遺伝性過剰驚愕症では、一瞬硬直するものの、長期痙攣を生じない。
(なお出産直後の乳児は、この反射の調節が未発達で、音に驚き体がこわばるけれども、数ヶ月すると収まる)
ラットの実験によると、抗コリン作用により聴覚性驚愕反射が亢進する。そのため、元々異常状態にある反射がさらに悪化すると思われる。
(SPSにおける抗コリン作用と聴覚性驚愕反射との関係を記した文献は見つからなかった)