スティッフパーソン症候群のwiki - 研究・治験情報
スティッフパーソン症候群の研究・治験情報など。
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治験情報

リツキシマブの治験情報

    • 2004年からアメリカで治験が始まっていましたが、2008年にやっとフェーズ2が完了したようです。
      現在、結果の公開待ちとなっています。どこで公開されるのかは不明です。学会などでしょうか?情報求む!
      「完了した」となっているので、フェーズ3は行われていないかもしれません。
      フェーズ3からは1000人以上を対象とした治験となるためです。
      この研究ではリツキシマブの効果は示されませんでした(下記文献を参照)。
    • Study Shows Negative Results of Rituximab in Patients With Stiff-Person Syndrome: Presented at ANA
      (研究は、スティッフパーソン症候群患者で、リツキシマブの否定的結果を示す)(October 15, 2009)
       アメリカ神経学協会(American Neurological Association:ANA)にて、フェーズ2臨床試験の結果が発表されたとのこと。
      • リツキシマブはSPS患者に効果なかったとの発表があったようです。
        二重盲検法の結果、リツキシマブと偽薬とで効果にはっきりとした差はなかったとのこと。


なぜリツキシマブが効かないかの研究です。
  • Long-Lived Plasma Cells and Memory B Cells Produce Pathogenic Anti-GAD65 Autoantibodies in Stiff Person Syndrome.
    (長命形質細胞と記憶B細胞は、スティッフパーソン症候群で病原性抗GAD65自己抗体を生産する)(PloS one 2010 May 26;5(5):e10838)
    抗GAD抗体をつくる細胞はB細胞と形質細胞があり、リツキシマブはB細胞の活動を抑制するが形質細胞の活動が抑えられないため、抗GAD抗体が作られ続ける。さらにはB細胞にもリツキシマブに耐性を持つものがある、とのこと。


治療例
  • Successful treatment with rituximab in a patient with stiff-person syndrome complicated by dysthyroid ophthalmopathy.
    (甲状腺眼症を併発したスティッフパーソン症候群患者に効果があったリツキシマブ治療)(Internal Medicine 2010: 49(3) p.237-241)
     信州大学医学部での治療。SPSとIDDMに甲状腺眼症を併発した患者で、リツキシマブを計3回投与した。
    3回目投与後の5ヵ月間、筋けいれんはほとんど起きなかったとの事。
     その間のSPSの硬直スコア(stiffness score)は1,甲状腺眼症の臨床上の活動スコア(clinical activity score)は0だった。
    • IDDMは改善されなかった。SPSとは病気の発生機序が異なるからだと考えられる。
    • 抗GADと抗甲状腺抗体は、SPSと甲状腺眼症の疾患活動と必ずしも相関していない。
    • SPSと甲状腺眼症でのリツキシマブの臨床上の効果は、自己抗体の減少だけでなく、他の免疫介在性機序(例えば抗原症状の抑制とB細胞によるシトシン生成)にもあるかもしれない。
    • リツキシマブは有効性と安全性に関してSPSの治療に役立つかもしれない、しかし、正確な機序は不明なままである。
      関連疾患(例えば甲状腺眼症)併発時は特に、この薬はSPSをもつ抵抗性患者の有力な治療のオプションとみなされるべきである。


  • リツキシマブは、一般にはリンパ腫などの治療に使われていますが、自己免疫疾患においての治療薬としても、日本で使われ始めているようです。
     しかし、まだグローバルなガイドラインは確立されていません。
    情報の公開が待たれます。

参考:

IVIGの治験情報

フェーズ1で完了しています(現在、フェーズ2は行われていないようです)

自家末梢血幹細胞移植の治験情報

自己免疫性神経疾患を対象とした臨床試験で、対象疾患としてStiff Person Syndromeが記されています。
    • 試験の名称を訳すと「他の治療で成果がなかった自己免疫性神経疾患患者の治療における、カルムスチン、エトポシド、シタラビン、メルファラン、抗胸腺細胞グロブリン投与後の末梢血幹細胞移植」のようになります。
      • カルムスチン、エトポシド、シタラビン、メルファラン、抗胸腺細胞グロブリンは、体内に存在する免疫細胞を消滅、抑制するための薬剤です。
      • 上記の薬剤で体内の免疫細胞を全て消したあと、幹細胞からつくりだした免疫細胞を体内に移植し、自己免疫を引き起こさない免疫系を構築するという治療法(骨髄破壊的移植)で、白血病などの治療に使われています。
        非常に激しい療法のため、適用は重度の疾患に限られているようです。

スティッフパーソン症候群を対象とした自家末梢血幹細胞移植治療のフェーズ1臨床試験です。
    • 2015年から2020年までの5年間で、10名程度に幹細胞移植を行い、経過を調査するとのこと。
      アメリカのノースウェスタン大学で行われるようです。
    • この臨床試験では、幹細胞移植の前処置として「骨髄非破壊的移植(Non-myeloablative regimens)」が使われるそうです。
      前処置には免疫細胞をほぼ消滅させる骨髄破壊的移植(=フル移植)方法と、免疫細胞を弱らせるだけにとどめる骨髄非破壊的移植(=ミニ移植)とがあります。
      (骨髄破壊的移植および骨髄非破壊的移植については造血幹細胞移植入門:骨髄 破壊的&非破壊的 前処置(金沢大学)を参照)
      • 使用される免疫抑制剤はシクロホスファミド、メチルプレドニゾロン、抗胸腺細胞グロブリン(ATG)が記載されていました。

研究情報

「神経免疫疾患のエビデンスによる診断基準・重症度分類・ガイドラインの妥当性と患者QOLの検証」研究に含まれる調査です。一次調査として、全国の医療機関から一部を抽出し、『2015年1月1日〜2017年12月31日(3年間)において、SPSの診断基準(Definite、Probable、Possibleのいずれか)を満たす症例』についての調査票を送付したとのこと。その結果から、二次調査につながるようです。
『二次調査では協力の得られる施設より、抗GlyR抗体の測定も検討している』という記載もあり、今までは海外の医療機関で行われていた抗GlyR抗体の検査が、今後の展開しだいでは国内で可能となるのかもしれません。

「エビデンスに基づいた神経免疫疾患の早期診断基準・重症度分類・治療アルゴリズムの確立」研究に含まれる調査です。診断基準案、病型分類、重症度分類について記載があります。

SPSでの自己抗体の種類や測定方法について調査されたようです。

その他、自己免疫疾患に関する情報

  • 戦略的創造推進事業 : CREST
免疫機構全般についての研究が多い。
  • 厚生労働省科学研究費補助金 難治性疾患克服研究事業
多発性硬化症,重症筋無力症などについて取り組んでいる。