スティッフパーソン症候群のwiki - 治療
スティッフパーソン症候群は自己免疫疾患の一種と考えられているため、
治療には免疫療法が有効とされている。

治験中の療法として、リツキシマブを使用した免疫療法もある。→研究・治験情報

症状の一時的な改善には、ジアゼパムなどの薬が有効である。→投薬治療



免疫療法(Immunotherapeutic intervention)

免疫作用を調節することで、自己免疫疾患を改善する治療法。

免疫グロブリン療法(IVIg(Intravenous immunogloblin)療法)
免疫グロブリン(Ig)を投与することで病因となる抗体(抗GAD抗体等)の発生を抑え、抗体の作用を中和し、結果として神経伝達物質(GABA)を増やす。
免疫グロブリンが大量に投与されるため、単純に中枢神経からの抗体の生成が抑制されると言う意見もあり(筑波大:石井先生談)、その場合は効果が短期間にとどまる可能性があるかもしれない。(免疫グロブリン自体が1ヶ月ほどで体内で作り直されるためらしい)
日本では、他の自己免疫疾患と同様、400mg/kg(体重)/日のIVIG(70kgの患者なら28g/日)を、5日連続で静注投与する方法が用いられる。

海外では、2g/kg(体重)を2日間連続で投与、1日あたり1g/kg(70kgの患者なら全部で140g。1日あたり70g)。
これを1ヶ月につき1セットとして、計3ヶ月(3セット)行われた方法がある。
欧州神経学会議(EFNS)のガイドラインにも同様の方法が取り上げられ、2〜5日間で2g/kgを投与する方法が推奨されている。
参考:
治療に用いられる免疫グロブリンは「血液製剤であり生物学的製剤」で、人の血液から作られる。
(引用元:エムアンドディー・ラボ:医薬情報資料研究所

ステロイドパルス療法(steroid pulse)
副腎皮質ホルモン(コルチコステロイド(corticosteroid))を短期間に大量投与し、病因となる抗体(抗GAD抗体等)の発生を抑える。
日本では、400〜500mg/日のメチルプレドニゾロン静注を3日連続で行う。
日本では、内服にはプレドニゾロン(プレドニン)が使用されるが、海外ではメチルプレドニゾロンを使用した例もある。
その後100mg程度の内服から徐々に漸減する治療法が行われることもある。
ステロイドパルス療法のみで十分な効果が得られた場合には、内服に伴う様々なリスクから、内服治療は行わない選択肢もある。

血漿吸着療法(免疫吸着療法)(PA:Plasma adsorption、IP)
従来の血漿交換療法(plasmapheresis)では、分離した血漿を廃棄し他の物質で補充していたが、吸着剤を使用することで、特定の原因物質のみを、血液を体外循環する過程で除去する治療が可能となった。
スティッフパーソン症候群では、「イムソーバTR」を使用した実績がある。よりよいものがあれば、詳しい情報求む!
【引用】
吸着療法は様々な吸着剤に全血を潅流する直接血液潅流法(Direct hemoperfusion: DHP)と分離血漿を潅流する血漿潅流法(Plasma perfusion: PP)に大別され、それぞれの成分中に含まれる病因(関連)物質を吸着除去します。(中略)。また一般に吸着療法ではカラムにより病因(関連)物質に対する吸着能に差があるため、一定の処理量を規定することは困難であり、病態に応じた対応が必要となります。
【引用元サイト】
アフェレシスの方法は?(吸着療法のシステム、吸着剤の種類、販売元について詳しく載っています)
【参考サイト】
アフェレシス(apheresis)とは?
アフェレシスが適応となる疾患
【参考文献】
参考サイト内の、参考文献:新版「アフェレシスマニュアル」P.90 表2(蔵書のある図書館不明)
【吸着剤販売サイト】
カネカメディックス
旭化成メディカル
クラレメディカル
他、国内販売なしの吸着剤は多数あり。

【引用(スティッフマン症候群での免疫吸着療法の実例)】
抗GAD抗体陰性のスティッフマン症候群の一症例における二重濾過膜血漿交換法と免疫吸着療法。
患者の抗グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)抗体が陰性ではあるが、
スティッフマン症候群の一症例のために実行された二重濾過膜血漿交換法と免疫吸着療法の影響を報告する。
患者は二重濾過膜血漿交換法を4回にわたって経験した。そして、それは著しい臨床状態の改善になった。
痛みを伴う筋けいれんは消え、筋硬化は最初の血漿交換法の後、一日のうちに減少した。
患者の改善は続いたが、彼の状態は血漿交換法のおよそ10ヵ月後に再び悪化した。
その後に、実行された免疫吸着療法は効果的であった。
【引用元サイト】
(pubmed):http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10851565
(もしくは無料会員登録必須なこちら)http://www.medscape.com/medline/abstract/10851565?...

血漿交換療法(plasmapheresis)
単純血漿交換(古典式血漿交換、PE:Plasma Exchange)のことを指す。
ただし、日本語で「血漿交換」と使用された場合、単純血漿交換療法、二重濾過血漿交換療法、免疫吸着療法など、類似する療法全てを含んだ治療方法の意味で使用されることもあるので、注意が必要である。
単純血漿交換は、現在では、より病因を限定的に取り除くことが出来る、血漿吸着療法、二重濾過血漿交換療法(二重膜濾過血漿交換療法、DFPP:Double Filtration Plasmapheresis)が技術的に可能となったため、血漿交換療法の選択肢の一つとなっている。ただし、病状が急性であり重度の場合は、全てを取り除く単純血漿交換がより効果的とされる。

髄腔内バクロフェン療法(intrathecal baclofen :ITB)
体内に埋め込んだポンプを使用し、脊髄の中に薬(バクロフェン)を持続的に送り込むことで、SPSの症状を改善する療法。
筋痙縮や緊張亢進の治療として、他の療法が効かない場合に用いられる。他の病気も含め多くの改善実績があるが、
カテーテル(ポンプから薬を送り込む管)の断裂・ずれ、ポンプの故障などによるトラブルも報告されている。

免疫抑制療法(immunosuppression)
免疫抑制剤(Immunosuppressive agents)により、T細胞やリンパ球などの活動を抑制し、抗体の産生を低下させる。
いずれの薬もSPSでの治験は行われてなく、いくつかの症例で効果があったという報告のみである。
  • タクロリムス(tacrolimus)
    • 「免疫性神経疾患に関する調査研究 Stiff-person症候群に対するタクロリムス治療の試み」
       (この資料は「厚生労働科学研究成果データベース」の閲覧システムで見る事ができます)
      1.検索語に「免疫性神経疾患に関する調査研究」と入力
      2.結果表示で「平成19(2007)年度」のリンクをクリック
      3.ファイルリストから「200731016A0010.pdf」をダウンロード。P.189-190に記載
      【引用】
      『タクロリムスはSPSに対して持続的効果を有する治療として今後期待できる.』
  • アザチオプリン(azathioprine)
    • Graves' disease and stiff-person (stiff-man) syndrome: case report and literature review.
      (グレーブス病を伴ったスティッフパーソン症候群)PubMed / Medscape(要無料登録:全文表示)
      プレドニゾン(ステロイド薬剤)との併用。
  • シクロホスファミド(cyclophosphamide)
    • Atypical stiff-person syndrome with spinal MRI findings, amphiphysin autoantibodies, and immunosuppression.
      (抗アンフィフィシン抗体陽性のスティッフパーソン症候群)PubMed
      メチルプレドニゾロン(ステロイド薬剤)と併用したパルス療法。
    • Minimal change nephrotic syndrome with stiff-person syndrome: is there a link?
      (微小変化ネフローゼ症候群(MCNS)を伴ったスティッフパーソン症候群)PubMed


投薬治療(Pharmacologic treatment)

ジアゼパム(セルシン)が有効で、SPS患者に対し、まずはじめに使う薬とされている。

  • 抗不安剤
    ジアゼパム(diazepam)、クロナゼパム(clonazepam)、アルプラゾラム(alprazolam)
  • 抗痙縮薬(anti-spasticity agents)
    バクロフェン(baclofen)
  • 抗てんかん薬(Antiepileptic drugs)
    チアガビン(tiagabine)、ガバペンチン(gabapentin)、ビガバトリン(vigabatrin)、バルプロエート(valproate 別名:バルプロ酸(valproic acid))
    • レベチラセタム(levetiracetam, LEV)について(抗てんかん薬として海外で承認済、日本では治験が終わり承認申請中)
      (参考:Levetiracetam in stiff-person syndromeより)
      • 単純盲検、偽薬対照研究で、スティッフパーソン症候群で3人の女性で経口のレベチラセタム(1日2回500mg)の作用を研究した。
      • SPS患者にレベチラセタムが十分に通用し、筋硬化と致命的な発作性呼吸痙攣の処置において治療効果があった。
      • 近年ではレベチラセタムがGABAAレセプターの安定化とGABA合成の強化によってGABA作動性抑制を強められると仮定されている。
  • 麻酔薬であるプロポフォール(propofol)が、重度のけいれんを抑えるために使用された例がある。
    (参考:痙攣治療に難渋した Stiff-person syndrome[ CiNii ])
    少量(30mg)でよく効いたとのこと。ジアゼパムはGABAA受容体に作用するが、プロポフォールはGABAA受容体とグリシン受容体に作用するらしい。

ベンゾジアゼピン(benzodiazepine)系:ジアゼパム、クロナゼパム、アルプラゾラム、バルプロエート)