帝国の竜神様 異伝 ゼラニウムの物語 その四

 神堂が提出した墓地での一件の報告書に目を通しながら、内海はため息をつく。
 と、同時にドアがノックされ、内海の了解をへてボルマナが入ってくる。
「神堂君は花々に囲まれてお楽しみだったらしい。
 仕事をやっている以上何も言うつもりはないですが男としては羨ましいというか大変だというか」
 愚痴というかぼやきというか分からない言葉を内海はボルマナに吐くが、冗談なのだろうとボルマナは判断して何も反応しない。
「で、何か分かったかね?」
 机に報告書を置いて内海は窓の海を見ながらボルマナに尋ねた。
「ガースルですが、ディアドラを奪われた事で落ちるであろう娼婦の稼ぎを上げる為に、アニスに接近していました。
 ですが、アニスは称号持ちの高級娼婦。
 しかもかなり長く働いており、既に自由の身なのでそれを一度は断ったと聞きます」
 ボルマナの含みのある報告に内海が先を読んで口を開く。
「だが、彼女はガースルの娼館への移動を了承した?」
「その通りです。
 彼女だけでなく、イッソスの花園の娼婦達はガースルが経営する娼館に移る事が内々に決められたと。
 ですが、ガースルの変死によってその話は無しになったとか」
「ギルドは彼女を犯人にしなかったのかい?」
「アリバイがありました。
 彼女はその夜、カッパドキア国政議会議員の邸宅に仕事に行っています」
「誰だ?相手は?」
「エルミタージュ議員」
 カッパドキア魔術協会会長でもある大魔道師という思っても見なかった大物の名前に、内海自身激しく驚くがそれを顔に出す事はなかった。
「彼とは何度か式典で合った事があるが、あの老人がそんなにお盛んだとは知らなかったな」
 意外そうな内海の呟きをボルマナは訂正する。
「相手は議員の孫だそうです。
 筆降ろしに呼ばれたとか」
「なるほど」
 老いを知らず長く現役を勤める事ができ、しかも身元が保障できて自身がその味を確かめており、後腐れが無い高級娼婦というのは息子達の格好の筆降ろしかつ性授業の教師といえよう。
 それは祖父から父に父から息子にと穴兄弟として受け継がれ、やはり同じ穴兄弟である他の貴族の友との秘密の共有にと人脈が築かれてゆく。
 その人脈と結社化したコネクションこそが高級娼婦の力の源泉でもある。
 魔法が使えるこの世界においてアリバイがどれほどのものになるか、内海は顎に手を当てて考える。
 犯人が自らの潔白を主張するアリバイではない。
 国政議会議員という権力者の庇護下にいるから出せるものなら手を出してみろという宣言だろう。
 ガースルの死と高級娼婦アニスが繋がり、アニスと神堂辰馬が繋がっている。
 そしてアニスは魔術協会会長とも繋がっており、しかもアニス自身は娼婦なのに高度な魔術を行使する魔術師だった事をベルとリールが報告している。
 そのガースル変死の容疑者でもある魔術協会が抱えている闇は、トローイアの街10万を殲滅できるゼラニウムの魔術書。
 これを偶然と言うほど、内海は幸せな人生を送ってはいない。
 手を出すなという段階はとうに過ぎている。
 だとしたら何処まで手を出すべきかを考えないといけない。
 つまり、神堂を見捨てるかどうかという話だ。
 内海は長い間窓の外の海を眺めていた。
 その間、ボルマナはじっと内海の後ろ姿を眺めたまま彼の言葉を待ち続けた。
「エルミタージュ議員と話ができるようお願いします」
 カッパドキア魔術協会の奥にその部屋はあった。
「ここね」
 幻覚の魔法で作られた壁を越えるとそこには秘密通路の階段が下に向かって伸びていた。
「男の足跡がある。
 しかも新しい。多分ガースルね」
 ベルが足跡を見つける。その足跡は階段を下がっていっていた。
 墓地でのガースルの亡霊騒ぎは盗賊ギルド内部を更に混乱に落としていった。
 亡霊として出るぐらいのガースルの執念とは何だったのかは分からない。
 だが、彼が生前執着していた金や女、そして長の椅子をめぐってまだ暗闘が続いていた。
 各派ともガースルの後釜を狙って、ガースルの事を調べだす。
 で、ガースルの隠れ家を見つけたという情報をベルが持ってきたのだった。
 内海の許可の下またリールを借り受け、当然のようについてきたアニスを入れた四人でこうして薄暗い階段を下りようとしている所だった。
 なお、アニスはさすがにドレスという訳ではなく、明らかに高そうなローブを纏っていたりする。
「何であんた魔法使えるのよ?」
 というベルの突っ込みに、
「ここのお偉いさんと知り合いでね。
 その縁で教えてもらったの」
 と種明かしをするアニス。彼女の言うお偉いさんが魔術協会会長なあたり色々教えてもらったのだろうと辰馬は邪推する。
 なお、アニスの魔法発動体は銀の扇なので杖は持っていない。
 背嚢からランタンを取り出す辰馬にベルが火打ち石を取り出す。
「貸して。
 つけてあげるから」
「いや、たしかマッチがここに」
 と背嚢を漁っていたらぽっと灯るランタン。
「失礼かと思いましたが着火の魔法で火を灯させてもらいました。
 で、お探し物は?」
 指輪の発動体をランタンに向けてリールが一言。
「……」
 今、リールと組んでいた男の気持ちがちょっと分かった辰馬だった。
 そんな辰馬に追い討ちをかけるように階段全体に届く光の玉を魔法で作ったアニスが手に光の玉を乗せて笑う。
「これで足を滑らせずに済むわ」
「……」
 何に怒ればいいか投げやりになった辰馬はランタンの炎を吹き消した。
「私と同じ足跡を踏んでついてきて。
 これで罠にかかる確率がぐっと低くなるわ」  
 先頭は罠を警戒するベル、次が辰馬とアニス、武装メイドなリールは背後の警戒も含めて最後尾という体制でゆっくりと階段を下りて行く。
 光から逃れるようにネズミやコウモリなどの小動物が移動する音を聞きながら、アニスがこの通路の記述が書かれている本を片手に呟く。
 アニスのお願いによって魔術協会図書室から借り受けた協会内部記録である。
 そんなものが借りられるアニスのお願いがどれほど異常なのか辰馬はまだ分かっていない。
「この通路は、イッソスの下水道に通じているみたい。
 元々避難用の通路だったのが忘れられたのね」
 そこでいったん足を止めて、下の方から水の流れが聞こえてくるのを確認する。
「ガースルは、ある魔術師に博打の借金のかたとしてこの通路の事を教えられたそうよ。
 多分、魔術協会内部にある貴重品を横流しするつもりだったのでしょうね」
 ベルが調べた事を口にしながら慎重に先を進む。
 魔法の武器防具は魔法がこめられているだけにえらく貴重なものであり、それを生み出す魔術協会の重要な資金源でもあった。
 更に大崩壊以前の古代魔術文明期のマジックアイテムなどはそれ一つで城が買える貴重な物だったりする。
 それの横流しを考えるあたり、ガースルはギルド長になるだけの強欲さは持っていたらしい。
「いくつかの貴重品が消えているのは魔術協会も認めているわ。
 その殆どが裏の市場に出ていないから、持ち出して何処かに隠しているのよ」
 アニスの言葉にベルが後に続く。
「多分、こんな危険な事を手下に任せるなんて事はしないでしょうから、一人でやったのね。
 だとしたら、近くに盗んだ品を隠す秘密の隠れ家があるはずだわ」
 足跡がそのまま壁に消えているのでベルは注意深くその壁面を調べる。
「ここね」
 ゆっくりと壁面に埃のない場所を押すと壁が開き中から隠し扉が現れる。
「離れて。
 罠があるかもしれないわ」 
 鍵穴に針金を通し、カチリと音がして鍵が開いた事が分かる。
「凄いな」
「でしょ♪
 誉めて誉めて」
 辰馬に誉められて胸をそらして喜ぶベルは嬉しそうに笑った。
「何だか、こんな冒険も悪くないわね。
 今度、この四人で冒険しましょうよ♪」
 ベルの言葉に辰馬も頷く。
「いいな。
 この四人なら楽しい旅ができそうだ」
「いいわね。冒険」
 ここまで順調なのでアニスも軽口を叩く。
「私は、商館のメイドの仕事がありますので……」
 リールの受け答えはメイドとしては完璧なのだが、この場のノリとしてはどうだろうと三人は思ったが口にしなかった。 
「じゃあ、開けるね」
 さっきまでの有頂天ぶりを吹き飛ばしてシーフの顔に戻ったベルは扉をゆっくり開けて、ぱたんと閉める。
「竜牙兵が一体いる」
 竜の骨から作られたという強い骸骨兵士である竜牙兵が一体ドア向こうにいたので、ベルは扉を閉めたのだ。
「まぁ、罠がない以上、何か仕掛けているとは思ったわよ。
 シンドー君が墓場で使っていた爆発する石みたいなのでぶっ飛ばす?」
「あれだと中のお宝にまで被害がいっちまう」
 アニスに振られた辰馬はその考えを否定した。
「ドア向こうに罠がしかけている可能性は?」
 リールの言葉にベルが真顔で呟く。
「あるわね。
 開けたのにやつは動かなかった。
 紐見たいなのは無かったから、怪しいのは床かな。落とし穴」
「じゃあ、私がマジックミサイルで足止めするから、罠探知お願い」
 アニスがベルに向かってウインクするとベルも了解とばかりウインクする。
「なら、ベルを守る役は私がします。
 盾持ちですので」
 リールがドアの前に出て罠感知をするベルを守る役を買って出る。
「あれ?
 俺やる事がないじゃないか?」
 勝手に話が進んでいる事に気づいた辰馬が存在を主張するが、ベルがにっこりと微笑んで辰馬の肩をたたいた。
「貴方にはとっても大事な仕事があるの」
「任せておけ!何だ?」
 男の見栄を含めて自信満々に言ってのけた辰馬にベルが笑いながら、けど真剣に言ってのけた。
「扉を開けることよ」
 結果からすると、リールの言ったとおりだった。
 床に落とし穴。その下には槍が刺さっている古典的なやつで、壁にスイッチがあった。
 竜牙兵はドアを空けた瞬間にアニスのマジックミサイル連打で粉砕。
 かくして、四人はガースルの隠していた財宝と対面する。
「以外に狭いな」
 隠し部屋は竜牙兵が待機していた床の先に倉庫みたいに無造作に物が置かれていた。
 ガースルの隠していた金銀財宝に魔術協会からくすねたのだろうマジックアイテム達。
「下手に触らないでね。
 いつ発動するか分からないから」
 アニスが内部記録と照らし合わせながらマジックアイテムを確認してゆく。
「わ!
 こっち書斎だわ!
 こんなに本を盗み出して……
 長、そりゃ消されるわ……」
 奥の部屋のドアを開けたベルが呆れたように本棚を見て苦笑する。
 読み書きができる人間が少数派であるこの世界において書物は情報という財宝でもあった。
 特にガースルが盗み出したのは魔術協会から盗み出した魔術書の類。
 魔術師に売れば言い値で売れるものばかりだった。
 ちなみにリールは外で見張り、辰馬はベルの隣で本棚を眺めている。
「シンドー君!
 ちょっと手伝ってよ!」
 アニスが辰馬に向かって叫び、辰馬がドアからアニスのいる部屋に向かう一瞬。
 ベルの手か一冊の本を掴み魔法妨害の呪文がかかった盗賊用袋にすべりこませた。
 西方世界語で書かれたその本の題名は「ゼラニウムの物語」と書かれていた。
 イッソスの港は円状の湾の奥に位置している。
 高所から見るとこの湾が綺麗な円状をしているのが分かる。
 その理由を内海は既に知っている。
 大崩壊以前のはるか昔の物語にイッソスの名前は出てきている。
「星が落ちた街」イッソスと。
 辰馬達が行ったアンデッド退治は洋上でも行われており、今でも船幽霊の姿は見かけることがあるという。
 その成り立ちから既にこの世界の異様さを思い知らされる。  
 内海が今いるのは、イッソスの港の中央にある大灯台の一室。
 大灯台とそれに付随する建物、カッパドキア共和国国政議会とその行政施設群である。
 そんな所にいることができる程度の力を既に内海は獲得していた。
 街の方を眺めると、中心部らしい城を軸に尖塔つきの二重の城壁が建物の間を分けるように鎮座していた。
 カッパドキア共和国の政府施設がなんでこんな所にあるかというと海を目指す姿勢の為だと言われている。
 が、大灯台はイッソスの街の外壁部に当たり、街の中央部にはイッソス太守の城が置かれていたりする。
 その位置配置でこの国の成り立ちが分かるものだと大灯台のある場所に呼ばれた内海は感慨深くイッソスの風景を眺めた。
 内海の後ろに首輪をつけたボルマナが控えているのだが、彼女は内海が室内にあるものが見たくなくて外を見ている事を察していた。
 まだ薄暗い早朝の大灯台に人は少ない。
 人に聞かれたくない話をするにはもってこいの場所だろう。
 浄化の歌が流れる朝にこんな人の因果の形なんぞ誰も見たくないだろうから。
「お気に召さないでしょうな。
 ですが、あの時は必要だったのです」
 待ち人の声がしたので二人は部屋の方を向いて杖を持った老人を出迎えた。
「お待たせしました。内海館長」
「いえ。
 お時間を作っていただき光栄です。
 エルミタージュ議員」
 内海は表情を出さずに淡々と口を開く。
 その視野に二対の裸の石像が写るのを無視するかのように。 
 快楽に狂った顔で股を広げ、臨月らしく丸みを帯びた腹の石像の名前はトローイア王妃ヘレネと王女カサンドラという。
「一つ聞きたいのですが、この石像にかけられている石化の魔法を解除したら二人は生き返るのですか?」
 淡々と話す内海の口調がかえってこの石像に対する醜悪さを見せつける。
「石化の呪文は解く事ができます。
 ですが、魂が石像に残っているかどうかは、その時々によりますな。
 石化を解いても魂が召された場合、ただの生きる死体と変わりませんからな」
 老人の声に隠れる後悔の念、そしてまだ残る怨嗟の念は彼が石像を見る視線から常に感じられた。  
「石化の魔法は私がかけたのですよ。
 良心というものはトローイアの廃墟に捨ててきましたからな。
 恨み。多くの犠牲の上で勝った戦は目に見える生贄が必要でした。
 今でも覚えています。
 いや、忘れる事ができませなんだ……」
 淡々と語るエルミタージュの目は過去に向いていた。
 西方航路の利権問題とトローイアの中央世界への内通から始まったトローイア戦争は、イシス王国やロムルス国家連合の支持をとりつけたイッソスがトローイアを包囲した事によって始まった。
 互いに一人しかいない勇者を出すタイミングを計りかねた両者はそのままずるずると兵士で殺し合いを続け、やっと双方勇者を投入したと思ったら相打ちになるという双方にとって最悪の結果を突きつけられたのだった。
 勇者の消失はイッソスが大国としての地位を失う事を意味していた。
 イシスやロムルスの支持を得た事が裏目に出て、かの国に勇者がいない事がばれてしまうとすかさずイッソスを支配する為に介入を始めるだろう。
 そうしたら、何の為にこの戦争を始めたのかわからなくなる。
 この時点でイッソス軍の首脳部は冷静さを失っていた。
 全軍をあげてのトローイア総攻撃。
 勇者を使っても落ちなかった堅城トローイアを普通の兵士達のみで落とす事はできなかったはずだった。
 だが、トローイアは陥落した。 
 あちこちで火の手があがりそこかしこで起こる略奪と暴行。
 トローイア陥落後、王宮にて捕らえられた王妃と王女の二人は既に兵士達に陵辱されたらしく、気が触れていた。
 トローイア陥落後に生き残っていた住民はわずか三万。
 兵士だった男達は陥落時に皆殺され、三万の生き残りは女子供ばかり。
 だが、トローイアを落としたイッソス軍は討たれた勇者の復讐と銘打って、彼女達を贄とした陵辱の宴をトローイアの廃墟で一月に渡り続けたのだった。
 兵士だけでなく余興として犬馬、さらには魔物にまで犯された三万の生き残りは宴が終わるまでには二万を切っており、その全てが正気を失っていた。 
 彼女達は報酬として参加諸侯に振舞われ、カッパドキアの奴隷交易とダークエルフ畜産の礎となる。
 そしてカッパドキア共和国の成立とトローイア消滅の最後の仕上げがこの二匹の牝の石化だった。
 淡々と語るエルミタージュの目は大灯台の広場に向けられていた。
 この大灯台の真下の広場につめかけた群集は既に牝でしかなかった二人を嘲笑していたのに、その嘲笑すら彼女達には届かない。
 誰の、いやどの種の子供か分からない腹を晒して男をねだる二人を石にした瞬間に沸き起こる勝利の歓声。
 その歓声をエルミタージュはどのように聞いていたのか内海には分かりたくなかった。
 だが、勇者を失った設立当時のカッパドキアはそこまでしないと他国に介入されかねなかったし、勇者無くともカッパドキアに手を出したらここまでやるという決意が必要だった事を内海は理解した。納得はしていないが。
「何故、新たな勇者を公表しなかったのですか?」
 歴史の話である。そう思いながら内海は尋ねる。
「あの時公表しても誰も信じなかったでしょう。
 それならば、勇者同士が相撃った時に出すべきだった。
 けど、その存在を否定した事でかえって各国は疑心暗鬼に落ちた」
 折しも、カルタヘナ王国とロムルス国家連合が戦争を開始し、イシス王国も海向こうのカッパドキアより隣のカルタヘナの動向に注目せざるをえなかった。
「そして、一番恐れた中央世界の人類諸国家連合はこれを見て侵攻を諦めたと聞きます」
 二匹の石像の膨らんだお腹に手を置いてエルミタージュは哂った。
「彼らが攻め込めば勝てたでしょう。
 ですが、蛮族相手みたいな我らの狂気がこの国を救ったのです。
 この石像は救国の英雄でもあるのでしょうな」
 なんと愚かな、なんと哀れな、なんと恐ろしい決意だろう。
 だからこそ誰もがこの国に踏み込まなかった。 
「議員。
 貴方の贖罪が私達を仲間に引き込む事である事は理解しています。
 ですからお聞かせ願いたい」
 国家というのはここまでして守らねばならぬものなのか?
 その問いと答えを内海は視野に入れながらその言葉を口にした。
「イッソスは勇者を二人保有していたのですね」
 と。
 後悔だけしかなかったエルミタージュの顔が驚愕に彩られたのを確認して、内海は更に口を開いた。
「勇者が持てる財産と権力があるのは魔術協会と太守家の二つ。
 なら、双方が持っているはずなのです。
 つまり、貴方達魔術協会は太守家にすら保持している勇者の存在を秘蔵していた」
 一度口を閉じる。
 犯人を追い詰めるようにゆっくりと間を取って内海は勇者の名前を告げた。

「『狂艶の公女』ゼラニウムを」

 その言葉を聞いたエルミタージュはただの老人に戻って、ただ首を縦に振ったのだった。


帝国の竜神様 異伝 ゼラニウムの物語 その五
2010年10月07日(木) 19:03:13 Modified by nadesikononakanohito




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