帝国の竜神様閑話01

 ある日、村に耳の長い女性がやってきました。
 軍服を着た長い耳の女性は村長と話をし、たくさんのお金を払って村の外れの荒地をもらう事になりました。
「ここに森を植えるの」
 何をするかと聞かれた女性はそう答えました。
 トラックが数台やってきて、苗木を植え、夜でも明々と灯りをつけて荒地に沢山の苗を植えました。
「お願いがあります。
 聞いてくれたらその分だけお金も払います。
 決して、森に入らないでくださいね」
 苗木を植えた女性は、そう言って更にお金を村長に払って去っていきました。
 村長ははなから女性の頼みを聞くつもりはありませんでした。
「彼女の植えた苗木を刈って薪にしよう」
 そう言って、男の人と共に彼女の植えた苗木を刈りに外れの荒地に向かいました。
 そして、誰も帰ってきませんでした。
 次の日、村の者が心配になって見に行くと、衣服や鉈だけが荒地の外れに落ちていました。
 男の人が誰もいなくなったので村はだんだん生活が苦しくなっていきました。
 森は村の生活が苦しくなるのなど構わずどんどん大きくなっていきます。
「あの森を刈って畑にしよう。
 あれだけ森が大きくなったのだ。
 豊かな土があるに違いない」
 新しい女村長はそう言い、女の人を連れて森に行きました。
 そして、誰も帰ってきませんでした。
 次の日、村の者が心配になって見に行くと、衣服や鉈だけが荒地の外れに落ちていました。
 女の人もいなくなったので、残された子供達は更に苦しい生活をしなければならなくなりました。
 森は更に大きくなっておいしそうな実をつけています。
「あの森の実を食べて生きていこう」
 子供達の一人がそういい、子供達を連れて森に行きました。
 そして、誰も帰ってきませんでした。
 森はそのまま大きくなり、動物達の住む楽園となったそうです。


 裏

「エント?」
 俺の言葉に黒長耳族出身の特務大尉は口を開いた。
「はい。森を植える人。
 木の形をした人とでも申しましょうか。
 それらを半島および満州辺境部に植えていきます」
 俺は頭をかきながら、そのエントとやらの苗が大漁に積まれたトラックを見つめた。
 財界・特に製紙業界や農業関係者、さらに陸軍までが多大な金を出したこの計画に猜疑心を持ったまま彼女の説明を聞いた。
「半島や満州の土地荒廃はかなりひどく、まず植林をして大地を再生させないといけません」
「それは分かるんだが、すんなり辺境に住んでいる奴が移民に応じるか?」
「大丈夫でしょう。
 きちんと、村ごと移民できるお金も土地も用意してあるんですから」
「いや、そういうことじゃなくって……」
 彼女になんて説明すればいいのだろう。
 半島や満州辺境部の住民の民度なんて。そもそも約束を守るのならば、帝国があれほど大陸統治に苦労する羽目になどならなかったのだが。
「大丈夫ですよ。
 所詮、紙ですから」
 先ほどと同じ笑みなのに、なぜか俺には黒長耳族の特務大尉の笑みに邪悪なものを感じて一歩後ろに下がった。
「ここのエントには一つ特殊な命令を出しています。
 『50年間、長耳族以外の人間が近づいたら攻撃し、養分とせよ』と」
「じゃあ、あんたら……最初から……」
「もちろん。お金も払いますし、土地も用意しますよ。
 けど、お金は使われないならばただの紙ですよね?
 土地も同じ。さて、用意した分埋まるのでしょうかね?
 もちろん、警告はしますよ。
 多額のお金を与えた上で、『絶対に森に入るな』と。
 それを守るかどうかは、少佐の方がご存知でしょう♪」

 
 後に朝鮮・満州だけでなく中国大陸全域に広げられ『緑の革命』と呼ばれた帝国の植林計画は信じられないスピードで成功を収め、豊かな森は長耳族の管理の下、大漁の作物を帝国にもたらす事となる。
 それと同時進行で起こった、治安改善と大陸の人口減少について同時に考える者は誰もいなかった。


 帝国の竜神様 閑話01
2007年01月31日(水) 09:52:59 Modified by nadesikononakanohito




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