帝国の竜神様閑話02

 ある日、村に耳の長い女性がやってきました。
 軍服を着た長い耳の女性は村長と話をし、たくさんのお金を払って村の外れの荒地をもらう事になりました。
「ここに森を植えるの」
 何をするかと聞かれた女性はそう答えました。
 トラックが数台やってきて、苗木を植え、夜でも明々と灯りをつけて荒地に沢山の苗を植えました。
「お願いがあります。
 聞いてくれたらその分だけお金も払います。
 決して、森に入らないでくださいね」
 苗木を植えた女性は、そう言って更にお金を村長に払って去っていきました。
 村長は村人に「入っちゃなんねぇだ」と言いました。
 ほとんどの村人が村長のいいつけを守りましたが、意地悪太郎が、
「そんなん守らんで薪にするべ」
 と言って森に入っていきましたが、意地悪太郎は帰ってきませんでした。
 次の日、村の者が心配になって見に行くと、意地悪太郎の衣服や鉈だけが荒地の外れに落ちていました。
「森の神様が怒ったっぺ」
 村人達は恐れおののいて、もらったお金で村と森の境目に社を作り、ねんころに祭る事にしました。
 十年が過ぎました。
 森は大きくなり、豊かな水を村にもたらし、冬の北風を防いでくれました。
 二十年が過ぎました。
 森は更に大きくなり、鹿や猪が住み着くようになりました。
 けど、鹿も猪も森の中だけで生活できるのか村に悪さをするという事はありませんでした。
 三十年が過ぎました。
 国全体で「工業化」という波が押し寄せ、若い者が皆街に行ってしまいました。
 森はさらに大きくなり、恵みを村に与えているのにもうその恵みは村人だけでは使えなくなっていました。
 四十年が過ぎました。
 高く、深く、神々しい森が村を見下ろしています。
 森の近くからは温泉も湧き出て、村人達の疲れを癒してくれます。
 村にいるのは年を取った者達と幼い子供だけで、大人たちは皆街に働きに行っています。
 ただの言い伝えですが、それでも誰も森に入ろうとはしませんでした。
 そして五十年が過ぎたある日、森の中から金髪の耳の長い巫女さんが現れてこう言いました。
「ありがとう。
 今まで森に入らずにいてくれて。
 お礼に何か贈り物をしたいのですが?」
 残っていたお年寄りが弱々しく口を開きました。
「ワシ等はこの森の恵みで生きていけるだ。
 お礼を言うのはこっちの方だよ。
 ただ、神様をお祭りするのにもうこの村には人がいないだ。
 神様を代々祭る為にこの村に人が帰るようにしてくれたらと」
 金髪の長い耳の巫女さんはその老人の願いを叶えてあげました。
 村に残った若い者、村出身の若い者達を社に呼んでこう言いました。
「この村に人が残るように、
 子達もその子達も森を守る為に協力していただけませんか?」
 そう言って、金髪の長い耳の巫女さんは巫女服を脱いで……

(省略されました・・全てを読むには某スレでわっふるわっふると祈ってください)

 その後、この村は森と温泉と共に栄え、改築された社には多くの長耳族の巫女さんが日々森の為に祈っているそうです。




 帝国はマジックユーザー(魔法技能所持者)の獲得に躍起になっていた。
 もちろん、従来の科学文明にも力点を置いて重化学工業の研究を続けてはいたが、大英帝国を超えるのに30年、合衆国を超えるのに50年と試算していた。
 時間があれば二大超大国を超える事ができる。
 だが、もっかこの二大超大国とはいつ戦火を交えるか分からないほど関係が悪化していた。
 そんなおり、この世界に竜が召還され魔術という駒が国際政治のゲーム盤に上がるようになった。
「現在、科学技術で勝てないのならば、この魔力でなんとか英米を超えられないか?」
 その発想はすぐ帝国中枢から出て、必死になって帝国は列強が魔術研究を始める前に魔術研究を推し進める事になった。
 そこで分かった事がある。
 竜が召喚される前までの世代の人間は先天的に魔法を扱えない。
 となれば、この世界での魔法研究=マジックユーザーをどれだけ確保するかにかかっていた。
 幸いかな、帝国を頼ってやってきたダークエルフ達を保護する事で初期のマジックユーザー確保の目処はついた。
 問題はその先である。
 全てのダークエルフを保護しても精々十万。
 ひとたび大戦が起こって、彼女達を狩り出したら帝国にマジックユーザーは残らなくなる。
 ならばと帝国は決意した。
 森を増やし黒長耳族と交配して、森と契約した長耳族を増やそうと。
 (もっとも、長耳族の容姿にだまされて賛同した政府中枢も大漁にいた事は否定しないが)
 大陸の戦争から足抜けし、国共内戦と第二次大戦の各国の物資不足からくる重化学工業の爆発的発展で次々と山村部の人口が街に移るという幸運に助けられ、本土植林事業は犠牲者が少ないまま広大な森を生み出す事に成功していた。
 だが、今度は別の問題が発生した。
 あまりに進みすぎた過疎化と少子化に山間部の人間人口が激減してしまったのだ。
 頭を抱えた帝国政府に妙案を提示したのは民俗学の民間研究者だった。
「長耳族を巫女にして社を祭ればいい」
 かつて巫女は神の妻兼村の共有物(遊女や娼婦)でもあった事に着目し、彼女達を村のコミュニティの中枢に据える事を提唱したのだった。
 こうして全ては丸く収まった。
 帝国政府は順調にマジックユーザーを増やし、村の者は彼女達と交わる事で村に人が残せ、長耳族は日本の山間部に広大な自治領を築きあげる事となった。
 山間部で行われる各地方独特の祭りは多くの観光客を呼び込み、闇夜に行われる大人の交わりは大漁の金を山間部に落す事となり、その金の殆どは治山と植林に使われる事となる。
 こうして、約半世紀で帝国初のドライアドが誕生した時、多くの魔法関係者は賞賛と同時に軽蔑の眼差しを帝国に向けたという。

  
「帝国はドライアドではなくホムンクルスを作り上げた」

と。


 帝国の竜神様閑話02
2007年01月31日(水) 09:59:00 Modified by nadesikononakanohito




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