帝国の竜神様20

 刺されたと自覚した後、目が覚めたら見知らぬ天井がキーツの目に飛び込んできた。
 体を動かそうとするが、意識が先行して中々思うように動かない。
 なんとか体を起こして、窓から外を見るとイッソスの港が広がっていた。
 港の先を見ると、あの巨大船がいない。
 キーツの耳にドアが開く音が聞こえ、と同時に友の声が聞こえてきた。
「起きていたのか」
「あいつらは去ったのか?」
 コンラッドは見舞いに持ってきた果物を置いて、同じように愛国丸が停泊していた海を眺めた。
「お前は刺されて三日間寝ていたんだ。
 で、あの船が去ったのが一昨日だ。
 交易の目的は果たしたから帰っていったよ」
 コンラッドの言葉にはいくつか言っていない事があった。
 キーツが刺された後、マンティコアのイッソス湾内への侵入はカッパドキア共和国に激震を走らせた。
 操作方法が失われたマンティコアが動き出した事実は、古代魔法文明の継承をうたっている魔術師学園の関与を疑わざるをえず、それは中央世界の巨大勢力たる人類諸国家連合による西方世界への軍事侵攻の前触れではないかと考えられるからだ。
 しかし明確な証拠もなく、それ以上の追求をしようにも海賊の根拠地のグラ地峡の砦はめちゃくちゃにされており生き残った海賊達も知らぬ存ぜぬを繰り返すばかり。
 更に問題だったのがマンティコアを撃退してみせた大日本帝国の船団だった。
 わずか三隻なのに信じられない火力でマンティコアを沈黙させた姿はイッソスの港にいた全員が見てしまっていた。
 その破壊力に誰もが恐れていた時に、かの国の人々は快くマンティコア騒ぎで出た負傷者を治療した事が知られるにつれて彼らへの好意が急上昇した。
 そんなおり、船団を率いる西村提督から「交易も終わったので引き上げたい」との申し出にダミアン議長は飛びついた。
 彼らへの賛辞をうたいながら、その破壊力がイッソスに向けられないようにと祈っていた議長は彼らへの式典まで開いてその別れを惜しみ、彼らを徹底的に自分の選挙材料に利用しつくした。
 今度開かれる国政議会において彼の敵はいない。
 だから、深夜に彼らが沈んだマンティコアを引き上げたというエルミタージュの報告を無視したのだ。
 それに、ダミアンは最初から最後まで船団に対して友好的政策を提案していたコンラッドへの配慮も忘れてはいなかった。
 船団の交易はコンラッドが紹介したダコン商会の独占権が認められ、連絡員として残った日本人達の滞在許可も与えコンラッドを交渉担当とし、グラ海峡の砦跡は修理後大日本帝国専用の交易港と日本商館、更に空中騎士団の基地が建設される予定だ。
「お前も戦傷という事で、十騎長に昇進だ」
「戦傷?」
「そうか。お前はマンティコアの事は知らなかったな」
 コンラッドはキーツが刺された後のマンティコア騒ぎをかいつまんで説明する。
「グラ海峡の砦とそこに停泊していた海賊の船は全滅に近い。
 死傷者だけで500人を超えたよ。
 マンティコアを討ち取る際にも空中騎士5人が戦死、2人が負傷だ」 
 コンラッドの話もキーツは上の空でぼんやりとしか聞いていない。
「なぁ、コンラッド。
 あの船が着てから何かが変わったと思うんだ」
「何がだ?」
 いまいちつかめないキーツの言葉にコンラッドも疑問で返さざるをえない。
「俺にもよく分からん。
 ただ、あの船が発見されてペガサスで駆けて行った時、明らかに何かが違うとは思った。
 結局、大日本帝国ってのは何処にあるんだ?」
「魔法協会の図書館に調べさせたが、中央世界はおろか東方世界にも大日本帝国の名前は無かったそうだ。
 未開の土地で成立した国じゃないかと魔術師達は言っているが……」
 その言葉の後をキーツが奪って言う。
「……未開の国があんな巨大船と信じられない攻撃力を持っているとは考えられんな」
 二人して言葉が途切れる。
「そろそろ行くぞ」
「ああ」
 コンラッドが出て行った後もキーツは窓の外を眺めていた。
 まるで、そこに愛国丸がいるかのようにただ静かに波揺れる海を眺めたままぽつりとコンラッドにいえなかった一言を呟いた。
「なんだか、別の世界から来たような船だった……」


 数日後、西方航路の船が「ロムルス国家連合とカルタヘナ王国が辺境殖民都市の対立から軍事衝突」の報告を伝えてきた。
 更に数日後にイッソスに入った船は、「カルタヘナ国王自ら出陣」というとんでもない報告を伝えてきた。
 ここに近年の休戦は破られ、ロムルスとカルタヘナの全面対決は決定的となり、カッパドキアを含む西方世界諸国は身の振り方を考えなければならなかった。
 もちろん、そんな戦風吹き荒れる中のこのこと交易に出張る大日本帝国もこの波に巻き込まれてゆく。
 なぜなら、イッソスの港は西方世界有数の港でロムルス商人もカルタヘナ商人も見ていた中で、第二〇駆逐隊がマンティコアを沈めたのだから。
 結果、カッパドキア共和国はその中立政策など無視されるがごとく、ロムルスとカルタヘナ双方からすさまじい勧誘を受ける羽目になる。


 イッソス出航から四日後 西方世界 大森林地帯

 海岸部は見渡す限りの森が広がる。
 その先を見るとはるか彼方に白銀の山々の稜線が広がっている。
「あれが『世界樹』じゃ。あの麓に西の竜宮はあるのじゃ」
 撫子が白銀の山々の中で一つ緑の山を指差す。
 最初、撫子の言っている意味が理解できなかった。
 なぜなら、距離的には山々より近くにあるとはいえ、世界樹の高さは1000メートルに届く高さを誇っていたのだから。
 また、信じられないほど太い幹が見えていなかったら山と勘違いしていただろう。
「ここが西方世界最大のエルフの住む里です。
 私達はこの森の事をドライアドの名前を取って『グウィネヴィアの森』と呼んでいます」
 この世界に数人しかいないドライアド。
 大森林を司る彼女は竜に次ぐ魔力を持ち、竜脈から途切れている撫子の魔力だけでは日本帰還はできない。
 彼女の協力こそ、この異世界派遣船団の鍵だった。
「世界樹よ!
 世界樹が見えるわ!」
「見て…あれが私が生まれた森よ…分かる?」
 世界樹を見て黄色い歓声をあげるのはイッソスで買われたダークエルフ達。
 彼女たちの数人かはかつてここで育った者もいて、もう見る事は無いと諦めていた故郷に涙していた。
 残りはダークエルフの牧場で育った者で、その大半が魔法を教える前にまず快楽に狂った精神を何とかしなければならず、治療に長い時間がかかると予想されたが幸いかな彼女達には無限に等しい時間がある。
 俺も遠藤もできるだけ彼女達を邪魔しようとはしない、いや避けるように彼女達から離れて彼女達の喜ぶ姿を追いかけてしまう。
 彼女達を見ていると良心が限りなく痛む。
「あの涙を見ると、たまらんな……」
 遠藤も俺と同じように彼女を見ていたらしく、俺のそばでぽつりと呟く。
 自分達が更なる迫害へ彼女達を追い込んだのに、彼女たちの感謝と善意を帝国は十二分に使う予定なのだ。
 帝国には彼女たちが操る魔法従者によって開発する場所が無数にあり、牧場で万全に躾られた夜の仕事は壊れたままでもいや、壊れているからこそやはり需要が無尽蔵にあるのだから。
 彼女達に安らぎ場所を提供する代わりに、彼女たちの全て、それこそ魔法からその体まで差し出させる。
 それは最初から想定されていた事でもあるが、こうやって現実を見せ付けられると本当に気が重い。
「なんじゃ。
 まだ悩んでおったのか?」
 こっちの鬱を悟った撫子がわざとらしく呆れてみせる。
「気にするでない。
 互いに互いを差し出して、共存を求めるのじゃ。
 お主等の価値観では貰い過ぎと思っておろうが、この世界では、その貰い過ぎな取引すら彼女等にかけてやる者はいなかったのだぞ」
 楽しそうに撫子は笑う。
 あいつにとっては、全ての出来事というのは凄く単純にできているのだろうな。
 というか、人間が見得とか面子に拘るのにたいして、撫子は物事の核心だけを見てこっちに当たってくるからつらい。
「ならば、その見栄と面子とやらで彼女達を可愛がってやれ。
 それが彼女達にとっても幸せな事であろうよ」
 優しく撫子は言い捨てた。
「わらわを見ろ。
 博之の零戦に負けて怒りからまとわり付いて、気づいてみたら惚れて、今では博之の物なのじゃぞ。
 何時でも何処でも「したい」と言えば裸になって腰を振るぐらい惚れたわらわと同じように、帝国とやらも我が眷属を虜にすればいいのじゃ」
 ……いや、核心すぎて何を大勢の前でとんでもない事いいやがりますか。この発情竜。
「失礼な!
 朝までわらわを寝かさずに、精を注いで精で卵ができるほど犯しぬいた博之が何を言っても無駄なのじゃ!」
 とてつもなく視線が痛い。
 特に男子の。
「安心せい。
 わらわは寛大ゆえ、わらわの眷属もわらわと同じように足腰立たぬほど犯しぬいても怒りはせぬから遠慮なく孕ませるがよい」
 何を威張ってやがるこの痴女竜。
「なぁ、真田。
 何でだか知らんが、俺の耳に「真田を船から叩き落せ!」と闇の声が聞こえるのだがどうすればいい?」
 とりあえず遠藤。それは空耳だから気にするな。
 というか、俺の周りの船員はみんな遠藤と同じ顔になってやがる。
「闇夜って見えないから出歩くと何が起こっても仕方ないよな」
「落ち着け遠藤!
 今は真っ昼間だろうがっ!!」
 突き落とそうとする遠藤ともがく俺は傍から見るとじゃれているようにしか見えんらしい。不本意だが。
「たいしたことではないぞ。
 闇夜でもどうせ博之はわらわを抱いておるから出歩く事などなかろうて」
 周りの笑い声に、遠藤を囃し立てる声に、すっかり落ち込んでいた事など忘れて俺は撫子に向かって決め台詞を声一杯に叫ぶ。
「この馬鹿竜、わかって焚き付けるんじゃねえ!」

 船は大森林地帯を横目に、少し離れた河口に錨を下ろす事にした。
 あの白銀の峰が水源で、大森林地帯を横断するこの川をエルフ達は「鏡の川」と呼んでいるらしい。
 その理由は何処までも澄み切った川の水面が鏡のように映るからで、川の大きさは河口部で幅1キロはあるのだか、そこで見たのは川が地平線の果てで空と溶けている姿だった。
 この川から北が大森林地帯、南には草原というか荒地が広がっている。
「昔は、もっともっと森が広がっていたのですがね。
 かつての大崩壊の名残なのですよ」
 とメイヴが語るには、大崩壊前に起こった人間とエルフの争いの跡なのだぞうだ。
 森全体に魔法結界を張って人間の侵入を阻んでいたのだが、エルフ達の力の源がその森に生えている木々であると看破した人間達が結界の薄い部分から次々に森を伐採しだしたのだ。
 で、鏡の川まで人間達がやってきた時に大崩壊が起こり人間達は引き上げていったという。
「しかし、何も無いな。
 これだけの大河なら人間が街なり村なりを作っていると思ったのだが」
 の遠藤の問いに、
「大崩壊後のこちらの荒地、私達は『虚無の平原』と呼んでいるのですが、大崩壊後に野生化した魔獣や蛮族等がいて人間も手が出せないのが実情です」
「あのイッソスで出会ったマンティコアみたいなものか?」
 俺の問いにただメイヴは首を縦に振っただけだった。
 撫子が日本に来て、メイヴ達が召還されたが、メイヴの率いる種族全てが召還されたわけでは無い。
 今回の航海で残りの黒長耳族を全て帝国に移住させるのも、この船団の大事な目的となっている。
 彼女達は長耳族に迫害を受ける事はないが、ひっそりとこのグウィネヴィアの森の外れに住んでいるという。
「メイヴ。もう向こうの集落には連絡はしたのか?」
「はい。先ほど撫子様のお力をお借りしまして。あそこに」
 深い森の外れの方に双眼鏡を向けると、黒長耳族が手を振っていた。
 ついてきたのか、長耳族も一緒にいた。
 森の外れに近づき、彼女たちにこのあたりの土地の話を聞いた上で、河口部あるかなり大きな三角州に拠点を築こうという話になった。
「長耳族の長と交渉をしたいのだが、どうやったら出てくるかのぉ?」
 愛国丸からさまざまな荷物を下ろしながら西村少将が撫子に問いかけた。
「わらわが一度長に会ってこよう。
 さっきの魔法でわらわが戻ったのはグウィネヴィアには判っておろうて」
 その「さっきの魔法」というのが、三角州とその隣接部を豪快に沈没させて愛国丸を岸付けさせるようにするという豪快な魔法だったりする。
 何でもありだな竜というものはと呆れながらも、こうして接岸して荷下ろしができるのは便利な事この上ない。
 森にいた黒長耳族の娘たちがメイヴに群がる。
 長耳族・黒長耳族というのは、寿命がほぼ無限に近い事もあって、その血族の長でまとまって一族を作るらしい。
 と、いう事は、メイヴが率いるこの黒長耳族は日本に来ているのも含めて3000人弱だっけ、全部メイヴの……娘またはその子孫……
 恐るべし。サキュバス。
「お母様」
「メイヴ様」
「おねーさま」
「長」
 まぁ、色々名前があるものだなぁと思いつつ。
「おばさん」とか「おばあちゃん」という呼び名が無い事に無駄に感心する。
 恐るべしサキュバス。
「博之さま。何か言いましたか?」
「うむ。今博之は……むぐぅぅっ!!」
「いや、何も」
 撫子の口を手で塞いで強引な愛想笑いを浮べてきっぱり言い切った。
 こういう感は人間も黒長耳族も同じだなぁ。
 黒長耳族の案内の元、愛国丸に積まれた97式中戦車が音を立てて移動してゆき、陸戦隊の兵士達も自分たちの宿舎を立てる準備をしていた。
 陸戦隊が600人。陸軍から派遣された戦車隊が97式中戦車8両に人員100人の合計700人がここに駐留する事になる。
 連合艦隊長官直属の特設巡洋艦を常に回してここに物資を運び込む事になるのだが、召還と帰還はどうしても撫子の力に頼らざるをえない。
 次に船団が来るのが速くて2週間後、遅くても一ヵ月後。 
 それまでは陸戦隊はここに残って自らの力で生き延びねばならないのだ。
「しかし、広いですな。この三角州。飛行場も作れそうですな。
 大陸の長江河口あたりを思い出します。
 まぁ、現地で食料が手に入っただけ、飢え死にはないと思いますがね」
 感慨深く広大な三角州を眺めているのが佐藤大佐。
 駐留部隊の指揮を取ってもらう事になるだけに、イッソスでの交易で「あまった金貨で食い物を買ってくれ」と頼んできた成果である大漁の干し肉と小麦袋の山がクレーンで積み下ろされている。
 なお、彼は酒も一部売らないでくれと頼みそれも今下ろされている。
 長耳族との現地交渉に黒長耳族の娘達も少し残すので、駐留時の士気低下は心配しなくていいだろう。
 問題はメイヴが言った魔獣なのだが……
「エルフにも協力させるよう言っておくゆえ、心配はせんでいいであろう」
「あれ一匹なら陣地に篭っていればなんとかなるでしょう」
 と考えている事を見透かされたように撫子と佐藤大佐が同時に声をかけた。
「で、撫子。
 お前はいつその世界樹へ行くんだ?」
「メイヴと博之を連れて、今日のうちには向こうに入りたいの」
 まて、そんな事聞いてないぞ。
「言ってなかったからのぉ」
 この馬鹿竜、いけしゃあしゃと言ってのけやがる。
 問題は、こっちは水偵で行くとして帰りのガソリンが足りるかという所か。
「まぁ、世界樹の麓にも鏡の川の支流はあるので足りなければそのまま川を下れば帰れるしのぉ。
 何なら、わらわがガソリンも持っていこうか?」
 それが妥当だろうな。
 この為に配備された零式水上偵察機に俺とメイヴが乗り込む。
 三人目の座席にはグウィネヴィアの土産物が乗せてあったりする。
(では、先に行っておるぞ)
 先に竜化した撫子が、手にガソリンのドラム缶を持って空に飛んでゆく。
「まったく、飛行機がそんなにはやく飛べるわけないと何度も言っているのに」  
 計器をチェックしていると、下から遠藤の声が聞こえる。
「いつもいつも思うんだが、撫子ちゃんの裸を見るたびに、お前の無事より『落ちろ』と願うのはなんでだろうな?」
 竜化するたびに平気で裸になるからな。あいつ。服が破けるからといって。
 で、遠藤があの体をメイヴと共に俺が貪っていると知っているだけにその声に嫉妬パワーが詰まっているのはなんとかならんものか。
「遠藤。今回俺が落ちたらメイヴも一緒に落ちる事になるぞ」
「なるほど。それは困るな。
 まだ目標の5分に届いてないんだ。
 ぜひ無事に帰ってきてくれ」
 まだ諦めてなかったのかよ。遠藤……
「計器チェックよし。
 エンジン始動」
 プロペラが勢い良く回りだす。
 そして爆発音と共にカタパルトから俺の乗る零式水上偵察機は空に舞い上がった。
 改めて上空からこの大森林地帯を見るとこの森のでかさを思い知らされる。
(そういや、撫子。
 この森、結界が張っているんじゃなかったのか?)
(向こうがわらわに気づいていると言ったであろうが。
 既に、結界をといておるからあっさりと入れたのじゃ)
 納得。
 飛行する事2時間弱、世界樹がだんだん近づいてきた。
(川沿いに添って飛んでください。
 世界時樹の麓には湖がありますからそこに着陸しましょう)
 森に囲まれた鏡のような湖に機体を下ろしシンメトリーな水面に波を立ててゆく。
 周囲を見ると鬱蒼としつつも光が溢れる森の正面にある世界樹の幹の麓にこぢんまりとした白亜の建物がある。
「あれが竜宮なのか?
 予想していたのよりずいぶん小さいな」
「何を想像しておったのじゃ?」
 裸の撫子がフロートに捕まって上がってきた。
「そりゃ、竜宮ってやつはもっとでかいものだと日本の昔話ではなっていたからな。
 鯛やヒラメが舞い踊る海中の城ってのが日本人のイメージだ」
「それはそれで、海の中に住むわらわの同胞がそんなのを作っていたような気がするのぉ」
 撫子の言葉にふと違和感を覚えて尋ねてみた。
「同胞って、お前ら姉妹じゃないのか?」
「姉妹も何も、生まれてから母共々人間に陵辱を受けていたというのに姉妹の認識など持てると思うたか?」
 撫子のあっけらかんとした言い方に触れられたくない所に触れた憤りみたいなのを感じて素直に謝る事にした。
「すまない。知らないとは言え言い方が悪かった」
「いや、謝るのはわらわの方じゃ。
 博之には罪は無いのに、過去を思うとどうしても人間を憎んでしまうのじゃ」
 撫子との関係で、撫子が心を読めることもあって、俺は包み隠さずに撫子には言うつもりだったし、撫子もこの行為を信頼として捕らえてくれている。
 だが、こういう過去については俺も知らないし撫子も話さない以上、中々踏み込んで行き難い話題であるのは確かだ。
 そんな俺達を察してか、メイヴが声をあげた。
「ほら、お出迎えが来ていますよ」
 機体が湖の浅瀬にゆっくりと乗り上げ、エンジンを止める。
 竜宮の近くでグウィネヴィアと呼ばれたドライアドは十数名のエルフの女戦士たちを従えて撫子に向けて頭を垂れていた。

 帝国の竜神様 20
2008年03月06日(木) 14:49:52 Modified by nadesikononakanohito




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