帝国の竜神様53 その1

1942年 5月29日 マリアナ諸島 サイパン 

 六者協議前段階……の前

 真ん中に円卓が置かれ、そこに置かれた椅子は七つ。
 撫子と乙姫様、そして五カ国の代表だけがその席に座る事を許される。
 その椅子の後ろにそれぞれの補佐が控え、俺など会議に参加しない随行員は別室で待機している。
 この会議のルールとして、撫子と乙姫と五カ国代表しか発言を許されない。
 補佐が何かの意思を代表に伝える場合は必ず紙に書いて渡すという事が英米の主張によって決められている。
 メイヴに聞いた事だが、これは対テレパス対策としてかなり有効な手らしい。
 メイヴ達はまだこの世界に来て半年も経っていない。
 にも関わらず、コミュニケーションが図れたのはテレパスを応用した意思疎通魔法のおかげである。
 当然、この手の会議で彼女達の使う魔法の優位はもの凄く大きい。
 それを少しでも減殺させる為の手らしい。
 紙にテレパスをかけてもさすがに読まれないからだ。
 そういう発想が出てくる事が凄いと素直に感心する。
(何を感心しておるのじゃ。博之)
 何で会議室からテレパスで話しかけていやがる。馬鹿竜。
 暇そうに窓の外を眺め南海の青い海を眺めながら、心の中で馬鹿竜を罵る。
(ひまなのじゃ!ひまなのじゃ!ひまなのじゃっ!!!
 始める時間なのに、皆部屋から出てこないのじゃ)
 そりゃそうだろうに。
 各陣営ともお前の晩餐会の発言で大慌てだろうからな。
(酒の席の冗談を真に受けるなど……女に嫌われるのじゃ!)
 なお、円卓に座っているのは撫子と乙姫様だけ。
 その乙姫様は円卓に盛大に涎をたらして眠っていた。
 撫子の補佐のメイヴと乙姫の補佐のレヴィアタンすら来ていないというか、俺の目の前で各国補佐および随行員の前で晩餐会の撫子発言の説明に追われていたりする。
「ですから、酒の席の余興として流していただけると……」
「流すには少し、大きすぎますな。
 あなた方がどれほどの力をお持ちなのか、是非説明していただかねば」
「ですから、実際に起こった程度の力しか持っていないと。
 何しろ、我々は異界から来た者ゆえ、何がどの程度の脅威なのか良く分からないのです」
「ほほう。
 アトランティス大陸を沈めたというのは『程度の脅威』なのですな?」
 メイヴとレヴィアタンに食い下がる英米交渉団。
 地味に、我ら帝国の交渉団も加わっているあたり外交とはげに恐ろしき。
 彼らにとって見ればその脅威と向き合う可能性が高いだけに必死なのも分からないではない。
(で、撫子よ。
 あの発言は本当なのか?)
 既に聞いてはいたが、間違ってくれと思いながら再度テレパスで聞いてみる。
(嘘を言うてどうするのじゃ?
 わらわだけでは無理だが、過去、我らでアトランティスと呼ばれし大地を沈めたのは事実じゃ)
 異世界における500年前の大災害『大崩壊』最大の被害。アトランティス崩壊。
 異世界の歴史書のどれにも最初に記載されるぐらい有名な事らしいが、この直接的原因に撫子を含めた竜が関与していたのを知っていたのは驚くほど少ないそうだ。
 まぁ、撫子やメイヴ達当事者はおいといて、イッソスで買い付けてきた歴史書にもその後の文明混乱の為か『大崩壊』そのものの記述は曖昧になっていた。
 こういう時、人間と桁違いの寿命を持つ長寿種の怖さを思い知る。
 何しろ当事者がいる可能性があるのだ。
 ため息をひとつ吐いて撫子にテレパスを送る。
(何でそんな大事な事を言わなかった?)
(来たばかりでそんな事を言うて、博之は信じたか?
 今、もめている連中とて、本当に信じている輩は少ないであろう。
 実際、やってみせるのが一番なのだが、それは博之の国にも迷惑がかかる。
 酒の席のたわごとで流すのが一番じゃ)   
 そう言われると返す言葉も無い。
 円卓に座っている花魁が、円卓で寝ている南国女性と組んで大陸一つ滅ぼしましたなんて頭がおかしいと普通は思うだろう。
 ふと思う。
 撫子は頭の悪いふりをしているのかもしれない。
(ふふ。
 そう思うのなら、今後馬鹿竜と呼ぶのをやめるのじゃ) 
 前言撤回。黙ってろ。馬鹿竜。
(博之は意地悪なのじゃ!
 ……で、まだ揉めておるのか?)
 テレパスで分かるのにあえて聞いてくるあたり、嫌味なのかもしれない。
 メイヴとレヴィアタンの低姿勢を目の当たりにして、持つ上司は大事だと切実に思う今日この頃。
(どうせテレパスで覗いているのだろうが。
 あの二人の低姿勢を見ているだろうに)
(博之よ。
 それで昨日二人からこっぴどく叱られたのを忘れたか?
 その上覗き見などしていたら、今日も朝まで説教確定なのじゃ。
 だから、おぬしと話しているのだろうが)
 ああ、そうでした。
 おかげで俺は自室で静かに寝ると言う久しぶりの贅沢を味わえたのでした。
(博之は薄情者なのじゃ。
 あの場は、出て行ってわらわを助けるとかするのが男だろうに)
(自業自得だ。馬鹿竜。
 お前のたわごとの成れの果てがこの今の状態なのだから自覚しやがれ)
 突き放すが、さすがにこのまま話が進まないのは少し困る。
 この後、各部屋を紙が飛び交い、円卓に代表がついたのはそれから二時間の時間を要した。
 皆が集まった中、撫子はものすごく暇そうな目で会議の開催を宣言したのだった。
「では、始めるのじゃ」


六者協議前段階

 太陽は既に昼と呼ばれる位置にあり、竜二匹以外の面子はまるで戦争でも始まるかのような緊迫した面持ちで撫子のだらけきった声を聞いていた。
 なお、そんな様子が手に取るように分かるのは、撫子が俺とのテレパスをまだ切っていないからである。
 撫子の精神安定と暴走のブレーキ役を期待されてなのだが、この時点で事前の取り決め違反は俺の申告以外にそれを知る人間はいない。
 問い詰めても証拠がでないものは「存在しない」のである。
 帝国以外の面々も納得はしていないだろうが、文句をつけてくる様子も無い。
 だからこそ、代表と補佐の間を延々と紙が飛び交うことになる。
「分かっておると思うが、この場の確認をするのじゃ。
 わらわが、貴国らの代表としてマリアナの竜と交渉する。
 この場はその交渉において何を交渉するかを決める場じゃ。
 マリアナの竜と取り決めたい事を五カ国でまとめてわらわに言うがよい」
 マリアナの竜はぽややんとまだ夢心地な顔だが、起きている証拠にこくりとだけ首を縦にふった。
 その首振りを確認したのちに撫子は目と口を閉じた。
 議長として、余計な介入はしないという彼女の意思表示なのはテレパスで伝わってくる。
 もっとも、
(人間同士の話し合いとは面倒じゃのぉ)
 という本音もだだ漏れなのだが。
 一人の男が手を上げ、残りの沈黙によって手を上げたオーストラリア代表は口を開いた。
「まず、我々が確認せねばならないのは、欧州大戦と竜という人類の英知に対する挑戦に晒されている事実を認識すべきです。
 この五カ国が手を取り合い、太平洋の、ひいては世界の平和の為に最善である行為を行える事を信じています」
(何を言っているのか良く分からないのじゃ)
(安心しろ。聞き流していい場所だ)
 オーストラリアやニュージーランド代表がいる理由はこんな所にある。
 大国同士のエゴのぶつかり合いなんぞまともにやったらまとまるわけも無い。
 彼ら弱小国家が大国の代理人として振舞う事で、会議の流れをリードするのだ。
 主張から察するに、この協議を纏めたい意思を感じるからオーストラリア、あとニュージーランドの後ろは英国だろう。
(つまり、我ら竜が勇者を巣の奥で待ち構える前に勇者に挑む眷属みたいなものか)
(また妙なたとえだが、まぁ、そんな所だ)
 次に手をあげたニュージーランド代表が、また皆の沈黙と言う同意の下で話し出す。
「我々ニュージーランドおよびオーストラリアは英連邦の一員といえ、太平洋にその国土がある以上竜という新たな存在に対する交流に関心を抱かざるをえません。
 この交渉によって竜の皆様と人類の良き共存が行われる事を信じております」
(なんだか、同じ事を言っているような気もしないではないが……)
(喜べ。これから先、この席での話はそんな同じ事の様で微妙に意味が違う言い回しの連続だ)
(頭が痛くなりそうなのじゃ〜)
 そう言うと思った。
 速めにメイヴに助けを求めろと言おうとしたら、そのメイヴからのテレパスが俺にも聞こえてくる。
(オーストラリアは「協議をまとめたい」、ニュージーランドは「竜との共存」を言っています。
 後ろにいるのが英国だから、英国の主張ですね。
 英国は本土が大西洋と離れているゆえ、当事者でないから日米と比べて発言力が落ちるのです。
 よって、当事者になる可能性のあるこの二カ国を使ってこの場を仕切ろうという魂胆でしょう)
 さすがメイヴ。良く分析しているものだ。
(何言っているのですか。
 これ、分析したの綾子さんと遠藤さまですよ)
 と、メイヴのテレパスに俺の目前の綾子を見ると、黒長耳族や外務省職員・海軍軍人に混じって十二単の綾子と二種軍装の遠藤が資料片手に次々と指示を出している。
 黒長耳族だけでは絶対的に足りないこちらの世界知識を綾子と遠藤を組み込む事で随行員を掌握したか。さすがメイヴ。
(本当は、博之様にもお願いしたかったのですが……)
 ため息が聞こえてきそうなメイヴのテレパスだが、俺も参加したかったゆえそれに反論できない。
(ダメなのじゃ。
 暇すぎて、博之と話ができないなら博之の所にわらわは行くのじゃ!)
 このわがままお姫様が。
 おかげで、室内を見たら綾子・遠藤以下随行員全員の「お暇そうですね」という皮肉の視線の集中砲火を浴びて窓の外を俺は眺め続ける羽目に。
(とにかく、必要になったらいつでも声をかけてくれ。
 三人寄れば文殊の知恵だ)
 これを気づかせてくれたのは英米だったりするのだから世の中皮肉に満ちている。
 英米が注文をつけたテレパスの利用制限がかえって帝国にテレパスの常時接続の有効性を教えたのだから。
 なお、この会議を開くまでまったくと言っていいほど帝国はテレパスを使う気が無かった。
 かくして、帝国随行員控え室は全力で撫子と野村代表の補佐をする事になる。
 万一の魔法探知や魔法妨害を考え、メイヴがつなげたテレパスは俺と遠藤と綾子の身内三人。
 来たばかりの外務省職員にテレパスを使うのは憚られるので野村代表には遠藤の書く紙が定期的に補佐経由で届く手はずになっている。
 その際に気づいたのだが、他の国も随行員が紙を補佐に渡し続けているらしい。
 まぁ、どの国もやっている事は一緒だろうが、直接繋がっている分スピードは我々の方が上だ。
 この切り札で四カ国を出し抜いたり、妥協してこの協議を成功させねばならないのだ。
 会議室に意識を戻すと、野村代表が英語で発言していた。
「我が国は、ミス・撫子と結んでいる帝国―撫子協定を例に、五カ国が包括的にマリアナの竜と外交関係を構築するべきだと考えます。
 そして、我が国は太平洋の安定に対してこの五カ国による包括的な外交関係を構築する用意があります」 
 まずは小手調べ。
 マリアナの竜を仲良く皆で使おうという提案だ。
 野村代表の後に発言を求めたのはやはり米国だった。
「野村代表の提案は大いに魅力的だが、いくつかの点において疑問がある。
 万一、欧州で起こっている戦火に五カ国のどれかが介入を決意しマリアナの竜の使用を考えた場合、異世界の存在すら戦争に使用したという人類史に残る愚行と記憶されかねない。
 我が国は、竜を含めた異世界の存在が人類の戦火に巻き込まれない為にも、彼女等の戦争使用禁止の条項をつける事を提案します」
 撫子の大陸お披露目と三峡封鎖を知った上で、愚行というあたりケネディ代表の発言は我々の提案に対する明確な拒否に他ならない。
 野村代表が即座に手をあげて想定していた文言を朗読する。
「では、太平洋に位置する四カ国がまず相互不可侵条約を結び、その上で欧州に関する戦争に関与しないと宣言するのはいかがか?
 マリアナの竜との協定がこの相互不可侵条約と関連付けされるのならば、自然と戦争使用できない事になるが」
 この言い回しには『ソ連が除外されているので対ソ戦を行う』と『合衆国を欧州戦不介入に引き込む』という英国向けの返答である。
『米国では無く、英国を巻き込んで米国の譲歩を勝ち取る』がこの交渉での帝国の基本方針だ。
 英国イーデン代表は動かない。
 だが、撫子の目は英国補佐席からオーストラリア補佐席に紙が動いたのを見逃さなかった。
 その紙が補佐席から代表の手に渡るまでの十数秒の沈黙の後、オーストラリア代表が発言を求めた。
「その前に、少し確認がしたい。
 まず、我々は英連邦の一員として欧州の戦争に参加し、兵を送っている。
 アメリカ合衆国の提案では竜の戦争使用を禁止するとあるが、万が一枢軸勢力が我々の国土を侵略した場合にも使わないという事か?
 その場合、合衆国は竜を人類戦争に関与させないという人類の英断に対して、先陣を切って努力すると解釈してよろしいのか?」
(何を関心おるのじゃ?博之?)
 おれの感嘆に良く分かっていない撫子が質問をふったので解説してやる。
(枢軸勢力、つまり三国同盟を脱退していない帝国もこの中に入っているんだ。
 日本がオーストラリアやニュージーランドに攻めてきた場合、米国は我々を助けてくれるのかと聞いてきているんだな)
(ふむ。
 人間のこの手の言い回しには感動するな。
 だが、米国とやらはおぬし等が出した「仲良く竜を使う」を蹴ってきたのはどういう事じゃ?)
(米国はハワイの竜と交戦中だ。
 ここで竜の権利を認めてハワイの竜にもその権利が発生した場合の事を恐れているのさ)
 とはいえ、交渉をまとめたいのは米国とて一緒である。
 今までの発言はそれまでの続けられた事務方の合意に向けてのセレモニーのはずなのだ。
 昨日のアトランティス発言が無ければ。
 本来の落とし所は、各国が各国とも己の利害を主張し収集がつかず、撫子が議長権限で最低限のライン「マリアナの竜と眷属の安全保障」と引き換えに「マリアナでの航路安全保障」を得るという筋書きのはずである。
 だから、ケネディ代表が発言を求めたとき、その事務方の筋書きから外れた事をはっきりと悟ったのだった。
「もちろん。
 人類の戦争は人類の手で解決されるべきです。
 それに合衆国が関与できるのであれば合衆国市民の賛同の下何時いかなる国への支援も惜しみません。
 我が国は現在ハワイにおいて竜と交戦中であり、その制圧を考える時に同じ仲間であるミス撫子およびマリアナの竜の介入に敏感にならざるを得ない。
 この点における何だかの解決策を各国に要求します」   
 まぁ、そう来るだろうな。
 沈めてみせると豪語した撫子や乙姫様がハワイの竜につく事を米国は恐れている。
 補佐が一斉に紙を書き出し、随行員がその紙を持って部屋への出入りを激しくさせる。
「アメさんが何処まで腹をくくっているかだな」
 耳から遠藤の声が聞こえてくる。
「どういう事ですか?」
「つまりだ、綾子ちゃん。
 アメさんはこの六者協議をどの長さの時間で見ているかという事さ。
 まず、第一にアメさんは欧州大戦に介入する必要がある」
「介入しないという選択肢は無いのですか?」
 綾子の疑問に遠藤は即答してみせた。
「ない。
 アメさんは、英国に武器を売りつける事で不況から脱出しているんだ。
 英国の敗北は英国債務不履行につながり、合衆国はそれを許容できない」
「ですが、合衆国国民は欧州への戦争へは不参加を表明しているではありませんか」
「そこが、第二だ。
 まぁ、ハワイのドラゴンを何とかしないと欧州大戦介入は不可能だろうからな。
 もっとも、ハワイのドラゴンと撫子ちゃんをつるませて、帝国を戦争状態に引きずり込んで三国同盟の裏口から戦争に介入という考えもあるかもしれないけどね」
 適切に解説してみせる遠藤に綾子が少し意外そうに呟く。
「遠藤さんって、ちゃんとお仕事するのですね」
「惚れた?
 俺は何時でも大歓迎だよ。綾子ちゃん」
 さらりと俺の妹に手を出すな。遠藤。
 そういう前に、綾子が軽くいなした。
「メイヴさんとか、フィンダヴェアさんとかいらっしゃるのによろしいので?」
「俺は女の子には平等に愛を注ぐ主義なの」
「それ、普通は女の敵とか呼ばれますよ」
「大丈夫。俺以上の女の敵があっこで仕事もせずに外を見てやがるから」
 まてやこら。何故そこで俺に話を振る。
 というか、綾子さん。何でそこで何も言い返さないのでしょうか?
 待て。何でこの部屋全員が俺を見つめるんだ?
 俺の味方は誰もいないのかよ。
(わらわがいるぞっ!)
 おとなしく会議に集中してやがれこの元凶が。
(ひどいのじゃ!
 だいたい、毎日毎夜逢瀬をしているだけで嫉妬する世の連中の心が狭いのじゃ。
 わらわは前々から博之の精を独り占めしようとは一言も言うておらんぞ)
 そうなんだよなぁ。
 こいつ、そういう所ではきっちりとした一線を引いているんだよな。それが人間主観で認められない所にあるだけで。
(人間の心が狭すぎるのじゃ)
 う……いい事言いやがる。
 お前ぐらい、心が広ければ世界大戦なんぞやってなかっただろうな。
(わらわもたまにはいい事を言うのじゃ。
 そうすれば、博之が褒めてくれるからの)
 うん。戻ったら褒めてやるから、少し考える時間をくれ。
(分かったのじゃ)
 馬鹿話で茶化されたが、遠藤の言う事には一理ある。
 独・伊・日枢軸三国+竜でも全てしとめるだけの国力を合衆国は持っている。
 だが、撫子のアトランティス発言がここで効いてくる。
 サンフランシスコを爆撃してみせたハワイの竜に、アトランティスを沈めたと豪語する撫子をつるませて西海岸壊滅だけでなく、北米大陸沈没まで考え出したら万一とはいえその博打はリスクが高すぎる。
 もちろん、英国を見捨て損切りしアジア、特に内戦勃発中の中国を市場として入手するという考えも無いわけではないだろうが、そのためにはどうしても帝国が邪魔になり、先の三国同盟+竜戦と何も変わらなくなってしまう。
 米国の絶対条件は英国の欧州大戦の勝利。
 これは間違いが無い。  
 では、英国はどうなのだろうか?
 同じ事を綾子も考えていたらしい。
「遠藤さん。英国はどこまで米国に付き合うのでしょうか?」
 その一言に遠藤も口を閉ざし考え込む。
「こういう場合、英国を知っている人に聞いてみるのが一番だな。
 吉田副代表を呼んできてくれ」
 随行員が部屋を出るのを見ながら、俺は撫子にテレパスを送った。
(一時休憩を提案してくれ)
(休憩中は博之の所に行っていいのか?)
(いいぞ)
(分かったのじゃ!
 さっそく博之に褒めてもらうのじゃ!!)
 はいはい。戻ったら頭を撫でてあげますから。竜神様。
「見るに、皆意見をまとめたいと見える。
 いかがかの?
 少し休憩を入れるというのは?」
 発言する者は誰もおらず、無事に休憩に入ったのである。




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2008年06月06日(金) 05:30:19 Modified by nadesikononakanohito




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