帝国の竜神様43
1942年5月16日 サイパン 愛国丸
久々に戻った愛国丸に新しい客人がやってきた。
南海巨竜大決戦を撫子と演じたマリアナの竜である。
なお、その彼女はやっと12日の夜更けに、
「おきる〜」
と人間形態(当然裸)となって撫子の先導で天霧にやってきた後、
「寝る〜」
と、そのまま人間形態のままばたんきゅ〜。
で、マリアナの愛国丸に移されてもまだベットで眠ったままという眠り姫だったりする。
「寝起きが悪いんですよ。我が主は。
本当に申し訳ない話なのですが」
と必死に弁護をしているのが白鯨のレヴィアタン。
主の寝床が己の背中からベットに移行したので、人間形態(やっぱり裸)で一緒に天霧に乗り込んできた実に腰の低い女性である。
ここで二人の容姿を説明しよう。
二人に共通しているのがその蒼い海と同じ色をした髪。
竜の方は撫子と同じ腰まで届くほどの長さの髪をストレートに伸ばし、人魚達海洋生物と違い撫子とタメをはるおっぱいをゆっくりと揺らしてベットで寝息を立てている。
お尻も当然安産型。腰のくびれを撫子と比べたら少し、こっちの竜がぽっちゃりしているのかなと思っていたら、
「寝てばかりだから太っているのじゃ」
と、撫子から一言。
なお、これで太っているのなら、人類女性は軒並み肥満であると主張するのが綾子。
大体、自由に体が作れるのをいい事に、出る所がでて引っ込むところが引っ込んでいるのに世の女性がどれだけ苦労しているのかと小一時間、撫子への恨みと俺へのあてつけをこめてたっぷり語ってくれた。
なお、その間まったく俺とは目を合わせず。怖い事この上ない。
目ははっきりいっておっとり系。口もきりりというよりぽややんという感じ。
ああ、海の女神様ってこんな感じだろうなと素直に思っていたりする。
なお、この姿は向こうの世界で人化する時に使う姿らしい。
「当然であろう。
わらわの場合は博之がいたから博之の思い人に体を合わせたのじゃぞ。
わらわも人化の姿を持っているのじゃぞ」
試しにと睦み合った時に見せてもらったが、緑髪の可愛い女性になったのを覚えている。
たとえて言うなら、異世界のドライアドのグウィネヴィアから凛々しさと可愛さを取り替えたような。
使える主が俺でなかったらこの容姿で俺達の前に現れたのかもしれない。
で、話がそれたがもう一方の腰の低いレヴィアタンの方も透き通る青髪で負けじとおっぱいはでかい。
セドナ達人魚がその姿で水中生活をしているから胸が小ぶりなのにたいして、普段の生活が白鯨なレヴィアタンの方もそのあたり男をたぶらかさんおっぱいを持つというのはいかがなものか。
髪はさっぱりショートで肩までもない。
何でかなと何気に思っていたら、主の弁護のたびに頭を下げるレヴィアタンを見て納得。
長い髪だと邪魔になって仕方ないんだろうな。謝る時に。
なお、下げる頭を持ち上げるたびにぽよよんとローブ越しにたわわな胸が揺れ、水兵達が鼻血を出したのは仕方が無いことだと思う。
これで目がきりり、口は主への苦労だろう。きちっと絞まっているのだから、慇懃無礼という雰囲気がなんとなく出ている。
「まぁ、二度寝ですからその内起きてきますよ」
実に主を分かっている意見を吐いてさり気にこのマリアナにいる日米将兵の恨みを一身に浴びているセドナもお気楽な言葉を言ってのける。
人にここまで具体的な策が無いのに楽観的に振舞っていると、美人なのが火に油を注ぎそりゃ恨み言の一つも言いたくなる。
マリー・アントワネットもこうやって恨まれたのかとふと思ってしまうがどちらに失礼なのかはあえて言う必要はないだろう。
なお、楽観的に考えている事が己の主人の安否というのに心配でないのはどうやら人間の思考らしい。
「だって、主が危険な目に合うなんて考えられませんし」
あまりのお気楽さに激昂した海軍士官への返答がそれであり、南海巨竜大決戦の顛末がマリアナに知れ渡るに連れて「こいつら人間と違う」と思い知らされるのだが。
なお、このマリアナの竜捜索は海軍特に航空隊に痛烈なトラウマを残し、「お前はマリアナのセドナか!」という根拠無き楽観論を戒める言葉が生まれたのだがそれはさておき。
まぁ、そんな訳で竜も見つかってという段階に来たのはいいのだが、実はそこから先へまったく進んでいなかったりする。
話が進まない理由はマリアナの竜が寝ているからというより、つれてきた人間の都合の方が大きい。
青い海と青い空の南海の楽園にいるとついつい世界が動いている事を忘れてしまうのだが、5月11日前後に起こったいくつかのニュースが世界を更なる混沌に導いており、その影響が少しずつ確実に我々の周りにも影響を及ぼしていたからだ。
その中で世界の耳目を引きつけていたのが、クレタを巡る攻防とハワイのドラゴンのサンフランシスコ爆撃。
サンフランシスコ爆撃は西海岸の大混乱を巻き起こし、その政治的混乱はマリアナに来ている米艦隊にまで影響を与えている。
本来、マリアナの竜を見つけた後に撫子の仲介による交渉が始まる予定だったのだが、合衆国内の混乱の為だろう。その交渉申し込みの開始すら今まで言ってこない。
英国に至っては日米仲介という第三者的立場を取っているが、やはり英国主導で始まったクレタ上陸作戦の為に足が鈍くなっている。
英国の情況はあまり芳しくない。
英独双方の発表を信じるのならクレタに英軍は上陸するも頑強な抵抗に合っており、ギリシャに配備された独空軍とイタリア艦隊がクレタ包囲中の英艦隊に突っ込み戦艦二隻と空母一隻を失うという大損害を受けたという。
それでもクレタ周辺は英艦隊が押さえておりクレタ上陸戦は続けられているのだから、海軍に関する限り英軍の物量も馬鹿にならないという事だろう。
このクレタ沖海戦の勝利を独伊が盛んに宣伝しているのに、英軍が独軍と激しく戦っているクレタの地に独軍は援軍を送ることができないのだから。
英米が動けない間に帝国が動くという訳にもいかなかったのである。
既に撫子を得ている帝国は英米に警戒されており、これ以上の竜による戦力強化を英米は本心では望んではいない。
まぁ、そんな感じで竜が見つかったというのに停滞しているのが現在の俺達の情況だったりする。
「そちらはこの後どうするつもりですが?」
メイヴがレヴィアタンと話をしているのを見ると、既に眷属同士での実務者協議は始まっているらしい。
「主の威光……は、あってなきようなものなので、ここで生活も向こうに帰るもどちらでも問題はないと思います」
ぶっちゃけるレヴィアタンのため息に思わずさもありなんと頷いてしまう一同を尻目に彼女は話を続ける。
「ただ、既に我が主が龍脈契約を結んでいるので、その解除に時間がかかるのが一つ。
もう一つは、こちらに残るにせよ帰るにせよ、眷属達の保護をどうするかですね」
互いに眷属の長らしくこの手の問題を具体的に把握している分話がさくさくと進んでいる。
「この星の皆様が望んでいる事は、この海域の安全な通行、それのみです」
「つまり、船を襲うなという事ですね。
巨大海洋生物の類には私から話をしておきましょう」
なお、異世界では50メートルを超える巨大イカとかが帆船やガレー船を襲っていたらしいが、こちらでは小型漁船以上の船だと逆に返り討ちに合ったという。
まぁ数千トンの鉄製貨物船が帆船やガレー船にあるまじき速度で走っていたら取り付けないわな。
そんな事を思いながら二人の話を眺めていると不意に遠藤がとんとんと肩を叩く。
「何だ?遠藤?」
「ちよっと来てくれ」
遠藤のただならぬ気配を感じた俺はそっと部屋を出て艦橋に向かう。
既に艦橋には西村少将だけでなく、南雲中将と井上中将までやってきてただならぬ気配を醸しだしている。
「おう。来たか。
少し困った事が起きた」
そう言って、井上中将は淡々とその事を口にした。
「東京からの緊急伝だ。
撫子三角州に駐留している部隊に怪物が襲い掛かって、甚大な被害を受けたらしい」
と。
帝国の竜神様 43
久々に戻った愛国丸に新しい客人がやってきた。
南海巨竜大決戦を撫子と演じたマリアナの竜である。
なお、その彼女はやっと12日の夜更けに、
「おきる〜」
と人間形態(当然裸)となって撫子の先導で天霧にやってきた後、
「寝る〜」
と、そのまま人間形態のままばたんきゅ〜。
で、マリアナの愛国丸に移されてもまだベットで眠ったままという眠り姫だったりする。
「寝起きが悪いんですよ。我が主は。
本当に申し訳ない話なのですが」
と必死に弁護をしているのが白鯨のレヴィアタン。
主の寝床が己の背中からベットに移行したので、人間形態(やっぱり裸)で一緒に天霧に乗り込んできた実に腰の低い女性である。
ここで二人の容姿を説明しよう。
二人に共通しているのがその蒼い海と同じ色をした髪。
竜の方は撫子と同じ腰まで届くほどの長さの髪をストレートに伸ばし、人魚達海洋生物と違い撫子とタメをはるおっぱいをゆっくりと揺らしてベットで寝息を立てている。
お尻も当然安産型。腰のくびれを撫子と比べたら少し、こっちの竜がぽっちゃりしているのかなと思っていたら、
「寝てばかりだから太っているのじゃ」
と、撫子から一言。
なお、これで太っているのなら、人類女性は軒並み肥満であると主張するのが綾子。
大体、自由に体が作れるのをいい事に、出る所がでて引っ込むところが引っ込んでいるのに世の女性がどれだけ苦労しているのかと小一時間、撫子への恨みと俺へのあてつけをこめてたっぷり語ってくれた。
なお、その間まったく俺とは目を合わせず。怖い事この上ない。
目ははっきりいっておっとり系。口もきりりというよりぽややんという感じ。
ああ、海の女神様ってこんな感じだろうなと素直に思っていたりする。
なお、この姿は向こうの世界で人化する時に使う姿らしい。
「当然であろう。
わらわの場合は博之がいたから博之の思い人に体を合わせたのじゃぞ。
わらわも人化の姿を持っているのじゃぞ」
試しにと睦み合った時に見せてもらったが、緑髪の可愛い女性になったのを覚えている。
たとえて言うなら、異世界のドライアドのグウィネヴィアから凛々しさと可愛さを取り替えたような。
使える主が俺でなかったらこの容姿で俺達の前に現れたのかもしれない。
で、話がそれたがもう一方の腰の低いレヴィアタンの方も透き通る青髪で負けじとおっぱいはでかい。
セドナ達人魚がその姿で水中生活をしているから胸が小ぶりなのにたいして、普段の生活が白鯨なレヴィアタンの方もそのあたり男をたぶらかさんおっぱいを持つというのはいかがなものか。
髪はさっぱりショートで肩までもない。
何でかなと何気に思っていたら、主の弁護のたびに頭を下げるレヴィアタンを見て納得。
長い髪だと邪魔になって仕方ないんだろうな。謝る時に。
なお、下げる頭を持ち上げるたびにぽよよんとローブ越しにたわわな胸が揺れ、水兵達が鼻血を出したのは仕方が無いことだと思う。
これで目がきりり、口は主への苦労だろう。きちっと絞まっているのだから、慇懃無礼という雰囲気がなんとなく出ている。
「まぁ、二度寝ですからその内起きてきますよ」
実に主を分かっている意見を吐いてさり気にこのマリアナにいる日米将兵の恨みを一身に浴びているセドナもお気楽な言葉を言ってのける。
人にここまで具体的な策が無いのに楽観的に振舞っていると、美人なのが火に油を注ぎそりゃ恨み言の一つも言いたくなる。
マリー・アントワネットもこうやって恨まれたのかとふと思ってしまうがどちらに失礼なのかはあえて言う必要はないだろう。
なお、楽観的に考えている事が己の主人の安否というのに心配でないのはどうやら人間の思考らしい。
「だって、主が危険な目に合うなんて考えられませんし」
あまりのお気楽さに激昂した海軍士官への返答がそれであり、南海巨竜大決戦の顛末がマリアナに知れ渡るに連れて「こいつら人間と違う」と思い知らされるのだが。
なお、このマリアナの竜捜索は海軍特に航空隊に痛烈なトラウマを残し、「お前はマリアナのセドナか!」という根拠無き楽観論を戒める言葉が生まれたのだがそれはさておき。
まぁ、そんな訳で竜も見つかってという段階に来たのはいいのだが、実はそこから先へまったく進んでいなかったりする。
話が進まない理由はマリアナの竜が寝ているからというより、つれてきた人間の都合の方が大きい。
青い海と青い空の南海の楽園にいるとついつい世界が動いている事を忘れてしまうのだが、5月11日前後に起こったいくつかのニュースが世界を更なる混沌に導いており、その影響が少しずつ確実に我々の周りにも影響を及ぼしていたからだ。
その中で世界の耳目を引きつけていたのが、クレタを巡る攻防とハワイのドラゴンのサンフランシスコ爆撃。
サンフランシスコ爆撃は西海岸の大混乱を巻き起こし、その政治的混乱はマリアナに来ている米艦隊にまで影響を与えている。
本来、マリアナの竜を見つけた後に撫子の仲介による交渉が始まる予定だったのだが、合衆国内の混乱の為だろう。その交渉申し込みの開始すら今まで言ってこない。
英国に至っては日米仲介という第三者的立場を取っているが、やはり英国主導で始まったクレタ上陸作戦の為に足が鈍くなっている。
英国の情況はあまり芳しくない。
英独双方の発表を信じるのならクレタに英軍は上陸するも頑強な抵抗に合っており、ギリシャに配備された独空軍とイタリア艦隊がクレタ包囲中の英艦隊に突っ込み戦艦二隻と空母一隻を失うという大損害を受けたという。
それでもクレタ周辺は英艦隊が押さえておりクレタ上陸戦は続けられているのだから、海軍に関する限り英軍の物量も馬鹿にならないという事だろう。
このクレタ沖海戦の勝利を独伊が盛んに宣伝しているのに、英軍が独軍と激しく戦っているクレタの地に独軍は援軍を送ることができないのだから。
英米が動けない間に帝国が動くという訳にもいかなかったのである。
既に撫子を得ている帝国は英米に警戒されており、これ以上の竜による戦力強化を英米は本心では望んではいない。
まぁ、そんな感じで竜が見つかったというのに停滞しているのが現在の俺達の情況だったりする。
「そちらはこの後どうするつもりですが?」
メイヴがレヴィアタンと話をしているのを見ると、既に眷属同士での実務者協議は始まっているらしい。
「主の威光……は、あってなきようなものなので、ここで生活も向こうに帰るもどちらでも問題はないと思います」
ぶっちゃけるレヴィアタンのため息に思わずさもありなんと頷いてしまう一同を尻目に彼女は話を続ける。
「ただ、既に我が主が龍脈契約を結んでいるので、その解除に時間がかかるのが一つ。
もう一つは、こちらに残るにせよ帰るにせよ、眷属達の保護をどうするかですね」
互いに眷属の長らしくこの手の問題を具体的に把握している分話がさくさくと進んでいる。
「この星の皆様が望んでいる事は、この海域の安全な通行、それのみです」
「つまり、船を襲うなという事ですね。
巨大海洋生物の類には私から話をしておきましょう」
なお、異世界では50メートルを超える巨大イカとかが帆船やガレー船を襲っていたらしいが、こちらでは小型漁船以上の船だと逆に返り討ちに合ったという。
まぁ数千トンの鉄製貨物船が帆船やガレー船にあるまじき速度で走っていたら取り付けないわな。
そんな事を思いながら二人の話を眺めていると不意に遠藤がとんとんと肩を叩く。
「何だ?遠藤?」
「ちよっと来てくれ」
遠藤のただならぬ気配を感じた俺はそっと部屋を出て艦橋に向かう。
既に艦橋には西村少将だけでなく、南雲中将と井上中将までやってきてただならぬ気配を醸しだしている。
「おう。来たか。
少し困った事が起きた」
そう言って、井上中将は淡々とその事を口にした。
「東京からの緊急伝だ。
撫子三角州に駐留している部隊に怪物が襲い掛かって、甚大な被害を受けたらしい」
と。
帝国の竜神様 43
2007年11月21日(水) 20:16:58 Modified by nadesikononakanohito