地方交付税交付金制度 
◆地方交付税法第一条
「この法律は、地方団体が自主的にその財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能をそこなわずに、その財源の均衡化を図り、及び地方交付税の交付の基準の設定を通じて地方行政の計画的な運営を保障することによつて、地方自治の本旨の実現に資するとともに、地方団体の独立性を強化することを目的とする。」
福祉、教育、道路・河川などのインフラ整備、消防、警察などの国民生活に密接に関連する行政は、地方公共団体の手によって行われている。すべての地方公共団体が一定の行政水準を維持するため、一定の一般財源を確保する必要がある。地方交付税は、地方公共団体間の財源の不均衡を是正するため、国税として国が代わって徴収し、一定の合理的な基準に基いて再配分するといういわば「国が地方に代わって徴収する地方税」（固有財源）という性格をもっている。
◆財源調整と財源保障
地方交付税は、財源調整機能と財源保障機能というふたつの機能を持っている。
� 〆盡残汗�
本来であれば地方公共団体の財源は自ら徴収する地方税などの自主財源によって賄われることが理想である。しかし現実には人口や産業の集積の度合によって地域間には格差がある。地方交付税はこうした財源の地域間格差を調整し、税収の少ない団体に配分して財源の均衡化を図っている。
�◆〆盡司歉�
また、地方公共団体が担う行政サービスは国民生活に密接に関連しているため、その質は一定の水準を維持しなければならない。ところが景気の動向によって地方税収が落ち込み、年度によって格差が生じる恐れがある。そこでマクロ的には地方財政計画によって地方財政総体の歳入不足を補填し、ミクロ的には交付税によって各地方公共団体の歳入不足を補填することによって、地方財政の財源を保障している。
(参考：総務省「地方財政制度」)
「この法律は、地方団体が自主的にその財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能をそこなわずに、その財源の均衡化を図り、及び地方交付税の交付の基準の設定を通じて地方行政の計画的な運営を保障することによつて、地方自治の本旨の実現に資するとともに、地方団体の独立性を強化することを目的とする。」
福祉、教育、道路・河川などのインフラ整備、消防、警察などの国民生活に密接に関連する行政は、地方公共団体の手によって行われている。すべての地方公共団体が一定の行政水準を維持するため、一定の一般財源を確保する必要がある。地方交付税は、地方公共団体間の財源の不均衡を是正するため、国税として国が代わって徴収し、一定の合理的な基準に基いて再配分するといういわば「国が地方に代わって徴収する地方税」（固有財源）という性格をもっている。
◆財源調整と財源保障
地方交付税は、財源調整機能と財源保障機能というふたつの機能を持っている。
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本来であれば地方公共団体の財源は自ら徴収する地方税などの自主財源によって賄われることが理想である。しかし現実には人口や産業の集積の度合によって地域間には格差がある。地方交付税はこうした財源の地域間格差を調整し、税収の少ない団体に配分して財源の均衡化を図っている。
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また、地方公共団体が担う行政サービスは国民生活に密接に関連しているため、その質は一定の水準を維持しなければならない。ところが景気の動向によって地方税収が落ち込み、年度によって格差が生じる恐れがある。そこでマクロ的には地方財政計画によって地方財政総体の歳入不足を補填し、ミクロ的には交付税によって各地方公共団体の歳入不足を補填することによって、地方財政の財源を保障している。
(参考：総務省「地方財政制度」)
地方交付税の総額
地方交付税は、国の一般会計から支出される。地方交付税は、�々饑�5税の法定率分、��地方交付税附則上の法定加算分、��財政不足がある場合にその半分を負担する特例加算分、�い修梁省模伐短司�からなる。�）…衫�分と�∨…蟆短擦粒曚聾把蠅任△襪�、��特例加算と�Ｊ模伐短擦論�府の裁量による。
� ）…衫�分 ：国税5税(所得税の32%、法人税の34%、酒税の32%、消費税の29.5%、たばこ税の25%)(地方交付税法6条)
�◆）…蟆短察 Ь綉�以外に地方交付税法附則上に定められた額を国の一般会計から加算
�� 特例加算 ：地財計画歳出総額−（地方税＋交付税法定率分）に不足がある場合、その不足分の半分を国が負担
�ぁ（模伐短察 Ю�府・総務省の裁量によって加算
◆特例加算
「地方財政計画の歳出総額−（地方税＋交付税法定率分）」に不足がある場合に、その不足額を国と地方が折半して負担する。この折半対象の財源不足は、国の負担分については一般会計からの特例加算（臨時財政特例加算）によって、地方負担分については「臨時財政対策債」という地方債の発行によって補填される。
特例加算は地方の財源不足を補填するため、平成15年度から導入された。平成15年度の不足分は11.1兆円であり、その半分の5兆円を特例加算として国が負担した。それ以降、地方財政対策においては地方財政計画の歳出を抑制し、財源不足を圧縮することにより特例加算分を減らしていくことが課題となった。その後、地方歳出の抑制、地方税収の増加によって平成19年度と平成20年度は特例加算は解消された。
しかし、平成21年度には世界的な景気後退から法定率分が2.7兆円激減したため、「生活支援」として特例加算措置を再び開始した。さらに平成22年度からは法定率分、法定加算、特例加算とは別枠で雇用対策として加算措置（別枠加算）が設けられた。
（参考：総務省「地方交付税等の総額の推移」）
表1 折半対象財源不足の推移(地方財政計画、兆円)
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◆特例加算
「地方財政計画の歳出総額−（地方税＋交付税法定率分）」に不足がある場合に、その不足額を国と地方が折半して負担する。この折半対象の財源不足は、国の負担分については一般会計からの特例加算（臨時財政特例加算）によって、地方負担分については「臨時財政対策債」という地方債の発行によって補填される。
特例加算は地方の財源不足を補填するため、平成15年度から導入された。平成15年度の不足分は11.1兆円であり、その半分の5兆円を特例加算として国が負担した。それ以降、地方財政対策においては地方財政計画の歳出を抑制し、財源不足を圧縮することにより特例加算分を減らしていくことが課題となった。その後、地方歳出の抑制、地方税収の増加によって平成19年度と平成20年度は特例加算は解消された。
しかし、平成21年度には世界的な景気後退から法定率分が2.7兆円激減したため、「生活支援」として特例加算措置を再び開始した。さらに平成22年度からは法定率分、法定加算、特例加算とは別枠で雇用対策として加算措置（別枠加算）が設けられた。
（参考：総務省「地方交付税等の総額の推移」）
表1 折半対象財源不足の推移(地方財政計画、兆円)
| H15年度 | H16年度 | H17年度 | H18年度 | H19年度 | H20年度 | H21年度 | H22年度 | H23年度 | H24年度 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 歳出合計 | 86.2 | 84.7 | 83.8 | 83.2 | 83.1 | 83.4 | 82.6 | 82.1 | 82.5 | 81.9 |
| 交付税+ 地方税 | 75.1 | 76.9 | 79.5 | 81.8 | 83.1 | 83.4 | 77.3 | 71.3 | 74.9 | |
| 特例加算+ 臨財対策債 | 11.1 | 7.8 | 4.3 | 1.4 | − | − | 5.3 | 10.8 | 7.6 |
地方交付金改革
◆三位一体の改革
小泉政権は、構造改革の一環として地方分権改革を行った。�々餮吠篏�負担金の廃止・縮減、��地方交付税の削減、�Ｃ亙�への税源移譲の3つを「三位一体の改革」として行った。
平成10年から赤字公債の発行額が上昇し、財政再建の必要性が高まっていた。「三位一体の改革」では、まず�々餮吠篏�負担金の廃止・縮減を進めた。これは国による地方への関与を縮小することになる。��地方交付税の削減は、平成11年から増額を続けている交付税を抑えようとするものであった。さらに�Ｃ亙�への税源移譲をすることにより、歳出と地方税収の乖離を縮小させるとともに、課税自主権を拡大させた。
地方交付税の見直しについては、交付税措置が「地方が自分で効果的な事業を選択し、効率的に行っていこうという意欲を損なっている面がある」とという問題意識から、「地方の負担意識を薄める仕組みを縮小し、自らの選択と財源で効果的に施策を推進する方向に見直していくべき」とされた。
三位一体改革の結果、2006年までに地方交付税の見直し、3兆円の税源移譲、4.7兆円の国庫補助金改革を達成した。
(参考：内閣府「ここまで進んだ小泉改革 2004改訂版」)
◆財政運営戦略
菅内閣は平成22年6月22日に「財政運営戦略」を閣議決定し、基礎的財政収支(プライマリーバランス)の赤字を平成27(2015)年までに半減させ、平成32(2020)年までに黒字化させる目標を掲げた。この財政健全化目標の達成に向けて「基礎的財政収支対象経費」（国の一般会計歳出から国債費を除いたもの）が少なくとも昨年度の規模を実質的に上回らないこととされ、歳出の抑制が図られた。歳出抑制のため「中期財政フレーム」という歳出の大枠が定められ、平成23年度予算では「基礎的財政収支対象経費」は前年度の歳出(71兆円)以下に抑えられた。
「基礎的財政収支対象経費」には地方交付税交付金も含まれている。総務省は地方交付税を「地方固有の財源」として抑制の対象外とすることを求めていた。地方の一般財源である地方交付税の削減は、地方の自主的な運営を目指す「地域主権」の理念に反するというものである。しかし財務省は地方交付税の例外化では国際的な理解を得られないとして中期財政フレームに含めることで決着した。
「財政運営戦略」では「地方財政の安定的な運営」として、財政健全化には国と地方公共団体の協力が必要であり、地方公共団体に対して財政の健全な運営を要請するとした。ただしその上で、国は地方財政の自主的かつ安定的な運営に配慮し、その自律性を損ない又は地方公共団体に負担を転嫁するような施策を行ってはならないという留保が設けられた。本来であれば地方交付税も抑制の対象であるが、平成24年度予算では中期財政フレームに従いつつ「平成23年度と同水準を確保する」とされている。
地方交付税については、地域主権改革に沿った財源の充実を図るため、前年度に比べて1000億円増額された。その一方で地方の長期債務残高を抑制するため、臨時財政対策債を縮減した。
(参考：地方財政白書「平成23年度の地方財政」)
◆社会保障と税の一体改革
「社会保障と税の一体改革」では、2010年半ばまでに消費税率を段階的に10%まで引き上げ、社会保障にかかる安定財源を確保するとされている。
現行の消費税収(5%)については国と地方の配分は維持される(5%のうち1%は地方消費税。国の4%のうち29.5%は地方交付税)。引き上げ分の消費税収については社会保障財源として明確化され、国と地方の役割分担に応じた配分がなされる。
(参考：財務省「社会保障・税一体改革の概要」p6)
小泉政権は、構造改革の一環として地方分権改革を行った。�々餮吠篏�負担金の廃止・縮減、��地方交付税の削減、�Ｃ亙�への税源移譲の3つを「三位一体の改革」として行った。
平成10年から赤字公債の発行額が上昇し、財政再建の必要性が高まっていた。「三位一体の改革」では、まず�々餮吠篏�負担金の廃止・縮減を進めた。これは国による地方への関与を縮小することになる。��地方交付税の削減は、平成11年から増額を続けている交付税を抑えようとするものであった。さらに�Ｃ亙�への税源移譲をすることにより、歳出と地方税収の乖離を縮小させるとともに、課税自主権を拡大させた。
地方交付税の見直しについては、交付税措置が「地方が自分で効果的な事業を選択し、効率的に行っていこうという意欲を損なっている面がある」とという問題意識から、「地方の負担意識を薄める仕組みを縮小し、自らの選択と財源で効果的に施策を推進する方向に見直していくべき」とされた。
三位一体改革の結果、2006年までに地方交付税の見直し、3兆円の税源移譲、4.7兆円の国庫補助金改革を達成した。
(参考：内閣府「ここまで進んだ小泉改革 2004改訂版」)
◆財政運営戦略
菅内閣は平成22年6月22日に「財政運営戦略」を閣議決定し、基礎的財政収支(プライマリーバランス)の赤字を平成27(2015)年までに半減させ、平成32(2020)年までに黒字化させる目標を掲げた。この財政健全化目標の達成に向けて「基礎的財政収支対象経費」（国の一般会計歳出から国債費を除いたもの）が少なくとも昨年度の規模を実質的に上回らないこととされ、歳出の抑制が図られた。歳出抑制のため「中期財政フレーム」という歳出の大枠が定められ、平成23年度予算では「基礎的財政収支対象経費」は前年度の歳出(71兆円)以下に抑えられた。
「基礎的財政収支対象経費」には地方交付税交付金も含まれている。総務省は地方交付税を「地方固有の財源」として抑制の対象外とすることを求めていた。地方の一般財源である地方交付税の削減は、地方の自主的な運営を目指す「地域主権」の理念に反するというものである。しかし財務省は地方交付税の例外化では国際的な理解を得られないとして中期財政フレームに含めることで決着した。
「財政運営戦略」では「地方財政の安定的な運営」として、財政健全化には国と地方公共団体の協力が必要であり、地方公共団体に対して財政の健全な運営を要請するとした。ただしその上で、国は地方財政の自主的かつ安定的な運営に配慮し、その自律性を損ない又は地方公共団体に負担を転嫁するような施策を行ってはならないという留保が設けられた。本来であれば地方交付税も抑制の対象であるが、平成24年度予算では中期財政フレームに従いつつ「平成23年度と同水準を確保する」とされている。
地方交付税については、地域主権改革に沿った財源の充実を図るため、前年度に比べて1000億円増額された。その一方で地方の長期債務残高を抑制するため、臨時財政対策債を縮減した。
(参考：地方財政白書「平成23年度の地方財政」)
◆社会保障と税の一体改革
「社会保障と税の一体改革」では、2010年半ばまでに消費税率を段階的に10%まで引き上げ、社会保障にかかる安定財源を確保するとされている。
現行の消費税収(5%)については国と地方の配分は維持される(5%のうち1%は地方消費税。国の4%のうち29.5%は地方交付税)。引き上げ分の消費税収については社会保障財源として明確化され、国と地方の役割分担に応じた配分がなされる。
(参考：財務省「社会保障・税一体改革の概要」p6)
今後の改革の方向
◆財政規律のインセンティブ
国の財政再建が進められる上で、地方の協力も不可欠である。しかし現行の制度では地方財政計画に基くナショナルミニマムを超える行過ぎた財源保障や、地方債の地方財政計画・交付税による手当てという政府保証が行われている。国の過剰関与、地方の中央依存という構造があり、この構造のもとでは地方は歳出拡大をするほうが合理的となっている。このように、地方に財政規律を保つインセンティブが存在しない。
本当の地方自治、地方分権、地域主権のためには、住民による自己決定・自己責任による財政運営が前提である。従って、住民が自治体の財政運営に対するガバナンスをもつとともに、住民が受益と負担の水準を決定する仕組みが必要となる。
改革の方向としては、すべての自治体が最低限必要な部分（ナショナルミニマム）は国が負担する一方で、上乗せ部分については地域間格差を容認し、地方の権限・財源・裁量による決定をさせる必要がある。そのためには、地方財政計画の財源保障機能を縮小させ、地方公共団体は一般財源の確保のために課税自主権を発揮して地方税の拡充をすることとなる。これによって地方に歳出削減を自主的に行うようになり、財政規律を保つインセンティブが働く。
地方財政計画では基準財政需要が算定されるが、不必要な地方単独事業などが過剰に計上されがちである。さらに財源保障によって地方交付税がナショナル・ミニマム以上に支出されるため、地方歳出は拡大する傾向にある。現行の地方財政調整制度では、国の財政事情は考慮されず、地方公共団体に歳出削減や課税自主権の発揮などの自助努力を求める仕組みになっていない。そのため交付税が過剰に支出され、国の一般歳出を圧迫している。
地方交付税をめぐる改革は、地方公共団体には財政規律が機能していないという点から見直しが進められている。財政規律が働かないことは、地方公共団体の上乗せ施策、不適正経理、民間給与を反映しない公務員給与、課税自主権を発揮しないこと、地方税の高い対能率などの原因となっている。また地方債も国による保証がなされているため、財政規律を保つインセンティブが欠如している。
◆包括算定化
現行の普通交付税の算定は、以下のように求められる。
・普通交付税額＝（基準財政需要額−基準財政収入額）＝財政不足額
基準財政需要額は、地方財政計画において示された給与費、社会福祉関係費、公共事業費、単独事業費など地方公共団体の歳出の見積りを基礎として算定される。本来であれば地方財政計画の歳出は不必要な事業は計上されないため、歳出計画より決算額の方が大きいはずである。しかし実際は決算額より歳出計画の方が大きくなっている。つまり、地方財政計画の見積りは過大に計上されている恐れがあり、検証が必要となる。
そこで、行政刷新会議(平成21年11月13日)では、普通交付税の算定方式を簡素化すべきという指摘がなされた。算定方式の見直しについて基準財政需要額と乖離するとして地方の反発があるが、基準財政需要額ではなく人口と面積に基く方式ならば乖離は小さく代替可能であるとした。
◆財政調整機能への特化
地方交付税は本来、地方公共団体間の財政格差を是正し、地方税収の少ない団体にも一般財源を保障するための仕組みである。従って財政調整と財政保障というふたつの機能を持つが、行過ぎた財政保障によって地方公共団体が財政規律を保つインセンティブが失われているという指摘がある。そこで交付税の財政保障機能を縮小し、財政調整機能に特化すべきという主張がなされている。
地方の一般財源が保障されていないのであれば、各地方公共団体が課税自主権を発揮するか、歳出削減を行うことにより健全な財政規律を働かせることが出来るとされる。
◆破綻法制の整備
国の財政再建が進められる上で、地方の協力も不可欠である。しかし現行の制度では地方財政計画に基くナショナルミニマムを超える行過ぎた財源保障や、地方債の地方財政計画・交付税による手当てという政府保証が行われている。国の過剰関与、地方の中央依存という構造があり、この構造のもとでは地方は歳出拡大をするほうが合理的となっている。このように、地方に財政規律を保つインセンティブが存在しない。
本当の地方自治、地方分権、地域主権のためには、住民による自己決定・自己責任による財政運営が前提である。従って、住民が自治体の財政運営に対するガバナンスをもつとともに、住民が受益と負担の水準を決定する仕組みが必要となる。
改革の方向としては、すべての自治体が最低限必要な部分（ナショナルミニマム）は国が負担する一方で、上乗せ部分については地域間格差を容認し、地方の権限・財源・裁量による決定をさせる必要がある。そのためには、地方財政計画の財源保障機能を縮小させ、地方公共団体は一般財源の確保のために課税自主権を発揮して地方税の拡充をすることとなる。これによって地方に歳出削減を自主的に行うようになり、財政規律を保つインセンティブが働く。
地方財政計画では基準財政需要が算定されるが、不必要な地方単独事業などが過剰に計上されがちである。さらに財源保障によって地方交付税がナショナル・ミニマム以上に支出されるため、地方歳出は拡大する傾向にある。現行の地方財政調整制度では、国の財政事情は考慮されず、地方公共団体に歳出削減や課税自主権の発揮などの自助努力を求める仕組みになっていない。そのため交付税が過剰に支出され、国の一般歳出を圧迫している。
地方交付税をめぐる改革は、地方公共団体には財政規律が機能していないという点から見直しが進められている。財政規律が働かないことは、地方公共団体の上乗せ施策、不適正経理、民間給与を反映しない公務員給与、課税自主権を発揮しないこと、地方税の高い対能率などの原因となっている。また地方債も国による保証がなされているため、財政規律を保つインセンティブが欠如している。
◆包括算定化
現行の普通交付税の算定は、以下のように求められる。
・普通交付税額＝（基準財政需要額−基準財政収入額）＝財政不足額
基準財政需要額は、地方財政計画において示された給与費、社会福祉関係費、公共事業費、単独事業費など地方公共団体の歳出の見積りを基礎として算定される。本来であれば地方財政計画の歳出は不必要な事業は計上されないため、歳出計画より決算額の方が大きいはずである。しかし実際は決算額より歳出計画の方が大きくなっている。つまり、地方財政計画の見積りは過大に計上されている恐れがあり、検証が必要となる。
そこで、行政刷新会議(平成21年11月13日)では、普通交付税の算定方式を簡素化すべきという指摘がなされた。算定方式の見直しについて基準財政需要額と乖離するとして地方の反発があるが、基準財政需要額ではなく人口と面積に基く方式ならば乖離は小さく代替可能であるとした。
◆財政調整機能への特化
地方交付税は本来、地方公共団体間の財政格差を是正し、地方税収の少ない団体にも一般財源を保障するための仕組みである。従って財政調整と財政保障というふたつの機能を持つが、行過ぎた財政保障によって地方公共団体が財政規律を保つインセンティブが失われているという指摘がある。そこで交付税の財政保障機能を縮小し、財政調整機能に特化すべきという主張がなされている。
地方の一般財源が保障されていないのであれば、各地方公共団体が課税自主権を発揮するか、歳出削減を行うことにより健全な財政規律を働かせることが出来るとされる。
◆破綻法制の整備
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