最終更新: text_filing 2010年02月09日(火) 05:47:26履歴
Lovers.-after days-(後編) ◆KARsW3gC4M
「お、おぉっ…冷たいな意外と、まあ全身が浸かったら慣れるけどな」
プールサイドに腰掛けたりゅーじくんが、足を水の中に入れて呟いた。
「へっへっへ!お兄さんよぅ、そんな事を言っていられるのは今の内だけだべ〜」
私は両手の指をワキワキと蠢かせながら、ゆっくり近付いていく。
立ち泳ぎしつつ右に左に、ジグザグに進んで…。
「スキありっ!!てやぁっっ!!!」
「おわぁっ!?」
そして彼の身体が射程内に入った所で、足首を掴んで一気にプール内へと引き摺り込む。
りゅーじくんが叫び声と共に盛大な水飛沫を上げた。
「冷たっ!!てか、尻が擦れたぞっ!?地味に痛ぇ!」
もちろん、そのままほの暗い水の底に御連れする訳にはいかない。
だから全身が水の中に浸かったら手を離す。
彼の悲痛な叫びに
『ちょっとやり方が強引だったかな?』
とか思いつつも、ようやく『練習』が出来る期待に私は胸を躍らせる。
「ややっ!それはいかんですなぁ、どれどれちょいと実乃梨さんに見せてみなされ」
彼と身体一つ分の距離を開けて相対し、お尻に向かって手を伸ばす。
いや、マジで擦り傷とか出来てたら申し訳無いしね。
同時にスキンシップも兼ねている。
無駄無く動くのは基本だよん。
「お、おうっ!?」
私の右手がお尻に触れると、りゅーじくんが身体をビクッと震わせた。
「ふ〜む…何処にも傷とかは無いね、いやいや、もっと触診しないと分からないなぁ〜」
人差し指をスッと滑らせ、続いて手の平で優しく撫でる。
愛でる様に、優しく優し〜く…サワサワしてみる。
「み、実乃、梨っ!ちょっ!大丈夫!もう痛みは引いたからっ!!」
りゅーじくんは、その愛撫じみた『触診』がくすぐったいのだろう。
慌てて私から離れようとする、そんな可愛い反応をされると…楽しくなってくる。
「こらぁっ!!動くでない!…はっ!?ま、まさか反対側かっ、くぅっ!気付かなかったぜいっ、早速確かめないと」
私は両手でお尻を鷲掴みしてモミモミ…おぉ、柔らかいのう柔らかいのう。
「お、おい!や、やめっ!?…っふ!ヤ、ヤバい!マジでヤバいからっ!!」
すると彼が手足をバタつかせて抵抗する。
もう楽しくて楽しくて仕方無い。
「そうだよ、ヤバいんだ!りゅーじくんのお尻が傷物になんてなったら大変だっ!」
実は彼が言うところの『ヤバい』が何であるかは見当がついている。
つまりは、りゅーじくんの御子息が『おっきおっき』してしまいそうなのだろう。
こう見えても櫛枝さんはりゅーじくんの事に関しては名探偵ですから、隠しても無駄さ。
「んんっ!?りゅーじきゅん…これは大変だっ!まだ完璧に体操が終わって無いじゃないか!ここの筋肉が硬くなっているよ?」
身体をピッタリと密着させ、お腹に目覚めつつあるおちんちんを擦り付けてから私はそう言った。
「だから言ったじゃねぇかよ…ヤバいって」
りゅーじくんが弱々しい声で呟き、抵抗を止める。
「うんうん、確かにヤバいね"これは"…。水の中じゃ抵抗になって溺れてしまうかも」
私は唇の端を僅かに上げてニヤニヤ顔で彼に問い掛ける。
身体を更にピッタリ寄せておちんちんを圧迫しつつ、左右にグリグリと擦り付ける。
わざとらしく、 それでいて心配そうな言葉を紡いで…意地悪してみる。
「っん!み、実乃梨ぃ…っ」
お尻をサワサワ、お腹でグリグリ。右足の太股でりゅーじくんの太股を引き寄せて、上目遣いでジッと顔を見詰めてあげる。
りゅーじくんは好きなんだ…こうやって手足を絡み付かせて見詰められるのが。
幽霊が見えるまでは、まさか自分がこんな事が出来るなんて思ってもみなかった。
りゅーじくんのおかげだね。
お礼代わりに、彼が根負けするまで止めないでいてあげる。
たま〜に甘い啼き声とかを出しながら、一枚づつ理性を剥いでいって『やる気』を出させてあげようじゃないか。
「ひぇっひぇっひぇっ…おかしいなぁ、ふ…ぅ
だんだんココの筋肉…つっていってるっていうか、んん…腫れてきた?」
「…うぅ…実乃梨が腫らさせたんだよ…、ん」
私達が戯れ逢って生じた波がプールサイドに当たる音と、りゅーじくんの気持ち良さそうな呻き、そして…発情していく私の甘い声。
車の音や蝉の声、色んな音もある筈だけど、私には聞こえない。
「ん…は…、りゅーじくん…」
お尻から背中に手を動かしてギュッと強く抱き締める。
するとりゅーじくんも私を抱き返してくれて…燻っていくの。
トクントクン…って心臓の鼓動が速く、高く…身体がポカポカしてくる。
彼の首筋に顔を埋めて鼻を押し当てると、ちょっとだけ汗臭い。
でも…私は好きだな。りゅーじくんの匂い。
全部…好き、大好き。
「は…ぅ。んんっ、あ…」
彼の手が背中から下に滑っていく。触れるか触れないか位のもどかしい手つきで。
行き着く先が分かっているから…私は期待してしまう。
そして彼の手がお尻に触れた瞬間、ちょっぴり気持ち良くて甘い声が出た。
「あ…。ふふっ、そこからなんだ?」
予想していた位置より下。太股でりゅーじくんが手を止め、優しく撫で始める。
「実乃梨のここ、柔らかくて好きなんだよ。…駄目か?」
頭一つ上から聞こえる優しい声。私は顔を上げずに俯いたままで聞く。
照れちゃって顔なんか見れないよ…。
「良いよ…、いっぱい触って?」
首筋に顔を埋めたままそう返して、私は彼に身を委ねる。
「あ…、ふ。……ん」
膝裏の方からお尻まで五指が滑る。くすぐったくてゾクゾクする感覚。
僅かに身を捩らせて逃れようとしても、りゅーじくんは追ってくる。
「んあ、あ、あ…うぅ」
指が蠢き、揉み、掴んで、その度に私は啼く。
何とも言えない心地良い感覚だけが徐々に私を包んでいく。
そして、私の手がおちんちんに伸びていくのは自然な事だった。
硬く、熱くなった『りゅーじくん』を根元からゆっくり搾る。
人差し指と親指で作った輪で、下から上に…。そして再び下へ…。
『もっと元気になぁれ』
そんな気持ちを込めてさ。
「は、あ…りゅーじきゅんの息子さん、すっごくおっきくなってる。
…ねぇ、気持ち良いかい?」
「ん…そりゃあ…な。でもやっぱり…」
そう言って、りゅーじくんが…内太股に手を滑らせていって、ゆっくりゆっくり…焦らす様に上の方に迫ってくる。
「んん…っ、直球だね。……りゅーじくん…我慢出来ない?
……挿入たい?」
お尻はスルーして、そのまま指を滑り込ませ、大事な所にあてがわれる。
そりゃあ『外』で長々と時間を掛ける訳にはいかないし、まあ…うん、だから聞いてみたのだ。
『ほんの少し戯れるだけ』で満足出来るのか?と…。
「おう。今すぐにでも…な」
彼の中指が触れ『入口』の周りを押す。
でも準備は出来てなんか無いから当然、挿入るのは無理な訳で。
「あふ…、そ、それじゃあ仕方無いね、我慢出来ないなら。ん…ぅ。ほれ、ちょっくら御手を拝借」
そう…仕方無いのだ。…だったら『手助け』してあげる。
少しでも早く『練習』出来る様に…。
私は下腹部をまさぐる彼の手を掴んで、自分の胸の前まで持ってくる。
「何だ、その…急すぎたか?」
私が愛撫を止めさせた事を勘違いしたのか、彼は申し訳無さそうに紡ぐ。
「違うよ〜、すぐにしたいなら、こうしたらさ……、んっ」
そのまま彼の手の平を揉みながら、顔の前へ…。
そして、りゅーじくんの中指と薬指を口に含む…。
「ん…む、ちゅくっ。ちゅっ!ちゅぱ」
唾液を絡ませた舌を這わせて、馴染ませていく。
『滑り』を良くする為に…。
節立ってゴツゴツした指……なんだかんだ言っても男の子らしい指。
私はそれを『美味しい』と思ってしまう。
りゅーじくんの味…なんだって。
そう思うと…お腹の奥がキュンッてするんだ。
おちんちんも良いけど、指も結構気持ち良いんだ…。
「ちゅっ!ん、あ…。くちゅ」
右手でおちんちんを揉みながら、りゅーじくんの指を舐め回す。
舌先で彼を辿り、余すことなく… はしたない音を発てながら…。
この状況に私は発情していく。
そう。物欲しそうに彼の指にむしゃぶり付いている自分の姿に…。
「んふ、ふふ♪ねっ?これなら大丈夫ですぜ」
たっぷり唾液を絡ませた後、口内から指を離して…また水の中へ。
一直線に『触られたい部分』まで誘導し、甘えた声でおねだりする。
「りゅーじきゅんが…早く欲しいよぅ。だから……キモチイイ事して…」
「お、おぅ。じゃあ挿入るから」
そう言うと、りゅーじくんが優しい指遣いで挿入てくれる。
「ん、あ…。んっ……ふぁ」
やっぱり『付け焼き刃』だとちょっぴり引っ掛かって痛い。
でも…それは少しだけの間我慢すれば良い。
「ん!う…、あ…!あっ!!」
りゅーじくんが根元まで指を挿入て、優しく擦る。
ゾクッとする痺れが走り、私は身体を震わせる。
全部、受け入れてしまえば意外と楽なんだ…。
ちょっとだけ気持ち良い…かな。
「んあ…、あ…あんっ、くふぅっ」
両腕を彼の首に回して身を委ねる。
ギュッとしがみついて、りゅーじくんに甘える。
優しく小刻みに膣内が掻き回され、だんだんと身体が熱くなっていく。
涼しい水の中なのに…まるで、お風呂の中に居るみたい。
「どうだ?キツくねぇか?……おぅ」
そんな気遣いに私は更に身体を寄せて答える。
「大丈夫…だけど、足が疲れちゃった…。しがみついても良い…かなぁ」
そう言った時には、既に彼の腰に足を絡ませてしがみついていたりする。
「って、もうしてるじゃねぇか。けど、このままだと直に俺も疲れそうだし、……そうだ」
そう言うと彼は私を抱いたまま、プールサイドの方に寄る。
そして波打ち際にもたれ掛かって口を開く。
「これなら疲れねぇ」
「さっすがりゅーじきゅんだっ、賢いねぇ〜」
満足気に言った彼が可愛くて、私は右手で彼の髪を手櫛して…そのまま後頭部を押して自分の方へ抱き寄せる。
「ご褒美…」
私は彼の唇に甘く吸い付く。
上唇を甘噛み、舌先を口内に潜らせて誘う。
「ん、んん…っ、あ…っ、んむ」
誘い出そうとした舌はすぐに捕えられ、愛撫する指が膣壁を抉る。
うん、まるで指圧みたい…だね。私の膣内をモミモミ…スケベな事をする。
重ねた唇から漏れる私の甘い声、それすら逃がさないと言わんばかりに、りゅーじくんは顔をずらして舌を絡ませてくる。
「んっ、ん、あ…。はあ…あ、む。ちゅく」
彼の口内へ手繰り寄せられ、軽く吸われる。
唾液を含まされ、舌先で弾かれ、重なる。
膣内で小刻みに擦り付けられる指が曲げろれ、少しずつ抜かれ、また挿入ってくる。
「あぅ…、あふ!んっ!んうぅ、ふっ!」
二本の指が私をまさぐる…。拡げ、押し、擦られて、弾かれる。
淡いけど…身体の奥底から熱く蕩かされる快感。
私は夢中でりゅーじくんをねぶる、口内に舌を引き寄せて、強く絡ませる。
「んっ…う!は…、あ、んくっ!」
送られる唾液を飲み込み、戯れ合う舌先でチロチロと挑発して…悪戯もしてみる。
「っ…、て…。実乃梨…噛むなよ」
「んう?いやぁ、美味しそうだからついついね」
犬歯で少し強めに彼の舌を噛んだ後、悪びれた様子も無しに私は微笑んでみせる。
そう。ちょっとした悪戯だから怒らないでよ。
「そうか。…倍にして返してやるよ」
そんな私の態度を見て、りゅーじくんは意地悪な笑みを浮かべつつ頬を寄せる。
「んあ…。あ、ちょ…ひゃっ!」
そのまま頬を擦り寄せるのかと思っていたら、りゅーじくん…舐めてきたの。耳たぶを…。
私が耳、弱いの知ってて…気持ち良くておっきな声が出るの知ってて、外なのに…してくる。
「んんっ!!あふっ!!だ、めだよぅっ…ひうっ!!」
同時に二指で膣内を掻き回される。
円を描く様に、そして強く強く叩き込まれ…私は溶かされる。
「んうぅっっ!!!ふっ!!ああぁっ…ひ!!」
暖くて柔らかい舌が耳をくすぐり、吐息を断続的に吹かれる。
その快感から背中が反って、腰から首筋までゾクゾクとした震えが走り抜ける。
大きな喘ぎを彼の首に口を当てて抑えようとする。
でも…でもね『意地悪りゅーじくん』はおイタをした私を許してくれない。
「はっ!はうぅ…、ひあうぅっっ!!り、りゅーじくんっっ!!ひっ!?」
ねっとり這う舌、ガツガツと荒々しく貫く指…更に一つ刺激が加わる。
器用に親指の腹で『敏感な部分』を転がすのだ。
腰が砕けそうになる強い刺激を与えられ、私は彼を抱く力を強めて抗う。
「実乃梨…もう"トロトロ"だぞ?」
「や、あぁ…!り、りゅーじくんのせいだよっ、あんっ!!」
私の身体の変化を強調して言われ、羞恥に身体も顔も熱くほてっていく。
「いや違うだろ、いつもより早いし……おぅ、そうか実乃梨もしかして…」
『外でするの癖になって……堪らなくなっているのか』
そう耳元で意地悪な事を囁かれ、黙り通そうとしても身体はピクンと正直に返事してしまう。
「くふぅっ!!ふっ!そ、そうだよ!!ちきしょーめ!!全部、変態りゅーじくんが悪いんだっ!!」
そう言われたのが妙に悔しい。
私は彼と合わせた頬を離し、両手で肩を掴んで吠える。
私はただ、りゅーじくんと甘々ラブラブするのが好き……そう思いたかったのに…。
その言葉に自覚してしまったのだ、彼だけでは無く私も『変態』なのだと……あ、いや別に痴女って訳じゃ無いっすよ。
もちろん、りゅーじくんとなら『変態』になれるという限定付きだけどさ。
急に吠えた私に面食らった顔の彼を見やる。
「嫁入り前の無垢な娘さんをこんなにしおって!判決…はい!有罪っ!よって責任を取れい!!」
悔しい×羞恥=頭が真っ白
よって私は訳の分からない事を彼に対して口走ってしまう。
「お、おぉうっ!!分かった!言い過ぎたっ!!
すまん!ひとまず落ち着け!深呼吸だ深呼吸っ…ほらヒッヒッフーッ!!」
混乱した様子だが彼は私に謝罪し、宥めようとする。
「ラマーズっ…こらぁっ!!そういう事をしなけりゃいけない状況に、りゅーじきゅんはしたいかっ!
ひゃっひゃっ!このド鬼畜め!」
「させてぇよ!!…じゃなくて俺は鬼畜じゃねぇ!!」
「なにおぅっ!って……おふぅっ!?…あひゃあぁあ〜」
良い感じにトランスってきた所で、さり気なく彼が紡いだ爆弾発言に私の暴走モードは終了し、身体から力が抜ける。
頭が沸騰し、クラクラして…彼の言葉が鳴り響く。
『させてぇよ!』
って…そりゃあアレかい?………つまり赤ちゃん?
「おう!そうだよ!責任ならしっかり取る!実乃梨が夢を実現させた後で良いから………
俺の嫁に来いっ!!」
と、ガツンって言われちゃって私は一撃ノックダウン。
これはプロポーズ……絶対プロポーズだ!
だって嫁だよ?嫁!お嫁さん!
『実乃梨は俺の嫁』
と真顔でりゅーじくんが言う姿が再生される。
混乱する思考……それでも言われた事に対して脳内会議は全会一致で採決する。
「お、おうっ!おうよ!!わ、わわ私、嫁になるぜ!!
りゅーじくんのお嫁さんっ!!
不束者ですがよろしゅう頼んますぅ!……でっ!?」
「あがっ!?」
慌てふためきながら深々とお辞儀したら彼の鼻っ面に頭突きしてしまう。
りゅーじくんの悲痛な呻きと共に一瞬、目の前を火花が散って我に返る。
「おぉ…重ね重ねごめんよう!痛かったよね?」
私は鼻を押さえる彼の手を持ってうろたえる。
「だ、大丈夫だ…。それより今言った事な……本気だから」
「え、あ…、う、うん!」
呻く様に彼が呟き、続いて真剣な表情になって……そう言ってくれたんだ。
「今すぐ…一年とか二年じゃ無理だろうけど、実乃梨が夢を叶えて、納得出来るまでやり遂げたら…
それからのお前の人生を俺にくれよ」
手をギュッと握って、りゅーじくんが紡ぐ。
これ以上無いという程の幸せで、熱の籠った求愛の言葉を…。
照れを通り越して、惚けてしまいそうな心地良い言葉。
紡ぐ言葉が出なくて、私は深く頷いて返す。
この気持ちは言葉でなんて言い表せない。
気持ちが舞い上がって、心臓がエイトビートより速く脈打つ…。
私は彼にしっかり抱き付いて顔を首筋に埋める。
落ち着きの良い場所を探ってグリグリと鼻を押し当て…ただ一言、ようやく想いを告げれる言葉を見付けた。
「…しっかり、ギュッて掴んでてくれなきゃ逃げ出しちゃうよ?
嬉しくて…信じれなくて…幸せで、怖くて……私は弱いから」
「おぅ、ずっと掴んでいてやる。…離せって言ったって絶対に離さねぇよ」
りゅーじくんが私を強く抱き返し、手に指を絡ませて握ってくれる。
「…約束だよ」
そして私も手を握り返して、暫く時間を置いた後、迷い無く伝える。
「今日は"練習"じゃなくて………良いよ?
赤ちゃん……造る練習じゃなくて………本当に…………」
そこまで言って、唇をりゅーじくんの耳元に近付けて紡ぐ。
「今日は…………だから、それに夢はいつか繋がるよ…、…………で、しよっ?」
...
..
.
あの時、彼に紡いだ言葉は内緒。
誰にも教えない、二人だけの秘密。
今思えば、あれが本当の意味で契機だったんだ。
夢が一つから二つへ…時間が経つ毎に増えていって、叶えるのに四苦八苦したっけ。
でも残さず叶えていった。りゅーじくんと一緒に…さ。
そして残すは一つだけになった。
「……ふう…」
私は大きくなったお腹を擦りながら、手に持った洗濯籠を床に置く。
もう二月もすれば叶うんだ。少女だった頃の私の夢が…ふふ。
何だかんだ十年待たせて、時にすれ違って邂逅し、仲を深めて…今の私が居るんだ。
名字が『櫛枝』から『高須』に変わって、二人家族から三人家族になろうとしている。
「ねぇ?パパはお仕事頑張ってるかなぁ?………うひゃ」
そう問うと、一撃…お腹の中から蹴られる。
そんな返事をくれた愛しい我が子を撫で、私は晴れ渡った青空を眺める。
汗ばむ陽気の中、私は一昔前の色褪せない記憶を思い出して想いに耽る。
あの日から、りゅーじくんと私は本当の意味で恋人になれたんだと想う。
『会う』が『逢う』になって……変な照れも徐々に無くなっていって……全てが繋がったんだ。
うん。そして今に至る。
そう。あの暑い夜、私達は正真正銘の
『Lovers.』
になれたんだ。
終わり
「お、おぉっ…冷たいな意外と、まあ全身が浸かったら慣れるけどな」
プールサイドに腰掛けたりゅーじくんが、足を水の中に入れて呟いた。
「へっへっへ!お兄さんよぅ、そんな事を言っていられるのは今の内だけだべ〜」
私は両手の指をワキワキと蠢かせながら、ゆっくり近付いていく。
立ち泳ぎしつつ右に左に、ジグザグに進んで…。
「スキありっ!!てやぁっっ!!!」
「おわぁっ!?」
そして彼の身体が射程内に入った所で、足首を掴んで一気にプール内へと引き摺り込む。
りゅーじくんが叫び声と共に盛大な水飛沫を上げた。
「冷たっ!!てか、尻が擦れたぞっ!?地味に痛ぇ!」
もちろん、そのままほの暗い水の底に御連れする訳にはいかない。
だから全身が水の中に浸かったら手を離す。
彼の悲痛な叫びに
『ちょっとやり方が強引だったかな?』
とか思いつつも、ようやく『練習』が出来る期待に私は胸を躍らせる。
「ややっ!それはいかんですなぁ、どれどれちょいと実乃梨さんに見せてみなされ」
彼と身体一つ分の距離を開けて相対し、お尻に向かって手を伸ばす。
いや、マジで擦り傷とか出来てたら申し訳無いしね。
同時にスキンシップも兼ねている。
無駄無く動くのは基本だよん。
「お、おうっ!?」
私の右手がお尻に触れると、りゅーじくんが身体をビクッと震わせた。
「ふ〜む…何処にも傷とかは無いね、いやいや、もっと触診しないと分からないなぁ〜」
人差し指をスッと滑らせ、続いて手の平で優しく撫でる。
愛でる様に、優しく優し〜く…サワサワしてみる。
「み、実乃、梨っ!ちょっ!大丈夫!もう痛みは引いたからっ!!」
りゅーじくんは、その愛撫じみた『触診』がくすぐったいのだろう。
慌てて私から離れようとする、そんな可愛い反応をされると…楽しくなってくる。
「こらぁっ!!動くでない!…はっ!?ま、まさか反対側かっ、くぅっ!気付かなかったぜいっ、早速確かめないと」
私は両手でお尻を鷲掴みしてモミモミ…おぉ、柔らかいのう柔らかいのう。
「お、おい!や、やめっ!?…っふ!ヤ、ヤバい!マジでヤバいからっ!!」
すると彼が手足をバタつかせて抵抗する。
もう楽しくて楽しくて仕方無い。
「そうだよ、ヤバいんだ!りゅーじくんのお尻が傷物になんてなったら大変だっ!」
実は彼が言うところの『ヤバい』が何であるかは見当がついている。
つまりは、りゅーじくんの御子息が『おっきおっき』してしまいそうなのだろう。
こう見えても櫛枝さんはりゅーじくんの事に関しては名探偵ですから、隠しても無駄さ。
「んんっ!?りゅーじきゅん…これは大変だっ!まだ完璧に体操が終わって無いじゃないか!ここの筋肉が硬くなっているよ?」
身体をピッタリと密着させ、お腹に目覚めつつあるおちんちんを擦り付けてから私はそう言った。
「だから言ったじゃねぇかよ…ヤバいって」
りゅーじくんが弱々しい声で呟き、抵抗を止める。
「うんうん、確かにヤバいね"これは"…。水の中じゃ抵抗になって溺れてしまうかも」
私は唇の端を僅かに上げてニヤニヤ顔で彼に問い掛ける。
身体を更にピッタリ寄せておちんちんを圧迫しつつ、左右にグリグリと擦り付ける。
わざとらしく、 それでいて心配そうな言葉を紡いで…意地悪してみる。
「っん!み、実乃梨ぃ…っ」
お尻をサワサワ、お腹でグリグリ。右足の太股でりゅーじくんの太股を引き寄せて、上目遣いでジッと顔を見詰めてあげる。
りゅーじくんは好きなんだ…こうやって手足を絡み付かせて見詰められるのが。
幽霊が見えるまでは、まさか自分がこんな事が出来るなんて思ってもみなかった。
りゅーじくんのおかげだね。
お礼代わりに、彼が根負けするまで止めないでいてあげる。
たま〜に甘い啼き声とかを出しながら、一枚づつ理性を剥いでいって『やる気』を出させてあげようじゃないか。
「ひぇっひぇっひぇっ…おかしいなぁ、ふ…ぅ
だんだんココの筋肉…つっていってるっていうか、んん…腫れてきた?」
「…うぅ…実乃梨が腫らさせたんだよ…、ん」
私達が戯れ逢って生じた波がプールサイドに当たる音と、りゅーじくんの気持ち良さそうな呻き、そして…発情していく私の甘い声。
車の音や蝉の声、色んな音もある筈だけど、私には聞こえない。
「ん…は…、りゅーじくん…」
お尻から背中に手を動かしてギュッと強く抱き締める。
するとりゅーじくんも私を抱き返してくれて…燻っていくの。
トクントクン…って心臓の鼓動が速く、高く…身体がポカポカしてくる。
彼の首筋に顔を埋めて鼻を押し当てると、ちょっとだけ汗臭い。
でも…私は好きだな。りゅーじくんの匂い。
全部…好き、大好き。
「は…ぅ。んんっ、あ…」
彼の手が背中から下に滑っていく。触れるか触れないか位のもどかしい手つきで。
行き着く先が分かっているから…私は期待してしまう。
そして彼の手がお尻に触れた瞬間、ちょっぴり気持ち良くて甘い声が出た。
「あ…。ふふっ、そこからなんだ?」
予想していた位置より下。太股でりゅーじくんが手を止め、優しく撫で始める。
「実乃梨のここ、柔らかくて好きなんだよ。…駄目か?」
頭一つ上から聞こえる優しい声。私は顔を上げずに俯いたままで聞く。
照れちゃって顔なんか見れないよ…。
「良いよ…、いっぱい触って?」
首筋に顔を埋めたままそう返して、私は彼に身を委ねる。
「あ…、ふ。……ん」
膝裏の方からお尻まで五指が滑る。くすぐったくてゾクゾクする感覚。
僅かに身を捩らせて逃れようとしても、りゅーじくんは追ってくる。
「んあ、あ、あ…うぅ」
指が蠢き、揉み、掴んで、その度に私は啼く。
何とも言えない心地良い感覚だけが徐々に私を包んでいく。
そして、私の手がおちんちんに伸びていくのは自然な事だった。
硬く、熱くなった『りゅーじくん』を根元からゆっくり搾る。
人差し指と親指で作った輪で、下から上に…。そして再び下へ…。
『もっと元気になぁれ』
そんな気持ちを込めてさ。
「は、あ…りゅーじきゅんの息子さん、すっごくおっきくなってる。
…ねぇ、気持ち良いかい?」
「ん…そりゃあ…な。でもやっぱり…」
そう言って、りゅーじくんが…内太股に手を滑らせていって、ゆっくりゆっくり…焦らす様に上の方に迫ってくる。
「んん…っ、直球だね。……りゅーじくん…我慢出来ない?
……挿入たい?」
お尻はスルーして、そのまま指を滑り込ませ、大事な所にあてがわれる。
そりゃあ『外』で長々と時間を掛ける訳にはいかないし、まあ…うん、だから聞いてみたのだ。
『ほんの少し戯れるだけ』で満足出来るのか?と…。
「おう。今すぐにでも…な」
彼の中指が触れ『入口』の周りを押す。
でも準備は出来てなんか無いから当然、挿入るのは無理な訳で。
「あふ…、そ、それじゃあ仕方無いね、我慢出来ないなら。ん…ぅ。ほれ、ちょっくら御手を拝借」
そう…仕方無いのだ。…だったら『手助け』してあげる。
少しでも早く『練習』出来る様に…。
私は下腹部をまさぐる彼の手を掴んで、自分の胸の前まで持ってくる。
「何だ、その…急すぎたか?」
私が愛撫を止めさせた事を勘違いしたのか、彼は申し訳無さそうに紡ぐ。
「違うよ〜、すぐにしたいなら、こうしたらさ……、んっ」
そのまま彼の手の平を揉みながら、顔の前へ…。
そして、りゅーじくんの中指と薬指を口に含む…。
「ん…む、ちゅくっ。ちゅっ!ちゅぱ」
唾液を絡ませた舌を這わせて、馴染ませていく。
『滑り』を良くする為に…。
節立ってゴツゴツした指……なんだかんだ言っても男の子らしい指。
私はそれを『美味しい』と思ってしまう。
りゅーじくんの味…なんだって。
そう思うと…お腹の奥がキュンッてするんだ。
おちんちんも良いけど、指も結構気持ち良いんだ…。
「ちゅっ!ん、あ…。くちゅ」
右手でおちんちんを揉みながら、りゅーじくんの指を舐め回す。
舌先で彼を辿り、余すことなく… はしたない音を発てながら…。
この状況に私は発情していく。
そう。物欲しそうに彼の指にむしゃぶり付いている自分の姿に…。
「んふ、ふふ♪ねっ?これなら大丈夫ですぜ」
たっぷり唾液を絡ませた後、口内から指を離して…また水の中へ。
一直線に『触られたい部分』まで誘導し、甘えた声でおねだりする。
「りゅーじきゅんが…早く欲しいよぅ。だから……キモチイイ事して…」
「お、おぅ。じゃあ挿入るから」
そう言うと、りゅーじくんが優しい指遣いで挿入てくれる。
「ん、あ…。んっ……ふぁ」
やっぱり『付け焼き刃』だとちょっぴり引っ掛かって痛い。
でも…それは少しだけの間我慢すれば良い。
「ん!う…、あ…!あっ!!」
りゅーじくんが根元まで指を挿入て、優しく擦る。
ゾクッとする痺れが走り、私は身体を震わせる。
全部、受け入れてしまえば意外と楽なんだ…。
ちょっとだけ気持ち良い…かな。
「んあ…、あ…あんっ、くふぅっ」
両腕を彼の首に回して身を委ねる。
ギュッとしがみついて、りゅーじくんに甘える。
優しく小刻みに膣内が掻き回され、だんだんと身体が熱くなっていく。
涼しい水の中なのに…まるで、お風呂の中に居るみたい。
「どうだ?キツくねぇか?……おぅ」
そんな気遣いに私は更に身体を寄せて答える。
「大丈夫…だけど、足が疲れちゃった…。しがみついても良い…かなぁ」
そう言った時には、既に彼の腰に足を絡ませてしがみついていたりする。
「って、もうしてるじゃねぇか。けど、このままだと直に俺も疲れそうだし、……そうだ」
そう言うと彼は私を抱いたまま、プールサイドの方に寄る。
そして波打ち際にもたれ掛かって口を開く。
「これなら疲れねぇ」
「さっすがりゅーじきゅんだっ、賢いねぇ〜」
満足気に言った彼が可愛くて、私は右手で彼の髪を手櫛して…そのまま後頭部を押して自分の方へ抱き寄せる。
「ご褒美…」
私は彼の唇に甘く吸い付く。
上唇を甘噛み、舌先を口内に潜らせて誘う。
「ん、んん…っ、あ…っ、んむ」
誘い出そうとした舌はすぐに捕えられ、愛撫する指が膣壁を抉る。
うん、まるで指圧みたい…だね。私の膣内をモミモミ…スケベな事をする。
重ねた唇から漏れる私の甘い声、それすら逃がさないと言わんばかりに、りゅーじくんは顔をずらして舌を絡ませてくる。
「んっ、ん、あ…。はあ…あ、む。ちゅく」
彼の口内へ手繰り寄せられ、軽く吸われる。
唾液を含まされ、舌先で弾かれ、重なる。
膣内で小刻みに擦り付けられる指が曲げろれ、少しずつ抜かれ、また挿入ってくる。
「あぅ…、あふ!んっ!んうぅ、ふっ!」
二本の指が私をまさぐる…。拡げ、押し、擦られて、弾かれる。
淡いけど…身体の奥底から熱く蕩かされる快感。
私は夢中でりゅーじくんをねぶる、口内に舌を引き寄せて、強く絡ませる。
「んっ…う!は…、あ、んくっ!」
送られる唾液を飲み込み、戯れ合う舌先でチロチロと挑発して…悪戯もしてみる。
「っ…、て…。実乃梨…噛むなよ」
「んう?いやぁ、美味しそうだからついついね」
犬歯で少し強めに彼の舌を噛んだ後、悪びれた様子も無しに私は微笑んでみせる。
そう。ちょっとした悪戯だから怒らないでよ。
「そうか。…倍にして返してやるよ」
そんな私の態度を見て、りゅーじくんは意地悪な笑みを浮かべつつ頬を寄せる。
「んあ…。あ、ちょ…ひゃっ!」
そのまま頬を擦り寄せるのかと思っていたら、りゅーじくん…舐めてきたの。耳たぶを…。
私が耳、弱いの知ってて…気持ち良くておっきな声が出るの知ってて、外なのに…してくる。
「んんっ!!あふっ!!だ、めだよぅっ…ひうっ!!」
同時に二指で膣内を掻き回される。
円を描く様に、そして強く強く叩き込まれ…私は溶かされる。
「んうぅっっ!!!ふっ!!ああぁっ…ひ!!」
暖くて柔らかい舌が耳をくすぐり、吐息を断続的に吹かれる。
その快感から背中が反って、腰から首筋までゾクゾクとした震えが走り抜ける。
大きな喘ぎを彼の首に口を当てて抑えようとする。
でも…でもね『意地悪りゅーじくん』はおイタをした私を許してくれない。
「はっ!はうぅ…、ひあうぅっっ!!り、りゅーじくんっっ!!ひっ!?」
ねっとり這う舌、ガツガツと荒々しく貫く指…更に一つ刺激が加わる。
器用に親指の腹で『敏感な部分』を転がすのだ。
腰が砕けそうになる強い刺激を与えられ、私は彼を抱く力を強めて抗う。
「実乃梨…もう"トロトロ"だぞ?」
「や、あぁ…!り、りゅーじくんのせいだよっ、あんっ!!」
私の身体の変化を強調して言われ、羞恥に身体も顔も熱くほてっていく。
「いや違うだろ、いつもより早いし……おぅ、そうか実乃梨もしかして…」
『外でするの癖になって……堪らなくなっているのか』
そう耳元で意地悪な事を囁かれ、黙り通そうとしても身体はピクンと正直に返事してしまう。
「くふぅっ!!ふっ!そ、そうだよ!!ちきしょーめ!!全部、変態りゅーじくんが悪いんだっ!!」
そう言われたのが妙に悔しい。
私は彼と合わせた頬を離し、両手で肩を掴んで吠える。
私はただ、りゅーじくんと甘々ラブラブするのが好き……そう思いたかったのに…。
その言葉に自覚してしまったのだ、彼だけでは無く私も『変態』なのだと……あ、いや別に痴女って訳じゃ無いっすよ。
もちろん、りゅーじくんとなら『変態』になれるという限定付きだけどさ。
急に吠えた私に面食らった顔の彼を見やる。
「嫁入り前の無垢な娘さんをこんなにしおって!判決…はい!有罪っ!よって責任を取れい!!」
悔しい×羞恥=頭が真っ白
よって私は訳の分からない事を彼に対して口走ってしまう。
「お、おぉうっ!!分かった!言い過ぎたっ!!
すまん!ひとまず落ち着け!深呼吸だ深呼吸っ…ほらヒッヒッフーッ!!」
混乱した様子だが彼は私に謝罪し、宥めようとする。
「ラマーズっ…こらぁっ!!そういう事をしなけりゃいけない状況に、りゅーじきゅんはしたいかっ!
ひゃっひゃっ!このド鬼畜め!」
「させてぇよ!!…じゃなくて俺は鬼畜じゃねぇ!!」
「なにおぅっ!って……おふぅっ!?…あひゃあぁあ〜」
良い感じにトランスってきた所で、さり気なく彼が紡いだ爆弾発言に私の暴走モードは終了し、身体から力が抜ける。
頭が沸騰し、クラクラして…彼の言葉が鳴り響く。
『させてぇよ!』
って…そりゃあアレかい?………つまり赤ちゃん?
「おう!そうだよ!責任ならしっかり取る!実乃梨が夢を実現させた後で良いから………
俺の嫁に来いっ!!」
と、ガツンって言われちゃって私は一撃ノックダウン。
これはプロポーズ……絶対プロポーズだ!
だって嫁だよ?嫁!お嫁さん!
『実乃梨は俺の嫁』
と真顔でりゅーじくんが言う姿が再生される。
混乱する思考……それでも言われた事に対して脳内会議は全会一致で採決する。
「お、おうっ!おうよ!!わ、わわ私、嫁になるぜ!!
りゅーじくんのお嫁さんっ!!
不束者ですがよろしゅう頼んますぅ!……でっ!?」
「あがっ!?」
慌てふためきながら深々とお辞儀したら彼の鼻っ面に頭突きしてしまう。
りゅーじくんの悲痛な呻きと共に一瞬、目の前を火花が散って我に返る。
「おぉ…重ね重ねごめんよう!痛かったよね?」
私は鼻を押さえる彼の手を持ってうろたえる。
「だ、大丈夫だ…。それより今言った事な……本気だから」
「え、あ…、う、うん!」
呻く様に彼が呟き、続いて真剣な表情になって……そう言ってくれたんだ。
「今すぐ…一年とか二年じゃ無理だろうけど、実乃梨が夢を叶えて、納得出来るまでやり遂げたら…
それからのお前の人生を俺にくれよ」
手をギュッと握って、りゅーじくんが紡ぐ。
これ以上無いという程の幸せで、熱の籠った求愛の言葉を…。
照れを通り越して、惚けてしまいそうな心地良い言葉。
紡ぐ言葉が出なくて、私は深く頷いて返す。
この気持ちは言葉でなんて言い表せない。
気持ちが舞い上がって、心臓がエイトビートより速く脈打つ…。
私は彼にしっかり抱き付いて顔を首筋に埋める。
落ち着きの良い場所を探ってグリグリと鼻を押し当て…ただ一言、ようやく想いを告げれる言葉を見付けた。
「…しっかり、ギュッて掴んでてくれなきゃ逃げ出しちゃうよ?
嬉しくて…信じれなくて…幸せで、怖くて……私は弱いから」
「おぅ、ずっと掴んでいてやる。…離せって言ったって絶対に離さねぇよ」
りゅーじくんが私を強く抱き返し、手に指を絡ませて握ってくれる。
「…約束だよ」
そして私も手を握り返して、暫く時間を置いた後、迷い無く伝える。
「今日は"練習"じゃなくて………良いよ?
赤ちゃん……造る練習じゃなくて………本当に…………」
そこまで言って、唇をりゅーじくんの耳元に近付けて紡ぐ。
「今日は…………だから、それに夢はいつか繋がるよ…、…………で、しよっ?」
...
..
.
あの時、彼に紡いだ言葉は内緒。
誰にも教えない、二人だけの秘密。
今思えば、あれが本当の意味で契機だったんだ。
夢が一つから二つへ…時間が経つ毎に増えていって、叶えるのに四苦八苦したっけ。
でも残さず叶えていった。りゅーじくんと一緒に…さ。
そして残すは一つだけになった。
「……ふう…」
私は大きくなったお腹を擦りながら、手に持った洗濯籠を床に置く。
もう二月もすれば叶うんだ。少女だった頃の私の夢が…ふふ。
何だかんだ十年待たせて、時にすれ違って邂逅し、仲を深めて…今の私が居るんだ。
名字が『櫛枝』から『高須』に変わって、二人家族から三人家族になろうとしている。
「ねぇ?パパはお仕事頑張ってるかなぁ?………うひゃ」
そう問うと、一撃…お腹の中から蹴られる。
そんな返事をくれた愛しい我が子を撫で、私は晴れ渡った青空を眺める。
汗ばむ陽気の中、私は一昔前の色褪せない記憶を思い出して想いに耽る。
あの日から、りゅーじくんと私は本当の意味で恋人になれたんだと想う。
『会う』が『逢う』になって……変な照れも徐々に無くなっていって……全てが繋がったんだ。
うん。そして今に至る。
そう。あの暑い夜、私達は正真正銘の
『Lovers.』
になれたんだ。
終わり
タグ
コメントをかく