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133 :M☆Gアフター2 ◆9VH6xuHQDo:2009/12/05(土) 23:00:33 ID:.pcB9Eio




「はあ……」
 その青息吐息の主は他ならぬ高須竜児。今日は年の瀬押し迫った十二月二十三日、
午後四時。大橋高校グラウンドでは女子ソフトボール部の紅白戦が行われているの
であった。毎度毎度の事ながら竜児はフェンス裏で観戦しており、クリスマス会の
準備でバタバタしていている北村にかまってもらえない大河も久しぶりにその隣に
いるのだった。

「どうしたのよ竜児、ため息なんか吐いて。言ってごらんなさい。特別に聞いてあ
 げるから」
 クリスマス大っっっっ……好き! な大河は、お悩み中っぽい竜児のお悩み相談
を自らかって出るのであった。しかし竜児の歯切れは悪く、
「いや……下らねえことだし。言った所で解決すると思えん」
 そんなノリの悪い竜児に、大河は一瞬眉を吊り上がるが、すぐさまエンジェルス
マイルを作るのだ。
「悩み事に下らないも上らないもないのです。いいこと竜児。私、クリスマスはみ
 んなみんな、み〜んな、ハッピーになってほしいの。それが竜児でもねっ。ほら
 っ! 言ってごらんなさいってば。エンジェル大河さまが貴方のお悩みを一発解
 決してあげる! カモンっ」
 大河は指を立て、チョイチョイ引く。本当は野次馬根性だしてるだけじゃねえの
か? 疑惑を湧かしてしまう竜児であったが、せっかくだから大河の機嫌が良い内
に相談してみる事にするのだった。

「クリスマスに実乃梨へ何をプレゼントしようかなって悩んでてな……見てくれ。
 これは『付き合うことになって最初のクリスマスに贈るプレゼントはなににする
 か』というテーマで考えた時のメモだ。香水、にしてみた。正確にはオードトワ
 レという奴だ。ちゃんとブランドも候補を絞ったし、それらが売っている店から
 値段まで、全部調べて書いてある。しかし……」
「ええい知らん! 本当に下らないわっ! アホかっ! 気持ち悪いわ! 」
 大河は汚物のようにメモを丸めてブン投げようと、むしり取ったその瞬間だった。
メモと一緒にクリアファイルに隠していたブツが、大河の足元に滑り落ちていく。
「あっ! いけね……」
「……こっちはなによ。封筒?」
 大河に回収され、慌てて取り戻そうとした手が、一回り小さい手に一歩遅れ、む
なしく宙を踊って悶える。
「高須竜児より……櫛枝実乃梨さま……櫛枝実乃梨さま?」
「そ、それは……ちょっと、ちょっと待て、そっちは違っ」
「ラブレター? っていうか……みのりん宛て? あんたから? みのりんに?
 これも? これも?……あんたたち付き合ってどれくらい経ってると思ってんの
 よ……。はあ? いまさら感全開なんだけどっ! うーわ……あんたってやつは
 ……げえ!……嘘でしょ?」
 もはや否定の余地は残されていまい。大河の言う通り、付き合って半年、いまさ
ら出す予定のない、書くだけで満足していた三通の恋文が、すべて白日の下に晒さ
れた。
「なんだよげーって! おっ、お前はどうなんだよ! お前だって俺の親友の北村
 と……」
「なによ……うるさいわね。あんたの事話してんでしょ? 私達はいいじゃん。ど
 うしても聞きたいって言うなら教えてあげるけど、プレゼントはもう一緒に買い
 に行ったもんねっ」
「げえ! 甘〜っ! ……お互いさまじゃねえか! ってか、エンジェル大河はど
 こ行ったんだよ? 行方不明じゃねえか! 俺のお悩み一発解決してくれるんじ
 ゃねえのかよ!!」
「今日はもうおしまい! 閉店よ、閉店。あ〜なんか意味不明に疲れたわ。体育館
 に戻って北村くん手伝おっと。みのりんによろしくね。……仕方ない、じゃあ特
 別に1個だけアドバイスすっか……あのね……」
 大河は一言、竜児に恋テクをご教授。クリスマスツリーを組み立てている体育館
に戻っていった。

***


「よっほーいっ! 竜児くん、おっ待たせ〜♪あれ?さっきまで大河いなかった?」
 竜児の彼女、実乃梨が部活を終え駆け寄ってきた。大河の姿が消えた事を問われ、
竜児はすでに完成したクリスマスツリーの組み立てと、なんか亜美とサプライズ企
画の練習があるとのことで、先に返った旨を実乃梨に伝えた。

「そっか〜、今日はクリスマス・イヴイヴか〜 寒っいはずだわ」
 ジングルベルをハミングしながら、実乃梨は竜児の隣でスキップしている。そし
てタイミングを見計らい、竜児は大河にアドバイスしてもらった一言を唱えるのだ
った。
「俺、実乃梨のクリスマスプレゼントさ、どうしよっかなって。サ……サンタさん
 に聞いてこいって言われたんだ」
 ……こんなウィットな会話を竜児は繰り出してみたりした。大河の受け売りだが、
果たしてうまくいったのであろうか。
「おおっ、サンタさん直々に? 竜児くん、すっげーじゃん。じゃあ、伝言お願い
 しよっかな。メモのご準備をお願いしま〜す」
「お、おうっ! メモだな、ちょっと待ってくれっ」
 慌てて竜児がカバンをあさると、さっきのクリアーファイルが頭を出してしまい、
パラッと三通の封筒がまたもや舞い散るのであった。それは例のラブ?ラブレター
なのだが、幸か不幸か、実乃梨は超高校級の反射神経を発揮してしまい、おっとっ
と〜と、地面に触れる前に3通ともキャッチし、宛名も差出人もバッチリ見てしま
うのである……。

「わ、私あて? 竜児くんから?……ねえ、読んでいい?」
「い、いやだ」
「え〜? いいじゃん! 竜児くんのいけずぅ〜!!」
 口を尖らせ、ブルブル身体を捩らせる実乃梨。か、可愛い過ぎる……。いくら竜
児の三白眼には恋人フィルターが備わっているとはいえ、エンジェル実乃梨のお願
いを竜児は断ることが出来なかった。付き合う前にしたためた手紙であるという事、
そして率直な感想を聞かせて欲しいという2点を伝え、承諾するのだった。
「分った!! じゃあ読むねっ!……えっとぉ……貴女は俺の太陽ですっ、貴女の」
「おうぅっ! こら実乃梨! 声に出すんじゃねえよっ!! 恥ずかしい! もう
 駄目だ! 返せっ!」
 頭をバシバシ叩いて奪い取ろうとする竜児。甘んじて攻撃を受ける実乃梨だった
が、手紙はなんとか死守するのだった。
「ゴメン! ゴメンよっ! えへっ、嬉しくてさっ! ゴメンなっ! あ、ねえ、
 竜児くん! 私、この手紙欲しいな! クリスマスプレゼントに! 超〜欲しい
 ぞよ! サンタさんにヨロシクな!!」
「その手紙を? ま、マジかよ!」
 エサをねだる鯉みたいに口を、パクパクさせる竜児に、実乃梨は少し照れながら、
「これくれたらさ……私、竜児くんのとこへお嫁さんに行くっぺよ! 嫁入り道具
 にする。一生大事にするから!」
 ねっ? と、首を横に傾げる実乃梨だったが、竜児的な交換条件に合わず、言い
返すのだ。
「何言ってんだよ。言っとくけど、そんな事しなくても俺はおまえを嫁にするつも
 りだからな。てか、実乃梨は俺に何かくれるのか? クリスマスプレゼント」
 チェ〜っと、一瞬つまんなそうな顔になる実乃梨だったが、すぐニッコリ笑顔を
咲かせる。
「おーよ! もっちろんだぜい。知りたい? 知りたいでしょ? 教っえな〜いっ
 !! 手紙頂戴っ! くれたら教えてあげるからよ!」
 どうしても欲しいらしい。まだ付き合う前の内容だし、妄想全開だし、見当違い
な事書いてあるし、そんなもの貰って何が嬉しいのか竜児にはどうしても理解でき
ない。

「……別にやってもいいけど、実乃梨がちゃんとプレゼントくれるなら俺もちゃん
 とした奴渡してえな……」
 い〜よ〜っと遠慮する実乃梨は、よく見たらさっきより頬が赤くなっていた。思
いのほか上気しているのだ。インフルエンザじゃねえのか……竜児は心配になる。
大丈夫なのか? と。
「てかお前、もしかして熱あるんじゃねえのか? どれ……少し熱い、かな? ど
 うだ?……それはそうと教えてくれよ、実乃梨。俺になにくれるつもりなんだ?」

 問われた実乃梨は歩みを止め、竜児もそれに従った。立ち止まったふたりは見つ
め合い、動けないでいる。そして竜児が実乃梨のおでこから手を離した時、エンジ
ェル実乃梨が信じられない事を呟いたのだ。

「赤ちゃん……出来たかも」
「ブッフォー!! 懐妊? そ、そうか……プレゼントは赤ちゃんか。で、でかし
 たぞ実乃梨。とりあえずそこの本屋でたまごクラブ買うかっ!」
 実乃梨の手を取り大通り沿いの書店に引き込もうとする竜児。だが、

「あ〜ウソウソ! わりい竜児くん、言ってみたかっただけ! 想像妊娠! 空中
 楼閣……本当はさ、当日まで内緒にしようと思ったんだけど、本当は……んふっ!
 ……んっ……」
 全てゲロしそうなった実乃梨の唇に竜児はキスをした。黙り込む実乃梨はさらに
真っ赤になり竜児の胸をポカポカ叩く。
「バカバカバカおバカ〜!……み、みんな見てるじゃんかよ!おじさん、びっくり
 しちまったよ!」
 人通りの多い通学路。穴があったら大至急入りたくなった実乃梨は、とりあえず
竜児の胸に飛び込んで顔を隠すのだった。
「いや……俺もなんでこんな……すまねえ、実乃梨」
 実はいじわるだった実乃梨への仕返しのつもりだったのだが、周囲が見渡せる竜
児は、自業自得。すれ違う通行人から恥ずかし目を受けてしまうのだった。だから、

「……好き」
 そんな実乃梨の呟きも、竜児の耳には届かない。だから……だからだ。

 昨日から実乃梨の薬指で輝くシルバーのペアリングなんかも、クリスマスイブに
その一方を実乃梨からプレゼントされるまで、気付く余裕なんて竜児にはないのだ
った。



おしまい


136 : ◆9VH6xuHQDo:2009/12/05(土) 23:02:53 ID:.pcB9Eio

以上になります。
お読み頂いた方、ありがとうございます。
因みに、某スレにて、投下させて頂いているSSにて、原作のクリスマスパーティ
でのツリー倒壊シーンについて私なりの見解で描写する予定です。少し原作と違う
展開になるのですが、決して原作を否定している訳ではなく、伝えたい所は他にあ
るので、もしご覧になる機会がございましたら御容赦、ご理解下さりますようお願
い申し上げます。
そのSSが完結するまでは投下はできませんが、またお邪魔したいと存じております。
またこちらでは普通にレスしたいと存じております。
失礼いたします。


132 : ◆9VH6xuHQDo:2009/12/05(土) 22:58:59 ID:.pcB9Eio

こんばんは。失礼いたします。

一介のみのりん派で、違う板ですが現役でSSを投下している者としては、
原作7巻のクリスマスエピソードに関しては考え深いところもあり、あ
えて誘い受けさせて頂こうかと存じます。
今週末投下予定の私が某スレに投下させて頂いているSSがまだ半分も完成
していないので、推敲時間がありませんでした。その上稚文ですが、気軽
に読み頂けたらと存じます。

ただ内容的に、全開同様、私が某スレに投下させて頂いているSSの内容に
準じており、違和感があるかもしれませんが、どうぞ宜しくお願い申し上
げます。

題名 * M☆Gアフター2
時期 * 二年生の12月23日。
設定 * 竜×実付き合って半年。原作と異なるカプ有。
物量 * 3レスになります。

【とらドラ!】櫛枝実乃梨SSスレ【まったり妄想】
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/anime/7953/12...

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