第15回TREEセミナー

9月3日(水)16:00〜17:00
場所:東邦大学理学部5号館2階 5207教室 (東邦大学理学部へのアクセス

本当は真円じゃないクモの円網

中田兼介 Kensuke NAKATA
東京経済大学現代法学部 准教授

要旨
 円網は採餌のためのデバイスである。垂直円網には放射状に張られた縦糸に粘着性のある横糸がらせん状に付着するという基本形状に加えて、多くの種で共通して見られるデザイン上の特徴がいくつかある。その一つが網の半径の上下非対称性であり、もう一つが垂直方向の直径が水平方向よりも大きい事である。なぜこのような形状が見られるのかについて、
1)クモが網で餌を待つ時の頭の向き
2)網上でクモが移動する時の速度
3)縦糸の振動伝達効率
4)過去の採餌経験
5)対捕食者戦略
という点から検討した。1)2)については、頭の向きと移動速度の上下差、および上下非対称性に一貫した対応関係が見られた。3)に関しては、クモが網上で餌を待つ時に垂直方向により強く縦糸を引っ張って張力をかけており、一方横方向で餌を見逃す頻度が高い事が明らかになった。これらの結果は、網の形状が採餌効率を向上させるための適応である事を示唆している。4)については、実験的に網の一部領域のみで餌捕獲を行なわせると、次の網の張り替え時にその方向に網の上下非対称性が変化するという結果を得た。5)では、捕食者刺激を与えると、網の非対称性が弱まり、そのような網は造網にかかる時間が短くなると言う結果を得た。これらの結果はクモが造網の際に、どのような形状に糸を張っていくかをその都度その都度意思決定している事を示唆している。

ポスター:ダウンロード・印刷はご自由にどうぞ
2008年9月3日ポスター

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