第33回TREEセミナー

2月25日(木)17:00-18:00
場所:東邦大学理学部5号館5101教室(東邦大学理学部へのアクセス

生物多様性の変化を定量化する−鳥類の個体数指数と植物の開花時期指数

天野 達也 Tatsuya Amano
農業環境技術研究所

要旨
生物多様性の減少が深刻な問題として認識されている昨今、全世界的に生物多様性の変化を定量化し監視していくことの必要性が高まっている。今年は「2010年までに生物多様性の損失速度を顕著に減少させる」とした2010年目標の目標年である。日本で開催される第十回生物多様性条約(CBD)締約国会議では、2010年目標の達成状況が検証されるとともに、新たな数値目標の策定が行われるだろう。それでは現在の生物多様性の損失速度とはいったいどの程度なのだろうか?この問いに答えるため、生物多様性の動態を定量化することは保全生態学にとって急務の課題である。
本発表では、まず生物個体数の変化を表す指標としてCBDに採用されている個体数指数に注目する。これまで個体数指数の推定に用いられてきた統計モデル(一般化線形モデル・一般化加法モデル・階層モデル)の精度をシミュレーションによって比較したところ、階層モデルは他の二つのモデルよりも汎用性の高い手法であることが明らかになった。次に階層モデルを実際のデータに適用し、鳥類の個体数指数と植物の開花時期指数の推定を試みた。国内で1970年代から蓄積されているシギ・チドリ類全国モニタリングデータからは42種の個体数指数を推定することができた。これにより過去30年間で急激な減少を示していたほとんどの種が国内のレッドリストに記載されていないことが明らかとなった。一方で、イギリス全土で250年にわたって記録されている植物開花データを用いて、群集及び種レベルでの開花時期変化を表す指数を推定した。推定された開花時期指数によって、イギリスの植物群集は直近の25年間に最も早い開花時期を示しており、開花時期は春期の気温と密接な関係をもっていることが明らかになった。
生物多様性変化の定量化は主に欧米で鳥類を対象に研究が進んでいるものの、世界の多くの地域・多くの分類群ではまだ今後取組まれるべき課題であると言える。以上の研究は、生物多様性の状態を監視する目を地域や分類群を越えて広げていくために、有用な情報を提供するだろう。

ポスター:第33回ポスター

このページへのコメント

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Posted by check it out 2014年01月22日(水) 08:51:02 返信

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