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【定義】

結制安居の始まりに合わせて、叢林内の五役が公案の問答を行うことで、「五則法問」や「法門五則」(『椙樹林清規』)ともいう。現在の「首座法座」に相当するが、現状のように到るには、紆余曲折があった。

【内容】

宗門の清規の中で「五則」を明文化したのは、『椙樹林清規』であろうと思われ、「年中行事目録」巻下において、4月16日の項目に「法門五則」を入れている。
今日より五則の始とす、粥後坐禅はじまり、二枝の香燼んとする時、堂中小開静をなす、磬の次に大鐘を交打し、十八声にて大衆聚る、禅堂外堂、皆搭袈裟上殿、鐘三会の時、主杖出方丈、驀に進本尊前、炷香三拝及び椅子に就なり、椅子は前門の入口なり、竹箆払子拄杖?・硯函・本則等、侍者携出るなり、此日侍衣開口として説破あるべし、頌を簡板に書し、上間の柱に掛たる、一衆の商量了て、大衆斉く主人椅に向て、普同三拝、次主人下椅、本尊前に三拝して帰方丈なり、 『椙樹林清規』巻下「年中行事目録」4月16日項

以上の通り、現代の「法戦式」と極めて類似していることが理解出来よう。なお、少し分かりにくいが、上記で問答を行うのは主人(住持・堂頭)である。
飯時相次で始る、本尊の仏餉、真前に献じ、侍真諷経するのみなり、飯後放禅、暮課より恒規なり、又朝課を不誦、法門あるときは、殿鐘如恒にして商量す、此時粥後放禅、日中より恒規なり、又飯後に法門あるときは、殿鐘三会して商量し、不誦暮課、夜坐放禅なり、飯後薬石後の間暇、本則を出すべし、一衆絡子にて、和尚に講演を求む、前後に必ず礼拝あるべし、五則中ともに法門終りに、維那率一衆上方丈、触礼三拝す、和尚免人事せば、不可上、 同上

これは、五則が行われる日の日分行持について論じた箇所である。坐禅などが省略されている様子が分かる。
廿二日は法門畢の日なれば、一衆も相礼賀す、首座寮にも可赴 同上

この内容から、五則は七日間の日程で行われたことが分かる。そのため、『椙樹林清規』では、4月16日:首座、4月17日:書記の日程で進み、他は詳細不明であるけれども、残り2役は副寺・知客であったともされる。ただし、五役で七日間となると、当然に一日一役ではなく、以下の指摘もある。
若有五則僧、法門罷、告知客、上方丈、辞拝あるべし、次に庫司等にも辞を告べし、斎時には副寺・侍者通会して、五則僧を管待すべし、方丈事繁くば、副司寮にて請飯あるべし、 同上・4月22日項

つまり、「若有五則僧」とある通りで、無い場合もあったことを示している。

【「五則」への批判】

しかし、以上のような「五則」だが、例えば古来より実施されていた『瑩山清規』などには見えない。そのため、古規復古運動が盛んになるに従い、「五則」も批判対象となった。
五則法問と云は頭首秉払を略せる式なり、今秉払を興し行ふ、応に五則を廃すべき也。 『同行訓

以上の通り、学僧・指月慧印禅師は、秉払があれば「五則」は不要と断言した。
今時、洞下の五則の時、首座の分座挙揚が結夏秉払の意なり、 『洞上僧堂清規考訂別録』巻6「秉払考訂」

面山瑞方禅師は、五則の首座の分座挙揚が結夏の秉払に充てられていることを指摘し、おそらくは批判している。他に、興味深い批判をした例もある。
十六日 自今日、五則商量 老拙住院の内は、今日より廿二日の夜半過まで、昼夜坐禅、所云切心也、諸方は公案の商量、我這裏は公案の拈提、これに付て是非する者多し、然るに予が住院は、叢爾たる小刹、故に弁道の便宜に行もの也、大叢林に準ふべからず 『海会堂日用毘奈耶?

こちらは、滋賀県の彦根清凉寺6世だった東溟弁日禅師(?〜1743)が、享保元年(1716)に記録した、清凉寺海会堂での行事規程とされる。以上の通り、各地では五則法問を行うだろうが、海会堂ではそれを行わずに坐禅で代替させた様子が分かる。

【明治期『洞上行持軌範』による「五則」批判】

結果として、江戸時代の混乱は明治時代に持ち越されたけれども、曹洞宗務局の法式改正係が主導して編集した『洞上行持軌範』で以下の見解が発せられることで、この一件は決した。
結制に五則と称し、住持首座書記副寺知客順次に一則の公案を拈提すること何れの世、誰れの創始なるを知らず、或は清規の四節秉払に五人の頭首秉払するに倣ひたるか、然れども住持は秉払すべきに非ず、況や法問の揖番をや、今時法問の式は已に秉払式に異なれば五人のもの五則を挙行するを必とせず、或は謂ふ、五則は五家の宗風を扇揚すと無稽も亦甚し、故に今は結制法問の行式を首座一人に限ることヽ為し、爾余は廃止す 『洞上行持軌範』巻中

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