【定義】
��道元禅師の主著である『正法眼蔵』で、永平寺に所蔵されている２８巻本は、『秘密（蜜）正法眼蔵』と題されている、詳細は『正法眼蔵』項参照のこと。
��瑩山禅師が著されたと伝えられる古則公案の拈提書のこと。全１０則の公案について、瑩山禅師の提唱が行われているが、長く秘蔵されたままであり、世に出たのは大正１２年（1923）のことであった。採り上げられている古則１０則は以下の通り（各則の題名は、跋から引用）。
第一 拈華微笑
第二 門前刹竿
第三 廓然不識
第四 聖諦亦不為
第五 無情説法
第六 六外一句
第七 倩女離魂
第八 托鉢下堂
第九 枕子
第十 道不会
【内容】
ここでは、瑩山禅師の『秘密正法眼蔵』について、解説を行っていくが、この著作は古則公案に対する拈提本としての性格を有する。そして、序に「然りと雖も、若し古人古徳の公案に参ぜずんば、争か功を得、後代の児孫と言わん」と示され、跋には「学人須く大善知識と成らんと欲せば、先ず此の十則の大事に参ずべし。若し参ずることを得ざれば、未だ吾が児孫と称することを許さず。実なるかなこの言。秘すべし秘すべし」とされているため、本来的に公案禅を否定した曹洞宗の宗風に合わず、さらに「秘すべし秘すべし」という秘匿性は、後の洞門抄物の門参等が有する性格であるため、後代の誰かが偽作したものではないかとの見解すら出されていた書物である。
しかしながら、近年では道元禅師の手になる『真字正法眼蔵』の発見や、『正法眼蔵』『永平広録』、或いは瑩山禅師の『伝光録』について、古則公案へのしっかりとした参究の上で説かれたものであるとの共通理解ができてきたため、この『秘密正法眼蔵』についても、いたずらに外見だけで瑩山禅師のものではないと判断されるべきではないと考えられるようになった。
されど、全文が瑩山禅師のものと断定するかどうかは慎重な議論が必要である。何故ならば、この著作には複数の写本が残されており、その系統からすると、以下の３つの内容があるためである。
��永光寺本
�∀暫和∋�本（茨城県）
�Ｙ隻章�
まず、上の二つについては、同じく『秘密正法眼蔵』なのだが、内容としては前者の方がよほど内容に増添されていることが椎名宏雄氏「『秘密正法眼蔵』の諸本」（『瑩山禅』巻１１所収）にて示されており、さらに『拈評録』とは、詳しくは『能州諸嶽瑩山禅師拈評録』と題されるものであり、先に挙げた「秘すべし秘すべし」という語が無く、また序なども無いなど、上の二つに比べて更に簡潔な内容であり、椎名氏はこれこそ瑩山禅師が本来示された内容に近いものではないかと推定されている。
【註釈及びテキスト】
註釈書としては、以下のものがある。
・『秘密正法眼蔵注解?』全１巻、『続曹洞宗全書』「注解１」所収
⇒傑堂?能勝撰述と推定されるもので、引用される本文を精査した結果、六地蔵寺本系統の註釈書とされる。
『秘密正法眼蔵』について、入手が容易なテキストとしては、以下のものがある。
・『常済大師全集』
・『瑩山禅』第１０巻
・『曹洞宗全書』「宗源（下）」巻
同著を扱った論文としては、以下のものがある。
・石川力山「『秘密正法眼蔵』について」（『宗学研究』20号・昭和53年）
・石川力山「『秘密正法眼蔵』再考」（『宗学研究』21号・昭和54）
・竹内弘道「瑩山禅師の著作について（4）―『秘密正法眼蔵』の考察」（『宗学研究』30号・昭和63年）
・竹内弘道「瑩山禅師の著作について（5）―諸本校訂『秘密正法眼蔵』」（『曹洞宗研究員研究紀要』20号・昭和63年）
・椎名宏雄「秘密正法眼蔵の諸本」（『瑩山禅』11巻・山喜房仏書林・平成3年）
・松田文雄「『秘密正法眼蔵』について」（『曹洞宗教義法話大系』18巻・同朋舎出版・平成3年）
��道元禅師の主著である『正法眼蔵』で、永平寺に所蔵されている２８巻本は、『秘密（蜜）正法眼蔵』と題されている、詳細は『正法眼蔵』項参照のこと。
��瑩山禅師が著されたと伝えられる古則公案の拈提書のこと。全１０則の公案について、瑩山禅師の提唱が行われているが、長く秘蔵されたままであり、世に出たのは大正１２年（1923）のことであった。採り上げられている古則１０則は以下の通り（各則の題名は、跋から引用）。
第一 拈華微笑
第二 門前刹竿
第三 廓然不識
第四 聖諦亦不為
第五 無情説法
第六 六外一句
第七 倩女離魂
第八 托鉢下堂
第九 枕子
第十 道不会
【内容】
ここでは、瑩山禅師の『秘密正法眼蔵』について、解説を行っていくが、この著作は古則公案に対する拈提本としての性格を有する。そして、序に「然りと雖も、若し古人古徳の公案に参ぜずんば、争か功を得、後代の児孫と言わん」と示され、跋には「学人須く大善知識と成らんと欲せば、先ず此の十則の大事に参ずべし。若し参ずることを得ざれば、未だ吾が児孫と称することを許さず。実なるかなこの言。秘すべし秘すべし」とされているため、本来的に公案禅を否定した曹洞宗の宗風に合わず、さらに「秘すべし秘すべし」という秘匿性は、後の洞門抄物の門参等が有する性格であるため、後代の誰かが偽作したものではないかとの見解すら出されていた書物である。
しかしながら、近年では道元禅師の手になる『真字正法眼蔵』の発見や、『正法眼蔵』『永平広録』、或いは瑩山禅師の『伝光録』について、古則公案へのしっかりとした参究の上で説かれたものであるとの共通理解ができてきたため、この『秘密正法眼蔵』についても、いたずらに外見だけで瑩山禅師のものではないと判断されるべきではないと考えられるようになった。
されど、全文が瑩山禅師のものと断定するかどうかは慎重な議論が必要である。何故ならば、この著作には複数の写本が残されており、その系統からすると、以下の３つの内容があるためである。
��永光寺本
�∀暫和∋�本（茨城県）
�Ｙ隻章�
まず、上の二つについては、同じく『秘密正法眼蔵』なのだが、内容としては前者の方がよほど内容に増添されていることが椎名宏雄氏「『秘密正法眼蔵』の諸本」（『瑩山禅』巻１１所収）にて示されており、さらに『拈評録』とは、詳しくは『能州諸嶽瑩山禅師拈評録』と題されるものであり、先に挙げた「秘すべし秘すべし」という語が無く、また序なども無いなど、上の二つに比べて更に簡潔な内容であり、椎名氏はこれこそ瑩山禅師が本来示された内容に近いものではないかと推定されている。
【註釈及びテキスト】
註釈書としては、以下のものがある。
・『秘密正法眼蔵注解?』全１巻、『続曹洞宗全書』「注解１」所収
⇒傑堂?能勝撰述と推定されるもので、引用される本文を精査した結果、六地蔵寺本系統の註釈書とされる。
『秘密正法眼蔵』について、入手が容易なテキストとしては、以下のものがある。
・『常済大師全集』
・『瑩山禅』第１０巻
・『曹洞宗全書』「宗源（下）」巻
同著を扱った論文としては、以下のものがある。
・石川力山「『秘密正法眼蔵』について」（『宗学研究』20号・昭和53年）
・石川力山「『秘密正法眼蔵』再考」（『宗学研究』21号・昭和54）
・竹内弘道「瑩山禅師の著作について（4）―『秘密正法眼蔵』の考察」（『宗学研究』30号・昭和63年）
・竹内弘道「瑩山禅師の著作について（5）―諸本校訂『秘密正法眼蔵』」（『曹洞宗研究員研究紀要』20号・昭和63年）
・椎名宏雄「秘密正法眼蔵の諸本」（『瑩山禅』11巻・山喜房仏書林・平成3年）
・松田文雄「『秘密正法眼蔵』について」（『曹洞宗教義法話大系』18巻・同朋舎出版・平成3年）
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