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【定義】

釈尊と、その一番弟子である摩訶迦葉との伝法に関する逸話。「世尊拈華話」ともいう。

【内容】

この説話に関する直接の典拠としては、古い仏典には見えず、専ら不立文字教外別伝以心伝心の教義を持つ禅宗で用いられた逸話である。しかも、日本曹洞宗では極めて重大な宗教的事象として取り扱われている。なお、幾つかの原型は、大乗仏典などにも見ることが可能で、「我、今、所有の無上正法、悉く以て摩訶迦葉に付嘱す」と『大般涅槃経』(巻2)にもある。

話のあらすじとしては、或る時、釈尊が霊鷲山で百万人の弟子達を前に、全く説法しようともせず、一本の華(金波羅華優曇華)を手に摘んで示し、瞬目した。ほとんどの弟子達はその真意が理解できず押し黙ったままであったが、独り摩訶迦葉だけがその真意を悟り、破顔微笑した。それを見た釈尊は、「吾に正法眼蔵涅槃妙心有り、摩訶迦葉に附属す」と告げて、大法を附属したという。これは、言語を介さずに正法眼蔵が相続されたということで、禅宗の「不立文字教外別伝」といった宗旨に合致したという。

元々は中国(或いは日本とも)撰述の偽経とされる『大梵天王問仏決疑経』が典拠とされることが多いけれども、宋代以降の中国禅宗から用いられるようになった(圜悟克勤や大慧宗杲、『無門関』第6則、他の語録に散見)が、あまり多くは見えない。そしてこの話は『聯灯会要』などに収録されたが、これらを読んだ道元禅師は「拈華微笑話」を極めて重要な宗教的事象であるとされて、『永平広録』『正法眼蔵』など多くの箇所で繰り返し用いられるようになる。特に『正法眼蔵』では、この話に関連した巻として「仏道(75巻本系統)」「密語」「優曇華」巻があり、他にも多くの巻で仏法正伝されることを意味する語として「拈華」或いは「瞬目」或いは「破顔」或いは「微笑」などが用いられる。
世尊、霊山に在りて百万衆を前に拈華瞬目するに、迦葉、破顔微笑す。世尊、衆に告げて曰く「吾に正法眼蔵涅槃妙心有り、摩訶迦葉に附属す。流布将来して断絶せしむること勿れ」と。仍って金縷の僧伽梨衣を以て迦葉に附す。 『永平広録』巻9−頌古1

また、この一則について、江戸時代の学僧・面山瑞方禅師は『永福結夏録』に収録された普説で詳しく説示されたことでも知られる。

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